憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト 作:社畜戦士
《LESSON02:基礎を作ろう》
練兵の基礎の基礎。
意識を訓練から鍛錬へと引き上げたことだし、さっそくだけどウェイブちゃんにも死んでもらおうかしら。
――っと、その前にみんなを蘇生させなきゃね。
あらかじめ刻んでおいた復元呪詛に魔力を供給することで逆再生のように復活していくイェーガーズ諸氏。
粉微塵に爆発四散した子たちも世界に刻印された術式によって空間から生えるかのような有様で黄泉返っていくわ。
うんうん、問題は無いようね。
順調に再生が進んでいるのを確認出来た事だし、お次はウェイブちゃんを苛め抜くことにいたしましょうか。
まずは肉体改造(物理)からかしらねぇ……。
「――なんで……」
「あら?」
頭の中で目の前のイケニエをどう料理しようか思案していたら、何やら少年は覚悟キメちゃった感じに此方を睨みつけていた。
「なんで、こんな!!」
「うん?」
薄っすらと涙すら浮かべ、自分でも何を言いたいのか分かってなさそうな感じに混乱しているウェイブちゃん。
わなわなと震え、その身を焦がすのは怒りか、恐怖か、はたまた他のナニカかしら。
「もうやめてくださいよ!! こんな、こんなのただ辛いだけじゃないですか!!」
とうとう落涙までして、顔を真っ赤にして何やら青少年の主張をおっ始めちゃったウェイブちゃん。『命がもったいない』……ってコト!?
純真無垢で可愛いわね♡ 物知らずが勉強しやがれ。
「――いけないの?」
「ッ!?」
物を知らない無知ボーイだけど、其処も含めて教育しなきゃね。
よって、教育的指導を執り行うわよ。
まずはその思い上がった勘違いを糺すとしましょう。
「辛い事の何が悪いのかと聞いているのよ!!」
「なっ!?」
「まさか自分の言う事が否定されるなんて!」って感じかしら。
正しいことを言った心算なのかもしれないケド、そんなバイアスは
「辛くない修練なんて無意味で無価値で無益なのよ!!」
「そんなこと……ッ」
価値観の相違ね。
でもアナタのやり方に合わせる必要とか無いんですもの。
習うより慣れよ。
言っても分からん馬鹿には直接身体に教えるしかないのよねぇ。
「アナタたち、出番よ」
「え?」
パンパンと拍子を打って合図を送ると、万端準備を整えていたイェーガーズ(再生済み)のみんなが満点笑顔で構えている。
そして振り返ったウェイブちゃんは何故か絶望顔ね?
不思議だわぁ。
《LESSON03:技量を上げよう》
フィジカルトレーニングはサクッと終わらせたわ。
現実時間ではまだ半日も経過していないんですもの、実時間はさておきパパッと次に進みましょうね。
補足しておくと、厳密には肉体面での修練に終わりなんてないから、普通に現役でいる限りはずっと継続するものよ。
よって、最低限の下地が出来上がったことだし、此処で次の段階に移る事にしたワケね。
勿論日々のトレーニングに関しては引き続きやってもらうわ。
「……ァ……ァ……」
そして、此方には泣いたり笑ったりできなくなった兵士の卵が出来上がったところよ。
ガチ海兵隊式の精神を破壊して兵士の人格を再構築する方法を取ったものだから、自我が結構あやふやになってきているわね。
でも此処で手を緩めたら、中途半端に人格崩壊した中途半端に腕力のある中途半端なナニカが出来上がってしまうわ。
そんないい加減はよろしくないでしょ。
ちゃんと責任もってこの子を血も涙もない冷酷無情なウォーモンガーに作り変えるわよ。
「――って事で、早く卵の殻を破りましょうね。……具体的には個別のスキルアップよ」
「Sir, yes, sir!」
うんうん、精神が死んでいても、ちゃんと受け答えは出来るようね。
……コレが出来なかったら、地獄巡りが10割増しになるところよ。
回避された地獄はさておき、ウェイブ少年の次なるステップについて。
有体に言っちゃえば、技量を磨いてもらうわ。
こういう技術的な教えは、身に着ける為にある程度は身体が出来上がっていないとダメだもの。
そういうワケで、最初に徹底的に肉体を強化させたのよね。
そして、技を身に着けるに足るだけの素地が出来上がったと観て、これから実戦指導に入るわ。
――つまり、今まで以上に死にまくる、生命倫理と尊厳理念を捨て去る地獄の黙示録の始まりよ。
「悦びなさいウジ虫。これからアナタに殺しの技術を教えてやるわ。嬉しいでしょ?」
「Sir, yes, sir!」
