憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト   作:社畜戦士

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気が付いたらナイトレイドに亀裂が入ってた。
何故だ。そんなつもりじゃなかったんだが。

補足:ナジェンダさんはまだ証人喚問の最中で、帰還できるのは他の追加の帝具使いと一緒(原作でのドクター襲撃の頃)の時です。帝具使いさんの時間が都合付かないので現在ナジェンダは革命軍本部で足止め食らってます。


File24:ナイトレイドの動揺

「――以上が、昨夜の出来事よ……」

 

 昨日の激闘から一夜明けた翌朝。

 命辛々拠点に逃げ帰ったナイトレイドの構成員であるマインは、翌朝になってから昨晩の戦闘の仔細を仲間たちに報告していた。

 先日は夜明け前に拠点に帰還こそ出来たが、全身に受けた傷と深く刻まれた精神的外傷により、拠点で仲間の姿を確認した途端に電池が切れるように気絶してしまっていた。

 其の為、一緒に任務に出向いていた仲間が姿を見せない事も含めて、先日の戦闘詳報を上げるマイン。

 

 ナイトレイドは革命軍という民間上がりの軍事結社の一部門である事から、日々の業務に然程厳格な規定が設けられている訳ではなく、戦闘詳報も書面での提出ではなく仲間達を集めての報告会のような様相になっている。

 其の為、アジトの仲間達は全員でシェーレが瀕死の重傷を負い、帝国に囚われているという事実を知らされた。

 

 その報告を受けての各々の反応は様々だ。

 涙を流すモノ、ショックを受けて呆然自失とするモノ、歯を食いしばって慙愧に堪えるモノ、そして……。

 

「……や……やった奴は何処にいるんだよ……マイン!!」

 

 義憤に駆られ、仲間の敵討ちに乗り出さんとするモノ。

 

 

 まあ早い話が「原作主人公君が激おこ」っていう。

 自分達が法を犯す殺人者集団の癖に、仲間がやられたらってやり返してやろうっていう素晴らしいダブスタぶりを発揮してくれた。

 誰かを害する以上は、何時か自分も害される事くらいは覚悟していて欲しいものだ。

 此れにはギャングスターを目指すコロネ頭も処置無しとして過去最長のラッシュを見舞う事請け合いである。

 

 そして当然の話だが、新入りでそういう裏社会の機微に疎いタツミ少年以外の全員が覚悟完了済みであり、見苦しいってんで一発強めにぶん殴られる有様。

 まあ実際どうだかわからないが、シェーレも覚悟は済ませて此の業界に携わっているハズなワケで。

 其処で余人が「やられたらやり返す。倍返s(ry」とか言い出しちゃうと、ソレはシェーレに対する冒涜にすらなり得る。

 要は彼女の覚悟を汚す話になる。

 

 

 ――という感じの事を良い感じに先輩方が時に愛の鞭を交えながら説得ロールでダイスを振るう。

 シェーレの事も見捨てる訳ではなく、機を伺いどうにかして奪還に出られやしないかと、折を見て救出作戦に打って出る心算だと言い聞かせる。

 納得したかは分からないが、理解して組織の決定に従う姿勢を見せたタツミ。

 そして彼らは「やっぱ俺らは帝具使いに抵抗するで。帝具で」的な結論で締めた。

 

 帝具使いとしての実力は革命軍でも上位に位置していたシェーレが敗れた事から、(帝具使いには帝具使いを充てるしか)ないです。という結論に達した訳だ。

 古来より厳然と存在しているその戦術は、間違ってはいない。

 超常の存在である【帝具には帝具でしか抗えない】というのは一部の例外こそ在れども一定の真理であり、純然たる事実だ。

 

 ……近代になって開発された臣具と、現代のごく最近になって発明された神器等の事を考慮しないのであれば、だが。

 

 

 


 

 

 

 今回の事に限って言えば、戦闘人形であるTや改造兵士であるクロメ等の戦闘能力は考慮しないとしても、帝国側は臣具が2基と神将器2基と帝具が2基という割と大盤振る舞いでの戦いだった。

 帝具に関しては数が拮抗していたが、生物型帝具1基と戦闘人形2騎と、熟練の戦闘巧者が2名という、戦闘参加者にしても都合2対5での戦いだったわけだ。

 もう此の時点でセオリーに当てはめていいのかどうか疑問だろう。

 

 そしてTが使用していた臣具にしたって、本来ならば『使用者に相応の力を与える代わりに大きなデメリットを強いる』という臣具の基本から外れた扱いやすい部類の代物だし、そのデメリットにしたって戦闘人形であるTには殆ど影響しない。

 

