憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト 作:社畜戦士
「コロ、
『モキュッ!!』
セリューの命令に従いコロが神将器を吐き出す。
ソレを危うげなくキャッチしたセリューはそのまま手にした三叉戟を手首のスナップで回転させている。
そしたらすぐに離れた此処からでも熱を感じる程の火炎が噴出した。
……アレは確か12番の【子の将器“
中距離主体の万能型三叉戟。
三叉戟の取り回しは勿論、能力により纏う業火で遠近自在に戦える、というオールラウンダー。
吐き出す炎は魔術による火炎だから、味方には悪影響を齎さないという反則級の代物。
その特性を活かして延焼させられない街中や複数の味方との共闘で使われる……んだっけ。
んー……じゃあ炎による包囲からの炎弾での支援に専念してもらおう。
丁度向こうにも銃砲使いがいるし、其方の牽制に集中して欲しいかな。
私はこんな街中では殆どの骸人形が使えないし、斬り合いに集中したいし。
……私の普段やっている任務の性質上、こういう街中とかの周囲に被害が出る恐れのある場所で戦う事ってそんなに無いから。
その結果、私の今持っている骸人形は
周りの被害を度外視すれば、超級危険種を2体も出せば御釣りが出るだろうけど……ソレはドクターに迷惑が掛かるからダメ。
だから出せるのは人型危険種が精々。
「……まあ、余裕かな」
でも関係ない。
見たところ、桃色は遠距離専門でシェーレも特に脅威には感じない。
ドクターやランとかと模擬戦で相対した時のような、肌がひりつく感じも背筋が凍るような感じもしない。
視線も鋭く敵意充分って感じだけど、アレで殺気を出している心算らしい。
此の程度なら私の素の剣技だけでも充分。
……万全を期して人型も出すけどね。
「出ておいで、【T】」
『グォオオオオオオオオオッ!!』
八房の能力によって地中から這い出てきたのは、『Tyrant』のコードネームを与えられた人型危険種の死体。
見た目は生地の分厚いロングコートを身に纏った異様な肌色の2m越えの偉丈夫。
しかしその実態は、ドクターが技術の粋を集めて改造した、人型に押し込めた危険種の
『タイラント』のコードネームの通りに、ベースに使っているのは超級危険種のタイラント。
素体であるタイラントの自己進化の性質はそのままに、徹底的な能力のボトムアップをコンセプトにしている。
その結果、癖の無い扱いやすい性能に仕上がっていて、特殊な能力に頼らずともこの子だけでも大抵の敵は圧倒出来る。
人に偽装する為に装備させているロングコートや手袋なんかの装備品も全部ドクターの御手製で、熱や衝撃を吸収する危険種の皮を鞣して仕上げた一級品。
其処に魔術をエンチャントしてあるから、防御力に関しても信を置ける。
奥の手も実装してあるから、この子単体で帝具に伍すると自負している。
ソレが、
云わば【人型超級危険種】とも呼べる怪物が2体だ。
しかも、使っている素体を此の種としては非常に珍しく兄弟で生活していた個体にした事で、此の2体はお互いにテレパシーのような交信能力を備えた。
討伐時に似たような能力を有していた気配はあったそうだけど、ソレがもたらすのは、完璧なタイミングでの連携攻撃。
常にお互いの感覚を共有する事で、コンビネーションの精度は何十年もペアを組んだかのような芸術的なまでの代物に仕上がっている。
まあ今回は対多数戦だから分散して援護してもらうけどね。
前衛型として仕上げたT1と、中衛型として仕上げたT2。
T1には臣具【桐一文字】を。
T2には臣具【トリシュラ】を与えてある。
桐一文字は与えた傷口が治癒不能になる呪いの刀で、トリシュラは伸縮自在の薙刀で、どちらも所謂『臣具』と呼ばれる武具になる。
両方とも本来癖の強い臣具としては格段に扱い易い方で、トリシュラを始めとした臣具は使い手だった昔の同僚たちが殉職してからは倉庫で埃を被っていたものだ。
