グリッドマン ユニバース:Selected of two Souls Sigma Story. 作:キャメル16世
やっと本題に入ってきました。SSSSシリーズでは出て来なかった『彼』がついに本格的に登場します!今後ともご期待ください。
「「アクセス…!フラーッシュ!!」」
右腕のアクセプターにあるボタンを左手で押すふたり。動作は裕太がアクセプターのボタンを押し込む左右反転させた動きで、実際ふたりもそれを意識した。
ふたりの身体がジャンクに吸い込まれ、ふたりの意識は光り輝くトンネルの中にいた。
「……ここが…ジャンクの中…?」
「……っ」
ふたりの前には先程の戦士。身体はグリッドマンやグリッドナイトと同形、色は青を基調とし、所々に赤や黄色が配されている。頭部はグリッドナイトに似ているが、バイザーは無く、黄色の目が二つそこにある。側頭部にある尖った耳のようなパーツは羽のように三枚構成になっている。
「……さぁ、共に…!」
ふたりに手を差し出す戦士。その手をそっと掴んだ六花と内海は、その身体を戦士に委ねた。ふたりの心と融合した戦士はその姿を実体化させ、ツツジ台の街に一閃の光を放って降り立った。
「……ん〜…?」
突然現れた巨人の存在に疑問を抱くも、危機感は感じていない様子のダーガ。背は見せているものの敵意むき出しの相手を凝視する。
「……君、誰?」
「…俺は戦士『シグマ』!兄の名を借りるとすれば…俺の名は…『グリッドマンシグマ』だ!」
その名を背中で語るグリッドマンシグマ。振り向いた彼は拳を構え、ダーガに先制攻撃を放つ。
「はぁぁっ!」
「ぬおっ!……ふふ…なるほど、君もハイパーエージェントの一人か。これはなかなかに手強そうだねぇ!」
そうは言いつつも左腕から生成した光の剣で対抗しようとするダーガ。
「はっ!」
「…ふっ!てやっ!」
「なにっ!?…ぐはっ!」
だが、その攻撃を全て見切り回避してから再びパンチを食らわすシグマ。その速さはグリッドナイトに匹敵し、攻撃のテンポもダーガを翻弄していた。
「グリッド…!シグマビームッ!!」
追い打ちをかけるシグマ。右腕のアクセプターから青白い光線を放った。
「グッ…!ぐおっ…!」
怒涛のラッシュに困惑するダーガ。ダメージを喰らえど、致命傷ではない。だがこのまま押されれば戦闘が不利になると悟ったのか、ダーガはシグマに語りかけ始めた。
「……なるほど…君の中からはふたつの魂を感じる。推測するに内海将と、宝多六花かな?」
「だったら、なんだというんだ?」
「…ふふ…君達の行動が響裕太を弱くした、その自覚は無いのかい…?」
『『……っ』』
ダーガの言葉を、ふたりはシグマの中から聞いていた。
「内海将…君が彼に告白を催促し、宝多六花…君はあまつさえもその告白をあっさりと受け入れた。分かるかい?彼は何もやり遂げていないんだ…全て周りの助け、支えがあってこそやってのけた事さ」
『それは違う!裕太は…六花にずっと告白するタイミングを測ってた!裕太だって…裕太だって頑張ったんだ!』
内海がシグマの中から叫ぶ。その声はダーガに届き、更に彼を刺激した。
「…頑張った…?笑わせるな!彼ひとりでは何も出来なかった。グリッドマンやその仲間達と協力する事が出来たから、この宇宙を…新条アカネの世界を救う事が出来た。だが、グリッドマンが居なくなった後の響裕太は…?なんの情動も湧かず、ただ過ぎていく日々を指折り数え、いつかの変化を待ち焦がれていた。あの騒動がなければ、彼はこのままズルズルと日々を過ごしていただろう!」
『…そ、それは…!』
「響裕太も、グリッドマンも!所詮ひとりでは何も出来ない弱い存在!それは彼ら自身も自覚している。それが強さになる?いいや、弱さは弱さにしかならない!そして、その優劣をつけるのは、強者だッ!」
ダーガはつらつらと述べながらシグマに向かって飛び蹴りを放つ。その攻撃に怯んだシグマは攻撃を出せずにいた。
先程までの好戦的な態度とは異なり、ダーガを睨み続けていた。その要因はひとつ。彼と合体しているふたりの心が、戦いを拒んでいた。
