憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト 作:社畜戦士
この辺で革命軍の最終戦略について語っておきましょうか。
原作でも此の頃に明かされた情報だけど、革命軍は帝都侵攻に向けて三段構えの戦略を持っているわ。
第一に、南の革命軍、西の異民族、東の宗教勢力。これ等を糾合し、協力して順次に攻め入ること。
そして第二に、内応を取り付けた領主や太守を足掛かりに、無血開城を繰り返し圧倒的な速さで首都直下まで攻め込むこと。
第三として其処に、革命軍の最大戦力である暗殺組織ナイトレイドを潜入させ、混乱する首脳部を斬首戦術で麻痺・崩壊させること。
つまり、①三方から攻め入り、②内応者によって電撃戦を実現し、③打撃を受けて混乱している所で暗殺を成功させる。
コレが連中の方針ね。
原作では三勢力による共同歩調の波状攻撃を三段構えのように言っていたけど……多分、原作者と作画担当とで認識の齟齬があったんじゃないかと思うわ。
言い換えれば、二つの三段構え。
三勢力による一斉蜂起も時間差で三段階に分けられるけど、その
まあ、あくまでアタシの考察に過ぎないわ。
アタシの所感はさておくとして、此の世界だと此の戦略に大きな障害があるのよね。
何を隠そう、ソレはアタシの存在……というか特務軍の存在よ。
アタシが日々の職務を過不足なくこなし続けた結果、南部のアタシが勢力下に収めた範囲に革命軍の影響力なんて存在しないの。
そうなると原作での構想だった南方からの快進撃って作戦が使えないけど……まあそこは一応アホ共なりに考えたようね。アホなりにね。
現状の此の世界の革命軍には、最大拠点が
一つは原作通り、南方にある革命軍首脳部が置かれている一大拠点。
もう一つが、何年も前からコツコツと北方に分散して設置した実働部隊の拠点を纏める、いわば攻撃側の最大拠点。
南方が意思決定や作戦構想を練るなどの文官としての拠点なら、北方は実働要員たちが詰めていて物資の集積や構成員の育成も行っている、武官としての拠点。
つまり、文武に勢力を分割しているのが現状の革命軍の状況というワケ。
……文官と武官で権力構造を分けるなんて愚策にしか思えないケド、少なくとも目的に向けて邁進している現状、問題は無い様子よ。……一度でもコケたら空中分解しそうねぇ。
いや、将来的な軋轢はさておき、件の北方拠点について。
南方からの攻め手が使えない以上、北方から攻め込むことを考えた……というか方針転換したってこと。
その為、盛大に南方でテロったり自爆したり民衆を巻き込んだり色々しながら、北方へと戦力を移していたのよ。
……残念ながらアタシ以下特務は全員周知の事実なんだケド。
ともあれそういう状況なので、エスデスの威北軍が固める北の国境からは外れた、頑なに革命主義を貫いているアカの手先を後ろ盾にして革命軍は橋頭保を設立。
あくまでも
最北端がそんな状態なので、後は開いた穴を通して進軍ルートを構築し、国境の外にある拠点から帝都までの直通経路が啓かれてしまっている有様。
……コレは政治的案件だからシカタナイ部分もあるけど、話のタネが割れていたら意味ないわね。
よって、有事の際には精々落とし前を付けてもらうとしましょう。
それまでは存分に背信者をやってて結構よ。
さて、話に挙げた革命軍の協力者である宗教組織。
此の世界では、特に帝国に存在する宗教としては最大勢力を誇るのが【安寧道】と呼ばれる団体よ。
ここ10年の間に急速に信者を獲得したその宗教組織は、絶大なカリスマを誇る若き教祖が主導する新興宗教団体という代物ね。
『若きカリスマ教祖が創設した新興宗教』……此のフレーズで警戒しない現代日本人っていないと思うけど、まあフィクションの世界の話ですもの。
そんなカルト、もとい宗教組織では、若きカリスマである教主と、ソレを支える副教主が居るわ。
教主補佐として教主の信任も篤いボリック殿だけど……まあ有体に言っちゃうと大臣から送り込まれたスパイなのよ。……何故か既に革命軍には面バレしてるという。
色々思惑はあるけど、大臣としては手駒を使って危険なカルト団体である安寧道を掌握し、武装蜂起をさせたくないってのが最大目標。
……潜入任務で大分前から奴さんは送り込まれているから、そんなに昔から宗教テロを起こすと目されているってことになるわね、此の安寧道。
やはりカルトは危険なのよ。
破防法があったら検挙出来るんだけどねぇ……。
