今回はアンケート結果によりオペレーター視点もとい出会ってくっ付くまでの流れでを書きました。遅れたのはすまない、息抜きで少しずつ書いてるから遅くなるんや……。
「彼との馴れ初め……ですか?」
「ああ。そう言えば聞いたことがなかったからな」
世界が鉱石病の治療法を確立させ、今もなおテラの大地の人々のために日々移動を続けるロドス・アイランド。
その食堂の角で、私は上司であり良き友人のチェン・フェイゼに何気ない質問を投げかけられていた。
「まぁ、話す機会もなかったですし仕方なかったでしょう」
「あの酒にしか興味を示さず、男女問わず振ってきたお前がなぜ恋人を作り、なぜ彼を選んだのか……教えてくれてもいいだろう?」
「そうですね……では、今度の飲みが隊長の奢りになれば話しましょう」
「お前、それは私の財布をからにする気だろう?」
「そんなまさか。彼にも飲みすぎるなと最近叱られたばかりですし、そんなことはしませんよ」
「……案外、良いストッパーになりそうだ」
隊長が私をどう思っているのかは定かではないが、おそらく今はよからぬことを考えているだろう。
僅かに皿の上に残ったモノを食べ終えると、食器を片付けるついでに飲み物を水を入れたコップを二つ持ち隊長の元へと向かう。
「……これは?」
「馴れ初めを聞きたいのでしょう? おそらく長話になりそうなので、あらかじめ飲み物でもと思いまして」
「ホシグマ──さては私に奢らせたいだけだな?」
「さて、どうでしょう?」
「はぁ……まぁいい、話してくれ」
何かを諦めた様にため息を吐くと、僅かに水を含む。
私も話し込むうちに喉が渇かない様にと水を流し込み、喉を潤す。
「さて、まずはどこから話しましょうか」
彼との思い出はどれも大切で、どれも鮮明に覚えている。
毎日が輝いていて、無駄な日なんて一日もない。
馴れ初めを聞きたいと言っていたし、本当に初めて彼と会った時から話す事にしよう。
まぁ、今日一日で話切れるとは思っていない。隊長には悪いが明日も付き合ってもらう事になりそうだ。
****
初めて彼と出会ったのはまだ私が龍門の近衛局に配属されて間もなくの事。
極東から龍門へと移り住んだばかりでどの店がうまい酒を飲めるのかなんて知らない当時の私は、取り敢えず目についた居酒屋にへと足を運んだ。
ガラガラと音を立てながらドアが開き、ふわりと焼き魚のいい香りが鼻を刺激した。
暖簾を潜り店の中へと足を踏み入れると、私と同い年かそれよりもすこし年下に見える男が私を出迎えた。
「いらっしゃいませ、お一人ですか?」
「はい、一人です」
「ではこちらへ」
服装をら見る限りこの店の店員で間違いない。
男に案内されるがままにカウンターの席へと着き、渡されたメニューを開く。
しばらく何にするかを悩んでいると、小さな小鉢に漬物が入っているものが目の前に出される。
差し出してきた人物を見ると、先ほど出迎えてくれた彼だった。
「こちらお通しです」
「ああ、ありがとうございます。──そうだ、このお店のオススメはありますか?」
「オススメですか? ……個人的にはこの極東から卸したお酒は美味しかったですね。癖もないしスッキリした味わいがあります」
「なら、これを一つ。それとこの鮭の塩焼きを一つ」
「かしこまりました」
メモをとって厨房の方へ消えて行く後ろ姿を見送ると、小鉢の中の漬物を一つ摘み口の中へ放り込む。
ポリポリと小気味良い音を立てながら程よい塩味とほのかな辛味が舌を刺激する。
これは、思ったよりあたりの店かもしれない。
そんな事を考えていると、ドカッと大雑把に隣の席に誰かが座ってきた。
視線を移すとほのかに顔を赤くした中年の男性がこちらを見ていた。
ひゃっくりをしている辺り、酔っているのだろう。
「ねぇちゃん、ここじゃ見ない顔だな……ヒック……越してきたばかりかい?」
「ええ、極東から最近」
「ほぉ、極東とはまた珍しい。どうだいねぇちゃん、俺達と飲まないかい?」
俺達と聞き後ろを振り向くと、もう二、三人の男達が手をあげてこっちに来いと言わんばかりに手を振っていた。
誰かと酒を飲むのは嫌いではないが今日は一人で飲みたい気分であって、他人に邪魔されたくはない。
しかし、横の男は依然として私の隣から離れる事はなく挙句の果てには私の胸や尻といった部分を舐め回す様な目でこちらを見てきた。
