推しの子と元刑事【本編完結】   作:足洗

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後の祭

 

 

 

「こんめむー! MEMちょだよー。今週も始まりましたMEMちょらいぶ! ふらっと覗きに来てくれた通りすがりさんもすっかり入り浸っちゃってるいつメンもゆるーく楽しんでっちゃえヨ! というわけで秋です! ってかもう冬です! 万年冷え性なMEMちょには辛い時期になって参った参った。おい今更年期ってコメしたやつ名前覚えたからな」

 

 w

 草

 恐ろしく速いBBAいじり、俺は見逃しちゃったね

 高速コメ欄からそれを拾う執念草

 またMEMちょ殿がおこでらっしゃる

 でもブロックはしない優しいMEMおばしゅき

 無理すんなBBA!

 今日も可愛いぞババア!

 血の巡りが悪くなるお年頃だから

 MEMさんじゅうななさいです

 オイオイ

 おいおい

 白湯飲め白湯

 BBAのことMEMって言うのやめろよ可哀想だろ

 

「ぶちのめすぞこのすっとこどっこい共」

 

 ぶちのめすぞいただきました

 これを聞きに来た

 大草原

 口悪w

 ありがとうございます!

 ぶひぃぃぃぃぃぃ

 今日もMEMちょの◯意が患部にすーっと

 BBAいじりからしか摂取出来ない栄養素、あると思います

 最近マシラじっじの口調移ってるね

 べらんめぇMEMちょ

 じじいとばばあは仲良し

 老夫婦

 

「やめろ。いやマジやめて。そういう安易なCP発言は私の寿命を縮めるから。物理的な方の。ルビー見てないよね? 見てる? あ、見てらっしゃる? 私は不純異性交遊とかどうかと思います!」

 

 いえええええいルビーちゃん見てるううううう!?!?

 ルビー?

 ルビー見てるの?

 今ガチ新メンバーきちゃ

 アクアの妹さん

 トナカイコスもこもこで可愛かった

 えっちなサンタコスも見たかったです(血涙)

 不知火フリルとコンビ芸おもしろかった

 美人さん

 顔良すぎて画面眩しかったわ

 ルビーちゃん!

 MEMちょ早口で草

 おびえまくってる

 ユニットのパワーバランス見えたな

 ルビーちゃんジェラってるの?

 マシルビですって!?

 ルビーちゃんマシラのこと好きすぎだろw

 そういう決め付けやめろ

 ルビーちゃんは周りが引くレベルのお兄ちゃん子だぞ

 馬鹿野郎時代はマシアクだ

 アクマシ派の私に喧嘩を売ったな

 リバじゃいかんのか?

 ホモォ……

 コメ欄から腐臭がしてきたぞ

 クロリバ先生ゲストで呼ぼう

 クロリバ先生ー!早く来てくれー!

 今ガチにまさかその道のガチ勢が紛れていたとは

 内輪ネタばっかだな

 今ガチ見てないしわからん

 MEMちょの配信見てて今ガチ見てない奴とかいるんだ

 黒川あかねは腐女……おっと誰か来たようだ

 え?……え?

 ホ◯が嫌いな女の子なんていません!

 

「こらこらこらーコメ欄自重してくださーい。本人は否定してないけどまだ公的な場でカミングアウトまではしてないから! 決め付けいくない! でも私も身内の生モノをウス異本にして頒布するのはちょっとどうかなーって」

 

 即行で裏切ってて草

 その魔導書はどこで買えますか!!?

 即売会

 甜瓜かタイガーホール。でもほとんど売り切れ

 電子版はないから現地に行くんだ

 

「人のチャンネルで人の友達の同人誌を宣伝すな」

 

 ネタに事欠かない番組だよ

 今ガチやべぇな

 最新話が案の定カット祭だった

 旅館の放火犯も腐女子だったらしいね

 

「……あー、それ聞いちゃう? うん、まあ、そうみたい。これって公表されてたよね? あれ、どこまで喋っていいんだっけ……えーっと、待って一応警察の人に聞いてアンチョコ作っといたんだ……」

 

 歯切れ悪いw

 あ ん ち ょ こ

 あんちょことか十年ぶりに聞いたわ

 あんちょこってなに?

 ジェネレーションギャップ

 お母さんが使ってたわ

 うちは爺ちゃん

 やめろやめろMEMちょが傷付くだろ

 MEMちょの悲しそうな顔を見たら、その、下品なんですが、フフ

 てかガチの警察沙汰で草枯れる

 今ガチメンバーで捕まえたってマ?

 記事見て来た。笑ったわ

 今ガチの伝説がまた一ページ

 警察なにやってんだよ

 今もニュースやってるね

 居合わせた男子高校生二人って絶対これマシラとアクアだよね

 女子高生の説得に犯人が涙!?

