憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト 作:社畜戦士
なお、アンチ・ヘイトは念のためではないです。
またご意見いただきました。タグに『イデオロギー』と『思想強め』を追加してみました。
アカメがそもそも革命勢力と腐敗帝国との戦争ってシナリオなので、その辺を大きく取り上げたかったんですが、そういうのが嫌いな方もいらっしゃるようですね。配慮が足りませんでした、すみません。
――報告。此方討伐組。ナイトレイド構成員二名と遭遇。彼方に戦闘の意思在り。
――了承。此方本部。増援として二個小隊を送る。また、奥の手の解放を許可する。
――了解。此れより交戦に移る。
――了承。交信終了。
――武術における心構えの話をしよう。
皇拳寺には武術の極意として「一胆二力三功夫」という考え方が在るらしい。
噛み砕いて言えば、「一胆」の「胆」は勇気や度胸、「二力」の「力」は修練で得た力や経験、「三功夫」の「功夫」は努力や研鑽を意味するそうだ。
コレは他の武術や武器術でも応用が利き、言葉尻こそ違えども此の理念に則った鍛錬方針を掲げる流派は少なくない。
実際に論理的で合理性のある考え方だし、皇拳寺が帝国最大の武門である以上は間違った理念という訳でもなさそうだ。
……だが、ドクターの教えは少し違った。
此の考え方そのものは否定しないが、敢えて言うなら「零眼一胆二力三功夫」と言うべき方針を定めている。
「零眼」の「眼」とは、即ち観の目。
心で見て、眼で見る事。
兵法には目付という概念があり、観と見の二つの目付がある。
観は心で見て、見は眼で見る事。
ソレを全てに於いて最も重要な要素と定め、その上で精神や肉体を鍛える事を奨励している。
ドクターには武術だけでなく政治や軍略などの様々な分野で教えを授けて頂いている。
その中で、あらゆる状況で視野を大きく広く持つ事が肝要と教わった。
心で察知するということを重要視して、実際に目で見ることはその次にし、近いところも遠いところも同様に感じなくてはならない。
ソレがドクターの教えにおける最重要の兵法であり、教え子たちが皆遵守している絶対の法だ。
胆力も力も功夫も、ソレを活かす為には的確な判断能力が要求される。
それ故の眼の力を養うという事。
ソレが最も大切な考えだとドクターは言う。
当然、視野を広く大きく持つ事はあらゆる分野でも求められる資質だ。
未だに若輩の身でソレを完全に身に付けたとは言い難いが、それでも昔のような猪突猛進な振る舞いは自制出来ている……と、思う。
オレ自身、冷静に対処する事で格上とも戦えるようになっているという自負がある。
「シッ!」
「クッ!」
――このように、ナイトレイド最強格と目されている暗殺者と渡り合えるのだから。
「サヨ!!」
「任せて!!」
オレの要請に応えたサヨが精霊の脚で天高く跳躍。
そのまま滞空し、毒矢を放ちまくる。
――だが、流石に札付きの暗殺者。
死角から放たれた矢の連撃も、後ろに目がついているのではないかと思える程巧みに回避される。
相手はサヨが空を跳ねた事には微かに驚いていたが、その程度で動揺を誘える程にやわな相手ではないらしい。
……改めて思うが、向こうの攻撃を一度でも喰らえば即死ってのは中々にキツイ。
一応サヨの矢の特殊効果で呪毒に対する防御は出来ている筈だし、ドクター曰く「死んでも
即死攻撃を避けるからには何時も以上に回避動作が大きくなりがちで、間違ってもスレスレで避けるなんて真似は、少なくとも俺には出来ない。
それだけでも充分負担になっているのに、アカメの攻撃は疾く鋭い。
コレを一発も貰う事無く躱し続けなければならないんだから、肉体的な疲労よりも精神的疲労の方が深刻だ。
その証拠に、これだけ短い戦闘の中でどんどん此方のパフォーマンスが落ちていっている。
攻撃の鋭さは精彩を欠き、回避はより大げさになっていく。
疲労が疲労を呼んでしまい、追い込まれていくのを感じる。
……このままではジリ貧だ。
一応神器の解放許可は出ているが、だからと言ってこんなコンディションで相手を確殺出来るとは思えない。
特にオレの神器は初見殺しの側面が強く、対策されてしまえばアドバンテージを失う。
まだ卍解に至っていないから起死回生の必殺技と呼べるだけの業も此方には無いんだ。
こんな遭遇戦で此方の手札を切るのは馬鹿らしいしな。
仮にオレの始解を見せるなら、もっと段取りを組んだ万全の態勢でやる事が望ましい。
「――とぉ!?」
「チッ!!」
~~ッ!!
今のは危なかった!
コイツ、急に斬術だけでなく徒手空拳も交えてきた。
大振りの袈裟懸けを避けたかと思えば掬い上げるような蹴り脚が飛んできた。
おキレイな道場剣術しかやってこなかった貴族様とかなら今ので終わっていたんだろうが……こちとら田舎生まれの
その程度の
…………見てきた、けど……。
今のは明らかにこっちの油断だったなー……。
……うん、こりゃ後でドクターにどやされるな。
くそぅ、此の口惜しさはコイツにぶつけてやる!
