憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト   作:社畜戦士

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番外編3話目。


Extra File03:復讐

「……また、空振りですか……」

 沈鬱な気持ちが溜息と共に漏れ出た。

 堆く積み上げられた調査書類の山に、確認済みの最後の一枚を放る。

 長時間集中して書類を凝視していた事で凝った全身を揉み解すが、油の切れた機械のようにギシギシと軋んで痛むだけだ。

 ……少し、気分を入れ替えるべきか。

 

 

 

「…………ふぅ」

 自分の執務室から出て食堂に向かい、其処で一服する事にした。

 ドクターの拘りが存分に発揮されたコーヒーが曇った頭脳に染み渡る。

 

 此れだけの逸品を帝都の喫茶などで頼もうものなら、平民の一か月分の賃金が一杯だけで軽く飛ぶ事だろう。

 ソレが、ウチの職員や軍人相手ならば子供の駄賃ですら飲めるようにしているのだから、つくづくドクターは趣味人なのだと実感する。

 儲けなど完全に度外視しているのだ。

 まあ、部外者には適正価格で供しているようだが。

 

 

 ブラックコーヒーに暫し舌鼓を打ち、冴えてきた思考で私にとっての最重要事項について熟考する。

 ……さて、調査の結果が芳しくない件だが……。

 此れだけの捜査網を張り巡らせておきながら、何度もすんでの所で逃れられる。

 足取りを掴む事には成功しているんです。

 しかし、間近に迫ると途端に行方を眩ませられてしまう。

 しかも最近は、どんどん集まる情報が少なくなってきている。

 まるで、誰かに意図的に情報を遮断されているように。

 という事は…………。

 

「お疲れ様。隣、いいかしら?」

「っ! ドクター。お疲れ様です」

 

 ぐるぐると思考の渦に潜り込んでいたら、直属の上司であるドクターが隣席にやって来た。

 手には二人分の軽食がトレーに乗せられており、片方を渡される。

 

「すみません、ありがとうございます」

「いいのよぉ。コレ、新作なのよね。ちょっと味見して頂戴な」

 

 そう言って差し出されたお菓子を見れば、なるほど確かに見覚えのない物だ。

 目を引くのは……何だろう、真っ白なブロック状の物体が一際目立つ。

 もう一つはパイ生地を重ねて焼いたような物に、匂い立つ甘美な香りのシロップがたっぷりかかった物。

 

 

 白いお菓子は見た感じは石膏のようにも見えるが、フォークを通すとサクリと軽く崩れた。

 見た目に少ししり込みしたが、ドクターの作るお菓子にハズレは無いので意を決して口に運ぶ。

 

「……ふむ、上品な甘さですね」

 口いっぱいにふわっと広がるゴマの香ばしくもクリーミーなコクに、口の中でほろほろと溶ける儚い触感は独特で癖になりそうです。

 バニラの風味が後を引き、上品で軽い口当たりは何個でも食べられそうですね。

 

 味わいは単調なようでいて素材の魅力を限界まで引き出した複雑な物だ。

 優しい口溶けに驚く間もなく、ナッツ系の香ばしさと甘さを感じさせる。

 軽い口当たりだが、バターや油脂の芳醇な香味もする。

 此れは、おそらくグレープシードオイルだろうか?

 重厚な味にも関わらず一種の清涼感すら感じるのは、使われている油に秘密があるとみた。

 

 ほう……噛み締めると感じたのは、ヒマワリの種の放つ香ばしい芳香。

 多分これはヒマワリの種をペーストにしていますね。

 そして内部にあったクルミ、ピスタチオ、アーモンドなどの芳しさと見事に調和している。

 此れだけのバランスが取れた味わいなのに、口溶けは雪のように儚く上品だ。

 

「ソレはオスマンの定番菓子で『トルコ蜜飴』とも呼ばれる……まあ『練りゴマのヌガー』って所かしら。『ハルヴァ』っていうんだけど、硬めに焼き固めるとチョコバーみたいにレーションとして利用出来るのよ」

「ほう、それは良いですね。ウチで配備している戦闘糧食の味は悪くないですが、あまり味の種類が多くないのが難点でしたから」

 

 オスマンというと、帝国の遥か西方にある騎馬民族の国でしたか。

 毎度毎度この方は何処からこういう知識を得てくるんでしょうね。

 

 まあドクターの謎っぷりは今更ですが、レーションにも転用出来るとなればこれは甘く見る事は出来ません。

 ウチはドクターの御蔭で様々な分野で他軍よりも待遇が優れている事で有名ですが、行軍食にまたしても革命を起こす事になるという事ですかね。

 今ウチで配備しているシリアルバーやチョコバー等の戦闘糧食だけでも大分革命的な代物だというのに、コレが新たに加わるという事は現場の人間たちの待遇がより向上するという事です。

 その恩恵は額面通りに受け取れる物ではないでしょう。

 

 

 まあそれはさておき、もう一つの方は……ふむ?

