Machinery Gear Armies 作:ナイン(あかいろのすがた)
正面から蜘蛛の巣のように張り巡らされるレーザーを3次元的な動きで回避しながら敵拠点へと近づく。コックピット内に重力がかかり圧迫感を感じるが、動きを止めるわけにはいかない。
ほんの1秒前まで自身がいた場所にはビームが放たれており、射撃の精度は中々のものだ。ついでのように飛んでくるミサイルもうっとうしい。ライフルで迎撃するが、そろそろエネルギー切れになってしまうだろう。
腰のベルトにライフルを納め、エネルギーを充填する。その間はビームとミサイル両方を回避しなければならない。前進しながらの回避ではなく、生存に専念し体制を整える。
右にステップ、ブーストを使い前進、その場でブレーキをかけしゃがむ、勢いよく飛び上がり体操選手のごとく1回転。1つ目のミサイルを掴み2つ目に投げつける。続いて来る他のミサイルは横方向へのブーストで振り切る。
ようやくリロードが終わったライフルを構え直し、再び前進する。ミサイルを遠距離から潰せるなら多少の余裕が生まれるし、残弾だって無限ではないのだ。今のペースで打ち続けていれば弾切れになる可能性もなくはない。
「まだ終わらないのか!?」
だが敵の抵抗が緩む気配はない。敵拠点との距離が近づけば当然敵の弾幕の着弾も早くなるため、これ以上無傷で近づくのは不可能だ。
「やるしかない、か」
5分ほど距離をとり耐えていたが、味方の増援が来る気配も敵が弾切れになる気配もないままだった。それどころかブースト用のエネルギーが2割を切ってしまい、ジリ貧での敗北が見えてきている。
敵拠点までの距離は200メートル程度。その間に展開されている弾幕を突破することは恐らく可能だ。しかし途中で足をやられてしまえば今の機体ではほとんど動くことはできない。それでは拠点に突入した意味は0だ。
つまり、敵拠点の破壊に支障のない部分のみの破損に留めつつこの弾幕を乗り越える。腕1本くらいが損傷の限度であり、そこまでの条件をクリアできるかは少年にも分からない。
それでも、拠点まで侵入できれば少年の勝ちはほぼ確定だ。今までの攻撃を見る限り防衛設備の内容は敵味方で同じ。なら拠点の内側には防衛設備はほとんど存在していない。
「いつも通り、やるだけだ」
イベントの勝敗を決めるかもしれない局面だが、少年から緊張は消えていた。機体のどこを狙わせるか、どの部分を切り捨てるかの判断はチュートリアルで文字通り死ぬほど練習した行為だからだ。
それができなければ自爆での実質的な相討ちなど行えず、あの怪物には拘束を外されて負けだっただろう。あの時の緊張感に比べれば、今の状況ですらぬるま湯に使っているくらいのものだ。
機体の燃料であるヒカリ粒子の残量が心もとないと、いよいよ機体からも警告を発せられた。撤退を推奨する音声に逆らい、敵拠点へ最後の突撃を仕掛ける。
ビームやミサイルが放たれてから避けるのはこの距離では無理だ。あらかじめ射線を予測し、その通りに放たれるよう誘導してから回避行動をとる。
磁石の反発がごとく逸れていく攻撃を横目にビームを放つ。壁の防衛施設のうち対空用のものが潰れたのを確認し間をおかず飛び上がる。
左右から壊せていない対空砲の射撃、下からも追撃が飛んでくるが正面だけはがら空きだ。先程攻撃した地点に向かって加速する。
「────っ!」
弾幕の密度が濃すぎる。助走や重心の移動による性能の限界を超えた加速を持ってしても回避することができないだろう。ここが傷の負いどころと判断し横っ腹に一発。エネルギー炉近くに損害が出たことによりアラートが鳴る。
しかし少年の完璧なダメージコントロールにより機体の運用に問題はない。パーツをばらまきながら壁の上を超えた。射角的にもう防衛装置の攻撃は届かない。
「なんとか、勝ったか……」
大きく息を吐く。周囲に敵陣営のメカニックらしき人々が騒いでいるのが見えるが、もう気にする必要はない。機体の状態を確認しつつ中央へ向かう。
途中で気づいたが、どうやら左手も被弾していたらしい。装甲の一部に穴が空いている。状況把握をより洗練しなければしなければと反省しているうちに到着した。
自身の拠点にも存在した兵器、ALL FOR ONEだ。多少カラーリングが違うが、他に変化点は見あたらない。ならば、この兵器の構造も同じだろう。
上空に留まりながらライフルを構える。上部分の比較的装甲が薄い位置から根本の制御用パーツを撃ち抜いた。
周囲から何かが軋むような音が響き、その一瞬後に停電する。一応身構えているがそれが無駄になるメッセージがデバイスには表示された。
YOUR TEAM WIN!!
CONGRATULATIONS!!!
システムによる勝利宣言が成された。文句なしに、少年達のチームの勝利である。
コックピットの中で、彼は一つ伸びをした。