憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト 作:社畜戦士
そのため作中世界との整合性とかはあまり気にしないでください。特に日本語的な問題が出ますが気にしないでください。
ネタなので。
File11:少年老い易く学成り難し
――さて、月初め恒例の募兵の時期になったワケだけど、募兵の状況は盛況なようね。
コレなら現状の不足分はほぼ完全に充足出来そうだけども……。
ふむ……第一軍と第二軍に関しては此れで水準を固定してもよさそうだけど……となると第三軍の構成をもう少し弄るべきかしら。
そもそも、ウチは他の方面軍とかと違って「来るもの拒まず去る物殺す」なのよ。
勿論殺した後は木人形にして洗脳木偶に変えてあるから資源の無駄にはなっていないわよ?
とまあそういう感じだから兵士の抽選とかしていないのよね。
軍編成の規模で考えると、【近衛軍】は例外にしても他の方面軍が2個【師団】で構成された【軍団】であるのに対し、【征南将軍府直属非公開特殊任務遂行軍】は全部で三軍の【軍集団】、つまり5個師団で構成された【軍】が三つある状態ね。
一個軍の総人員は5万人。
要するにアタシの指揮する軍人は総数15万人程に上るわ。
当然ながら帝国はおろか周辺諸国全てを含めて個人で指揮する軍の数としては最大規模よ。
形式的な統帥権は皇帝陛下が握っているし、実質的な総帥として君臨しているオネスト大臣もいるけど。
ただ、アタシの軍集団は成り立ちからして殆どアタシの私兵なのよ。
だからよほどの強権を発動させない限り大臣の好きには出来ないし、仮にソレをしようとしたら勿論アタシも全力で抵抗するわ。拳で。
そしてウチの募兵は時期こそ他の方面軍と合わせてはいるけど、指揮命令系統も人事権も全てが独立した物。
故に、他所であぶれた人員を取り込む事に余念がないし、ソレで予算が成り立つだけの
人事に関して言えば、エスデスの預かる【威北統治軍】を始めとした三つの方面軍とブドー大将軍の指揮する【近衛軍】は纏めて帝都の軍政課が人事を差配しているわね。
此の四つの軍団相当の部隊は、人事権を帝都の軍政課が握っているという事で、当然募兵も一括して管理されているの。
適性や能力も鑑みて配置されるけど、基本的に地方軍に配備されて実戦投入され、そして功績を挙げると昇進していくという形だわ。
まあ何が言いたいかと言えば、方面軍での募兵に弾かれた人間は挙ってウチに殺到するって話なんだけど……。
「エスデス、
「えぇッ!?」
「む? 違う……訳でもないな。ウン、ペット候補だ」
「えええぇッ!?」
エスデスに用があったから兵舎の方に顔を出したら、彼女が少年に首輪を繋いでお散歩している所に遭遇してしまった。
アタシの前では従順な子猫ちゃんだけど、他人の前では強気な女王様だしね。
つまり、そういう事でしょう。
――って、アラ?
……此の少年、何処かで見覚えが…………?
………………(考え中)………………。
――アッ。
なるほど、原作主人公ね。アタシは詳しいんだ。
……いや、どういう状況?
コレが原作ヒロインと主人公との縁という奴かしら。
……まあ、完全に犬猫を見る眼で少年を見ているからにはソッチの心配は必要なさそうだけど。
「……此の時期に拾ったって事は、有望株って所かしら?」
「うむ。一級危険種を単独で狩れる腕があるそうだ。腕を見てそれで部隊長レベルから士官させて欲しいとの事だったが」
「ふぅん……」
まあ、原作でも将軍級の器って明言されていたし、最終的にはその評に違わぬ実力を備えたハズよ。
帝具の有る無しで大分変わるだろうけど……うぅ~ん……。
アタシ的には……あんまり好ましくないわねぇ……。
いや、将軍の一人として、此の国の軍権を預かる身としては、これだけの大器を迎え入れる事には否やは無いわよ?