 此の新緑のように深く青い香りは……もしかしてバラでしょうか?

 一口大に切ったパイを口に運ぶと、様々な香りが突き抜けるように鼻孔をくすぐる。

 最初に感じたのは、やはり此のバラの香りだ。

 おそらく蒸留したローズウォーターをシロップの香り付けに使っているのだろう。

 

 サクッとした歯ごたえに、続けて突き刺さるように飛び込んでくる様々な芳香。

 ナッツやアーモンドやクルミの風味を感じるが、他にも一口では拾いきれないくらいに複雑で重厚な香りが漂う。

 そして此のシロップだ。

 ローズウォーターの若く淡い香りに、レモンを始めとした香草等の熟成された力強い香りが複雑に調和したフレグランスはまるで味わう香気の爆弾。

 

 更に、此の驚く程薄く何重にも重なったパイ生地。

 口の中でサクサクとした歯ごたえを幾重にも奏でる此の生地は、極薄のパイ生地を何十層にも重ねて丁寧に焼き上げたのでしょう。

 ああ、噛みほぐすとシナモンとひよこ豆でしょうか、甘みと香ばしさ、芳しさを感じる香が後追いでやってきます。

 噛めば噛むほどに口中で香りと歯ごたえが変化していく様はとても面白い物ですね。

 

 そして、此のずっしりとした食味は腹持ちが良い事でしょう。

 シロップも濃厚な甘みを演出していますし、カロリーが気になる所ですね。

 

「そっちもオスマンの郷土菓子で、『バクラヴァ』っていうペイストリーね。澄ましバターを使ってるから、こっちも保存が利くわ。見ての通りかなり腹持ちもいいから、コレも保存食に使えると思うの」

「成程、此方も軍の糧食に転用できるという訳ですか。味も普通に美味しいですし、フレーバーを変える事でバリエーションも増やせそうですね」

 

 

 ふむ、『戦闘糧食に転用可能なお菓子』というのが今回のコンセプトという事でしょうか。

 実際に運用してみないと詳しくは分かりませんが、少なくとも今回実食した此の二種類はスパイスの類を多用している割に癖も少なく美味しいと感じました。

 原材料に香草系や香辛料系をふんだんに使う事でより保存性を高める事も出来るでしょうし、長期保存する為の戦闘糧食には申し分ないでしょうね。

 まあ今回の物はあくまでもその場で供する程度に調理してあるようですし、実際に保存と運搬に耐え得るような出来にするのにはまた別に調整を考えないといけないでしょうが。

 

 

 

「――さて、お腹も膨れた所で……何か悩み事でもあるのかしら? 聞くだけ聞いてみるから遠慮せず言ってご覧なさい」

「ッ!!」

 

 見た目以上にボリューミーなお菓子を完食したところで、ドクターが徐にそう切り出した。

 空腹も満たされコーヒーに舌鼓を打っていた時だったので、完全に意識の間隙を突かれた形になる。

 らしくもなく動揺してしまい、分かりやすく態度に出てしまった。

 

 

 ドクターは私の復讐について、私の『自分の手でやり遂げる』という意思を尊重してくれている。

 其の為、特に口約束をしたわけではないが、私の復讐対象である“あの男”に関連した事は今迄に話した事が無いし、それでお互いに暗黙の了解が出来上がっていた。

 そして私の下につけられた部隊の中でフリーハンドを特定の諜報活動に充てており、その事も黙認して頂いている状況にある。

 

 とはいえドクターが蛇蝎の如く嫌う「公金や公権力の私的利用」という訳でもなく、彼らには地方の明るみに出にくい醜聞等を洗って貰い、必要ならば裁く任務に就いてもらっている。

 私の故郷での実例のように、『事件や事故を領主の名に傷がつく事を嫌って揉み消す』という人間は相応に存在する。

 そういう人間の悪事の証拠を集めて白日の下に晒すのも勿論、中には『領民を獲物にして狩りを行う貴族』のような外道を誅する事もやっている。

 

