インフィニット・オルフェンズ 鉄の華   作:狼ルプス

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出発

クランク・ゼントの決闘から数日、CGS改め鉄華団はクーデリアからの仕事を果たす為、準備を行なっていた。

 

その間一夏、三日月、クーデリア、フミタン、ビスケットはビスケットの祖母のトウモロコシ畑に収穫の手伝いに来ていた。

 

そこでアトラとクッキー、クラッカに、その祖母である桜・プレッツェルが合流。

 

トウモロコシの収穫を行なっていた。

 

「桜さん、これはここに置けばいいですか?」

 

「ああ、構わないよ。しかしこんな作業を時間がある時に手伝いに来るなんて。アンタ変わってるね」

 

桜のその質問に、一夏は少し考えてから答える。

 

「……こう言う機会があんまり無かったんですよよ。それに、体動かすのは好きですし、誰かの為に力になれるならお安い御用ですよ?」

 

「お人好しなこった。でも、こんな買い叩かれるモノの収穫の手伝いより有意義な事は無いのかい?」

 

「俺からしてみれば充分有意義なんですよ」

 

現在の桜も、ビスケットの給料の一部の仕送りが無いと厳しい生活を強いられる。これは何も、桜婆に限った事では無い。火星に住む者達の大半が、桜と同じかそれ以下の境遇にある。

 

「(この世界も情勢も、ある意味俺の世界と似たようなもの…規模はこっちが遥かに上回るけど)」

 

一夏の世界ではISにより女尊男卑の風潮が広がり、ISを使えるから偉いだの、選ばれし存在だのの理由で無実の罪で極刑に処されたり、生まれてきた男の子の子供達が捨てられたり、男性が虐げられる社会となった。しまいにはには男の子の臓器も売られたりやら奴隷のように扱われる国も普通にあった。

 

「(俺の世界にも、クーデリアさんみたいな人がいたら…少しは違っていたのか…)」

 

一夏は首にさげている物を取り出して見つめる。

 

「(千冬姉、束さん…俺はもう後戻りができないところまで来てしまった。束さんも…こんな気持ちだったのかな)」

 

このお守りは束が作ってくれた物で、一夏が元いた世界で過ごした唯一の所持品だ。

 

一夏がそんな事を思っていた時。

 

キキィー、と言うブレーキの音がした。

 

「何だ……って、嘘だろオイ!!」

 

一夏は、その音がした方向に走り出す。その後で、桜も歩いてそちらに向かう。

 

そこには、急ブレーキをしたらしい車が一台。そしてその横で、横たわっているクッキー、クラッカ。

 

状況から推察するに、跳ねられたと思われる。

 

 

「お、おい…お前達、大丈夫か?」

 

車から、紫髪の男が2人の安否を確認しながら出て来る。しかし2人が倒れているのを見た三日月は紫髪の男に近寄り、その首を掴んで持ち上げる。

 

間違い無く、殺しにかかっている。

 

「ぐはッ……お前、何を……!?」

 

「「三日月、違う! 違うの三日月!!」」

 

双子姉妹が声を揃えて、三日月を静止する。

 

「そこまでだ、三日月。その人殺す気か?」

 

 

「いい加減にしないか、この慌て者」

 

一夏が三日月の腕、桜が三日月の頭をそれぞれ叩く。それ故か三日月の腕は紫髪の首を離れ解放する。紫髪の男性は咳き込みながら酸素を取り入れる。

 

「私達が飛び出しちゃって…」

 

「あの車がよけてくれたの」

 

「そうか。でもな2人とも、倒れ伏すのは悪ふざけが過ぎるぞ?危うく三日月があのお兄さんを殺すところだったんだぞ」

 

「「ごめんなさい…」」

 

「分かれば良い、それと…ほんとに何事もなくてよかった。次からは気をつけろよ?」

 

「「はーい!」」

 

一夏は2人の頭を撫でながら満足げにもう一度頷き、車に向き直る。その時、車からもう1人、金髪の男が出て来る。

 

 

「こちらも不注意だった、謝罪しよう」

 

