憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト   作:社畜戦士

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ドクターと大将軍との関係性で独自設定があります。

なおアニメ版と違って漫画原作準拠なので、近衛軍の練度はナイトレイド各員に鎧袖一触で蹴散らされる程度のものです。
三国志で官軍が弱兵とされたような感じを想定しています。まあ三国志時代に限らず中華だと官軍は近衛=コネ高官の弱兵ってイメージがいつの時代もありますが。


File36:大捕り物

 まあ探知感知系の能力持ちから見れば、仮面で顔を隠した程度じゃあ正体を偽るとか無理なんだけどね。

 そして顔以外の何も隠してないじゃないのあの子。

 ……ていうか、インクルシオの顔面限定展開とかできるのね、タツミ少年。

 一応同系統の帝具であるグランシャリオを持ってるウェイブちゃんは、腕だけとか足だけとか、それこそ指先だけとかの部分展開も出来るけど。

 それだって結構な修練を積んでの上でよ。

 もしかしたら……ナイトレイドって原作よりも強化されてる説ある?

 

 

 ――ま、ソレはソレよ。

 

 本来ならば、帝都の中枢、皇帝のお膝元に賊軍の指名手配犯を近づけるなんて、失態も失態の大失態なんだケド。

 ……幸い、今回の会場警備については近衛軍が出しゃばってきていたものだから。

 だから、問題が発生したら全部ブドーちゃんに押し付けることになるわね。笑えよ大将軍(笑)。

 ていうか、今回の場合は完全に順当な結果よ。

 

 そもそも、今回に限って張子の虎である近衛軍が出しゃばってきた理由について。

 それは、何も複雑なコトも無く、単純に今回の武芸試合を陛下が観閲なさるからよ。

 大会の規模が大きくなったものだから、傀儡で日々暇してる陛下が「なんそれ面白そう。見たい(意訳)」って言いだして。

 その結果、募兵の為に始めた武芸大会は、一転して格式のある天覧試合へと相成った次第よ。

 

 まあド田舎出身の無学な輩ならまだしも、大抵の人間は皇帝が傀儡だってのは知ってるから。

 ソレで「皇帝陛下が見てるから緊張する」とかの展開は有り得ないんで、参加者のパフォーマンスが下がる恐れが無いのは良いのよ。

 問題は、傀儡とはいえ皇帝陛下がご臨席なさるなら、相応の格式と、会場の安全性の確保が急務となったワケで。

 

 ――とまあ、問題があるかのように言ったけど、実際は大将軍サマが「陛下がご閲覧なさるならば警備にも格式が~~」と有難い宣言をなさって、警備を統括してくださったわ。

 一応帝都の中の公安業務だから、基本は帝都警備隊で要所に実力者として特務軍と狩人隊から人を出す予定だったのよね。

 そもそも此の大会を主催してるのは狩人隊なワケだし。

 そして指揮命令系統という意味ではアタシが直轄する心算だったから、一本化出来てスムーズにやれた筈ですもの。

 ……ところが、此処に老害お爺ちゃんが出張ってきちゃったものだから、話がややこしくなるのよねぇ……。

 

 気位ばかり高くて実力の低い近衛軍なんて、警備隊も含めた帝国軍人の殆どに嫌われている厄介者よ。

 近衛に所属しているのが貴族籍の若造とか実戦経験の無い高官の身内とかばっかりで、ブドー大将軍以外って実はクソ雑魚ナメクジなのよねぇ……。

 しかも無駄に居丈高で高圧的で、能力も無い癖に高給取りで、他軍を見下すときたものだわ。

 そりゃ軋轢の一つや二つは出来るでしょ。

 

 極めつけが、コイツらってブドーの元に一元化された権力構造しているものだから、他所の所属員に対しては将軍が相手でも反抗してきやがるのよ。

 その根本には武官の官位とは別扱いになっている宮中の官位を持っている連中が、官人以外とは口も利きたくないって思考があるからで。

 要は『貴族(官位持ち)は平民(非官位持ち)を同じ人間だと思っていない』って奴よ。

 

 其処は貴族主義的政治構造の宿痾だから致し方ない部分もあるけれど、ソレも状況によりけりでしょ。

 なんせ、国家運営を担う知的階級が貴族以外に存在しない、という大前提が存在して初めてその権力構造が支持されるんだから。

 此の国は1000年も歴史を積んだ以上、知識や学問、芸術や武術等々が、既に大衆に広く浸透しているのよ。

 