 Tは言わば自意識のある死体であり、屍鬼やゾンビ等の不死人に属する存在だ。

 既に死んでいるから、死なない。

 超常の力で死体を動かしているという存在だから、当然だが毒や薬も効かない。

 勿論アカメの村雨も効果を発揮しない。

 そして死体であるから体力消費や負担等も然して意味を為さず、術が続く限り半永久的に稼働し続ける。

 

 其の為、臣具のデメリットに関してはほぼ完全に無効化しているに等しい。

 少なくともT達が使用していた臣具は使用者に身体的・精神的デバフと引き換えに特殊能力を発揮させる類の物であり、術式で無理矢理肉体を駆動させている関係上動作を阻害する要因にはなり得ないのだ。

 

 Tは死体人形でこそあるが、自意識と肉体が存在する以上、意志の力で稼働する臣具や帝具も当然ながら扱える。

 また、帝具の中にはデモンズエキスのような使用者にも負担を強いる存在があるが、仮にTに与えた場合、特に悪影響を見せずに扱えるだろう。

 仮にTが発狂しても人格データを書き換えればいいだけの話だし、そもそも術式で完全に縛ってある状態では暴走も起こり得ない。

 

 

 ――こう見ればTがユースフルでパワフルな便利極まりない存在に思えてしまうが、生憎と其処迄事態は簡単ではない。

 

 TとはそもそもTyrantの名の通り、某生物災害(レジデントイービル)のボスエネミーを目指して製造された人型危険種だ。

 その素体には超級危険種であるタイラントが名前にあやかって使われているが、此の生物は最上級の危険種の括りに違わぬ危険性を秘めている。

 タイラントは死体であっても残留思念と呼べる自意識が残っている為、適切な処置を施さねば復活してしまうのだ。

 それも、仮に武具や防具に加工された状態であっても、その所持者を乗っ取る形で。

 

 そんな危険物そのものな代物であるからして、管理運用には細心の注意を払わねばならない。

 物品や生物すらも“複製”出来てしまう魔術を用いて安易に量産してしまえば、下手を打てば自軍が超級危険種の大量発生によって崩壊する事だろう。

 

 故に、Tの製造・運用に関しては厳重な管理体制の下で進められた。

 その結果、他の雑兵を生産するレベルでは増産出来なかったが、それでも日産でTを量産出来ている。

 コレ一騎で馴致された超級危険種以上の戦力として換算出来る為、そんな化物を日産ペースで生産可能であるというのは大きな強みだ。

 術式で完全制御下に置くまでが面倒だが、それでも超級に数えられる怪物を毎日増産可能な為、特務軍の戦力拡充に関しては外野が思う以上の勢いが続いている。

 

 その制御にしても一度支配下に置いてしまえば特別な操作を必要とせずに管理可能だ。

 完全な制御が可能という意味では、同じタイラント由来だが装着者がいずれはタイラントに飲み込まれてしまうという欠点を持つインクルシオやグランシャリオという帝具を超えていると言っても過言ではあるまい。

 

 

 

 ――総評すると、Tはそもそもにして生物型帝具に匹敵する乃至、上回るポテンシャルを秘めている存在なわけだ。

 そんな存在を量産可能で、少なくとも今回敵対した相手が2体運用していたという事実には気付けなかったナイトレイド。

 そして、神器や神将器について一切の情報を得ていないという事実もある。

 ……コレは、後々に大きな問題になり得るだろう。

 

 ――まあ、敵が()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()、という弩級の出来事に気を取られていれば致し方無い部分もあるが。

 

 

 


 

 

 

 此処で【恐怖公】及び、【≪黒棺≫】についても軽く触れる。

 あまり詳細に語れば言った方も言われた方も双方の背後にゴキブリがPOPしそうで怖いので、さわりだけにするが。

 

 【恐怖公】。体長30cm程の二足歩行する人語を解するゴキブリ。以上。

 【≪黒棺≫】。恐怖公を頂点にした真社会性のゴキブリ型危険種が住まう異次元空間。全部で五階層存在する。

 

 

 ……もう少し詳しく説明を。

 

 恐怖公自体は危険種としての脅威度がそこ迄高くない。

 低ランクの3級相当がいい所だろう。

 実際、単体での攻撃力や影響力等はギリギリ危険種の範疇に入るか入らないかという程度で、下手するとヒグマやライオンのような普通の肉食動物の方が強いとも言える。

 

 ……だが、それでも()()が危険種である事は間違いない。

 彼女の最大の脅威点は、驚異的な生命力や身体能力や万物を捕食可能な食性でも無く、一日に単為生殖で数千単位の眷属を生み出すという桁外れの繁殖能力にある。

 頂点の恐怖公自体は危険種としては弱い部類だが、成長しきった恐怖公の眷属達は特級危険種として扱われ、最大サイズの眷属が犇めく階層の<<黒棺>>は群れ全体で超級危険種として扱われる。