 言うなれば専門の査問諜報機関と言うべき代物だが、彼らにはその傍らで私の怨敵を探ってもらっている状況だ。

 勿論“連続殺人鬼”であるあの男を洗うのは彼らの任務的に何もおかしな話ではないし、奴が帝国領内を転々として罪を重ねている以上はソレを捜査する部署が必要なのも事実だ。

 

 

 そういう理由で、私は今迄ドクターに対し此のヤマに関して話をした事が無い。

 しかし、捜査状況が一向に進展しない今、予算を配分する立場のドクターから何かしら言われるのも仕方ない。

 薄々と覚悟はしていたが、とうとう此の件にお声が掛かったか、という思いがある。

 勿論、私のような何の後ろ盾も無いような人間に対し目をかけていただき、過大な配慮をして頂いている以上は私事にばかりかまけてはいられないと理解している。

 

 恩がある。借りも、引け目も。

 だが、ソレを差し引いても私は私の復讐を自らの手で成し遂げたいという独り善がりな想いが強かった。

 公人としては不適だろう。軍人としては不当だろう。部下としては不義だろう。

 だが、私が私である為に、此の復讐だけは自身の手で完遂させねばならない。

 そう、思い定めている。

 

「あら、そんな構える事じゃないわよ。別に口出ししようだとか、あーだこーだ指図しようだなんて思ってないし」

「そう……ですか……? ソレは、ありがたいですが……しかし……」

 

 しかし、気不味そうに、言葉を選ぶように話し出したドクター。

 どうも私の想定していたような、指導が入るという類の話ではないらしい。

 

「あー、アナタの意思は最大限尊重したいし、そうする心算よ? でもね、一応はアナタの上司として、仲間として、少~しばかりおせっかいをしてもいいんじゃないかしら、と思ったのよね」

「おせっかい……ですか?」

「まあ、コレを見て頂戴」

 

 そう言いながら渡されたファイルには、一人の男のプロファイルが記されていた。

 …………読み進めるに、此の『シュラ』という男は各地で強盗や強姦、快楽殺人等の凶悪犯罪を繰り返している超危険人物。

 私の仇にも劣らない真正のクズだ。

 だが、驚くべき事にソイツは各地の公権力を自身の後ろ盾の権力で握り潰し、現在進行形で悪事を重ねているようだ。

 

「……これは……本当ですか? いえ、ドクターの情報を疑う訳ではありませんが……しかし、これだけの事をしでかしながら、今迄一度も捕まっていない……?」

 

 ハッキリ言って異常だ。

 何処の貴族のボンボンかは分からないが、これだけの凶悪犯罪を積み重ねておいて、今迄唯の一度も逮捕された事が無い……いや、何度か拘束されたことはあるようだが、すぐに何らかの権力によって揉み潰され釈放されている。

 それも、此奴を拘束に動いた関係各所が極刑にされるという有り得ない報復を添えて。

 此れだけの横暴、それこそ大臣クラスの権力でも無い限り不可能だと思うのだが……。

 

「ソイツね、ある男の息子なのよ。……帝国の濁流派にさぁ、一人いるじゃないの。こんだけの悪事を揉み消せる権力者で、こんだけのクズの中のクズ、エリートクズを生むような真正のクズがさぁ……」

「っ!! ……成程」

「……気付いたようね? そうよ、コイツは正真正銘オネスト大臣の一人息子よ」

 

 ……成程、合点がいった。

 確かにこれだけの権力を持つのは大臣くらいのものだろうし、息子のこれほどまでの悪事に頓着しない人間性を持つ人非人はオネスト大臣ぐらいのものだろう。

 

「……成程。ソレは、分かりました。……ところで、この男が何か……?」

 此れだけの凶悪犯が野放しにされていた事に気付けなかったのは内心忸怩たるものがあるが、今回の話に関わる話なのだろうか。

 まあ、此奴をのさばらせていたという無能と言われても仕方ないミスを犯しているのは認めるが……。

 

「ああソレね。ちょっと6P目を見てみなさい。渡した資料にも書いてあるけど、ソイツは大臣から『将来の大臣の後継者候補として、ソレに相応しい人材を各地から発掘してくる』ように命ぜられているのよ」

「ソレは……何とも胸糞の悪くなるような話ですね……」

 

 大臣の後継云々は此の際いいとしよう。

 だが、その過程に各地で凌辱の限りを尽くすのはどういう事だ。

 大臣も此奴も、権力という物をどう考えているのかが透けて見える。

 