――青02。
――了。
首元に装備した無線機であらかじめ決められた符牒を送り、サヨに合図する。
此方の消耗の方が早い上に、ザンクとの連戦だ。
その上相手は即死攻撃持ち。
相手のミスや体力切れを待つのは賢明ではない。
だからこそ、此方から仕掛けなければ状況を打開できないだろう。
流石に始解の能力までは見せられないが、刀から槍への形態変化の機能くらいは見せてやろう。
――そら、次だ。
相手の呼吸を読め。
連撃の間隙を縫うようにして、サヨの強弓を目くらましに。
その瞬間を狙って刀から槍へと間合いが大きく変化するんだ。
コレなら少しくらいの手傷は負わせられる筈……!!
――よし……。
連撃が……今……此処d――「ちょっと待ったぁあああああッ!!」……タツミ?
一体何がどうなってる!?
何でサヨやイエヤスと戦わないといけないんだ!
二人がこんなに強くなっていたのには驚いたけど……俺たちが戦う理由なんてないだろ!!
そんな思いのまま俺はアカメと戦っていたイエヤスの前に躍り出ていた。
二人が剣戟を繰り広げる中、僅かにアカメが呼吸を整えようとした瞬間を狙って二人を制止する。
俺の乱入により、ひとまず此の場は戦闘が停止した。
イエヤスは振り下ろす筈だった刀を上段に構えたまま静止している。
サヨは……多分、アレも帝具の力なんだろうか? 空に立ったまま此方に弓を構えて動かない。
対するアカメもあの村雨を八相に構えて警戒の姿勢を崩していない。
……コレは、説得をしくじったらまた爆発する……ッ!!
完全に一触即発の空気だ。
イエヤス達は兎も角、アカメの攻撃を無防備に喰らえば一発でお陀仏なのに。
だが、仲裁に入った俺が武器を構える訳にはいかない。
…………此処は、俺の腕の見せ所だな。
「――アカメ、あいつらは俺の同郷なんだ。きっと話せば分かってくれる」
イエヤスが何時の間にかアカメと斬り合える程に強くなっていた事には驚いたが、ナイトレイドでも屈指の強者であるアカメと何時までも切り結べる訳がない。
そもそも村を救いたいって気持ちは一緒なんだ。
だったら、将来的に俺たちの村だけでなく帝国そのものを救う革命軍の事を話せば絶対に共感してくれる筈だ。
「……いや、無理だろう」
「は!? 何でだ!?」
だが、アカメは一顧だにする事無く俺の意見を切り捨てた。
何故そんな事を言うのかと憤るが、すぐにその理由を言われる。
「制服の意匠を見ろ……そいつらは悪名高い特務軍所属だ。特務軍の構成員は末端に至るまで全員が討伐対象になっている」
「な、なんだって!?」
特務軍。
その噂はナイトレイドに居れば良く耳にする。
征南将軍という奴の配下たちで、役職名通りに帝国南部の敵を征伐する事が主任務らしい。
そして……帝国南部の敵とは、即ち革命軍の事だ。
もうこれだけでナイトレイドとは水と油だと分かる。
だが、何もそれだけで危険視しているわけではない。
特務軍のやり様は、苛烈で悪辣、そして徹底的なんだ。
役職に則って革命組織を討伐する特務軍は、どういう方法を用いているのか分からないが密偵達を見つける事が異様なまでに上手い。
恐らくは探知系の帝具の存在があるのだろうと予想されているが、南部では一定のラインを超えると革命軍の影響力は一切無くなる。
そして、そのラインをうっかり超えようものなら、たちまちに特務の部隊がやってきて捕縛されてしまう。
特務軍が南部に配備されるようになってから、革命軍の勢力圏はどんどん後退していっているらしい。
今では全盛期の三分の二程に勢力が低下しているという。
何せ、特務軍は徹底的な恐怖政治で革命勢力を絶対に許さないのだから。
捕まった密偵や協力者たちの末路は悲惨だ。
ありとあらゆる拷問を施されて、町の真ん中で見せしめにされるらしい。
たっぷり一週間は嬲られた後、ようやく処刑される……そんな非道を平然と行うのが特務軍という連中だ。
その後の追求も酷い。
反抗勢力に少しでも関わった者は連座制で捕まり、一族郎党を賊滅するそうだ。
女子供も一切の容赦無しに処刑するというのだから、特務軍の非道さが良くわかる。
そんな悪逆な軍に所属している連中は討伐しなければならないというのも無理はない。
――だが……。
「い、いや、あいつらはきっと騙されてるんだよ! あいつらはそんな悪者じゃない!」
サヨとイエヤスとはぐれてから、まだそんなに月日が経っていない。
特務軍に配属されているのは驚いたが、特にコネも伝手も無いのは俺たち全員が一緒だった。
なら、最初の募兵で偶々運悪く特務軍に配属されてしまったってだけだろう。
だったら、あいつら自身はまだ何も悪事に手を染めていない筈だ。
南部に移らずに帝都で仕事をしているらしい様子から、虐殺にも拷問にも関わっていない事だろうし。
「俺が説得する! あいつらだってナイトレイドの事をちゃんと知ったら、必ず分かってくれる!!」
「……好きにしろ」
……良かった。
アカメが構えを解いた。
どうやら説得を任せてくれるらしい。
此れであいつらと殺し合いをするハメになるのは避けられそうだ。
「――おしゃべりはもう終わりか、タツミ?」
「な!?」
ゾッとするような冷たい目でイエヤスが俺を睨む。
声にも気安さは一切感じられず、まるで赤の他人に向けるような冷酷な声だ。
「な、何言ってんだ! 俺の話を聞けば、お前らもきっと――」
「いや、いい。先ほどのお前たちの会話を聞いていてよく分かった」
構えは崩さず、まるでこれから俺たちに斬りかかろうとしているかのような姿勢を維持するイエヤス。
……どういう事だ!?