人は誰かと協力し合い、支え合うことで力を発揮する。それが人の強さだと、ふたりはグリッドマン達の戦いの中で思い知っていた。だが、裏を返せばそれは、結局ひとりでは何も出来ない弱い存在と認めているのと同じであり、誰かと支え合えば支え合うほど自身の弱さをさらけ出していることになる。今シグマと合体している事も、今のふたりにとってはただ奴に弱さを見せつけているようなものだったのだ。この戦いで負ければ、その屈辱は計り知れず、悔しい結果を生んでしまう。そう悟ったのだ。
「……恐れることは無い。俺は知っている、奴もひとりでは何も出来ない!」
『…えっ?』
シグマの言葉が、ふたりに響いた。同時に不思議に思った。グリッドマンダークの力は確かにグリッドマンの力を応用している。でも、誰かと支え合っている訳では無い。それとも、他に奴に協力する奴がいるのか…?と。
「何を言う…!」
再び飛び蹴りを繰り出そうとしたダーガの足を、シグマは両腕で掴み反対側の地面に叩き付けた。
「ぐわっ!」
「…奴も兄や俺と同様、とある少年と合体し、その身体を実体化させている。あんな御託を並べていたが、その弱さを一番知っているのは、奴自身だッ!」
「クッ…くだらん戯言を言うなぁ!」
激昂したダーガの拳を左手で受け止めたシグマは、右拳でアッパーを繰り出した。
「ぐぁっ!」
「俺が救うべき相手は兄だけでは無い。奴に再び心を利用され、強制的に合体させられてしまった少年を救う為、俺はこの姿になった。確かに俺達は弱い存在だ。だが兄も言っていた、俺もその弱さを受け入れる!例えそれが、強さを投げ捨てる言葉だとしても…!」
『……』
『……』
シグマの言葉が、ふたりに重くのしかかる。同時に、自分達は何で悩んでいたのか、全く分からなくなるほど、晴れ晴れとした心を認め、ふたりは再びシグマに力を貸した。
「てやぁぁっ!」
「ぐはぁっ!」
「たぁっ!とぉっ!」
次々と繰り出す蹴り技でダーガを翻弄する。飛び上がったシグマは太陽と被り逆光からドロップキックを放つ。
先程までの気迫とは異なり、荒々しい戦闘スタイルとなった。これが本来の彼の戦闘スタイルであり、その力はダーガを圧倒させた。
「クッ…流石はグリッドマンの弟、正義の心と使命感はグリッドマンそのものだね」
立ち上がったダーガはシグマを見つめる。
「正直、君達を舐めていたよ。敬意を払おう…君達は紛れもない戦士だ」
「……っ!」
すると、またしても空から一筋の光が刺し伸びだ。降りたった先には二足歩行の怪獣が居た。
『怪獣!?なんで!?』
「やはり、奴は自身に怪獣を保有していたか!」
『どういう事…!?』
「マルチバースから消えた怪獣…それは全て、奴がその怪獣達を吸収したのが原因だ」
『じゃあ…マルチバースの消滅が原因じゃなくて、あいつが単に怪獣を手に入れていたのか!』
『…でも、なんか様子が変じゃない?』
降り立った怪獣はシグマを襲う様子も街を襲う様子もなくただただ佇んでいた。
「怪獣は人間の情動や心によって動かされる。別の宇宙の怪獣はその宇宙でしか活動は出来ない」
『じゃあ、あいつはこの宇宙では動けないのか!なーんだ、あいつも案外間抜けだなぁ』
「……いいや」
『…えっ?』
シグマの説明を聞いて安堵した内海だったが、その説明に続きがある事を知って再び青ざめる。
「それは早計だよ、内海将。確かに意思のない怪獣なんていても意味が無い。でも、今のボクにはそれを操る力がある」
『…怪獣を…操る……まさか、蓬君みたいに…!?』
内海と六花の脳裏に、あの日の記憶が蘇る。
『マッドオリジン』によって召喚された『ノワールドグマ』が自分達を襲った際、蓬が右手を添えて怪獣をつかみ、意思をコントロールする姿を。
「その通り…インスタンス・ドミネーションッ!」
ダーガは怪獣に向けて左手を添え、中指と薬指の間を開きながらそう叫ぶ。ダーガの目が赤く光ると、それに応じて怪獣の意思のない目も赤く発光した。
「GRAAAA!!」
「君達にこの置き土産を差し上げるよ。せいぜいこの街を守ってみてくれ」
「ま、待てっ!」
シグマが手を伸ばしたのも束の間、ダーガは姿を晦ましそこには怪獣のみが残った。
『…クッ…あいつ…!怪獣を置き去りにしやがって…!』