しばらくその視線を無視していると、私が視線に気づいていると知ってかしらずか男は私に手を伸ばしてきた。
あまりな不快さに立ちあがろうとした瞬間、男の上に金属のトレイが振り下ろされた。
「痛ってえなぁ! なんだよ!」
「貴方また女の人に手を出そうとしでしょ? 今月で何回目だと思ってるんですか? 貴方達のそれのせいで女性の新規客の人がなんにん遠のいて行ったか分かります? そっちの人も、嫌そうな顔してるの分かんないですか?」
「い、いいじゃねぇかよ。少しぐらい」
「いいも何もないでしょう? ワイワイ飲む人もいますけど一人で飲むのが好きな人だって居るんですから。ほらほら、さっさと自分の席に戻ってください」
「ちっ、仕方ねぇ……」
男は彼に丸め込まれると飲んでいた酒を持ってとぼとぼと元いたテーブルに戻って行った。
それを見届けると、目の前に鮭の塩焼きと彼オススメの酒が並んだ。極東の酒はこう言ったものに合わないはずがない。地元の酒ではあるものの、場所が違えば少しは味も変わるかもしれない。
「ありがとうございます」
「いえいえ、こっちこそスミマセン。もし不快であれば出て行ってもらっても構いません、もちろんお代はいただきません。まだ飲んでも食べても居ないですし」
「いえ、大丈夫ですよ。この店の雰囲気は好きですから」
「そう言っていただけると幸いです。それではごゆっくり」
先のお礼がてらに彼と二言三言会話を交わすと、彼は去り際に新しい漬物が添えられた小鉢を空になった小鉢と取り替えてまた忙しなく店内を動き始めた。
それからしばらく一人で酒とつまみを堪能していると、気づけば人はまばらになっていた。
そして何度目かの酒の注文をすると僅か数時間で何度も会話を交わした彼が酒を持ってきた。
「お客さん、お酒強いですね。鬼ってやっぱお酒に強いんですか?」
「そうですね……周りの鬼が少ないので誰もが強いとは言い切れませんが」
「へぇ……」
また少しばかり言葉を交わしていると、厨房の奥から少し強面の老人が顔を出して彼に語りかけていた。
「おい、もう上がっていいぞ。それと賄い食ってけ」
「はい! ありがとうございます!」
「おや? バイトの人でしたか?」
「ゆくゆくはしっかりとした店員になりたいとは思ってますけど、今はバイトですね」
「なるほど……どうです? これから一杯」
空になったおちょこをスッと彼に見せる様にして促すと、彼は少し渋そうな顔をして答えた。
「すみません、お酒は得意ではなくて」
「そうでしたか、それは残念。まぁ、無理強いはしません。でも、少し話し相手にはなって貰えますか?」
「それくらいならお安いご用です」
その日は少しだけいつもより美味い酒が飲めた気がした。
****
それから彼とはバイト終わりに話すようになり、気づけばプライベートな時間でも話す様になっていた。
さらには少しだが彼も酒を飲む様になり、互いの家で晩酌くる程度には仲が深まっていた。
そんなある日の事。
見回りをするために街へと繰り出し、ビル街を歩いていると反対側の道に見慣れた顔があった。
「彼か。この時間に見るのは珍しい……な……」
その光景に、私は目を疑った。
彼と彼の隣で親しげに微笑む女性が居た。
しかも、彼自身も親しげに話していて私と話している時よりもよく笑っていた。
なぜだか、心がモヤモヤした。
そのモヤモヤは仕事中でも、仕事が終わってもとれる事なくその日はずっとモヤモヤし続けていた。
私はこの気持ちの名前を知っている。
でも、それを口に出してしまえば抑えが効かなくなる気がした。
ふと、彼からメールが届いた。
『今日いい酒が手に入ったんだ。一緒に飲まない?』
そんな、いつもと変わらないようなメールに私は一喜一憂する。
昔は特に悩む事なく送っていた筈のメールも、彼とのやりとりはどうも考えてしまう。
結局『わかった』とだけ返信し、彼の家へと足を向けた。
彼の家に着くと、女性ものの靴があると言うわけでもなくいつもの場所に彼がつまみを用意して座っていた。
「やっときた」
「遅くなってすまない」
「いいさ、ホシグマと飲む酒は上手いからね」
「ははっ、嬉しい事をいつまでくれる」
彼を目の前にして普通に会話をしているだけなのに、モヤモヤは治るどころか少しずつその気持ちを大きくさせて行く。
