オペレーターの恋人、あるいは友人   作:猫又侍

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ホシグマのイチャイチャが見たい一心で書きました。なお、我がロドスにホシグマは居ない様子。来てくれぇ……


#1.ホシグマ

 一月二十日龍門市街の端、龍門兵の隊員達が検問を行う場である入り口から少し離れた場所に僕は一人立っていた。

 

 未だ季節が冬というのもあり、当然外は寒い。

 

 手先が悴み、感覚が麻痺してくる。

 

 息を吐けば、白いモヤとなって宙に消えていく。

 

 龍門兵の隊員達が何度か心配してくれたが大丈夫と言ってここに立ち続けている。

 

「まだかな……」

 

 ここに来てまだ数刻も経っていなにのにも関わらず、待っている時間が永遠にも等しく感じてしまう。

 

 早く彼女を抱きしめたい。

 

 この寒さの中だ、きっと彼女も寒がっているに違いない。

 

 その時は僕が彼女を抱きしめて、温めよう。そして、一緒に僕らの家に帰るんだ。

 

 そんなことを考えながら、時折携帯を取り出し彼女とのささやかな思い出を振り返る。

 

 彼女は最近、よく龍門を出て仕事に行く事が多い。

 少し前までは龍門での仕事が殆どで頻繁に会えていたのに、今となっては遠距離恋愛の様な関係になってしまっている。

 

 彼女の仕事に理解はあるし、彼女は多く人を救おうとしているのだから咎めることは出来ない。

 それに、そんな仕事に前向きな彼女だからこそ好きになったと言っても過言ではない。

 

 ふと、鼻に冷たい何かが降り注いだ。

 

「雪だ」

 

 しんしんと、辺りに雪が降り始める。

 

 寒い。

 

「早く会いたいよ……ホシグマ」

「それは、小官も同じですよ」

「──っ!」

 

 突如として聞こえた待ち人の声に、思わず顔を上げる。

 

 そこには悪戯に成功した子供のように無邪気に笑う、緑の髪を靡かせ額に一本のツノを生やした僕の最愛の人──ホシグマが立っていた。

 

「──おかえり、ホシグマ」

「はい、ただ今帰りました」

 

 先程の無邪気な笑顔とは一転、フッと笑うその顔はとても美しく僕をドキドキさせるには十分なものだった。

 

 そんな事も知ってか知らずか、ホシグマは勢いよく僕を抱きしめた。

 僕もいきなりの事で驚きはしたが、それに答えるように抱きしめ返す。

 

 ホシグマは帰ってくるとまずハグをする。

 

 これは、僕と彼女との間にできたルーティーンの様なもので付き合ったばかりの頃はビックリする気持ちと恥ずかしい気持ちでどうにかなりそうだったが今となっては慣れたものだ。

 

「寒かったでしょ? この後予定は?」

「それがこの後私の誕生日パーティーをしようと誘われていまして……」

「そっか……人気者だね」

「少し嫉妬しましたか?」

「まぁその気持ちがないと言えば嘘になるけど、それ以上に君が慕われてる事が嬉しいよ」

 

 しかし、誕生日パーティーか。

 今までは二人きりでの開催が主だった為、なんだか不思議な感覚だ。

 

 プレゼントはまだ完成していないし、みんなでパーティーをして貰っているうちに完成させてしまおう。

 

「じゃあ僕は先に家に帰っておくよ。職場の人たちと楽しんで来てね」

「え?」

「へ?」

「来て……くれないんですか?」

 

 予想していた返事とは違う返事が返って来た事で一、二秒程度フリーズしてしまう。

 来てくれないって……流石に彼女の職場の知り合いの人達しかいない場所に行くのは場違いな気がしてならない。

 

「だって、職場の人達とのパーティーでしょ? 僕いるのって場違いじゃないの?」

「いえ、そんな事はないですよ。丁度ロドスの皆さんに紹介したかったので」

「そ、そう?」

 

 しかし、僕がパーティーに行こうとしない理由はもう一つ存在する。

 

 それは──

 

「でもホシグマ、職場の人達の前ではオフの姿を見せた事が少ないんでしょ? 親しい間柄の同僚とかならまだしも、部下の人達にオフの姿を見せても大丈夫なの?」

 

 そう、彼女は基本仕事モードの時は敬語で話している。

 

 オフではラフな喋り方をしているが部下の人達の前では僕の前でも敬語を使っている事が多い。今だってすぐ近くに部下がいることを知っているから敬語になっている。

 

 ハグはどうなのかって? いつもは家で待っているからこういう方が珍しい。今回入り口で待っていたのは、いつもより長い任務で早く会いたかったがためにここに居るだけだ。

 

「僕とは家で祝えるだろうし、機会を見て紹介してくれればいいさ」

「……だめ?」

 

 僕に断られたのは意外だったのか、明らかにシュンとしてしまうホシグマ──それはずるいと思う。

 

 * * * *

 

