憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト 作:社畜戦士
多分原作ではそんなに圧政について設定していないと思うので独自設定です。
帝国の非道振りを表現する為の説明回です。長くなったので何回かに分けます。
――帝国の圧政に対して、南西にいるバン族が反旗を翻したわ。
まあ帝国は苛烈な植民地主義を地でいく大帝国ですもの。
そりゃあ支配地域への搾取は苛政や圧政という言葉では言い表せない程に激烈で悪辣なモノになりがちで、蜂起するのもシカタナイ部分があるのよね。
帝国の国是を某DDD大王風に言えば、「我が国はあくまで独裁国、悪の枢軸ZOY」って所かしら。
開き直りどころかソレを正義と妄信しちゃってるからねぇ。
まあ傀儡皇帝にモノを考える頭は無いし、実際の最高権力者であるデブは我欲を満たす事しか考えていないんですもの。
そうなれば周辺諸国や支配地域の他民族を搾取対象としか見ないのも郁子なるかな。
しかも、侵略戦争を仕掛けて攻め取った異民族の住む地域に遠慮とかしないわよ。
ただでさえ帝国はエスノセントリズムを突き詰めた自民族絶対主義で、ソレを中世的世界観に即した結果歯止めが利かない状態なんですもの。
コレが仮に現代社会でやった場合は流石に周辺諸国との兼ね合いがあるから抑止が働くけど、此の世界には国際条約も国連も人権保障の仕組みも無いんだから。
だったら我意で人権侵害を是として他国への搾取や略奪・虐殺を率先して行う危険な独裁国家が存在しても、ソレを窘める為の体制がそもそも無いって事よ。
そりゃ、帝国が腐敗から好き勝手に振る舞うってモンでしょう。
で、実際にバン族(原作者的に蛮族から名付けられたのは言うまでもないわ)がどんな風に圧政を受けていたか。
まず、税率は9公1民よ。
他所は8公2民だから、民の取り分が一般の帝国臣民の半分と考えれば確かに重税よね。
勿論地球の現代的に考えれば発展途上国ですらもう少し真面な税率をしてるんだし、文句なしに苛政であると言えるわ。
ただ、日本だと戦国時代とかなら8公2民くらいは普通にあって、某甲斐の虎とかが本貫地以外の攻め取った領地に課した税率ならこの程度は珍しくないのよ。
此処は現代との認識の差異だけど、自国と支配地域とで格差を設けるのは中世的価値観では何も可笑しな考えではないし、戦争に敗れて従属した民族や地域に配慮なんてする必要は無いってのは、国際条約や人権条約の存在しない此の世界では当たり前の考えよね。
まあアタシとしては生かさず殺さずで永く搾取するべきだとは思うけど。
彼らには未来があるのよ。
惨めな農奴としての未来が。
精々末永く隷属して欲しいものね。
そして、徴税に係わる事だけど、帝国はバン族に対して税の取り立てを厳格に行ったわ。
その中でも一番の標的とされたのは、連中の土地よ。
攻め取って従属させてすぐに重税を敷き、税そのものも重くする。
その結果、多くのバン人が先祖伝来の土地を差し押さえられて競売に掛けられる事になったわ。
というか前提として、『狩猟農耕民族』と言えるバン人が、いきなり帝国式の法律を押し付けられて真っ当に管理できるワケ無いモノ。
何が何だか分からないままで父祖より受け継いだ財産を没収されて、路頭に迷う事になったのよ。
その結果、連中は土地が無いから農業が出来ないし、住居も追い立てられてゲットーに押し込められる事になったわ。
コレによりバン人は食糧生産すら覚束なくなり、生活が完全に機能麻痺したのよ。
此処に追い打ちをかけたのが、帝国により入植した連中により綿や藍なんかの商品作物の強制栽培が実施された事ね。
食糧生産を削ってまでソレは強行されたから、当然だけどバン人が消費するべき食糧が著しく減少したわ。
その結果何が起きたかって言うと、まあ飢餓地獄ね。
金がない、あってもそもそも食べ物がない。
バン人たちはたちまちの内に大飢饉に見舞われ、多くのバン人が餓死したわ。
しかしその程度で手を緩めたりしないのが帝国クォリティ。
栽培されている商品作物の中にはアヘンも含まれているのよ。
で、貧困や飢餓をごまかす為にソレをバン人に蔓延させる。
その結果バン族自治区は地球の清国の末期みたいな状況になったわ。
そしたら、アヘンの使用を理由に弾圧弾圧そして弾圧。
マッチポンプとすら呼べない醜悪なナニカね。
勿論、帝国法規でもアヘンの栽培・精製・売買・使用の全てが重罪として設定されているというのは前提としてあるわよ?
