その眼は、ファインダーは、レンズは、何を捉える。 作:一途一
明日お休みします。早く四話を見せてくれ。AMAZON PRIMEでな!!!!
呑むか呑まれるか
あの闇の中、張り詰められた蜘蛛の巣に嵌っている自分がいる。
正しいものの判別はもうとっくのとうに付かなくなっていた。
大切に持っていたはずのものはいつの間にか捨てていて、
着いたはずの天国は地獄だった。
そのまま闇に眼が慣れそうになった時、手が差し伸べられた。
この手は、
◆◇◆◇
目が覚める。ふと、手が誰かに握られていることに気づいた。アイさんだ。
昨夜どうしても泊まりたいと言っていたので泊めた記憶を思い出した。だけどなんで僕のベッドに二人で寝てるんだ?それに彼女に仕事は無いのだろうか。取り敢えず起こそう。
「起きて。」
「起きて下さい。」
「起きろ。」
起きない。重度のロングスリーパーなのか?
まじまじと見つめてみる。よく見ると、眼が少し開いているではないか。
「…騙したな。」
「えへへ、ごめんね」
「……。」
そのまま彼女はベッドから起きて近くのソファに座った。
「仕事はないのか?」
「え?あるけど。」
「そんなんで大丈夫なのかよ…」
「皆私が遅れるのは承知してるから大丈夫なんだよ〜」
「はあ…取り敢えず朝ごはん作るよ。」
「どんなのかな〜?」
そんなに期待されても困る。僕の朝ごはんはいつも味噌汁にお米、少しのおかずだからな。
10分程でぱぱっと調理し、机に運ぶ。これは十年の間に勝手に増えていた家具その一だ。
「ほれ、我が家の朝食。家にいると毎朝これだからな。」
「おお〜質素。」
質素が一番だ。タワマンに住んでる時点で既に質素じゃないが。
近くのテレビの電源をつける。これもいつの間にか新調されていた。
『昨夜、6時未明に男性が倒れているとの通報があり…』
いつまで経ってもこういう不吉なニュースが絶えないのはしょうがない事なのか、なんて哲学的な事を考えていると先にアイさんがご飯を食べ終わっていた。
「ご馳走様でした。」
「お粗末様でした?」
「何で疑問形なの?」
「人に自分の料理を食べられたのはアイさんが初めてだからね。」
「ふーん。」
「反応薄いな。」
相手の反応が薄いと相手にもっとリアクションを求めてしまうのは僕の悪い癖だ。
そのまま彼女は浴室に着替えを持って行って(いつ準備したんだ!?!?!?!?)着替えをして、そのまま玄関先へ行った。
「11時ぐらいまでには帰ってこれるかな〜?それじゃ!」
「行ってらっしゃい。」
「いってきまーす!くぅ〜新鮮っ!」
謎のリアクションを残して彼女は仕事に向かった。因みにだが、海に行ったのは昨日で目を覚ましたのは4日前の出来事だ。回復力には目を見張るものがあるが、怒涛の日々過ぎないか。
今の時間は午前8時半。まだまだ世間一般的には朝だろう。食器を片付け、ベッドを整える。
それを終え、ソファに座る。今は9時、面白い番組がやってる訳でもない。
「……暇だ。」
今気づいたのは、杖なしでも歩けるようになっていることぐらいだ。
思い出したように、体が動いた。
クローゼットを開け、中に入っている黒い鞄を取り出す。
中にはピッキング用の道具、ICレコーダー、スタンガン、小型カメラ、偽装用の名刺が入っている。
中身は思ったより劣化していない。むしろ整備されてるような気もする。
その時、インターホンが鳴った。
鞄を急いで仕舞い、扉を開ける。そこには一人の青年、星野愛久愛海。アクアさんがいた。不機嫌そうな顔をしている。
「ど、どうしたんです?」
「頼みたいことがあって来ました。」
「それは何でしょう?」
彼は更に嫌そうな顔をして、僕に告げた。
「調べて欲しい人が居るんです。」
思わず僕も顔を顰めてしまった。
◆◇◆◇