「(っ!あの車の紋章…ギャラルホルン)」

 

助手席に乗っていた金髪の男性も降りてきて謝罪する。それと同時に、ビスケットはフミタンに言ってクーデリアを隠れさせる。

 

「ったく三日月、流石に轢かれたかもしれないとはいえ、直ぐに相手を殺そうとするのは悪い癖だぞ?先ずは2人の安否を確認するのが先だぞ?」

 

 

「ゴメン、一夏…」

 

「謝る相手が違うだろ。ほら、ちゃんと謝罪しないと」

 

一夏に言われ三日月はガエリオの前に行き、少し頭を下げてこう言う。

 

「あの…すいませんでした」

 

「何が『すいません』だ!!」

 

「よせ【ガエリオ】!」

 

金髪の男性の静止に構わず、ガエリオと呼ばれた紫髪の男性は拳を三日月に突き出す。

 

「ストップ、こちらにも非はあるとはいえ…流石に殴ることはないんじゃないですか?」

 

それを一夏は2人の間に入り片腕で容易く受け止める。一瞬にして間に入った一夏にガエリオは驚いていた。

 

「(こいつ、いつの間に⁉︎)っ!…オイ貴様ら、何だその背中の物は!」

 

 

「『阿頼耶織システム』…人の脊髄に埋め込むタイプの、有機デバイスシステムだったか。未だに使われている、と聞いたことはあったが」

 

金髪の男性は、一夏と三日月の背中を見て言う。それを聞いたガエリオはみるみると顔色を悪くする。

 

 

「身体に異物を埋め込むなんて…ウエェッ!」

 

ガエリオは口を押さえ、車の陰に隠れて行く。ビシャっと音が聞こえるが一夏は心配そうにガエリオの様子を見る。

 

「(大丈夫かあの人…当たり前すぎて忘れてたけど、やっぱり一般からすると生理的に受け付けないんだろうな…これ)」

 

一夏は今や日常と化している背中の阿頼耶識に触れながら改めて普通ではない事を認識される。

 

「怖い思いをさせてしまってすまなかったね。こんな物しかないが、お詫びのしるしに受け取ってもらえないだろうか」

 

と、金髪の男性はポケットからお菓子を取り出す。それを見た双子姉妹は、そのつぶらな瞳を輝かせる。

 

「ありがとう!」

 

「ございます!」

 

双子姉妹はお菓子を受け取り、桜の下へ元気良く走って行く。

 

「念の為、医者に診せるといい。何か有れば、ギャラルホルン火星支部まで連絡をくれたまえ。私の名は、【マクギリス・ファリド】だ。ああ、それと。この付近で最近、戦闘が有ったようなのだが…何か気付いた事はないか?」

 

「そう言えば2~3日前、ドンパチやってる音が聞こえてたような…」

 

「近くに民兵の組織が有りますから。そこの訓練か何かじゃないですか?詳しいことはわかりませんけど」

 

ビスケットと一夏はマクギリスの質問に答える。

 

「…成る程。協力、感謝する」

 

すると、マクギリスは三日月と一夏を見てこう言う。

 

「君、さっきは見事な動きだった。そちらの君も何かトレーニングを?」

 

 

「うん。まあ、色々」

 

「俺は剣道を少し…」

 

「(剣道?何故彼が日本の武芸の名を…)そうか。…良い戦士になるな」

 

マクギリスは一夏の口から出た武芸の名前に少し驚き、ガエリオの肩を叩いてから車に乗り込み、そのまま車を走らせて行った。

 

 

 

 

 

 

 

「登録名称は、これで良いんですね?」

 

火星共同宇宙港「方舟」。そこで、デクスターは昭弘に確認を取る。

 

「ああ、団長の命名だ。CGS時代の名前は嫌なんだと」

 

「分かりました。では、これで登録します。『ウィル・オー・ザ・ウィスプ』改め、『イサリビ』と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三日月、交代の時間だ」

 

「わかった」

 

「異常は今の所なさそうか?」

 

「うん」

 

「そうか、後これ…軽く作ってきたけど食べるか?」

 