将来的に大成するのが分かり切っている話なんだから、其処に疑いは無いのよ。
でも……原作を見てもわかるけど、この子って普通に真っ直ぐ過ぎる善人でしょ。
そんなのがうっかり帝国の暗部に触れちゃったらどうなるかなんて、考えたくも無いわねぇ……。
まかり間違って帝具や神器を預けでもしていたら、そのまま持ち逃げされて革命軍に合流って流れが手に取るように見えちゃうでしょ。
……あと、個人的な部分では、原作でエスデスに惚れられていたこの子が何かの間違いでエスデスと意識し合うようにでもなったら……という懸念があるわ。
アタシはNTRって大嫌いなの。
寝取りも寝取られもどっちもノーセンキューよ。
そういう諸般の事情から、この子を士官させるのはあまり気乗りしないんだけど……。
「――む? どうしたドクター。何やら気鬱そうな表情だが」
「……あら、分かる?」
「うむ。ドクターの事で分からないことなど無いぞ」
……エスデスはそう言って渾身のドヤ顔を決めたわ。かわいい。
こういう所が可愛いのよねぇ。
ちなみに、流石に人前でアタシの事を「ダーリン」呼びはしていないわ。
そういう分別はあるのよね、意外と。
「フッフッフ……ドクターの懸念を当ててみせようか?」
「あら……自信があるようね?」
「うむっ。…………安心しろ、所詮はペットだ。ダーリンの心配するような事にはならんよ……」
何故か得意げな顔でこしょこしょと耳打ちしてきた内容は、概ねアタシの考えていた通りの事だった。
……嫉妬していたのを見抜かれていたのね。
……ああ、だから嬉しそうなのかしら。
嫉妬されるなんて女冥利に尽きるって所かしらね。
「――フッフッフ。図星か、ドクター」
「……まあひけらかす事じゃあないけど、その通りよ」
「くっくっく……もうっ、ドクターってばっ、もうっ」
べしべしと喜色満面でアタシの背を叩くエスデス。
嫉妬されたのがそんなに嬉しかったのかしら。
……これなら心配なさそうね。
「……で、腕試しの方はもう済んだのかしら?」
「――ん? ああ、練兵場で軽く流してやった。確かに言うだけはあったな」
ふむ……当初の懸念の内の一つは払拭されたとして……残るもう一方の心配事も潰しておきたいわね。
「じゃあ、実技の方はクリアって事でいいわよね。小会議室の一つを開けておくから、其処で筆記の方も済ませちゃって」
「ああ、ソレがあったか」
「…………筆……記…………?」
何やら少年が絶望的な顔でオウム返しに呟いた。
どうしたのかしら。
まさか、帝国軍人の士官になろうという人物が、筆記能力も無しに務まると迷妄してやいないわよね?
「あら、どうしたのかしら? 帝国軍人の、それも部隊長レベルの人間として相応しい能力があると豪語するんですもの。当然、最低限の筆記能力も備えているハズでしょ?」
部隊長としての職責を担うには、それは当然ながらそっち方面の能力も具備していないと。
コレは別にアタシが意地悪している訳じゃあないし、何処の世界のどんな国でも当たり前の話よ?
……ただし、近代軍に限るケド。
「なに、これだけの武技を備えているのだ。まさか、我が帝国軍の士官を目指す人間で筆記能力が皆無という筈もあるまい。もしそんな無能だったとしたら、後腐れなく縊り殺してやった方が世の為という奴だ」
「当たり前だよなぁ?(同調圧力)まさか、此の帝国領内に於いて、腕っぷしだけで要職に就けるだなんて蛮族のような勘違いをしている馬鹿がいたとしたら……まかり間違って就職しちゃったら、危険人物でしかないもの。そりゃ、予防説に従って間引いておくべきよね」
HAHAHAHA!!
アタシ達は朗らかに笑い合うけど、どうしてか少年の顔色は蒼白を通り越して土気色になっちゃってるわ。
あれれ~? おかしいぞ~?
此処に某死神系少年探偵が居たらそう言いださずにはいられないような異常事態よ。
……まあ、そんなに難しい内容じゃあないもの。
難易度的には、9歳児のローグちゃんでも解ける程度の子供向けの問題ね。
「なんだ、怖気づいたか? 安心しろ。私の知り合いの娘の9歳児でも解ける簡単な内容だ。……寧ろコレを解けないなら責任をもって私がキサマを拷問の後に殺してやらねばならないぞ」
「え、何で!? なんで殺されなきゃならないんですか!?(正論)」
「あーあー、あんまり脅しちゃ可哀相でしょ」
思いもしなかった言葉に驚愕している少年に少し庇う素振りを見せたら、縋るような眼で見てくる。
……その眼は嫌いね。
誰かに縋って自分は何もしない、怠け者の眼よ。
「……でもそうよね? 天下の将軍様に向かって自分を売り込んだんですもの。そして、将軍はこうして特例で便宜を図ってあげてるのよ? その信頼を裏切って顔を潰したら……当然だけど処刑されても文句は言えないでしょ」
上げて落とす形になった所為か、少年は白目を剥いて悶絶している。
でもそうなのよ。
封建社会で将軍って事はエスデスって騎士侯の最上位なんだから、一代限りの貴族扱いで問題ないのよ。
そして中世風封建社会で貴族様の顔を潰したら、そりゃあ無礼打ちされても仕方ないでしょ。
理解していなかったらしい現実について教えてあげると、少年はどどめ色の面白い顔でプルプル小刻みに震えている。
すごいわね、その顔色どうやったらそうなるの?