事の発端は四日前、僕が目を覚ました日らしい。端的に言うと、有馬かなという昔からの知り合いからドラマ出演をしないか、と執拗に誘われ、遂に折れて受けることになってしまったらしい。
「有馬かな…知っていますよ。『重病で泣ける天才子役』でしたっけ?」
「違います。『十秒で泣ける天才子役』です。」
「へぇ〜そんな凄い人と共演するんですか。」
「今は余り見かけませんけどね。」
「ほう…」
「それで…なんで僕に調べて欲しいと?」
「プロデューサーが昔のアイの関係人物かもしれないんです。」
「『かもしれない』?」
「そうです。聞き覚えがある…見覚えですかね?昔アイのガラケーを見せて貰った事があって。」
「アイさんの過去に繋がる何かかもしれない。という事ですか。」
「そうです。」
するとアクアさんはスマホを開いて僕に見せてきた。
「今回俺と有馬かなが出演するのは『今日は甘口で』という漫画が原作のドラマです。」
「有名なやつじゃないですか。」
「そうですね。だけど、ドラマは評判が悪いんですよ。このドラマはモデルの露出目的で作られてるので、演技は二の次ですから。」
こういうのは芸能界の“闇”とかいう奴だ。偶にテレビで取り上げられるのを見たことがある。
そうだな…ここは復帰戦として、今の自分の腕を試してみようじゃないか。
まずは昔の知り合いに連絡を取ろう。
「ふーん…面白そうですね。ちょっと電話してきていいですか?」
「良いですけど…何かやることでも?」
「僕の“相棒”に電話を。僕と相棒の二人はどんな話題でもスキャンダルに繋げて記事にできる、って評判でしたから。」
「因みに、その調べて欲しいって人の名前は?聞き忘れてました。」
「『鏑木勝也』です。」
「ありがとう。」
早速電話を掛ける。
『はいはい〜こちら天才記者の難波でーす。ご要件は何ですかぁ〜?』
相変わらずこいつウザいな。だけどこれが難波クオリティー…
「ニノマエだけど、今時間空いてるか?」
『え゛。に、ニノマエさん!?いつの間に目を覚ましてたんですか!?』
「四日前だ。突然だけど洗って欲しい人が居る。」
『十年も寝て四日後に復帰って…良いじゃないですか〜俺ちゃんやる気出てきましたよ〜』
「やる気出してくれて何よりだ。」
『それで、洗う人っていうのは?』
「鏑木勝也って奴だ。」
『OK、分かりました。1日で綺麗サッパリ洗ってきます。』
「頼んだぞ。」
そこで電話は一方的に切られた。そういえば僕の雇用状況って今どうなってるんだ?。怖くなってきたから一旦考えるのをやめよう。
「アクアさんが撮影する日っていつなんです?」
「今日の昼からですね。」
「めっちゃ直ぐじゃないですか…僕付いて行っていいですか?」
「体調とか大丈夫なんですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。ただ、十一時までには帰れるようにしたいですね。」
「ああ〜…分かりました。そんなに時間は掛からないでしょうし、大丈夫だと思いますよ。」
なにか察したような顔をするアクアさん。彼も苦労してきたんだろう。
「じゃあ…早速向かいますか。」
「そうですね。あ、僕はちょっと着替えてきます。」
クローゼットのある場所まで行く。開いて中身を確かめると、さっきは気づかなかったが昔より整理された状態で服が掛けられていた。
いつものスーツを選び、鞄の中に入っている道具一式をスーツの中に仕舞う。これでいつもの仕事着の完成だ。
「なんか記憶がフラッシュバックするような格好ですね…」
「え、僕そんな印象的な格好してますか?」
「いや、10年前も同じ服装…」
「あ、盲点でした。だけどこれが仕事着なんで…」
確かにアクアさんは昔僕のナイフが刺さったまんまの格好を見ているわけだからな…
うーん、しょうがない!
