憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト 作:社畜戦士
原作では一瞬だけ出て三獣士に瞬殺された方。
Gとかで受けた精神的ダメージを癒すための箸休め回です。
可哀そうは可愛い。不憫可愛いですねスピア…。
「…………ヒック…………」
午前零時。食堂。大時計が一日の終わった事を示している。
私は空の酒瓶に囲まれて夢現の中に居た。
此処でお世話になって丁度一カ月目を酔夢の中で迎えてしまった……。
ああ……最後のワインを飲み干してしまったので、次のボトルを取りに行かないと……。
まだまだ飲むぞ私は…………。
「あらやだ。随分荒れてるわねぇ?」
「……ドクター……?」
酔いが五臓六腑に染み渡って意識が朦朧としていた時分だったのですぐには判別が付かなかったが、対面の席に此の邸宅の家主であるドクターが座っていた。
「まだ飲むの?」と言いながらも特に咎めたりはしないようだ。
どころか、見た事のない新しい酒瓶らしきモノも持ってきてくれた。
わぁいおさけ。すぴあおさけ大好き。
「ホラ、一緒にコレでも食べなさい」
そう言ってドクターは何かの小壺を差し出した。
……壺?
何が入ってるんだろ……。
「……何です、コレ」
「佛跳牆」
「ハ?」
「いや、だから、
ふぉ、フォーチュン……なに?
「お酒の飲みすぎにはタウリンやタンパク質やビタミンB1なんかが有効なんだけど、それらを高濃度に含んだ乾物とかを長時間かけて煮込んだスープよ。……まあ蓋を開けてみなさいな」
「は、はぁ……」
……よく分からないが、私の飲みすぎを心配して体に良い物を持ってきてくれたらしい。
なら、そのご厚意に甘えよう。
丁度アテも無くなりかけていた所だし。
乾物も好きですしね。
……でも、『乾物の煮込み』?
行軍食とかで私も食べた事があるけど、乾物の戻し汁なんてそんなに美味しいモノでもないでしょうけd――
「――ファッ!?」
意識が、飛んだ。
気が付けば、目の前には空っぽの壺と、意地汚く匙を舐る私を可哀相なモノでも見るかのような表情で眺めているドクターがあった。
「……コレは一体……」
……間違いない……私は
「いや、そんなワケないでしょーに」
「……デスヨネー」
なんでも此の料理の名前の由来は「あまりの美味しそうな香りに修行僧ですらお寺の塀を飛び越えて来る」というモノらしく、確かに蓋を開けた瞬間からもう既に脳が美味しかった(錯乱)
何かの古典噺のように「香りだけでご飯が食べられる」と断言出来る程だ。
どれくらい美味しいのかって言うと……凄い美味しい(語彙崩壊)
意識が飛ぶくらいおいしい。
「……コレ、また食べたいですね」
何なら週一で食べたいくらいだ。
美味し過ぎてもう脳が溶けそう。
「うーん……残念だけど今回のはあくまでもお試しだったからね。コレ、作るのに物凄い手間暇がかかるのよ?」
そう言って材料や調理工程を軽く説明して頂いたが、成程。
確かに一朝一夕では作れる物ではないだろう。
主な材料は干しアワビ(もう既に高級)、干し貝柱(うん高級)、フカヒレ(高級ぅ)、サメの尾ヒレの付け根部分(魚唇って食べれたんだ)、魚の皮(そこ食べるの?)、魚の浮き袋(食べれたんだ)、白子、干し海老、するめ(!?)、金華火腿、干しナマコ(ハイ高級)、干しシイタケ(高級ね)、干しナツメ、鳩の卵、豚の筋、豚ヒレ肉、鶏胸肉、アヒル肉、朝鮮人参、干し竜眼、枸杞子、紹興酒、オイスターソースなど。
料理人ごとに、あるいは食べる者の予算により使われる食材と調理法が異なってくるため、必ずしも一定のレシピがあるわけではないそうだ。
実際にはドクターはこの他に更に数十種類の材料を仕込んで作るらしく、そのレシピは門外不出と豪語していた。
まあ、私は料理人になる気は無いから詳しく知る気も無いんですが……。
……『料理人になる気は無い』、かぁ……。
そんな選り好みしている場合じゃないんだけどね……。
端的に言いましょう。
チョウリ元大臣の一人娘である私、スピアは無職です。
それも唯の無職ではありません。
就職を諦めた『ニート』と呼ばれる存在です。
……『働く意思も修学する意欲も職業訓練をする心算も無い若年層』の事を、昨今帝国では『NEET』と呼称しています。
貴族層を中心に「労働せずとも年給が支給される」層は昔から此の帝国に相当数存在していました。
そういった方々は今迄なら芸術活動や研究開発等の道に進むという傾向があったものですが、最近ではドクターの活躍もあって生産効率や国内総生産等々が著しく向上していった為、文字通り働かないで生活するような人々が生ずるようになってしまいました。
昔では考えられない話なのですが、そういった状況に甘んじた貴族の徒弟達の一部が就労や就学を拒否して、その結果「金だけは要求する何もしない無職の若者たち」がぽつぽつとみられるようになってきてしまったんです。
……いや、私はそういうクズとは違うんですよ?