でも帝国政府の命令で強制栽培させた作物を、使用したのならまだしも大前提の栽培した事を理由に弾圧しちゃうんだからダブスタどころじゃあないわよね。
当然のように強制栽培を命じた官吏は特に罰される事は無いし、何ならコレに清流派が一切関わっていないなんてことも無いのよ。
清流派を自称する連中には色々いるけど、その中でも他民族に対しては搾取しても問題ないと考えてる自称清流派は普通に相当数存在するんですもの。
まあそういう連中はアタシがそもそも粛清していないし、言っておくけどナジェンダとかの清流派の派閥にそういうのが一人もいないって事はあり得ないわ。
大前提として清流派を名乗る連中は結局のところ幾つもの派閥が乱立している状況で、政とかそっちのけで派閥争いに終始している馬鹿共の群れでしかないのよね。
御大層な政治理念を掲げるのは結構だけど、理想主義過ぎて現実を見ていない馬鹿とか、能力が無い癖に志だけは異常に高い馬鹿とか、仕事はしない癖に声だけがデカイ馬鹿とか、そんなのしか居ないのが現状なのよ。
勿論中にはチョウリ元大臣のように比較的マシなのはいるし、大臣の悪政に抵抗するという志そのものは決して悪いものではないわ。
ただ、所詮は中世の人間で、象牙の塔の住人でしかないのよね。
中身が伴わないなら、革命が為ったとしても其処から始まるのは別の独裁者による新しい圧政よ。ソレなんてジャコバン派かしら? 暗殺の天使呼ぶわよ。
ま、アタシとしてはそんな馬鹿共にかかずらう心算も無いから、ゆくゆくは一斉駆除を行う予定よ。
精々残り短い余生を無駄に浪費していればいいわ。
さて、帝国が異民族に対して敷いている悪法は数あれど、その中でも最も悪名高いのが【国内産業保護促進法】の存在よ。
コレは端的に言えば『帝国臣民の産業活動を保護する為に異民族に対してありとあらゆる超法規的措置を許可する』というとんでもない代物なの。
此の法の下では異民族に対する殺害すらも許可されていて、実際にソレが為されたからこそバン族は蜂起したのよ。
そもそもバン族では綿花の栽培が古来より盛んで、綿織物産業は伝統工芸として高い価値が付けられていたわ。
帝国に侵略されて従属して久しいけど、それでも高い付加価値を持った綿織物はバン族にとっての通貨獲得手段として高い位置づけが為されていたの。
ただ……そんな高品質な産物が帝国内部の異民族自治区に存在するのよ?
そりゃあ邪魔だから弾圧されるでしょ。
保護法により正義の名の下で実行された弾圧。
まずバン族の綿織物産業に関わるありとあらゆる分野で不当な重税が課せられたわ。
原材料の栽培・売買・紡績・保管・所持・etc……。
それらの全てに別個で重税を課し、少しでも支払いが滞れば即座に投獄して財産没収。
名目上は禁止こそしていないけど、実質的には帝国によるバン族の綿織物禁制運動でしかないわよ。
そしてそれでも綿織物に拘りを持って何とかして細々と生産を行っているバン人に対して、帝国軍人による保護法違反の検挙が待っていたわ。
と言っても皆殺しにしてしまえば帝国の財源を無為に削る事になってしまうんですもの。
だから虐殺の代わりに行われたのが、
十本の指が全て無くなってしまえば繊細な綿織物工芸なんて出来っこないのは自明の理。
一応それでも鉱山労働や建設工事や土木工事や職業軍人なんかの中の単純労働に関しては従事できないことも無いから、そういう生きる希望も夢もブチ壊されたバン人たちはマンハントによって狩られて出荷される流れになったわ。
というか末期では綿織物に関わっていようといまいと碌な証拠も無くとも勝手に断定されて、人狩りに遭って帝国各地に出荷されて重労働をさせられる状態になっていたケド。
他にも様々な悪法が敷かれていて、異民族の武器所持を禁止する【異民族武器等所持取締法】。
異民族の出版・言論・教育の弾圧をする【土着文化制限法】。
異民族が公職に就く事を禁止した【帝国臣民公職保護法】。
安全保障の名の下に帝国人が一方的に異民族を殺傷可能にした【帝国臣民安全保護法】。
異民族自治区に対して帝国内部とは独立した税を課す【帝国経済優越法】。
ざっと上げただけでもコレだけの不平等な法律が敷かれているけど、中でも治安維持法に相当する【異民族捜査協力要請法】が特に凶悪ね。
コレは大体次のような内容の法案よ。
・嫌疑ある異民族は逮捕状なしに逮捕できる、かつ裁判なしに不定期間監禁できる。
・被告には弁護人も証人も控訴も認めない。
・裁判は公開でなく秘密審理によって行う。
・被告に対しては告発事項以外の罪も宣告できる。
・訴追にあたっては証拠を必要としない、現場にいない者の証言を採用することもできる。
・自白のためにはいかなる手段を用いてもよい(つまり拷問もできる)。
此の法案が通った事によってバン族のみならず、その他大勢の異民族達に対する一層の締め付けが行われる事になったわ。