暗殺部隊の首脳部であったゴズキとビルが相次いで戦死した事もあり、大多数の臣具は使用者と責任者不在のまま眠っていたのでちょっと失敬した次第。
盗んだワケじゃないよ。
ちょっと永遠に借りておくだけ。
どうせ借りられてる事にも気付けていないんだしヘーキヘーキ。
寧ろ桐一文字に関しては粉々になってたのを直してあげたくらいだしー。
「T1は私と一緒にシェーレを。T2はセリューの援護に回って。セリュー、壁お願い」
「任せてっ」
『ッ!?』
軽い調子で返事をしたセリューが一息で炎熱の牢獄を作り出した。
それによって一瞬の内に分断された二人にそれぞれ襲い掛かる。
「それっ!」
『グォオオオオオオオオオ!!』
「クッ!!」
八房は単純な刀剣としても優れた逸品だ。
切れ味鋭く、頑丈さも帝具の中でも指折り。
刃こぼれや欠けとも無縁で、特殊な樋が入った刀身は血脂が纏わりにくい為切れ味が長続きする。
こうして単純戦闘に使う際も決して武器負けしない。
「アハハ! そんな使い辛そうな刃物でよくやるね!」
『グルァアアアアアアアアアッ!!』
「くぅ……ッ!! 攻撃が、重い……!!」
私の八房による連撃とT1との連携に、シェーレは全く対応出来ていない。
辛うじて致命傷は避けているようだが、ソレも所詮は私が生きたまま捕縛したいから手加減しているが故に過ぎない。
エクスタスは“万物両断”の銘を頂いているが、武器としては三流だ。
確かに強度と切れ味は破格の代物なんだろうが、あんな巨大サイズのハサミなんて武器としては扱いづらいだろうに。
仮に余人が知らないだけで巨大ハサミにも武器としては優れた部分があったのだとしても、ソレを体系化して伝えている存在が居ないからにはアレの使い手は完全に独学でエクスタスの使い方を学ばねばならない。
もしかしたら千年前の帝具誕生時にはソレを体系化した技法が存在したのかもしれないが、今に残っていない以上はどうでもいい。
そして、目の前のシェーレもエクスタスを武器として完璧に使いこなしているとは言えないようだ。
見た感じ巨大ハサミの戦闘方法とは、刃を開かずに刺突するか鈍器として振り回すか、もしくは開いて閉じるという大きな動作で両断する必要があるみたい。
傍から見ていて、とても使いにくそう。
特に銘にもなっている“両断”の動作がどう見ても対人戦闘では活かせない。
更にシェーレはあれだけの巨大な得物を軽々と振り回すだけの膂力が無いようで、一々動作が大振りで回避しやすい。
んー……恐らくは隠形による暗殺が彼女の本領なんだろうね。
気配遮断からの、一撃必殺レベルの強力な一撃。
ソレが彼女の戦闘技法の主流で、こうして正面からの斬った張ったは不得手……といったところかな。
彼女は一流の暗殺者ではあるが、一流の戦士ではない。
……なら、やり様は幾らでもある。
「T1!!」
『ガァアアッ!!』
掛け声とハンドシグナルでT1に指示を出す。
ソレを受けてすぐさま苛烈な攻撃に移るT1。
此処まで戦った感じだと、エクスタスによる両断以外ではT1に傷をつける事は出来ないようだ。
だったら連撃でハサミを開く隙を与えなければいい。
アレはかなり隙が大きいから、こうして息つく間も無く攻め続けたらそんな予備動作を行う暇もない。
T1によって不治の傷を無数に負ったシェーレは目に見えて動作が緩慢になりだした。
私はT1を主攻にして手足の先に傷を蓄積させる堅実な戦い方をしている。
頑強で超重量、尚且つ圧倒的なパワーを持ったT1の猛攻には、流石に札付きの暗殺者でも簡単には捌けないようだ。
そうでなくとも咆哮を上げて吶喊してくる蒼褪めた肌色の巨人なんて、相対するだけで怖気を感じるものだ。……私は結構気に入ってるんだけどね。
そんな怪物を前にした以上、使役している私を狙えばいいと頭で分かっていても目の前の脅威にかかりきりにならざるを得ない。
だけど、T1は人型の範疇に収まらない代わりに性能を限界まで極めた木人形の最上級個体だ。