 そういう現実がある以上は、権力の独占には説得力が無いといけないじゃない。

 多くの貴族がノーブレスオブリージュというモノを果たしていない現状、特権だけを貪るのは如何なものかしら。

 

 

 

 閑話休題。

 

 問題は正体がバレバレのタツミ少年のことよ。

 何をトチ狂ったのかリングネームで仮面騎士(笑)とか名乗っちゃって、当たり前のように予選を勝ち抜いて本選リーグに現れたけれども。

 ……まあ、正体を知らなかったら仮面を被られてしまえば手配書しか知らない大多数の人間には判別なんて出来ないわよね。

 …………問題は、同郷の人間が二人も此処に存在しているって事だケド。

 

 いや、まあ、二人が特務軍に属しているってのは前回の会敵で割れただろうから、まさか帝都にずっと居るとは思わなかったんでしょうね。

 特務の実態をよく知らなければ、南方での宣撫工作を主任務とする征南軍として南部にかかりきりになっているって思うだろうし。

 そして、莫大な優勝賞金もある事だし。

 ついでに此の場を取り仕切っている大将軍閣下を頃せたら最高、って感じ?

 そうなれば、「ワンチャン顔を隠せばイケるか……?」ってなってもおかしくは……無いのかしら?

 

 いや想定が甘ぇよ舐めんな。

 

 コレはもう、ブチ殺し――落ち着きなさい、Dr.スタイリッシュ。

 アナタはクールかつエクセレントかつ、そしてスタイリッシュな漢女(オカマ)

 軽々しく殺しにかかっちゃダメよ。

 何のためにいつでも殺せるナイトレイドを泳がしていると思っているの。

 

 降りるのは場所代の損だと思わせ、相手が有利だと思わせ、引くのは掛け金の損だと思わせて、横合いから殴りつけるのではなくて、自ら落とし穴に落ちてしまうように逃げられないようにジックリと。

 あと少しで賭け金の回収が出来ると錯覚させ、勝ち筋があると誤認させる。

 其処までお膳立てされたなら、あとはもう破滅への一直線よ。

 

 アタシにとって革命勢力というのは、そういう存在なの。

 今更降りるような真似はさせないし、死ぬまで希望という名の幻想に縋りついて踊り狂ってもらうわよ。

 

 

 よって、タツミは殺さない。

 でも舐めた真似した落とし前は付けさせる。

 ではどうやって?

 

 ……此処は大将軍殿に通報ね。

 ソレで切り抜けられたらヨシ。

 切り抜けられずとも、その場合はその程度の存在だから、適当に裏で手を回すわ。

 その時はアタシのオモチャとして生かさず殺さずの生き地獄に逝ってもらうけど……別にいいんじゃない?

 お前らはアタシのオモチャでいいのよ、上等でしょ。

 

 

 


 

 

 

 ――ってな事情があったので、抽選の結果と言いつつ本選の組み合わせは此方で弄らせてもらったわ。

 タツミを初戦の最終組に回して、相手はウェイブちゃんにしただけなんだケド。

 当然だけど、ウェイブちゃんもちゃんと制限有りで予選を勝ち抜いたし、寧ろ原作強キャラであるタツミと当たるんだから組み合わせ結果が良いとは言えないわよ。

 

 なんで最終組に回したかって言えば、スケジュール通りだったら初戦が全組終われば休憩時間を設ける予定だったから、その後()()()()()()なっても問題が少なかろうと思ってね。

 お相手もウチの人間だから、多少の恣意的行動が意図的に起こせるから。

 

「そういうワケで、作戦通り頼むわよ? ミスターマスクマン」

「……リングネーム、もう少しなんとかならなかったんですか?」

 

 別にいいじゃないの。

 どうせ使い捨てのマスクと身分なんだし。

 一応認識阻害の術式を刻んで耐熱耐刃耐衝撃の法儀式を付与したマスクだから、業物の鋼鉄防具と同じだけの効果はあるわよ?

