オペレーターの恋人、あるいは友人   作:猫又侍

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三話目にしてタイトル詐欺。しかし、ドクターを書かずして誰を書く。今回は恋人ではなく友人の回となります、砂糖マシマシの激甘を期待して居た方申し訳ないです。今回は少し短めです。


#3.ドクター

 物語と言うものは、いつも唐突に始まったと思えば唐突に終わりを告げる。

 

 どれだけ分厚く、長い長編小説や長編映画でも、そこには必ずプロローグとエピローグが存在する。

 それは人生においても変わる事はなく、生まれたその瞬間にプロローグが始まり、永遠の眠りにつく事でエピローグを締めくくる。

 

 このテラと言う大地で生きる者達もまた、プロローグとエピローグの人生を謳歌しているといえよう。

 しかし、このテラは物語の様に上手くいく様な世界ではない。

 

 鉱石病と言う不治の病が蔓延し、感染者、非感染者で区別され迫害される。

 

 そんな状況を打破すべく、結成されたのが製薬会社『ロドス・アイランド』。表向きは製薬会社として多くの都市と貿易をしているが、裏では鉱石病の研究を日夜進めている。

 

 彼らの掲げる目標は鉱石病の治癒、そして感染者と非感染者との壁を壊し、平和な世を目指す事。

 

 感染者で構成された組織『レユニオンムーヴメント』と対峙し、壮絶な戦いを繰り広げていると裏の住人ではもっぱらの噂である。

 

 そのロドスの強さの所以はあらゆる局面において、その戦術を凌駕することは不可能に近いと言われたロドスの脳──ドクターの存在である。

 

 * * * *

 

 龍門の古びた出店の居酒屋で、俺は友人を待ちながら一人酒とつまみを突きながら黄昏ていた。

 

「遅え……」

 

 携帯を取り出し時間を確認するも、約束の時間から既に十分ほど経過していた。

 あいつは時間にルーズなのかそうでないのか、未だによくわからない。ぴったり守る時は守るくせに、遅れる時はとことん遅れてくる。

 

「遅れる時には連絡くらい入れろっての……おやっさん、もう一杯」

「あいよ」

 

 待ち合わせの五分前に席に着き、酒とつまみを突き始めてこれでもう三杯目。

 あいつが来る頃にはすでにベロンベロンになってそうだ。

 

「すまない、遅れた」

「おう、遅いぞ。これでもう三杯目だ」

 

 ようやく訪れた友人はフードで顔全体を覆い隠し、中々人前で顔を晒さないロドスの頭脳。ドクターと呼ばれる人物だった。

 俺自身、ドクターの本名は知らない。

 ただ本名を知らないだけで友人ではなくなる、なんて厳しい世の中ではない。気があって、美味い酒が飲めれば友人と言っても差し支えないと俺は思っている。

 

「それで、今回は何での遅れだ?」

「アーミヤとケルシーが中々離してくれなかった」

「っか〜! モテるドクターは辛いねえ! 俺には彼女以前に女との出会いもねぇのによぉ」

「それは私に言われても仕方ない」

 

 ドクターは、酒とつまみを適当に見繕うように屋台のおやっさんに頼むと被っていたフードを外し顔を露わにした。

 

「しっかし、毎度思うんだがドクターって顔整ってるよな」

「そうか? 私自身、周りが整い過ぎて分からない」

「あ〜……それはそう」

 

 ドクターの所属するロドスは多くの感染者と非感染者が共に生きる都市であり、その乗員のほとんどが顔立ちが整っているいわゆるイケメンや美人が多いらしい。

 

 龍門の近衛局のメンツも顔がいいし、必然といえば必然なのだろうが……一度ロドスの面々にあった事があるがあんな容姿のいい集団の中にいれば誰でも自分の顔に自信がなくなる。

 

「でもいいじゃん、選び放題だぜ?」

「言い方……流石に、職員に手は出せないよ」

「ふぅん……あんなにアピールされてんのにか?」

「うっ」

 

 痛いところを突かれたと言わんばかりに言葉が詰まる。

 

 職員に手を出すわけには行かないと言ってはいるが、そもそも職員からアピールされているのでそんな心配をする必要はない。

 しかも、一人はロドスのCEOと来たもんだ。いやはや、モテる男はいいねぇ。

 

「職員だからとか職員じゃないからとか、そんな事抜きにして考えてもいいと思うぜ? 別に職員と付き合ったからって、お前の評判が下がるわけでも、後ろから刺されるわけでもないだろ?」

「それはまぁ……そうだが」

「なら良いじゃん。そう言うことばっか気にしてると、いつまでも彼女達の心を弄ぶ事になるぜ? まぁ、出会いのない俺からしたらそんなんで悩めるドクターが羨ましいけどな」

 

 グラスに残った僅かな酒を飲み干し、新たな酒を親父さんに注文する。

 ドクターは相変わらず俯いたまま、何かを考えている。

 

 そこまで頭を悩ませなくても、自分の心に素直になればいいと思うんだけどな。

 とは言うものの、ドクターにはドクターなりの考えがある。それを鼻っから否定するつもりはない。

 

 ただ、最後は誰かの手を取る事になるのなら今のうちから決めておいた方がいざという時にはいいだろう。

 

「なぁに、今決めろって言ってるわけじゃない。これからゆっくり悩めよ。悩んで悩んで、悩み尽くして決めろ。そして、自分の思いをしっかり伝えるんだ」

「そうか……それもそうだな」

「ようし! そうと決まれば今日はとことん付き合ってもらうぜぃ! 今日は俺の奢りだ、どんどん飲めドクター!」

「いや、それは流石にケルシーとアーミヤに怒られるんだが……」

 

 なに、今そんな事を気にしてちゃこの先やってけないぜ?ドクターさんよ。

 

 結局、その日はドクターが酔い潰れるまで飲み明かし財布に穴が開くのではないかというレベルの出費をした。

 

 例の恋人の件については、また相談に乗って欲しいと言われた。

 

 彼女居ない俺に何の拷問だ?

 

 兎にも角にも、これからはドクターの友人の一人としてこれからの恋路を見守っていこうと思う。

 

「まぁ、その先に幸あれ。とだけ言っておくぜ、ドクター」

 

 隣で突っ伏したまま寝ているドクターにそんな声は届くわけもなく、少し肌寒い秋の空に俺の声は消えていった。




感想、評価よろしくお願いします。
現在のピックと交換に我らがホシグマの姉御が来て居ますが、交換できるほど資格証の数がなくて泣いてます。引くしかねぇかぁ……

オペレーター視点も書いた方がいい?

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