しかも、合法的に。
此の【異民族捜査協力要請法】によって公権力は異民族を特に瑕疵が無くとも逮捕拘留の後に処刑する事が可能になったの。
今迄は公的には帝国所属の異民族の人権侵害は許されておらず、実際は法で裁く事が不可能とはいえ黙認という形をとっていたに過ぎなかったわ。
でも、此の法の下では公然とその悪事が許可され、剰え推奨している節がある始末よ。
究極的には此の【異民族捜査協力要請法】が帝国法規として帝国全土に発布された事が直接的なバン族蜂起の原因と見るべきね。
なんせ、『異民族に人権を認める事は無い』と帝国が公的に宣言したに等しいんですもの。
傀儡が何も理解していないからこんな悪法が罷り通るとはいえ、帝国上層部に異民族に対する蔑視が根強く残っているのも問題よ。
文武百官打ち揃ってとまでは言わないけど、少なくない帝国人が異民族を排斥して搾取する事に賛成しているのは事実。
そして、そんな差別主義が蔓延していたからこそ此の法案は通ったワケで。
帝国属領にある異民族自治区は数あれど、抵抗運動が最も盛んだったのがバン族自治区だったの。
そして、此の法案の施行によって弾圧からの虐殺が合法化された。
そうなれば後は坂道を転げ落ちるかのように抵抗と弾圧のエスカレーションが起きるわ。
結果、バン族自治区全体で一斉蜂起が発生。
動ける者は老人から幼子まで総動員しての武力蜂起よ。
その総数は弾圧によって僅かに1万人程度まで減っていたけれど、その殆どを全賭けしての大博打。
まあ座視すれば滅亡してもおかしくはないんですもの。
ならば此処でイチかバチかの反乱に出てもシカタナイね。
そして、ソレに対して帝国は大臣の差配で西軍と中央軍の混成鎮圧部隊12万人を派遣。
古典戦術学においてすら勝敗が明白な圧倒的物量差で、余程の愚将でもない限り帝国の負けは有り得ないとされたわ。
が、しかし。
辺境の
毒沼や大河や険しい丘陵地帯などの天嶮が進軍を妨げ、害虫の群れや疫病等の蔓延が士気を下げ、多数生息している猛獣や危険種が容赦なく兵士たちに襲い掛かったわ。
こういった自然の猛威によって、遠征軍はどん底まで疲弊してしまう始末。
しかも、其処に地元でピンピンしているバン族たちが夜討ち朝駆けを決行するものだからたまったものじゃないわ。
圧倒的戦力比でありながら、帝国軍は叛乱の鎮圧どころではなくなってしまった次第ね。
其処で焦った帝国(というか大臣)は、確実に敵戦力を屠る事が可能な人員を派遣する事を決定した次第よ。
具体的には、エスデスとアタシとナジェンダの三人もの将軍を一度に投入するという大盤振る舞い。
まず、大臣派閥からの刺客という意味合いで、ヤツの派閥の最高戦力のエスデス。
派閥の勢力的にはオネスト閥に伍する権勢を持つが故に政治的なバランスをとって中道派からアタシが。
そして、清流派諸兄の横やりで『まだ若いが実力派の将軍(笑)』であるナジェンダを。
エスデスに関しては何も難しい事情ではないわ。
彼女の帝具なら都市一つを一方的に攻略する事も可能だし、敵に対して容赦するような生易しい性格じゃあないもの。
賊滅するか間引きをするかは現場での判断に任されているけど、「惨い見せしめを行うように」という正式な指示が出ているんだから、ドSのエスデスはこれ以上ない程の適任者よ。
そしてアタシもね。
特務の最精鋭を引き連れての参戦となったけど、ぶっちゃけ始めからアタシ達に任せておけばよかったのに。
政治的なやり取りの結果、最初は西軍と中央軍から派兵という中途半端な決定が為されてしまったんですもの。
位置的にも南部を統括するウチ単独か、最悪は西軍と特務軍の混成軍にすべきでしょ。
ソレを態々、中央軍を巻き込んでの大規模遠征なんてねぇ……。
まあやっちまったモンはシカタナイね。
精々鎮圧作戦の遅れを取り戻す為に全力を挙げるとしましょう。
しかし解せないのがナジェンダよ。
派閥の武功を欲した生き残りの清流派共の横やりでナジェンダ将軍が追加派兵に組み込まれてしまったけど……此奴必要かしら?
彼女がどんなにやり手の知将だったとしても、本件における最大の問題は地形的・風土的・環境的障害よ。
そんなのは凡そ智謀の類でどうにかするべきモノではないでしょうに。
本件では入念な事前情報の収集と、状況に即した兵站の拡充こそが求められているのよ。
ソレを「ナジェンダ将軍は若いですが実力派です!」とかほざいてねじ込んでくるとか……。
少なくとも今回の軍事行動に対して無意味で作戦行動に悪影響を及ぼす政治的介入を行った事で、ナジェンダを含めた清流派共の評価は大きく低下したわ。
その事に気付けずに、「濁流派共の専横で今回の武功が揉み消された!」とか喚かないといいんだけど……。
2~3続けて反乱鎮圧編ですが話は特に進みません。