木人形としては最高傑作とのお墨付きを頂いているし、コピーした個体が第二軍にも相当数存在するくらいには戦術評価が高い。
素体であるタイラントの影響で自我が微かに残っていて、複雑な思考を行い自律稼働が可能という逸品。
戦術や作戦行動を理解出来るのだから、汎用性という意味では私の骸人形の中でも最上位に位置する使いやすさを誇る。
――そして、そんな圧倒的な強者を相手に戦い抜ける程の技量は無かったようで、シェーレはとうとう体勢を崩して武器が泳いでしまった。
そう確信した私はT1を突っ込ませて捕縛用の術式を準備する。
――しかし……。
「ッ!! エクスタス!!」
「っ!? 金属発光か……ッ!!」
文献に記されていたエクスタスの奥の手が発動。
強烈な金属発光で目くらましを行うという代物で、単純で隙が大きいが攻撃力は破格のエクスタスには最適な搦手だ。
此れほどの強烈な閃光を直に目に受けてしまえば、大抵の生物は一時的に視界を失うだろう。
……だが。
「甘いッ!!」
「ガッ!? な、何故……ッ!?」
私とT1の連携により、エクスタスを持っていた両腕を裁断されるシェーレ。
コレでもう抵抗出来ないでしょ。
生憎と私は普通じゃない。
ドクターの再調整を受けて寿命は人並み以上になったけど、ソレ以上に性能も圧倒的に上昇したんだから。
此の程度のチンケな明かりで私の攻撃を止められると思わない事だ。
それに、あの金属発光は何も無敵の一撃ってワケじゃない。
遮光ゴーグルでもつけていない限りは目を瞑っていても閃光の影響を受けるし、そんなのは武器を持っているシェーレが一番のダメージな筈。
アレは使用者も僅かに影響を受けるという諸刃の剣みたい。
だったら一切の影響を受けなかった私と、そもそも視覚に頼らないでも対象を認識出来るT1の前では致命の隙を晒すだけの無様なミスでしかない。
両腕を失ってふらつくシェーレだが、帝具使いは思いもよらぬ生命力の強さを発揮する事がある。
此処は油断せず追撃だ。
「もう一丁!」
「ぐぅううっ!?」
続けてT1との連撃で両脚を膝から斬り飛ばしておく。
無様な達磨になった所で準備しておいた捕縛術式で金縛りに。
コレでもう口を開く事すら出来ない。
「ふぅ……あっちはどうかな?」
……一応片方を捕縛したんだし、もう片方は逃がすべきだよね。
今二人も捕まえてしまえば、事務処理が面倒だし。
お夕飯の支度もしないといけないんだから、此処は桃色の方には撤退してもらいたい。
……まあ、味方を見捨てて逃げ出すような性質には見えなかったけど。
だったら……やっぱり心を折るしかないよね。
「……いや、でも……まさか、アレを使うのは不味いよね」
確かに
アレは少なからずこっちにも精神的ダメージがあるじゃん。
出来れば使いたくないケド…………。
「ま、あっち次第かな」
【挿絵表示】
コードネームT-type。
超級危険種タイラントを素体に改造した【人型超級危険種】。
見た目は生地の分厚いロングコートを身に纏った異様な肌色の2m越えの偉丈夫。
しかしその実態は、ドクターが技術の粋を集めて改造した、人型に押し込めた危険種の
素体であるタイラントの自己進化の性質はそのままに、徹底的な能力のボトムアップをコンセプトにしている。
その結果、癖の無い扱いやすい性能に仕上がっていて、特殊な能力に頼らずともこの個体だけでも大抵の敵は圧倒出来る。
人に偽装する為に装備させているロングコートや手袋なんかの装備品も全部ドクターの御手製で、熱や衝撃を吸収する危険種の皮を鞣して仕上げた一級品。
其処に魔術をエンチャントしてあるから、防御力に関しても信を置ける。
奥の手があるらしい…?
使っている素体を此の種としては非常に珍しく兄弟で生活していた個体にした事で、此の2体はお互いにテレパシーのような交信能力を備えた。
ソレがもたらすのは、完璧なタイミングでの連携攻撃。イメージはペイン六道。
常にお互いの感覚を共有する事で、コンビネーションの精度は何十年もペアを組んだかのような芸術的なまでの代物に仕上がっている。