◆◇◆◇
車はドラマのスタッフが手配してくれたらしい。
アクアさんと車に乗り、向かっている最中に小声で話しかけられた。
「ニノマエさん、この前砂浜で…」
「な、なんで知ってるんですか…?」
「社長がいつ仕事をバックレても追えるようにってGPSを…」
「まじか…」
「アイは、今まで一回もドラマや演劇でキスシーンをしたことがない…というか、拒否し続けてきたんですよ。」
「え、じゃあマジのファースt「そこからは言わないで下さい。」」
「すいません…」
「ああ、謝らなくて良いんですよ。親の恋を支えるのも子の役目ですから…」
そして遠くを見るアクアさん。なんだか申し訳ない気持ちになってきた。
そして暫く車が走り、撮影現場に着いた。
車を降りて、アクアさんに話しかける。
「僕はちょっと寄り道しなきゃいけないので、先に行っていて下さい。」
「分かりました。何処に行くんですか?」
「少し喫煙所に。」
「煙草吸うんですか?以外ですね…」
「いや、僕は吸いませんよ。逆に嫌いです。少し布石を敷きに行くんです。トップ・シークレット、ですよ。」
「はぁ…。」
僕は少し遠回りして喫煙所に向かう。撮影準備中なので人は居ないみたいだ。吸い殻入れの中にICレコーダーを入れる。
「後は鏑木勝也が煙草を吸いに来るだけ…か。」
その場を後にして、アクアさんの所に向かう。そこにはアクアさんと、もうひとり女の子が居た。
「それで…今日見学に来たっていうアクアの友人は?」
「今来るはずだけど…あ、あの人。」
「いや〜すいません。少し遅れてしまって。貴方が…元重病で泣ける天才子役の有馬かなさんと、このドラマのプロデューサーである鏑木勝也さんですか?今日は見学させていただきます。宜しくお願いします。」
「十秒で泣ける天才子役です!よ、よろしくおねがいします。」
訂正をしながらも返してくれた。
「宜しくお願いします。」
質素だな。
有馬かなさんはわりかし純粋な目をしているが、鏑木勝也は…ちょっと苦労してるみたいだな。金に囚われてそうな目をしている。
その後撮影が始まった。他の人達もそうだが、主役は車の中で拝聴した通りの大根役者っぷりだ。有馬さんは合わせているのか、演技を抑えている風に見える。
確か、主役の名前は『鳴嶋 メルト』だった筈だ。
そして、アクアの出番が来た。アクアの役はストーカーの役だった。僕に対しての皮肉のようにも思える。本物を見た身としては少し迫力が無いかな…
その後雨の影響で撮影は思ったように進まず、撮影は一旦中止になった。
そういえばさっきからアクアさんの姿が見つからない。少し探してみると、喫煙所の裏の場所でアクアさんを見つけた。
その奥では鏑木勝也が話している。
「有馬かなは顔が良くて誰にでも尻尾を振ってくれるし、元子役だからネームバリューもある。それにフリーだからギャラは無いようなもんだ。演技に五月蝿いのが玉に瑕だけどな。」
アクアさんは真顔で聞いていた。だが眼は違う。苛立ちの眼だ。
鏑木が去った後、僕は自然に声を掛けていた。
「アクアさん?」
「あ、ニノマエさん…」
「今の会話、聞きました?」
「はい」
吸い殻入れのところまで行き、蓋を開ける。
「こういう時はですね…」
中に入っていたICレコーダーを取り出し、録音を止める。
「滅茶苦茶やってやるんですよ。」
僕の眼の星は輝きを増していく。
「アクアさん。どうですか?」
輝きが、アクアを呑み込んでいく。
アクアは、その輝きに囚われたまま口を開く。
「…やってやろうじゃないか。」
その両目には、星の光が。
僕は、やはりどうしようもない
笑みが、零れ落ちる。
あの夢で差し伸べられた手は、しっかりと握られた。
◆◇◆◇
定説:化け物は、お前自身だ。
◆◇◆◇
一応主題歌は blue encount の『囮囚』にということにしています。聞いてみて下さい。いい曲ですよ。
この曲は、もともと『ボイス』というドラマのシーズンⅡの主題歌でした。主はドラマの内容は覚えていません。
付記:今日はは無事定説くんが出勤してくれたみたいですね。良かったです。(満面の笑み)
付記:アクアさんのキャラ崩壊が止まりません。たすけて
誤字等がありましたら訂正させていただきます。評価をしてくれるとアクアさんがキャラ崩壊しながらヲタ芸してくれます。貴方の夢の中…でね。
考察等も大歓迎です。