「GRAAAA!!」
内海が嘆くも、向かってくる怪獣…針小棒大怪獣『バリボーグ』。背中にはハリネズミやヤマアラシを彷彿とさせる針を保有し、前傾姿勢で向かって来た。
「やるしかないっ!」
猪突猛進の如く向かって来るバリボーグを受け止めたシグマは足元を蹴り上げて攻撃する。しかし、それを飛び避けたバリボーグは身体を丸めて回転。針の塊と化したバリボーグは一直線に落下しシグマを痛め付けた。
「ぐおぉっ!」
「GRAAAA!!」
バリボーグに弾かれたシグマは体勢を崩してしまう。バリボーグはすかさずシグマにタックルを喰らわせる。
「ぐはっ!」
『こ、この怪獣…強くない!?』
「怪獣は操る者の情動によっても強さを変える。この強さ…ダーガのオレ達を憎む力が怪獣を凶暴化させている…!」
『早く何とかしないと…やられちまうっ!』
シグマに向かって叫ぶ内海。シグマが敗北すれば本当にこの世の終わり。ダーガがこの世界…いや、全宇宙を支配してしまう……
そうなれば奴はこの世界に何をしでかすか分からない。さっきの街を破壊する行動から、この街を私物化しようという気は毛頭ないようだ。
街には生きる命がある。六花の家族や内海の家族。六花の友達であるなみことはっす。クラスメイト。先生。このツツジ台で関わって来た全ての人間が危険な目に晒される。
そんなのはふたりにとっては当然許せない事だった。
「…安心しろ。こんな事もあろうかと、助っ人を呼んでおいた」
『……助っ人…?』
六花が尋ねると、怪獣の頭上に赤い紋章が現れた。
新世紀中学生が変身するアシストウェポンが出現する紋章と似ているが、まさかあの中から助っ人が来てくれるのか?と、ふたりが思った最中。
「GAAA!!」
『ええっ!?怪獣がもう一体!?』
紋章の中から飛び出してきたのは怪獣だった。
全身が碧色の装甲で身を固めている、竜ではなく龍。日本神話に出てくるような細長い龍が現れたのだ。
『ちょっと!?怪獣が来るなんて聞いてないよ!?』
『待って内海君…!あれ、もしかしたらレックスさんみたいなのじゃない?』
『…えっ?』
慌てる内海を鎮める六花はその龍を注意深く観察した。
龍が身に纏っていると思われた装甲。だがその姿はダイナレックスのように巨大メカのようでそれが装甲に見えていただけだった。
もしかしたらレックスさんの仲間か?と思ったが、レックスさんの仲間は蓬君達以外には居ないと聞いたが……
「ジュウガ!良く来てくれた!」
「全く。人騒がせな…いや、怪獣騒がせな人ですね…!」
ジュウガと呼ばれた怪獣のようなメカは爽やかな男性の声で喋った。
『喋った!?』
『やっぱりレックスさんの仲間なのか!?』
「…まぁ、近からず遠からずですね。とにかく今はこの窮地を脱するべきでは?グリッドマン同盟のおふた方?」
『俺達の事、知ってるのか?』
「……まぁ、多少は」
言葉を濁したジュウガ。向かってくるバリボーグの周りを飛びながら誘発する。
「シグマ、あまり時間がありません。合体しましょう!」
「…少し、待ってくれ」
「……?」
ジュウガの誘いを一度保留にしたシグマは内にあるふたつの魂に問い掛けた。
「内海、六花。あいつはオレと協力関係にある存在だ。抵抗はあるだろうが、今はあいつと協力しなければ怪獣を倒せない。お前達ふたりの意思が必要だ」
『俺達の、意思?』
『私達が戦おうって思わないと、合体出来ないの?』
「あぁ、オレはお前達と意思が被らなければ戦えない。オレ達3人の心がひとつになった時、オレは始めて力を発揮する」
『……なんだかよく分かんねぇけど…やるよ』
『あの怪獣を倒さない限り、この街は安全にならない。私達がやらなきゃなんだよねっ!』
「……ありがとう。改めてお前達に感謝する!」
ふたりに感謝の意を述べたシグマは、ジュウガに向かって飛び上がる。
ジュウガは前後に分割。頭部側は右腕とドッキングし、尻尾側は左腕とドッキングする。碧色の龍を模したメットパーツを被ると、地面に衝撃を走らせながら着地した。
「「青龍合体戦士!ドラゴングリッドマンシグマ!」」
次回
「俺達は、世界を守る怪獣です」
第9回「聖・獣:正義のアシストアニマルズ」