 

 孵化直後の眷属は5cm程度と一般的なゴキブリの成体と大差ない大きさだ。

 勿論普通のゴキブリと比べたら体躯としては破格の大きさだろうが、生憎と彼らの恐ろしい部分はその先にある。

 彼らは餌の充実度にも影響されるが、眷属は最速で成長すれば1カ月で最大サイズにまで生育してしまう。

 その最大サイズは2m級になる。

 

 

 ≪黒棺≫は全部で五階層に分かれている。

 5cm~15cmまでの幼生が住まう【第一階層:青】。

 15cm~30cmまでの幼体が住まう【第二階層:赤】。

 30cm~50cmまでの亜成体が住まう【第三階層:黄】。

 50cm~100cmまでの成体が住まう【第四階層:白】。

 100cm~200cmまでの成熟体が住まう【第五階層:黒】。

 

 前回シェーレが取り込まれたのは最低階層の第一階層であり、アレでもまだ手加減された状態だ。

 そもそも攻勢に出れば文字通り草の根すら残さず万物を捕食して殲滅する事が可能なのだから、攻撃自体は一切していないのだし、下手人であるセリューも手心を加えたと主張する事だろう。

 ……まあ、普通の人間が全身を体内に至るまで隈なくゴキブリが這いずり回った状況で正気を保てるかは怪しいものだが。

 

 

 

 ともあれ、恐怖公の本当の恐ろしさにはシェーレを蹂躙したアレよりも上が有るという事が分かってもらえたと思う。

 その上で言うが、昨夜セリューはこう宣言していた。

 『次はオマエだ』、と。

 

 セリュー本人からすれば、面倒事を避ける為に言い出した「これ以上ちょっかいを出すのならオマエにも公を嗾けるぞ」、という程度の特に考えての発言ではなかった。

 故に、次回またマインと遭遇したからと言って、『何が何でもゴキブリ風呂に入れてやる。絶対にだ』……と思っている訳では無かった。

 というか内務局の方針として自軍に被害が出ない限りはナイトレイドのような革命勢力は放置する心算だから、完全にマインの取り越し苦労なのだが。

 

 しかし、言われた本人からすれば強烈なトラウマになってしまっている。

 その結果、シェーレ奪還作戦にも原作のような「アンタはアタシが必ず撃ち抜く!!」という不退転の決意を込めての参加とはならなかった。

 寧ろ出来れば後方支援に回りたいまである。

 なんせ「セリュー達との遭遇=蟲風呂」である。

 女として、人間として絶対に避けたいと思うのも致し方ない。

 

 

 そんな後ろ向きな気持ちを周囲の仲間達が察しない程に鈍感という筈もなく、奪還作戦に出る前にその不安要素をどうにかしようと全員での話し合いの場が設けられた。

 そして、此の時点では色々と未熟なタツミがマインに突っかかってしまう。

 原作でも将来的に相思相愛の仲になる二人はツンデレのテンプレをなぞるような付き合い方をしており、現時点ではまだお互いにツン全開だ。

 そして、お互いに好意を自覚していないので、現状では「妙に高圧的な女と無駄に吠える男」という間柄にしか思っていない。

 

 其の為、売り言葉に買い言葉で会話がエスカレートしていく。

 其処でタツミはマインをこう(なじ)る。

 

『シェーレを助ける気が無いのか、お前は!?』

 

 勿論マインも情の深い少女であるからして、信頼していた仲間を救出するという意向そのものには否やは無い。

 常ならば自信過剰な面もある彼女は、こういう場面ならば大言壮語を口にするであろうという周囲の認識からすれば、妙に感じるというのも当然の話だろう。

 

 だが、肝心の心が圧し折れている以上はそうビッグマウスも吐けない訳で。

 そして内心の自由が保障されないマッポー世界である帝国では心が折れた将兵は無能扱いされる。

 そんな内心の葛藤を理解しようとしないタツミにブチ切れたマインも、思わずこう吐き捨てる。

 

『アンタは体長10cmのゴキブリに全身を這い回られた人を見た事が無いからそんな事を言えんのよ』

 

 

 

 そっから先は罵声が罵声を呼ぶ地獄絵図やね(暗黒微笑)

 

 

 

 ――結果、後日決行されるシェーレ奪還作戦にはマインを不参加とする事が取り決められた。

 此の事が後々、どういう影響を及ぼすのかはわからない。

 だが、決して良い方向へは転ばない事は確実だろう。

 

 ……まあ、仮に刑場を特務が取り仕切っていた場合の作戦難易度はルナティックどころじゃあないんだが。

 彼らのご冥福をお祈り申し上げます。




ナザリック名物蟲風呂は良い文明です。

次回は番外編を挟みます。
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