とか散々脅したけど、下士官向けの筆記試験なんてそう難しいものじゃあないのよ。
それこそローグちゃんにでも解ける程度の子供だましね。
内容は『国語・数学・理科・社会』の四種目だけ。
地球換算だと中学生レベルの児戯に等しい代物よ。
国語は簡単な文章読解問題が中心。
数学は記述問題を中心としたごく単純な数式問題。
理科は広く浅くな自然科学を中心とした常識問題。
社会は時事問題や帝国の歴史について記述する類の問題。
現代社会ならまだしも、此処は中世風のマッポー世界なのよ。
そりゃあ下士官という現実世界では高等教育以上の知識を身に着けていないと就けないような責任のある仕事でも、中世風ならある程度はレベルも下がるわ。
それこそ、中学卒業レベルの学力でも即戦力で欲しいくらいには水準を下げてあるもの。
……ちなみにローグちゃんは普通にただの天才児ね。
ボルスを頻繁に家族で家に招待していた関係でアタシが家庭教師を定期的にしてあげていたのもあるけど。
それでも小学生くらいの年齢で高等教育に手がかかるくらいには学力が伸びているんだから、あの子の将来は明るいわね。
それはさておき、各分野の出題の一部と、少年の解答を見てみましょうか。
【国語:文章】
『どんより』という語句を使って短文を作りなさい。
〈少年の解答:うどんより、ソバが好きだ〉
(正答:≪例≫雨上がりの空はどんよりと曇っている)
……アタシはラーメンが好きね。
【数学:図形】
縦10cm、横8cmの長方形Aが半径5cmの円Bよりも大きくなる事を証明せよ。
〈少年の解答:問題になるという事はAがBよりも大きくなることは間違いがないので、AはBよりも大きい〉
(正答:10×8=80㎠。5×5×3.14=78.5㎠。よってA>Bである)
……長方形の計算式くらいは書いて欲しかったわね。
【数学:文章】
貴方は、家屋の壁を塗り直す事にしました。ペンキ1Lで10㎡の壁が塗れます。
では、壁が55㎡の場合はペンキが幾らあれば足りるでしょう。
〈少年の解答:塗る人にどうにかしてもらう〉
(正答:5.5L)
……『材料が足りんと言われても不景気だからねぇ。今ある分で賄っとくれ。これ以上は、びた一文払わんからね』――って感じかしら?
現場の人間の悲哀が感じられるわね。
【理科:物理】
エネルギー保存の法則について簡単に説明せよ。
〈少年の解答:エネルギーをまず作る。箱に詰めるか、壺に入れるかして、暗い所で保存。冬は常温でもいいが、夏は冷暗所に置くべき〉
(正答:エネルギーは種類が変わっても、その総量は常に一定である)
……物理の問題が家庭科みたくなってるじゃあないの。
漬物の作り方じゃあないのよ、何と勘違いしてんのよ此の子。
【理科:生物】
昆布やワカメなどの海藻類は、海の比較的浅瀬に生息している。何故か?
〈少年の解答:深い所だと息が苦しくなるから〉
(正答:光合成をする為)
……光が届かないという意味では確かに苦しいんだけど……此の子もしかしてわざとやってない?
【社会:時事】
経済対策の一環として近年導入されたもので、省エネルギー効率の高い家電を購入すると貰えるポイントを何という?
〈少年の解答:スタイリッシュポイント〉
(正答:エコポイント)
……【スタイリッシュ財閥】が経営している店舗ではポイントカードを発行していて、此の名称のポイントが付くようになってはいるわよ?
でも、今この場でそんな事聞かれてるワケないでしょ。
【社会:歴史】
帝歴932年5月15日、当時の大臣であったツヨシ大臣が海軍の青年将校たちに暗殺された。
此の事件の名称を答えよ。
〈少年の解答:ツヨシ大臣殺害事件〉
(正答:515事件)
……推理小説のタイトルじゃあないんだからさ。
「採点終わったわよ~…………アレ、少年は?」
「なに? トイレに行ったそうだが……」
「「…………」」
「――衛兵!!」
「チームスタイリッシュ、華麗に集合!!」
――結論。
少年は脱走しましたとさ。
まあ採点が終わったけど、案の定ぶっちぎりの落第点だったものね。
本人にも自覚があったようだし、そりゃあ逃げるでしょ。
落としたら拷問の末に殺すって明言していたしね。
一応脅しっていうか発破かけただけの心算だったんだケド。
逃げられちゃったものだから、エスデスは衛兵を呼んで捕縛に動かし、アタシは手持ちの洗脳兵を派遣する。
まあ人相くらいしか手がかりがないからには、殆ど捕まらないでしょうが。
そもそもアタシの方は原作知識が使えなくなったらイヤだし、本気で捜索はしないわ。
無事に逃げ切れたら少年の勝ちよぉ~。頑張んなさ~い。
タツミの回答はテストの珍解答的なものを参考にしました。
なお、アンチ・ヘイトは念のためではありません。
革命軍陣営の扱いが帝国濁流派同様に酷いです。次回からくそみそにしてやります。敵対者は嬲るし犯すし殺します。
受け付けない場合はブラウザバックを推奨します。
帝国ルートなので革命軍への殺意全開ですが、完結出来たら革命軍ルートも書いてみたいですね。
その場合ストーリーの進行度に関係無く帝国側の戦力を殺戮出来るので話が進めやすくて良い。
シナリオ進行に合わせようとしたら革命軍を駆除しない理由が無いんですよね。出来るのにしない、って理由付けが思いつかなくて…。
ともあれ、本作では革命軍涙目ルートでいきますので。