「今のアナタは人間未満よ。危険種のクソを搔き集めた値打ちしかないわ」
「Sir, yes, sir!」
「アナタは殺す為に存在する。兵士とはそういうモノで、そう成らねばならないわ」
「Sir, yes, sir!」
「よろしい、それではこれより実戦指導に移るわ! 殺し、殺され、死に塗れる。そんな地獄の底で踊り狂ってもらう……さあ武器を取れ! 前を視ろ! 死ぬ気で食らいついてこい!!」
「Sir, yes, sir!」
――このあと滅茶苦茶修行した。
以下、巻きで行くわ。
《LESSON04:耐性訓練》
某ゾルディック式に各種耐性を付ける為、致死性のありとあらゆる薬品をブチ込んだわ。
吐瀉物と臓物と血飛沫に塗れながら、死んでも甦らせることである程度の耐性を身に着けさせることに成功。
《LESSON05:士官教育》
元が一兵卒でしかないからシカタナイんだけど、ウェイブちゃんには士官としての能力が欠如していたのよね。
現状だと特定の部下を率いさせる予定は無いけど、情報部や作戦部の雑兵に指示を出させるくらいはさせるから。
警備隊や中央四軍とかと協同して任務にあたる可能性もあるし、此処でウチ式の士官教育を施したわ。
《LESSON06:戦術指導》
士官としての能力を身に着けさせたら、次は大局的な視野を教育。
あくまでも士官教育の一環として行ったけど、裏の意味としては原作で帝国軍から離反したらしい彼を引き留める為の意味もあるわ。
思想も理想も信念も無い力のある軍人とか、厄介極まりないもの。
洗脳教育と言えばそうだけど、往々にして教育なんてそんなモノだから。
――という感じで一通りの教育が完了。
甘ったれの軟弱者だった坊やは、無事に筋肉ムキムキマッチョマンの兵隊に進化したわ。
ちょっとばかり人間性とか情味とかが失われたかもしれないケド、兵士に元々そんなモノは必要ないもの。
よってアタシは気にしないわ。
そして此処まで仕込んで、現実時間では2日しか経過していないのも素晴らしいわね。
勿論此の空間に居る限り不老にしてあるから、不必要に老化したりはしないわよ。
それと、此処まで教育が済んだことだし、一度性能試験でもやっておきたいのよね。
でも、またどこぞの反乱分子の摘発なんてのも、芸が無いわ……。
う~ん……。
あ、そうだ(唐突)
原作だと此の頃、エスデスが軍で余ってる帝具使いの確保の為に武芸大会を開いていたわ。
此の世界でもシェーレが持っていたエクスタスとか、馬鹿息子の愉快な仲間たちから徴収した幾つかの帝具が使用者不在で埃を被ってるのよねぇ。
ふぅむ……当初の思惑とは違うけど、此の世界でもソレ、やってみようかしら?
帝具ってのは実力以上に使い手とのフィーリングが大事だから、現時点での実力と帝具を使用可能かどうか、ってのは必ずしも合致しないのよ。
如何に実力があっても帝具と合わなければ拒絶反応で普通に死ぬし。
そして、現時点での実力が未熟でも、帝具とフィーリングが合うなら使用そのものは可能になるのよね。
そもそも実力が不足しているなら強化してやればいいだけだもの。
うん、武芸大会、開催しましょう。
どうせ倉庫で埃を被ってる帝具も、放っておいたら馬鹿息子にリリースされちゃうだけだろうし。
此処で実力には目を瞑ってでも、帝具と符号する使い手を見繕うべきね。
その結果、一般兵に毛が生えた程度の雑魚に帝具が渡ったとしても、シリアルキラーや快楽殺人鬼や強姦魔たちにみすみす明け渡す方が不味いもの。
そして雑魚だろうが最悪は此方で物理的改造を施せば問題無いし。
――って事で、【エスデス主催 都民武芸試合】の開催が決定したわ。
一応中央四軍の将軍で特殊部隊の隊長で、その上見目麗しい美女である彼女が表に立った方が色々とやりやすいから。
アタシの場合、後ろ暗いことをメインにやる特務だし、虐殺や味方殺しをよくやるし、極めつけに言動外見がオカマちゃんだから、あんまり外受けはよろしくないのよ。
対外的な仕事をランに割り振ってるのはそういう事情もあるくらいだし(八割方面倒の押し付け)。
そういうワケで主催者にエスデスを据えて、余っている『帝具を使える実力者』を見繕う事を目的に武芸試合を開くことに。
普通に勝てば賞金が結構な額で出るから、まあそれなりに参加者はいるでしょうね。
狩人隊の予算だけじゃなく、ウチの方でも手弁当で出資してやったから、原作よりも賞金総額は大きいわよ。
もしかしたら原作よりも参加者増えてたりしてね。
「――というワケで、ウェイブちゃん? 武芸試合に出て優勝しなさい。負けたらアレよ、“恐怖公”ね」
