Machinery Gear Armies   作:ナイン(あかいろのすがた)

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チュートリアルと大苦戦。その4。

 

挑戦開始から24日目。

 

まずは纏めておいた攻略情報を復習する。

 

ビルを崩し行う即興の煙幕。実はあの行動には1つの謎があった。奴に奇襲を仕掛けられる直前、謎の攻撃が下から襲ってくるのだ。

 

レーダーによる反応は正面の一機のみであり、爆発も起きていないためグレネードは使われていない。この攻撃の正体は不明だったのだが、昨日ようやくその謎は解けた。

 

リボルバーによる跳弾。地面から反射してくる弾丸こそ下からの攻撃の真実であり、奴を倒すチャンスだ。

 

発光状態となった敵機は所持しているすらも強化される。しかし対象となるのはエネルギー武装のみであり、実弾武器であるリボルバーの性能はそのままだ。

 

つまり弾丸さえ避ければ奇襲のタイミングが分かる。視界不良の中跳弾を当てられる怪物的な射撃能力が、自分の首を締めることになるのだ。

 

そこだけが決着をつける最後のチャンスになる。

 

 

「来たか」

 

 

復習の時間が終わる。一ヶ月近く続いた黒き巨人との戦いの集大成をここで発揮しきる。

 

まずはライフルを発射。牽制に過ぎないこれの着弾など確認せずすぐさまリボルバーも発砲した。わずかに角度をつけ放たれた弾丸が、こちらと同じくライフルを放ったばかりの敵MGAに飛来する。

 

当然奴は前に踏み出し弾丸を回避。あえてリボルバーを使わず、遮蔽物に隠れこちらとの距離を詰めてくる。だが途中で思い出したようにコックピットへライフルを放ってくる。

 

本来不規則で読みづらいはずのタイミング。しかし彼には何百という敗北の経験があり、その中には今回の射撃への対処方法も存在していた。

 

ゆえに今しがた撃たれたビームが奴の左肩に命中したのも偶然ではない。いつかの挑戦の仕返しの意味も含めた攻撃は息が漏れるほど完璧だ。

 

崩れた重心を戻すためにうつ伏せになって隠れようとする奴の動きは、今となっては遅くさえ見える。既にこちらが加速していること気づいた奴はライフルを発砲しようとする。

 

その行動を行ってもらうことこそが目的だと気づかずに。

 

機体ではなく、構えられたライフルの先端をブレードで切り落とす。そのまま刃を進ませ中心までを真っ二つにし、右腕で格闘のフェイントを見せる。

 

誘いに乗らず下がろうとする判断の速さは流石だが、こちらの方が事前に加速してきている以上まだこちらの速度が相手を上回っている。胴体に右足裏でキックを叩き込んだ。

 

派手に吹っ飛んだ敵機の顔面にリボルバーを叩き込む。ベルトからの着脱を繰り返しながら使う動きは滑らかで無駄が存在しない。

 

これで約3割まで体力を削った頃だ。発光しだす前に距離を取りビル崩し煙幕を誘発させる。決着が近づいているのを理解し、緊張感で背筋が冷える。

 

それでも操作に歪みは出ない。間合いは完璧に調整した。エネルギー武装は右腕のブレードを除き破壊した。最後の準備として銃器をベルトに収める。

 

 

 

前方で、赤き怪物が誕生した。

 

 

 

何の躊躇いも感じさせない動きで敵機はビルを崩す。瓦礫が少年の機体に降り注ぎ、視界は爆風に包まれる。上に飛び上がりブーストで空中で待機。これで作戦通りの状況だ。

 

集中力を限界まで高める。瓦礫の落下する音の中から銃声を聞き分ける。一瞬しかないチャンスを得るために全ての力を集める。

 

少しだけ、本当に少しだけ、彼は機体を前進させた。

 

背中の真後ろを下から来た弾丸が通り過ぎていく。確認するまでもなくそれを理解した少年は、奴に止めを刺すべく両腕を突き出した。

 

さて、ここで以前彼が出した結論を思い返してみよう。

 

勝つことは不可能。基礎スペックが足りない。それが彼の出した答え。これは実は今も変わっていない。

 

ということは、結局今回の戦いも敗北に終わるかと言われればそんなことはない。1つだけ、奴を倒す方法は用意されている。

 

話を戻す。既に目の前に怪物は現れている。伸ばされた腕に気づき、腕が引っかからないよう腹部にブレードを差し込む。エネルギー炉ど真ん中を貫かれた彼の機体は後数秒で自爆するだろう。

 

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今に消え去る機体の背中から何かが飛び出す。いや何かではない、脱出装置により射出されたコックピットだ。爆風の中に消えている鉄の箱を追撃するために敵MGAは機体を押しのけようとした。

 

 

 

一体どうやって?

 

 

 

左腕は最初の攻防で吹き飛ばされた。

 

リボルバーは最速で奇襲を仕掛けるため捨ててしまった。

 

右腕は腹部に刺さったままだ。どちらか一方に振り抜いても中心に刺さったブレードでは上半身と下半身を切り離せない。引き抜いてから突き飛ばすのでは間に合わない。

 

足も使えない。機体の限界以上、吸収しきれないほどの衝撃を受ける加速を制御するためには、強化されたブースターによって反動を抑える必要がある。

 

その足を今動かしてしまえば姿勢が崩れ機体を蹴るどころではなくなってしまう。

 

ならばどうする。どうやってこの状況を打開する。

 

怪物は考え、思案し、思考し、考慮し、計算し、再び考え。

 

 

 

機体の爆発に巻き込まれスクラップとなった。

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、機体が壊されてもパイロットが生きてれば勝ちなんだな」

 

壊された機体も回収できると聞いて立てた1つの仮説。それはどうやら当たりだったようだ。

 

取り外されたコックピットから1人の少年が這い出る。目の前には2つの廃材となったMGAが存在しており、どちらも動く様子はない。赤い粒子の噴出は止まり、両方の機体のあちこちに集まるように降り掛かっていた。

 

すると手元にウィンドウが現れた。いつもは敗北を告げる内容が刻まれた画面には、初めて見る文章が記載されている。

 

 

 

     CONGRATULATIONS!!

  貴方は全てのチュートリアルをクリアしました!!

      本当におめでとうございます!!

 

 

 

お祝いメッセージと言うべきそれには、アイテムとしての価値はなく、人によっては無駄なものに感じるだろう。だが勝ちたいという純粋な気持ちから苦行とすら感じられる戦いに身を投じた少年にとって、行動自体を褒める言葉は最高の報酬となる。

 

 

 

挑戦開始から24日目。挑戦回数648回。

 

彼はついにチュートリアルを攻略した。

 

 

 

 

 

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