「うん、食べる。ありがとう一夏、後はよろしくね」

 

「おう、冷めないうちに食べとけよ」

 

一夏は軽く作った軽食を三日月に渡し、受け取った三日月は持ち場から離れていく。

 

一夏は見張りを始め双眼鏡を使いながら辺りを見渡す。

 

 

 

「こんな状況じゃなかったら、星を眺めてたんだけどな……ハズレ」

 

今の空は満天の星空が広がっており、こんな状況でなければ寛ぎながら眺めたいと思う一夏は火星ヤシを一つ食べる。気を抜かず見張りを続ける。

 

 

 

 

 

「一夏?」

 

「?」

 

声のした方を向くとそこにはクーデリアの姿があった。

 

「なんでクーデリアさんがここに?」

 

「眠れなかったので少し夜風に当たっていたら灯りを見つけたので、いつも一夏が見張りを?」

 

「いや、交代でやってる。今はギャラルホルンがいつくるか分からない状況ですし、後これ使ってください。寒いでしょ?」

 

一夏は寒そうにしてるクーデリアに説明しながら防寒着を渡す。

 

「あ、ありがとう」

 

「明日の事が心配ですか?」

 

「……はい」

 

「安心しろ、とはハッキリは言えませんけど、俺はクーデリアさんを必ず地球にまで連れていくと約束する」

 

「はい。私も……私の戦いを頑張ります。それと一つよろしいですか?」

 

「?」

 

「私に対して敬語は大丈夫です。いつも通りに話してもらっても構いません」

 

「いいのか?」

 

「はい、もちろん。それと名前も呼び捨てでも構いませんよ」

 

「……わかった。そうさせてもらうよ。後、あんまり此処にいると風邪を引くから、部屋に戻った方がいいぞ?」

 

「そうですね。一夏も風邪を引かないように」

 

「ああ、明日も早いし、しっかり睡眠は取るように」

 

「ふふっ、そうさせてもらいます。おやすみなさい」

 

「ああ、おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 

火星出発日の朝、朝食を食べているとアトラが荷物を持ってやってきた。

 

「わ、私を!炊事係として鉄華団で雇ってください!おかみさんには事情を説明してお店をやめさせてもらいました!」

 

アトラは緊張した様子でここに来た理由を話す。どうやら鉄華団に入団させて欲しいらしい。

 

「良いんじゃないか?なあミカ、一夏?」

 

「アトラのご飯は美味しいからね」

 

「俺も賛成だ。炊事担当の人材が欲しかったところだし、このままいけば俺が炊事を担当しなくちゃいけなかったしな…」

 

オルガはにやけながら三日月に聞き、三日月は淡々と答え、一夏は大歓迎だった。

 

「あ、ありがとうございます!一生懸命頑張ります!」

 

アトラは勢いよく頭を下げる。

 

「よしお前ら!地球行きは鉄華団最初の大仕事だ!気を引き締めて行くぞぉ!」

 

「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!」」」」

 

オルガの一声で仲間は声を上げる。

 

「たく、浮かれやがって。俺達はギャラルホルンを敵に回してんだぞ?」

 

「そう言う割には嬉しそうだなユージン?」

 

「どこを見てそう思ってんだ一夏?それとなんだその顔は!」

 

「あれ?言ってなかったっけ?」

 

「言ってないわ!!後その顔やめろ!なんか腹立つ!」

 

一夏がユージンをからかっていると、三日月が何が手に持って一夏の元にくる。

 

「ん、どうした三日月?」

 

「これ、俺と一夏にって桜ちゃんがアトラに渡したみたい」

 

「桜さんから?」

 

三日月は手に持った二つの袋の内一つを一夏に渡す。中身を見ると俺と三日月がよく食べている物だった。

 

「火星ヤシ!良かった、丁度切れていた所だったんだ。ありがとう三日月」

 

一夏は受け取った火星ヤシが入った袋を懐に入れる。朝食を食べ終えた後、鉄華団は地球へ行くためクリュセ共同宇宙港へ向かった。

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