「で、ソイツはどうも頭が可哀相な子らしくてね? 側近候補として各地で帝具使いを蒐集してんのよ。ソレも、戦闘特化オンリーでね」

「……ソレは……何というか……」

 

 大臣の後継になる為に、(其れが可能かどうか、正しいかどうかは置いておいて)集めた人材が武辺者だけというのは……。

 なるほど、確かにドクターの仰る通り、頭が可哀相な奴だ。

 

「そんで、此処からが本題なんだけど……その側近候補の中の一人が、アナタの仇らしいのよ」

「ッ!? そ、それは本当ですか!?」

「まあね、殆ど確定情報よ。……で、此処でさっきの話に戻るワケ。ちょっと20Pを見なさい」

 

 言われた通りに慌ててそのページを捲ると、驚くべき事が記されていた。

 

「見ての通り、その可哀相なヤツは自身と、その連れ立っている側近共とで各地を転々としながら犯罪行為の数々に手を染めているわ。そして、都合が悪い事は全て揉み消している…………そろそろ、分かったんじゃないかしら?」

「~~ッ!! そういう……ことか……ッ!!」

 

 

 そうかソウカそうか、そういう事かッ!!

 情報が集まらないのも当然だ。

 此の大臣の息子が全てを揉み消していたのだから!!

 いや、それでも多少なりとも情報が集まっていたのを見るに、ウチの部下達は優秀なのだろう。

 だが、いや、それでも!

 

 ~~ッ!!

 いや、今はそんなことはどうでもいい。

 問題は、私の仇と争うという事は、確実に大臣の息子が邪魔をするという事実!!

 それはそうだろう、帝具使いの部下をそう簡単に手放すとは思えない。

 ましてや此のプロファイルを見るに、自尊心が極めて大きい。

 そんな男が身内に手を出されて黙っている訳がない。

 

「……分かったかしら? つまり、アナタの仇を追うという事は、オネスト閥と間接的とはいえ衝突するという事よ」

「…………はい」

「その上で、聞くわよ? アナタは……それでもコイツを討つ心算かしら……?」

「…………私は…………」

 

 

 


 

 

 

 結論から言おう。

 私は、復讐を成し遂げた。

 

 

 地方での演習という名目で遠征に出かけた【征南将軍府直属非公開特殊任務遂行軍第三軍】。

 例の新規の戦闘糧食をテストするという目的に、周囲の異民族への威圧も念頭に置いての出陣だった。

 しかしその中で見目麗しい女性兵士の部隊が、()()遠征先に居合わせた大臣の息子たちに目を付けられ、強権で連れ去られて凌辱された。

 その事を重く見た現場指揮官であった私は、連中を討伐する事を宣言。

 第三軍総軍を派遣したが、当然ながら連中は抵抗した。

 

 だが、無駄だった。

 私が指揮する第三軍は木人形や屍食鬼等だけで構成された不死の軍勢だ。

 当然ながら連中に連れ出されて凌辱されたのも唯の意思の無い泥人形だったが。

 まあ、そんな不死の軍隊に、生身の人間が敵うものか。

 各人が帝具で抵抗の限りを尽くしたが、無限に再生を続けるゾンビ共の突撃の連続には耐えられなかったようだ。

 

 そして、不死身の兵隊による横隊蹂躙にズタボロにされて絶体絶命の危機に陥った大臣の息子は、自身がオネスト大臣の息子である事を明かしてきた。

 みっともない命乞いだ。『僕に手を出すとパパが黙ってないぞ!』とでも言いたいのか。

 しかしその程度の事は想定済みだった。

 

 私は一つの要求を突き付けた。

『貴方が大臣のご子息であられるのならば、どうか聞き届けていただきたい。我々特務軍第三軍は()()使()()()()()()()()を追って派遣されました。お見受けするに、ご子息は彼らが犯罪者たちだったと知らなかったのでしょう。どうか帝国臣民の規範であるべきオネスト大臣のご子息として、その名に恥じない判断をして頂きたい』

 

 言っている事は単純だ。

 お前を見逃す代わりに、そいつらの身柄を寄越せ、というものだ。

 あくまでも大臣の息子を『仲間が犯罪者とは知らずに利用されていた被害者』という体にしてやる事で、今回の粛清からは見逃してやった。

 

 だが、今迄自分の言う事は周りが全て右往左往して聞き届けて貰っていた奴には、自分のわがままが通らない事が我慢ならなかったらしい。

 当然のように反抗し、文句を言っていた。

 仕方がないから、私は切り札を切った。

 

