悲鳴というには死に物狂いな大絶叫。仰け反ってそのままひっくり返りそうなメムちゃんの上体を左手で支える。右手は、娘が勢い宙に放り投げた支持棒とスマホを受け止めた。
「おいおい気を付けな。今時の携帯電話ってなぁ安かねぇだろう」
「どの口が!? 心臓飛び出るかと思ったよ!? マッシーはなに?? 私に会いに来る時は必ず驚かせるノルマでも自分に課してんの???」
「かっかっかっ、いやいや相すまんです。今後は少し加減しやしょう」
「当たり前だよ! まったくもう……あれ?」
釈然としない様子のメムちゃんを地面に下ろした。しかしスマホを差し出すと、娘は思い出したように慌てて捲し立てる。
「ちょっとトラブルが降ってきちゃったので一旦! 一旦配信切ります! みんなごめんね! ホントにごめん! あとで気合入れた謝罪動画も上げるから……マッシーの!!」
完全に隕石扱いで草
なんで人間が空から降ってくるんですか
終わった
配信終了www
え、終わり?
ゲストじゃないんかい
マシラくんガチの偶然?
うっそだろお前
いやいや流石に仕込み
マシラだしなぁ……
MEMちょガチギレやんけwww
完全に放送事故です本当にありがとうございました
そして二人は夜の街に消えた
こんなん匂わせやんけ!!!
臭わせ(獣臭)
臭わせ(サメ)
匂わせ(蜂の子)
全部生ぐせぇ
くっさ
シティーガール(笑)
このシティーガール自然の香りがします
大自然の匂い染み付いてむせる
む せ る
草
ガチで終わってて草
オフィスビルの路地。街路樹の傍でメムちゃんと改めて相対した。
人通りは相応だが諸般の事情により結構な人目を引いている。
「んで? 今まさに不本意なトレンド入りを果たしそうなMEMちょにマッシーはどんなご用なのかしらん」
もこもことして実に柔らかそうなアイボリーのニットワンピース姿で、いかにもつんけんとメムちゃんは言った。腕組みして敵対の意を示しつつ顎を目一杯に上げこちらを睥睨する。トレードマークの黒い角すら心なしか普段より鋭く突き出て見える。
己は両掌を合わせ、怒れる娘さんに平身して頭を垂れた。
「お怒りは御尤も。しかしそこを曲げて、どうか曲げて、その道の達人と見込んでメムちゃんにお願いしたき儀が御座る」
「うぅぅぅさんくさい! わざと? わざとなの?? もうそれわざとだよねマッシー?? ……内容によります」
「うむ、それもまた尤も。なれば仔細は発起人を交えて説明させてくんな」
「発起人って、どうせアクたんでしょー。まーたいつものコンビで悪巧みしちゃって」
「いやいや、それがな、此度はちょいとばかり事情が違うのよ」
残念な方向で理解が深まっていることを話が早いと喜ぶべきか。いや間違いなく恥じ入るべきなのだろうが。
「勿体付けても仕方がねぇんで白状するが、言い出しっぺはアイだ」
「へ? え? アイ? ……えっ、アイ? あ、あの、あのアイ? B小町の」
「そうだ」
「ふほひっっ!!?」
「待った待った。驚くのも喜ぶのも戸惑うのもとりあえず当人と合流してからだ。この上で待たせとる」
「…………そ、そうだね。うっ、う、うん、わかった。うわーどうしようどうしよういきなり過ぎるよ何気に初対面だよ!? 向こうが忙し過ぎて事務所で鉢合わせることもそうそうないし、こ、心の準備が……」
「かっかっ、そうしゃっちょこ張るこたぁねぇさ。お前さんだってもう立派な苺プロの一員じゃあねぇか。お仲間だよお仲間」
「うぅ畏れ多い発想……」
メムちゃんを伴い、路地の奥へ。人目につかない建物の陰が望ましい。
「お、この辺りなんかお誂え向きじゃねぇか。あの看板と室外機、良い足場になるぞぉ。なぁメムちゃん」
「ねぇマッシー。このお姫様抱っこの意味は?」
「登りはちっと揺れるからな。舌噛まねぇよう気を付けんだぜ」
「マッシー? ねぇなんで走り出したの。どこに向かってるの。ちょ、はやっ、速い速い速い速い!? マッシー!? ねぇマッシー!? マッ────ぴぃぃいいいいいやぁぁぁぁああああああああああ!?!?!?」
文字数的にもストーリー展開的にもかなり短いものを短期間に連続投稿するのと、まとまった文字数と何段階かの進展を経て投稿するのと、どっちが望ましいんでしょうか。