「……ハイ?」
流石に有象無象の一般人の参加者たちに負けるワケ無いだろうから、何らかのハンデは背負わせないとダメね。
武器使用禁止は勿論として……。
「ちょ、待ってくd――」
「誰が抗弁しろと言ったおフェラ豚が」
「おげぇッ!!?」
耳障りだったからぶん殴ってやったわ。
その際に経穴を突いて氣を流し込んだから、全身に痺れるような熱が絶え間なく行き渡って悶絶してるわね……まあいいや(空耳)
「じゃあ武器使用禁止、足技の禁止、攻撃を受けた回数の分あとでお仕置き……当面はコレくらいでいいかしら? ああ、あとコレ要請じゃなくて命令だから。分かったかしら?」
「Sir, yes, sir!」
よっし、お互い納得して同意出来たわね。
実はウェイブちゃんを投入する意味って、原作でタツミ少年が参加していた代わりを考えてなのよ。
流石に公式で御尋ね者になってる状況で「通りすがりの鍛冶師です」とは出てこられないでしょ。
そうなると参加者に雑魚しか残らないから、ある程度は大会を盛り上げる為にテコ入れを、ね。
ついでにパンピーを相手にした時、どの程度やれるのかを試す意味もあるわ。
アタシからの賞金追加でどの程度参加者が増えるか不透明だけど、流石に羅刹四鬼クラスの一級の強者が相手でなければ在野の強者程度は軽く御すことが出来るようには鍛え上げてやったもの。
コレで無様を晒すようなら……ナザリック名物の蟲風呂ね。
精神修行が足りないわ。
コレで身も心も人の領域を超越させるわよ。
……まあ、まだ試合も組まれてすらいないんですもの。
あんまり負けた時の事ばかり考えたら可哀そうよね。
一応、勝った時はそれなりに報いてあげるくらいの度量はあるわよ。
海男って何貰ったら嬉しいのかしら……?
良い釣り竿とか?
まあそこは追々ね。
という具合にウェイブちゃんの参加が決定した都民武芸試合。
告知期間から開催までの日数がそれほど取れなかったにも関わらず、参加者・観客共に大賑わいの様相になったわ。
まず、参加者。
正確な人数は原作でも特に設定されてなかったけど、間違いなく此方の方が人数は多いわよ。
なにせ、参加希望者が多すぎて予選が行われたくらいですもの。
やっぱり優勝賞金が当初の十倍になったのが大きいのかしらね。
あと、成績優秀者は将軍が直々に召し抱えるって宣伝もしたわ。
……此の『成績優秀者』ってのが曲者で、実は「優勝したら」とかその手のフレーズは使ってないんだケド。
要は優勝しても未熟だったら推挙しないし、三位入賞とかでも優秀だと判断すれば採用するのよ。
その判断はまさに舌先三寸胸三寸。
寧ろ微妙な輩が優勝しちゃったら、『武芸試合で優勝した逸材ですよ!』とか言って近衛軍辺りに売りつけるまであるわ。
ソレはさておき。
次に、観客動員数。
原作ではどうも無料で観られたようだけど、こっちでは金額が少ないなりに入場チケットは有料よ。
その代わり、大分普及したウチ製の映像機器で配信しているし、公民館とかで大スクリーンに上映会とかもやっているわ。応援上映をやっている会場まであるし。
その結果、入場料を払ってでも観たい人が結構な数見に来てくれたわね。
金や時間が無くて会場に見に行けなかった人は街中のスクリーンや各家庭のテレビ(まだ高級品だけど)とか、それこそ各地で無料上映会をしているから、注目度はかなり高い状況よ。
そんな状況なワケで、今大会は既に大盛り上がりの大盛況。
皇拳寺の免許皆伝とか、某国の元軍人とか、仮面の騎士とか、まあ色々な参加者がいるわね……。
――ところで此の【仮面騎士=サン】、どこかで見た事ないかしら?
具体的には、背格好が少年くらいで、身に纏うのはイエヤスとサヨの故郷の方でスタンダードな冬装備。
その仮面は鋭角でスマートなフォルムをしていて……ぶっちゃけるとどこぞの【“悪鬼纏身”インクルシオ】っぽく見える。
そして仮面騎士=サンの声は『CV:斉藤壮馬』。早い話、某お尋ね者の声。
「そこんところどう思うかしら、イエヤス?」
「へぁ!? い、いや、俺は、ちょっと、アレっす……ハハ、ハハハ! ハハハぶへぁ!?」
なにわろてんねん。しばきまわしたろか。
「サヨ?」
「ころします」
判断が早い。良い子ね。
タツミが人に襲いかかった場合は、サヨ、イエヤスが腹を切ってお詫び致します。
なお、ナイトレイド諸氏の名誉の為に言っておきますが、今回の仮面騎士=サンの大会参加は金欲しさではなく、ワンチャン狙いで(会場警備を担う)帝国軍幹部を殺りに来ただけです。…いや無謀な作戦なんで弁解出来ないですが。