なんで、何でお前がそんな目で俺を見る!?
やっぱり特務軍の奴らに騙されているのか!?
「――『俺の話を聞けば』、と言ったな? タツミが何を話そうとしていたか当ててやろうか?」
「……やってみろよ」
まるで出来の悪い悪童を相手にするかのように、侮蔑の顔で俺を諭すイエヤス。
……一体何がどうなっている?
「大方、「ナイトレイドは革命軍の組織で、大義の為に暗殺をしている」とか触れ込む心算だったんじゃないか?」
「ッ!!」
……図星だった。
――だが!!
「だ、だったらどうだって言うんだ!? ソレが分かっているなら、ナイトレイドが唯の凶賊じゃないって、分かる筈だろ!!」
そうだ、そうでなければおかしい。
ナイトレイドが大義の為に悪に手を染めているのを、盲目的に許せないと主張しているワケではないだろうし。
まさか帝国の闇について知らないのか?
だったらナイトレイドが私利私欲の為にお為ごかしをしているかのように思えるのかもしれない。
だったら…………。
「――そもそもの話をしていいか? 革命軍は元帝国軍人たち主体で作られた軍事組織だ。ソレは知っているか?」
「あ、ああ。……ソレがどうしたって言うんだ?」
「……ハァ……」
俺が返事を返すと、イエヤスは深々と溜息を吐いた。
まるで、「そんな簡単な事も分からないのか?」と、そう問われているような気がした。
「なんだよ! ソレが何だって聞いてんだ!!」
「……帝国軍人どもの手によって成り立つ以上、革命軍はどんなお題目を唱えようと軍事クーデターを目論む内乱組織に過ぎない。……そして、軍人たちによる武力での政権奪取が悪手であると、515事件や226事件で帝国臣民は学んだ筈だ」
…………ハ?
515……何だって?
……イエヤスは一体何を言っているんだ!?
「帝国法規は頂点の皇帝は別にしても、権力構造の変革を否定してはいない。だが、武力行使による不当な侵略行為に対しては相手が誰であっても許さないと定められている。……俺の言っている事に何か反論はあるか、
「え……あ……いや……」
「語る口も持たないか! そんな中途半端な心構えで俺の前に立つな!!」
「うぅッ!?」
イエヤスの見たこともないような鋭い視線から逃れるように、思わず後退ってしまう。
一歩。
無造作に距離を詰めるイエヤス。
下がる俺。
近づくイエヤス。
「――ぅわッ!?」
「……タツミ……」
数度そんな応酬を繰り返していれば、自然と後ろに居たアカメとぶつかる。
アカメは沈痛そうな顔で俺に目で語り掛ける。
……口に出されなくても、言わんとする事は分かる。
説得が失敗した以上、あいつらとも敵対しなくてはいけない。
「いや……でも……ッ!!」
「タツミ」
再度アカメが諫めるように俺の名前を呼ぶ。
決して強い口調でも大きな声でもなかったのに、その呼びかけだけで俺は背筋が凍った。
――アカメが、標的を前にした時と同じ眼をしてあいつらを見ていたからだ。
「――敵対するなら……葬る……ッ!!」
アカメが再度村雨を構え、イエヤスに吶喊しようとした――その瞬間。
イエヤスの口が偃月の形に歪んだのが見えた。
――瞬間、視界が真っ白に染まった。
やめて!ソードルーツの特殊能力で、村雨を破壊されたら、闇の魔術で帝具と繋がってるアカメの魂まで破壊されちゃう!
お願い、死なないでアカメ! あんたが今ここで倒れたら、タツミや妹との約束はどうなっちゃうの? 勝機はまだ残ってる。ここを耐えれば、イエヤスに勝てるんだから!
次回、「アカメ死す」。デュエルスタンバイ!
…勿論死にませんが。
ところで読者様方に質問ですが、感想などでご指摘いただいた傾向によるとどうも拙作はドクターの語りが助長的に感じられるようです。
改善点や改良策などあれば教えて頂ければ幸いです。
正直言うと設定をこねくり回す時が一番楽しいので加減が出来ないんですよね…。