彼の今浮かべている笑顔は本当に心の底から笑えているのだろうか。そう考え始めると、止まらなくなり気づけば彼をベットに押し倒していた。
「ホシ……グマ?」
「今日、見回りで貴方を見かけた時隣に女性を連れていたのを見たんだ」
「え? あぁ、カヨの事?」
「カヨ……そうか、随分と親しげだったな」
「まぁ、付き合いは長いしね」
その言葉にベットを握る力が強まるのを感じる。
自分でも力の抑えが効かなくなっているのは自覚している。だが、この気持ちをどうにかしなければ治るものも治らない。
「貴方がそのカヨさんと親しげに話していた時……心が痛くなったんだ」
「心が……痛い?」
「……私自身、なんで貴方の事になるとこんなにも胸が苦しくなるのか分からない。でも、一つだけわかるのはあの時私は確かに嫉妬したんだと思う」
「嫉妬? ホシグマが?」
「私も女だ。親しい異性が他の異性と話してるとこうなるものだろう?」
違う、この気持ちは普通の親しい異性間で持ち得るはずがない感情だ。
そう、この嫉妬は醜い嫉妬だ。
他の異性と親しげに話していただけなのに、彼がどこか遠くに行ってしまいそうで……二度と会えなくなってしまいそうで。
「どうなんだろう、僕は異性との付き合いがあんまりないからさ。正直どうだかわからない。でも、ホシグマが嫉妬したって言った時……少し嬉しかったんだ」
「嬉しかった?」
「恥ずかしい話、君をただの飲み友達じゃなくて一人の異性として見てしまってるんだ。君の声も、髪も、角も、その全てが愛おしくて……どうしようもなく好きなんだと思う」
「っ!」
彼の手が頬に触れる。
恥ずかしい筈なのに、彼の手を振り払う力がある筈のに、私はそれをする事なく彼のなすがままになっていた。
嗚呼、きっと私も彼のことが──
「ホシグマ?」
「……今から犯す」
「うぇ!? なんで!?」
「私に愛を囁いておきながら、まさか受け入れない訳ではないだろう?」
「いや、嬉しいし受け入れるけど……ホシグマはいいの?」
「どうやら、私がどれだけ貴方を思っているのかを教える必要がありそうだ。もし目が覚めたらそうだな──ダーリンとでも呼ぶ様にしようか」
「それはちょっと……まぁ、いいか。──おいで、ホシグマ」
彼が大きく手を広げる。
もう、この場で私を止められるものは居ない。
彼も、私を拒む事はない。
人生で初めてのキスをした。
彼も初めてだと頬を赤く初め、耐えきれず二度目のキスをする。今度は長く、味わう様に……。
その後、二人で甘い夜を過ごしたのは言うまでもないだろう。
****
「とまぁ、こんな感じでしょうか」
残り僅かになった水を煽りゆっくりとテーブルに置く。
「なんというか……お前は恋人を襲ってばかりだな」
「人聞きの悪い事を言わないでもらいたいですね。私は彼だからこそ自分を曝け出してるんですよ」
「何もかも曝け出しすぎだ馬鹿者」
呆れた様に大きなため息をつく隊長はどこか嬉しそうにしている。
「だがまぁ……幸せそうで何よりだ」
「そう言ってもらえるとありがたいですね」
「そういえば、結局そのカヨは何者だったんだ?」
「本人曰く妹らしいです。実際に会ってみるとどことなく雰囲気が似ていたので嘘ではないと思います」
彼の妹に挨拶した後、彼との出会いを根掘り葉掘り聞かれたのは言うまでもないがその時の彼のあたふたする様子は今でも笑えてくる。
ふと、ポケットに入れていた端末が揺れる。
端末を開くと、彼からの電話が掛かって来ていた。
「電話をしているのか?」
「ええ、こうして離れている時はよく」
「まったく……恋愛にうつつを抜かし過ぎるなよ」
「ご忠告ありがとうございます」
気を遣ってくれたのかその場から立ち去って行く隊長の背中を見送る。
私も部屋に戻ったら彼が拗ねてしまう前に電話をしなければいけない。
「本当に、小官は幸せ者ですね……」
今日は彼と何を話そうか。
そんな事を考えながら、自室までの帰路についた。
気付いたら五千字も書いてたぜ……やっぱホシグマの姉御はいいですね。(まだ弊ロドスには居ない模様)次回のEx2.はもちろんあのツンデレ隊長です。まぁ次回以降は一般市民視点とオペレーター視点を交互に出していけたらなと思ってます。
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