 どういうことなの……

 

「わ、わ、わ、待って待ってみんないろいろ聞きたいだろうけどちょっと待って。あ、へんぺーたさんスパチャありがとうございます。SUARAさんありがとー! 『事情聴取とか受けたの』? うん受けましたよー。ちゃんと警察署まで行きましたよー。MEMは取調室3に入りました。まめさん赤スパありがとうござまっす。『事件当時の様子をなるべく詳しく知りたいです』? いやだからね、話せることにも限度があって……あ、ポインターさん、赤スパ。ど、どうもでーす。『MEMちょ警察署連行記念!臭い飯の食レポよろしくお願いします』? 連行じゃねーから! 日帰りだから! 飯食ってねーから! そもそもこっち被害者! ってかお前ら赤スパやめろ! ここぞとばかりに無駄金投げんなとーへんぼく共! 今説明するっつってんだろたわけ!」

 

 

 

 

 

 

 当然と言えば当然だが、先の夜の一件は結構な騒ぎになった。

 世代を問わぬ人気を博するネット番組に対する悪質な嫌がらせ、挙句の放火未遂。

 結果として、二つの意味での炎上を回避できたのは単なる幸運だろう。視聴者の興が、偶さか悪意に傾かなかった。それだけの。

 

「幸いと言うならそれこそ、子供らが無事なことかねぇ。現場に居なかったとはいえ犯罪に巻き込まれちまったんだ。内心でショックを受けてないといいんだが」

「俺が言うのもなんだけどあいつらそんな可愛いタマじゃないだろ。強いて言えば……あかねに有馬がドン引きしてたくらいだ。MEMちょに至っては自分の配信でサムネの煽り文句に使ってたぞ」

「逞しいなおい、どいつもこいつも」

 

 商売上手のメムちゃんは無論、ゆきはいざ知らず、ノブユキとケンゴなどももはや馴れたもの。

 

『だって、ね?』

『マッシーとアクたんだし』

『うん、世間の人達はさ、お前ら二人があたおかってことにちゃんと気付いてるから』

『心配要らないって。お前らがなにやらかしても多分俺らにはノーダメ。むしろ被害者扱いしてくれる』

 

 酷い言われようである。

 まあ反駁できる話でもないが。

 

「あかね坊の様子はどうだった?」

「聴取の時はわりと緊張してたけどな。最近はなんていうか、こう、溌溂としてる……ファンレターが増えたらしい。同好の士からだそうです……」

左様(さい)ですか……」

 

 あかねの趣味は……まあ個人の楽しみであるしそれにとやかく難癖を付けるのは野暮なんだろうが。

 まさか同じような好事家が世の中にここまで居ようとは。それも、こうまで広く、深く、無数に。

 己は間違いなく旧い人間だ。流行に疎く、現代の若者文化などは馴染みがない。沙汰の外である。いろんな意味で。

 ゆえ、戸惑いは一入だった。

 深夜と早朝の境。大都市の一区渋谷とはいえ人通りは極めて少ない。

 道路と駅前広場の一部を封鎖しても問題ない程度に、不夜の街は常にない静寂の中。

 異装の男が二人、肩を並べて佇んでいる。藍色の着流しを肩に掛けた己と、片や黒一色の忍び装束に角と牙を生やした鬼人。“刀鬼”に扮したアクア。

 時折、スタイリストが我々の装いや顔容を丁寧にチェックし、必要なら化粧道具で何度も何度も整えていく。執拗なまでに。

 

「アクア坊よ、CMってなぁこうぽんぽん決まるもんかい」

「んな訳あるか。企画自体はかなり前から動いてた筈だ。ただキャストに関しては……お前とあかねの所為だ、絶対。原作者先生のお気に入りだって自覚持てよ」

「そいつぁ光栄で涙が出そうだ」

「俺も、キャスティングの理由聞いて泣きそうだわ」

 

 東京ブレイドの実写CMに出演し、地上波にそれが放送され始めてからまだ二ヶ月と経っていない。

 続編の製作決定は早かった。アビコちゃんがそれに対して実に前のめりであったことも理由の一つだろうが、真偽定かならない原因も、一つ。

 

「BLってなぁなかなかどうして、業の深ぇ趣味だぁなぁ」

「東ブレも御多分に漏れずその手の需要がある。それは仕方ない。仕方ないことなんだ」

 

 アクアは重々しく、己自身に言い聞かせるが如く呟いた。

 登場人物同士の関係性に照らしてキャスティングが動くことは間々あるそうだ。気心が知れている、と観客から認識されている役者を起用しイメージを投影させる。わからなくはない。わからなくはない、のだが。

 

「ほら、見て見て。ひそひそ話してるよ。距離感近い、近くない?」

「わっ、やっぱりホントなのかな。あの二人ってそういう……!?」

「「キャーッ!」」

 

 遠巻きにこちらを見ていた女性スタッフ達が黄色い悲鳴を上げた。無論声を抑えてはいるが、如何せん静かな夜。否応なしにそれは我々の耳に届く。

 

「こういうのはあれだ。BL営業ってんだろ」

「どこで聞いた。そんな業界用語」

「アビコちゃんが教えてくれた。いや滅法嬉しそうだったぜ」

「原作者先生ェ……」

 

 事件が比較的平和に収束した反動というか代償にというか、己とアクア周りには珍妙な風評が出回ったらしい。

 

「ま、仕様があるめぇ。受けちまった仕事だ。精々客を喜ばせてやろうや。な? アクア坊」

 

 俺はアクアの肩に腕を回した。

 アクアは心底嫌そうに、カラーコンタクトを入れた蒼い瞳でこちらを睨め上げる。

 嬌声が先程より増えたような気がする。

 

「ほ、ほぉ……生モノもなかなか……」

 

 忙しい仕事の合間の僅かな時間を使ってわざわざ現場まで出張って来た原作者先生がなにやら不穏なことを独り言ちる。用意されたディレクターチェアに座り、娘はタブレットでせっせとなにやらスケッチしていた。

 趣味人は無敵だ。改めて、そんな感慨が湧いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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