青い鱗に赤い立派なトサカを頭に
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学院に入ってから数ヶ月。以前から幾度か顔合わせを行い、婚約者として紹介されていたフリッツ=フレドリクス王太子殿下と関係性を深め、婚約者があると知りながら関係を持つ機会を伺う周囲を牽制するための茶会を開き、勉学に励んでおりましたわ。
生まれつき魔力を感知する機能に難があり、それに悩まされながらも陰ながら努力を重ね、学院でもトップの実力を維持しておりましたわ。その時ですわ。あの子が転がり込んで来たのは。
魔法を魔力感覚以外でしか認識出来ない
「わぁ!すごい魔法ですね!」
制御に集中するあまり、周囲の確認が
練習として
視覚的な情報の多いその魔法を知れれば自分でも魔法が上手く使えるようになるかもしれないと自らの足で出向き、事情を何一つ隠すことなく頭を下げて団長様に弟子入りしたのですわ。
結果として、私は表舞台でも屈指の劇団技師として認められるほどの腕を獲得しましたわ。
舞台でも活躍した私を団長様含め、劇団の皆様からも涙ながらに引き止められましたが私は公爵令嬢。学院へ入ることが決まっていたため、心を痛めながらも劇団を離れることとなりましたわ。
閑話休題でしてよ。
魅せるための魔法と言えど魔法は魔法。制御を誤れば危険ですわ。
私の手を離れてしまった魔法が動きを止めて光を放ち始めた瞬間、後ろにいた人物を掻き抱いて倒れ込み、別に防御魔法を展開。
手を取って立ち上がらせ、押し倒したことで付いてしまった土を払い落として差し上げながら話し始めましたわ。
「
土を払い終えて顔を上げると、
「ごめんなさい…。わたし、少し前まで平民として暮らしてて…。跡継ぎの方が亡くなったから妾の子のわたしを自分の子どもにするとかで急にこんなところに来たんです…」
そこでハッとしましたわ。見かけない顔だと思っていたらそういうことでしたのね。
「あら、そうでしたの。失礼しましたわ。短い間に色々あり過ぎて大変な思いをしたと思います。心中お察しいたしますわ。」
「あっいえ!そんな!頭を上げてくださいお貴族様!?」
頭を下げるとサッと顔を青くして慌てて止めてくださりました。
お召し物を汚してしまったというのに気にもとめず、他の貴族子女とは全く違う反応を見せるこの子、フィオルネ=ロイゼンをいたく気に入りましたわ。
それはもうフリッツ殿下そっちのけで猫可愛がりする程には。
気軽にフィオと呼ぶように言われたその日から、学院案内では食い気味で買って出て、勉強は文字の読み書きに始まり、フィオの理解度に合わせて徹底的に噛み砕いて分かりやすく解説し、家から平民から見ても
そんなこんなでお世話を焼きに焼き、シア姉様と呼ばれ、過剰に増えたスキンシップを注意するほどにフィオと信頼関係を築き上げたところで、それは起きましたわ。
「テレネシア。ここに君との婚約破棄を表明する!」
殿下がその腕に私の可愛い可愛いフィオを抱きながらそんなことをほざきくださりやったのは。
「君が平民からの転入生であるフィオルネに度重なる危害を加えていると聞き及んでいる。ここにその証拠もある!」
何やらピーピー
「フリッツ殿下、フィオを
私の言葉を鼻で笑い、殿下の金魚のフンに私の罪状(笑)を読み上げさせているところで、私はフィオの目の焦点が合っていないことに気が付きしました。
ビキリと額に血管が浮き出たのがわかりましたわ。
「殿下、薬でも盛りましたか」
かつて劇団主催のお客様交流会で腰に手を回したブt…ゴホン失礼。お客様を失神に追いやった実績のある睨みを殿下に披露し、声に怒りを込めに込めて話しかけました。
ガクガクと足を震わせながらも声を上げたのはさすが王太子と言った所でしょうか。
「な、なな何をば馬鹿なこととtぉ!ききっ貴様が目の前にいるからこ怖がっているだけだ!」
「おハーブ生えますわ」
「だだっ黙れぇ!」
おハーブ生えますわ、という言葉は団長様の発祥で貴族全体に煽り文句として浸透していますわ。
精神系魔法だろうと薬物だろうと団長様に次ぐ魔法の使い手である私の使える魔法は多岐にわたり、神殿にて祝福を受けている私には状態異常対策には絶対の自信がありましたわ。
サクッと『
ハッとするフィオ。腰に回された手。真横に殿下の顔。
「!? イヤァーッ変態!? お姉様〜!!」
瞬時に展開する肉体強化魔法陣。あら、綺麗な構築ですこと。
殿下のみぞおちにクリーンヒットするボディーブロー。暴漢に襲われたら迷いなく急所を突きなさいと教えてきたことをちゃんと守って偉いですわね。後でお菓子をあげましょう。
崩れ落ちる殿下をそのままに私のところへ駆け出してくるフィオ。そのまま抱きついて胸に顔を埋めてニコニコするまではいいとして頬ずりするのはやめなさいな。今のドレスだとずり落ちてしまいますわ。
「よしよし、怖かったですわねぇ〜。もう大丈夫ですわ」
「うへ、お姉様大好き」
「あら、だらしのないお顔ですこと。しっかりなさい」
フィオと楽しく談笑していると、金魚のフンに回復魔法をかけられた殿下が肩で息をしながら声を荒らげて指をこちらに向けました。
「も、もういい!顔が良いからと優しくしてやれば調子に乗りおって平民風情が!そこの女共々魔族の餌にでもなるがいい!」
そう言い放って魔法陣を展開するペンダントを投げつけられましたが、陣を読み取り、こちらに届くまでに出来うる限り干渉を始めましたわ。
転移場所の変更は出来ましたが座標指定が完了する前に術式が発動してしまい、ペンダントに込められた魔力が干渉していた魔力回路から逆流し、身体中に激しい痛みを感じて意識が暗転してしまいました。
薄れゆく意識の中、涙を流して名前を呼ぶフィオの顔が───
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閉じた目にチラチラと光がチラつき、風に吹かれてゆっくりと目を開ける。
黄色いクチバシ。荒々しい野生の息吹を感じる鼻先。ちらりと覗く鋭い牙。黄色く輝く縦に裂けた瞳孔を持つパッチリと開いた目。
「ハワァーーーーーーーーーーーーーーーッ!?!?!!?!!」
よろしければ今後ともご贔屓に^^