私だって働けるんなら働きたいです。
…………でも、私を採用してくれる職場が何処にも無いんじゃしょうがないじゃないですかぁ…………。
酒! 飲まずにはいられない!!
ヒック……事の発端は丁度一カ月前の話になります。
オネスト大臣に公職を追われ刺客すら放たれた事で命の危機を感じ、都落ちするに至った我が父チョウリ。
しかし、とある方のスカウトを受け、現在では帝国に帰還してその辣腕を振るっています。
その方は自身の派閥の領袖としてオネスト大臣にも負けない程の権勢を保持しており、父を始めとした多くの役人の方々の後ろ盾になってくださっています。
そのお方、Dr.スタイリッシュ殿は色々と噂のある人物ですが、父から言わせれば『清濁どころか善悪正負聖邪汚毒怨恨恩讐……総てを飲み干す事に躊躇いが無いだけよ』……とのことです。
正直言って私にはよく分かりませんでしたが、父が悪人の世話になるような判断をするわけがないし、実際に会ってお話したドクターの印象も悪い人ではなさそうでした。
確かに善人では無いでしょうが、悪人とも言い難い。
充分外道と言っていい程の経歴を持っていますが、だからと言って非道であるかと言われればそれも違うでしょう。
少なくとも帝国という“国”に対しては忠実な存在だと感じました。
まあドクターの評価は兎も角、父はドクターの派閥に組み込まれる形で帝都に復帰した訳です。
そのおかげでオネスト大臣の魔の手も伸びてこないし、何ならドクターのお宅でご厄介になっている関係上常に身の回りを警護して頂いている状況で。
そして食事も父が幾らかお気持ちをドクターに収めているそうですが、ソレとは関係無く毎日美味しい御食事を頂いています。
食材の多くがドクターしか入手出来ない関係上、正確な値段が付けられないんですよね。
希少価値と見れば高額に設定してもいいんでしょうが、ドクターから言わせれば「受給者が個人単位でしか存在しない財は無価値なモノとして算定されるものよ」とのことです。
……経済の話はわからないですよぉ……。
ともあれ、そういう事情から衣食住の過半が保証されている我が家。
そして私は生来の武骨者ですから、衣服に関しては元から持っていたもので充分だと思っています。
つまり、衣食住が十全に完備された状態という事になります。
父は勿論ドクターの派閥で働いていますが……問題なのが私です。
私ももう18歳。
此の国ではもう所帯を持って子供がいてもおかしくない年齢です。
……というか結婚適齢期は大分過ぎていますけどね。
まあそんな年齢ですから、父のお金でぐーたら過ごすわけにもいきません。
流石に何処かでご奉公をして、お給金を頂いて…………あと、出来れば彼氏が欲しいです(切実)
しかし、そんな私の思惑は“現実”という奴にいとも容易く打ち砕かれてしまった。
幾つかの、根本的且つ致命的な問題点が存在したからです。
まず、私が何処かでご奉公しようとしたんですが、まあ当然ですが自宅(ドクターの邸宅ですね)から近場でなければいけません。
下手に遠方へ住み込みなりでご奉公に出ても、オネスト閥に襲われる危険性を上げるだけですから。
まさか私が働く為に誰か護衛の方を派遣して四六時中護って頂くわけにもいきませんし。
その護衛の賃金を払えるならまだしも、オネストは下手すると帝具使いを嗾ける危険性すらあるんですよ。
そんな化物から守れるような強者を雇うお金……?
一体何の仕事をすれば払えるんですかね(白目)
そして次の問題点ですが、コレも当然の話ですがオネスト閥とは関わりのない場所、最低でも店舗や施設等で働かねばなりません。
単純に身の危険というのも勿論ですが、長期的にはオネスト閥に利するような真似を父の娘である私が行ってしまっては、笑い話にもなりません。
例えばですが、オネストの私兵を鍛える為に連中の手の内の道場で出稽古なんてしてしまえば……私は父の邪魔をするどころか積極的に父を殺しにかかっているようなものじゃないですか。父を殺すための兵士を育てるんですから。
そもそもドクターに教えて頂いて初めて知ったんですが、オネストは皇拳寺の錬士という免許皆伝の更に上の奥伝という段階にあるそうです。
当然ですが皇拳寺とは結構ずぶずぶらしいですよ。
……つまり、皇拳寺関連で働くのは無理、と。
そして、最後にして最大の問題点なんですが…………そんな条件をクリアしたうえで私を雇ってくれる場所が無いっていう……。
何故って、単純にわたしののうりょくぶそくですよ…………。
私って今迄父の護衛の真似事をしてきた関係で、そこそこ腕前に自信があったんです。
皇拳寺槍術の免許皆伝ですから、名実ともに私は一廉の達人を名乗ってよかったハズなんです……。
まあ、確かにそれ以外は書類仕事も事務処理能力も生活能力も、他の仕事の多くを出来るような器用な性質じゃないのは自覚してましたよ?