 結局、誕生日パーティーに参加することになったのだがプレゼントが完成していない以上遅れて参加するしかないと思っていた。

 

 殆ど完成間近だった事もあり、すぐに向かうと言って一度帰宅。なんとかプレゼントを完成させることに成功し、ホシグマから聞いていた場所に向かったのだが──

 

「いやぁ、僕の職場だと聞いた時は驚きましたよ」

 

 そう、僕の働いている少し大きめの居酒屋だったのだ。

 

「以前ホシグマがよくこの店の酒とつまみが上手いと聞いていたから一度は来てみたいと思っていたが……なるほど、そう言うことか」

 

 口に手を当て、ニヤニヤしながらこちらを見てくる青髪の龍の彼女の名はチェン・フェイゼ。

 龍門近衛兵のトップにして、ホシグマの上司に当たる人物である。

 

「よくホシグマがフェイゼさんの事を話していたので僕も会ってみたいと思っていましたよ」

「チェンでいい。それと年代も同じだろう? 敬語はなしにしようじゃないか」

「それもそうだね、チェン」

 

 僕とチェンは極東の酒を酌み交わしながら誕生日パーティーという名の宴会を楽しんでいた。

 

 なぜ宴会になっているのか、なんて聞く話でもない。

 ホシグマは大のお酒好きでどこでも有名らしく、僕よりも付き合いの長いチェン曰く酔い潰れたところを見た所がないとか。

 

「ホシグマ、楽しそうだ」

「そうだな。いつも君と誕生日を祝ってるそうじゃないか、熱々と言った所か?」

「まぁ、そんな所かな」

 

 僕はホシグマの私生活の些細なことを、チェンはホシグマの仕事中のことを本人の迷惑にならない程度に話しながら楽しそうにするホシグマを眺めていた。

 

 ふと、ホシグマが僕とチェンが並んでいるところを発見するとトコトコとこちらに向かってきたと思ったら僕の隣に座り抱き寄せてきた。

 

「いくらチェン隊長でも、彼は譲れませんよ」

「はっはっは! 流石に人の彼氏を取ったりはしないさ。ホシグマの話をしてただけだ」

「……本当?」

「うん、そうだよ。チェンの知らないホシグマの話しさ」

「……むぅ」

「なんで不機嫌?!」

「だって、今日知り合ったばかりなのにタメ口だし……名前呼びだし……」

 

 急にラフで僕と一緒にいる時のように拗ねてぐりぐりと僕に擦り寄ってくるホシグマ。

 それが物珍しいのか、多くの人の目が僕とホシグマに注がれていた。

 

「ほら、ホシグマ。みんな見てるよ」

「ん〜、酔った。抱っこ」

「酔ったことないんでしょ? 抱っこは後でしてあげるから。今はホシグマの誕生日パーティーなんだし、楽しもうよ」

「……分かった」

 

 少し不機嫌そうに起き上がり、再びお酒を煽り始めるホシグマ。僕の隣を離れる気はなさそうだ。

 

「随分とホシグマに懐かれてるらしいな」

「ええ、相思相愛です」

「ふっ、見せつけてくれるな」

 

 微笑ましいものを見るような目でこちらを一瞥すると「酒がなくなったから取りに行ってくる」とどこかのテーブルに行ってしまった。

 

 先程までテーブルには僕とチェン、ホシグマしか座っていなかった状態だったため二人きりになってしまった。

 

「ねぇホシグマ」

「なに?」

「例年より楽しい?」

「楽しいよ。でも……」

「でも?」

「君と二人きりの時もとっても楽しいよ」

 

 そう言って笑うホシグマはどこまでも綺麗で、見惚れてしまうほど眩しい笑顔を浮かべていた。

 

 周りを見ると、各々が目の前のお酒や料理に目が行っていてこちらを見ている人はいない。

 

 それを確認すると、用意していたプレゼント……手編みのマフラーを首に掛けると、僕はホシグマの唇にそっとキスをした。

 

「──っ!」

「誕生日おめでとう。初めて作ったものだから上手くできなかったけど、喜んでもらえると嬉しいな」

「いいや、とっても嬉しいよ。私の宝物だ」

 

 マフラーをギュッと握りしめるホシグマの頬は赤く染まっているが、酔ってきただけなのかも知れないし恥ずかしいだけなのかも知れない。

 僕は、後者であって欲しいと願う。

 

「僕も、君と過ごす誕生日が……君と過ごす毎日がとっても楽しくて、幸せだよ。愛してるよ、ホシグマ」

 

 目一杯の愛をホシグマの耳元で囁くと、彼女はビクッと体を跳ね上がらせだ。

 耳元から顔を離すと、少し息の荒いホシグマが先ほどよりも頬を染めてコチラを見ていた。

 

「……家に帰ったら覚えておけ」

「ふふっ、お手柔らかに」

 

 今夜は眠れない夜になりそうだな。

 

 そう思いながら残りわずかなお酒をグッと煽った。




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