 勅令。

 ソレを示してやった。

 皇帝陛下の勅印が押された正式な命令文で、コレを覆す事はさしもの大臣ですら不可能だ。

 私は今回、実際には『()()使()()()()()()()()』を討伐する為に軍を派遣していたのだから。

 体裁としての名目とは別に、きちんと正式な手順を踏んで今回の討伐任務を勝ち取ってきたんです。

 

 当然ながらドクターの発明したような通信機でも無い限りは帝都と地方で好き勝手していた親子が相互に緊密な連絡を取れるわけもなく、大臣は疑う事無く『()()()()()()()()()()()()()()()()』という名目に騙された。

 実際は息子の仲間を討ち取る為だったのだが、大臣が自分の意思で死刑執行書にサインをしたのだ。

 そんな絶体絶命の場から即座に此の勅を覆す事は不可能で、そしてそんな時間を与えてやる訳も無い。

 

 

 

 結果。

 私は仇を含めた瀕死の帝具使い共を回収し、帝都に後送した。

 その中で『“連続児童殺人鬼”チャンプ』は【門】の中に囚われ、私に凄惨な拷問を受けて死に絶えた。

 

 回収した帝具だったが、一通りドクターが解析したらそのまま大臣に渡ったようだ。

 まあ、今更既存の帝具など見向きもしないのも理解出来る。

 今回の粛清でもドクターから授かった神器で武装した軍隊が無ければこうも簡単にはいかなかっただろうし。

 “帝具”に勝るとも劣らない“神器”を生み出せるドクターからすれば、古臭い道具に興味は無いのだろう。

 

 

 

 ……今回の一連の流れは、全てドクターが絵図を描いたものだ。

 第三軍を動かし、大臣の息子をハメて、大臣と皇帝の印可が出た勅令で動きを封じ、その後は仇を煮るなり焼くなり好きにする……と。

 復讐を決意した当初の私が思い描いていた物とは大分異なる結果に落ち着いたが、それでも自身の手で仇を殺せた事は大きな充足感を与えたくれた。

 あれだけの悪条件の中で、ドクターは完璧に近い形で私の復讐を成し遂げさせてくれたわけだ。

 

 

 ……本当に、感謝しかない。

 此れだけの御恩に、どうやって報いればいいのか。

 そうドクターに問いかけた。

 ……だが……。

『今迄通り、アタシの仕事を助けてくれればそれでいいわよ。……これからもよろしくね』

 返ってきたのは、そんなありふれた願いだった。

 

 ……私程度の働きで、ドクターの助けとなる事が出来るのかは分からない。

 だが、人生を賭けてでも成し遂げたいと思っていた復讐を助けていただいたんだ。

 ならば、此の残りの人生を賭して、ドクターに御恩を返していこう。

 そう、決意した。




ラン主役回。
何度でも言いますが死なす気はないです。
何故か死にそうな雰囲気ですが。


実は使用していた魔術。
・【門の発見】で【“次元方陣”シャンバラ】のマーキングを視認し、起点を破壊する事で転移を阻害した。




【挿絵表示】

金の神器【“豪砲雷烙”メギドシューター】。
今回出てきてないけどランが与えられた神器。
超級危険種【サンダーバード】と異界の神である【ゴル=ゴロス】の属性転写結晶に、異界の“第四の魔導書”【妖蛆の秘密】を溶かし込んだ【アポイタカラ魔鋼】を使用した神器。
雷を放つ銃砲で、見た目は近未来的な外観の突撃銃。
通常弾種の【アポカリプス.45ACP】、拡散弾種の【エスカトロジー10Gauge】、貫通弾種の【アルマゲドン.308】の三種類のカートリッジを使い分けて戦闘を行う。
どの弾種も着弾箇所から雷電が拡散して効力圏を広げるので、随行者には耐電装備が必須。
また、装備者にはある程度の耐電能力と生身でのヴォルトキネシス能力が備わる。
ソレを応用して電子の糸を広範囲に張り巡らせてレーダーのように使ったり、専用のマイクロチップを埋め込まれた木人形等を意のままに操ったりする事も可能。
【アポカリプス】:圧縮された超高電圧の稲妻が迸る近接攻撃。有効射程300m。
【エスカトロジー】:放射状に拡散する面の雷撃による範囲攻撃。有効射程100m。
【アルマゲドン】:極太の縮退した雷砲撃を放つ徹甲攻撃。有効射程1500m。
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