 

「つか、アイツって帝具の部分展開してるんですよね? ソレを徒手空拳でなんとか出来るんですか?」

「あら、其処は成長した自分を信じなさいな。実感が無いようだけど、あの程度なら余程の醜態を晒さない限りなんとでもなるわ」

 

 逆に言えば、ミスったら……蟲風呂の期間が延びるわね。

 まあ万が一の可能性として、『やったぁ、好物なんですよぉ』とか言い出して生で踊り食いしだすという事態も想定s「ある訳ないでしょうッ!?」そーなのかー。

 

「じゃあ精々気張りなさい。万が一しくじっても大将軍サマが控えているし、アタシたちも包囲して待ってるから」

「……ウッス……」

 

 

 


 

 

 

 ま、そういう具合に激励(脅迫)しておいたんだけど、他の組が手に汗握る名勝負を繰り広げたのに対して、最終組は少し毛色が違ったわね。

 最初から殺る気全開のマスクマンと、余興試合だと思っていた仮面騎士とでは試合にかける意気込みが違ったワケよ。

 

 まずは様子見と軽く踏み込んだ仮面騎士に対して、初手から全力で任務を果たしにかかったマスクマンは圏境で気配を断ち、特殊な歩法で真正面に相対していたにも関わらず姿を消したわ。

 ソレに戸惑った仮面――もういいや、タツミに、無念無想の域に達した無拍子の手刀で横合いから仮面を叩き割るウェイブ。

 

 兜割りで仮面が一撃の内に剥がされた後のタツミに待っていたのは、待機していた近衛軍による賊狩りの時間よ。

 そりゃ、あらかじめ「アイツ指名手配犯っぽい」って言って手配書取り寄せて頭の固い大将軍サマと接見しておいたのよ。

 手元にあった手配書と実際の人相を見比べたら、そりゃあ一目瞭然でしょ。

 そしたら司会進行を任せていたランにマイクで「お前指名手配犯じゃねえか(意訳」って言わせたら、後は流れるように事態は推移したわね。

 

 此処でウチらがそのまま追跡出来れば問題は何もなかったんだけど……今回の警備は近衛軍諸兄が取り仕切っていたモノだから。

 曰く、指揮命令系統の統一が云々、って事で開場内部の警備は全て近衛軍が担っていたのよ。

 で、そのまま追撃はブドー大将軍閣下が指揮を執り、「街中で無頼の輩とやりあって、市街に被害を出すわけにはいかない」とかなんとか仰る。

 

 ……いや、何のために事前にアンタらに情報渡したと思ってんのよ。

 少なくとも予選終了の時点で情報は渡したんだから、完全に包囲しておくくらいはやっておいて欲しかったわね。

 

 ともあれ、最高責任者サマがそういう方針なもので、帝都外苑で一当てしよう、という事に。

 別にハラスメントに徹するなら街中で都度都度仕掛けても問題は無さそうだけど、他所の行動方針には口出ししづらいものね。

 越権行為とか言われてちょっかいかけられるのはお断りだわ。

 よって、アタシらは近衛を遠巻きに上空からステルス状態で追跡。

 

 そして、現在進行形で追跡部隊として出撃した近衛隊のお歴々が壊滅している様子を確認しているわ。

 兵士の質が低いとはいえ、近衛って仮にも王を守る側近でしょ?

 縁故や賄賂で人事が決まる近衛の悪い所が噴出してるじゃあないの。

 コレは殲滅されても致し方なし。

 

 ――ってか、この期に及んでウチに指揮権渡さないとか何考えてんのよ大将軍。

 無線機で現状の報告はリアルタイムで行っているんだけど?

 

「――そこんところどうなっているのかしら、大将軍閣下?――」

『――ダメだ。命令系統の変更は現場の判断で出来るものではない。今回の指揮権は正に勅令によって我ら近衛軍が預かったのだ――』

 

 あっ(察し)

 ふーん(侮蔑)

 

「――……その勅令とやらがどれほど大切なのかしら? 大事な部下たちがそろそろ全滅しちゃうわよ? それでもアタシたちに手を出すな、とか言っちゃうのかしら?――」

『――無論、その心算だ。彼らも尽忠報国の徒、護国の為に果てるのならば本望だろう――』

 

 ああ、これだから老害は。

 だからアンタは脳死の大老害なのよ。

 政治を理解出来ない近衛大将軍がどれだけ害悪か、コレで分かったわね。

 ……っていうか、其処まで抜かすんならせめてアンタが出ておきなさいよ。

 雑兵で帝具持ちを相手に出来るワケないだろいい加減にしろ。

 

「――ま、其処まで仰るんならシカタナイわ。……せめて彼らの遺品くらいは回収してあげたいけど、流石に其処まで邪魔しないわよね?――」

『――ふん、人気取りの心算か? 下賤な身でご苦労な事だ。我らの軍権を侵さないというのであれば好きにするがいい――』

「――了解、言質は取ったわよ? それじゃ、ご機嫌よう――」

 