でも、父と何時か帝都に戻った暁には、その武辺で仕官でもできれば……そう、考えていたんです…………。
『仕官には最低限の事務処理能力が無いとダメ』って、知りませんでしたよぅ…………。
いえ、ドクターの麾下以外ならそうでもないらしいんですが、ソレだとつまり他の軍部に属する事になりますから。
……でも、ドクター麾下以外でオネスト閥の手が及んでいない軍部なんてもう残っていないんですよ。
通常の軍部とは別系統である大将軍麾下の近衛軍ならオネストも手出しし難いそうですが、そんなガチガチのエリート部隊にぽっと出の私が入り込める余地なんてないでしょうに。
というかそんなエリート部隊に入隊するには身分もそうですが、高い知性が必要で、つまり同じ事じゃないですか。
入隊試験の筆記問題で落とされますよ。
……そういう事情で、ドクターには彼の運営している財団や内務局や特務軍等を紹介して頂いたんですが……。
確かに、それらの職場なら安全面や政治面などの全ての問題点に抵触しません。
……でも、全部試験で落とされました…………。
履歴書ってなんですか……? 面接試験……? 自己PRってなんですか……? 軍属なのに筆記試験があるんですか……?
私は無職の七光り。
リアルに敗れた敗北者。
今日も今日とて飲んだくれ。
酒飲み管巻くゴクツブシ。
きっと明日も酔い潰れ。
~すぴあ~
……一句できちゃった。
そう、今日も私は飲んだくれている。
親の金で、酒飲んで、めっちゃ吐いてる間に。
リア充共は笑う。
それも、すごい楽しそうに。
「ウフフ……イェーイ! 私って不健康ーッ!!」
面白くない事を考えていたら気分が沈んできたので、考えだけでも気持ちを上向かせる為に声を出してみる。
……そう、私は今、現実逃避をしているのである……ッ!!
「まだまだイクよぉー!!」
よぉーし、ドクターに持ってきていただいたチョコレートリキュールとやらをいってみましょうか!
もう名前だけで美味しそうじゃないですか!
どんな味なのかナー?
やっぱ甘いんでしょうかねぇ?
「……ハァ、ちょっとスピアちゃん?」
「……ふぇ?」
酒瓶の封を開けるのに四苦八苦していたら、対面のドクターが可哀相なモノでも見るかのような顔をしていた。
おお、そういえば態々こんな時間に来られたんですし、何かお話があったんでしょうね。
「……ですが今はお酒ですよっ」
こうやって封を……おおっ!?
こ、この芳醇なチョコレートの芳香は……ッ!!
ど、どれどれ? 早速一口いってみましょう……。
「…………美味ッ!?」
美味しい! 文句なしに美味しいです!!
チョコレートそのものじゃないですか!!
まさにチョコレートのお酒ですね!!
うふふふ……お酒おいしー!!
「……あたまいたい……」
翌日。
完全に二日酔いですねこれは……。
いつもよりはマシな方ですけど……。
「うぅ……のどかわいた……」
お水を貰いにいきましょうか。
……っと、その前に服を着ないと。
何時かみたいに寝ぼけて全裸で男性陣とバッタリ遭遇とかしちゃえばえらいことです。
「ふぁああ…………ん?」
…………?????????
何で……?
なんで……ドクターが一緒に寝てるんですか??????
しかも全裸……??????
………………アッ!!
ああああああああ!!!
思い……出し、た……ッ!!
お酒の勢いで……ヤっちゃいました……。
ていうか不味い……ドクターに手を出したら彼の囲っている女性陣に睨まれるのでは……?
「――おはようスピア。昨日の事は覚えているか?」
「ぴぃッ!?」
え、えええええエスデス将軍!!?? 何故ベッドの下から!!??
すいません許してください!
何でもしますから!!
ん? 今なんでもするって言ったよね?
私は自分が読みたいような、好きな展開の二次創作をしています。ソレを投稿していたら、作品の目次ページ最下段に【読者層が似ている作品】が表示されるじゃないですか。コレが面白いくらいに私の好みに合うんですよね。
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