 返事は聞かずに通信を切ったわ。

 本来なら、というか現実世界ではマナー違反だけども、アタシが開発した無線機を使う際のルールなんて、現状ではアタシの自由に決められるワケよ。

 次第に現場での空気感とかが醸成されて共通のルールとかマナーとかが成文化するんだろうけど、現状ではアタシの恣意で自由に出来るのよね。

 まあ、然して問題になる使い方をする気はないわ。

 今回だって向こうが相当にムカつく真似をしたから少々感情的になっただけだし。

 

 

「――ってワケで。通信内容は共有しているわね? お偉方の面子の為にアンタら死んでこいって話よ。何か言い残すこととかあったりする?」

 

 一応追撃隊の指揮官とは現在進行形で行動を共にしているんだけど、何もなければこのまま無駄な特攻を命じられた指揮官以下生き残りの部隊が死地に赴くことになるわよ。

 何やら向こうさんは応援としてナイトレイドの皆さんが展開している有様。

 勿論全員帝具持ち。そして近衛軍に帝具持ちは大将軍(笑)だけ。

 終わったわね。風呂入って寝ましょう。

 

「……その命令は、覆らぬのですか」

 指揮官=サンが何やら絞り出すような声で言ってくるけど、そういうのはアンタの上司とやって頂戴な。

 

「話は全部聞いてた通りよ。文句があるなら上司に直接お言いなさいな」

 まあ明らかに無駄死にしてこいって言われているんだし、文句の一つも言いたいわよね?

 でもダメよ。今回の件ではアタシたちに指揮権が下りなかったんですもの。

 此処でアナタたちを助命して連中を蹴散らしでもしたら(つまりは勅令によって保障された近衛軍の指揮権を侵したら)、堂々と大手を振って近衛軍がウチらを粛清にかかるわよ?

 軍権というのは元来そういうモノなんですから。

 その場合はアタシも全面的に此方が悪いと認めるしかないわよ。

 ま、無能な上官を持ったことを恨みなさいな。

 

「残念ね。悲劇的と言えるわ。部下は上司を選べないんですもの。……で、遺言は?」

 これ以上もうどうしようも無いのよ。

 アナタたちの人生は此処で御仕舞なの。

 来世ではマトモな上司にありつけるといいわね。

 

 

「――あのクソジジイに伝えてくれ。……くたばりやがれ、ってな!」

 おっと、ようやく覚悟完了かしら。

 

「……オーライ、必ず伝えるわ」

 あーあー、悲壮感たっぷりじゃあないの。

 

 可哀そうにねぇ。

 何が可哀そうかって、別に勝てない強敵に特攻させられること、じゃあないのよ。

 此処で勝っても負けても大勢に影響が皆無って所よ。

 理不尽も此処までくると憐れを通り越して笑えてくるわ。

 ……当事者諸君には笑いごとじゃあないんだケド。

 

 

 

 ――そうして追撃部隊の部隊長を含めた51名の近衛軍兵士は、至極残当にナイトレイドの帝具使いたちに蹴散らされた。

 手傷の一つも負わせること叶わず、文字通りの全滅、一人残らず戦死した。

 

「無能な上官は後ろから撃ってしまいたいモノねぇ……」




ドクターは大将軍と仲が悪いです。厳密には大将軍が一方的にドクターを嫌って下に見ています。
というのもブドーは保守的な人間なので、ドクターの事を同性愛者だと思っている為侮蔑しているのが理由です。
近衛ともなれば貴族の上澄みなので、男色は軽蔑の対象と見ています。

中華推しの原作ですが、此処は西欧風の価値観も併せ持つ創作タイプのヨーロッパ世界観を参照。所謂なろう的ヨーロッパ世界、ナーロッパ基準ですね。
例えば現実世界でのドイツでは1994年まで男性同士での性交は有罪という法律が現役でしたし、アメリカでは今でいうLGBTQを法的に取り締まるソドミー法やらを2003年まで撤廃出来ていません。イギリスに至っては1861年までは後ろで致すと死罪ですし、1967年まで同性愛は『治療を要するモノ』として扱われていました。
東洋とは価値観が違いますが、その辺りを拙作では取り入れてます。アカメの帝国もあくまで中華全開ではなく、随所にローマ帝国やらビザンツ帝国やらの香りがしますので。

独自設定です。

なお、次回は責任者に責任を取ってもらう話です。
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