『イルカの人権を考えるヒッピー』みてぇなアホはどの世界にもいて、此の世界でもそういうアホ共の所為でその手の法律が立法できなかった経緯があるわ。
人権がどうだこうだって騒ぐアホ共だけど、宗教団体が武装してはいけないってだけの法律すら通せないって相当よ。異民族弾圧は是としたクセにねぇ……。
まあ案の定アカ共とズブズブなワケだけど。
んで、そういう思惑でボリックは安寧道を掌握する命令から、既に副教主まで上り詰めたわ。資金と人材で多大なサポートを受けていたんだし、まあ当然の話ね。
其処で奴さんが考えたのが、教主を上手いタイミングで始末して教主殿を
既にボリック派と言える勢力が大きな権力を握っている状況で、頭の先まで信仰に浸かって茹った信者共では、拠り所である教主を除けば為す術が無い……というのが大方の見方ね。客観的に見れば概ね正しいでしょうよ。
教主派と言える勢力はあくまでも教主のカリスマに惹かれて集まった、本当の意味での信者しかいないようだし。
一応教祖は生まれつきの
そんな彼に惹かれて派閥を形成する
そういうワケで、そのままだったら革命軍の頼みにしていた一大戦力が大臣の手に落ちてしまう以上、アカ共が何を画策するかなんて明白よ。
すなわち、
分かりやすい暴力にすぐに訴えるのが連中の特徴だけど……まあ此処はそういう世界ですもの。世界観への文句なんて言ってもシカタナイネ。
そもそもボリックだって殺されて当然の屑だから、別に庇う必要性も感じないし。
シャブ漬けにした信者の身体を貪り、おつむの空っぽな信者を唆して身体を貪り、って……此の世界の悪者って対魔忍の世界でもやっていけそうなくらいに下半身直結思考よね。
兎も角、ボリックは信者を騙して貶めて虐げている正真正銘の極悪人よ。
だから暗殺されても「しょうがねぇなぁ」って気持ちにさせられる部分はアリアリなんだけど……。
だからって暗殺を是とする訳にもいかないでしょ。
犯罪者相手に犯罪をする、クロサギみたいな話じゃないのよ。黒崎青年だって報いを受けることは覚悟のうえで復讐劇やってるんだし。
そして革命軍はどう足掻いても「目的の為に大義を掲げて人殺しを肯定する」危険な存在でしかないんだから。
しかも「俺達は正義の殺し屋なんかじゃねぇ(意訳)」って最初に主人公に言ったかと思えば、竜船での事件では「俺は民の味方のつもりだぜ」とか、コイツら言動がブレ過ぎでしょ。
その言い方だと「民が殺せって言ったから殺してる。俺ぁ悪くねぇ」って聞こえちゃうのは……穿ち過ぎかしら?
ともあれ武装蜂起に訴える事しか考えない連中に、新時代なんて作れるわけがないわ。
どこぞのウザク君じゃないけど、中から国を変えるって考えの人は相応に存在しているのよ。(ウザク君は言動がトラウマとギアスの所為で破綻してるから参考にならないけど)
ソレを見ない振りして、手っ取り早い暴力でしか物事を考えられないアホ共が……。
というかアタシって宗教が嫌いなのよ。
前世の価値観では普通に寺行くし神社詣でるしクリスマスはケーキ食うし春節に中華街行くしで、所謂日本人的チャンポン宗教の文化で育ってきたわ。
その点では遍く宗教へは寛容な部類だったんだけど……。
ある時、身内がカルトにハマって家庭が崩壊したのよね。
……コレだけで理由は十分じゃないかしら?
加えて転生か憑依か知らないけど、悪神のほくそ笑みを向けられているらしい此の転生人生。
宗教なんて存在を白眼視するには十二分な理由じゃないかしら。
神の如き超越的存在を現実に認知しているアタシが、見た事も無い神という幻想を信奉して何もかもを依存する……そんな
そもそも原作でも此の宗教は、
流石にその
加えて、教主本人が
周囲はおろか本人すらも危険種由来の力であると自覚していないにせよ、超常の力が使える事は周知の事実。
そして、自身の『不思議な力』で人助けをすることを人生の目的、使命にしていたらしい教主は、やがてその異能故に担ぎ上げられ、宗教の教祖と為った。
ファンタジー作品における新興宗教の成り立ちとしては、いささか食傷気味ではあるけど、納得のいく経緯ね。
しかし経緯はありきたりでも、教主も凡庸な男に過ぎないわ。
本人は自分が『救世主』だとか『神の御使い』だとか思い上がってこそいないけど、
いわば自覚あるカルト詐欺師ね。善意からなる詐欺とか救えないわよ。
宗教嫌いのアタシだからこそ感じる事かもしれないけど……狂信者も詐欺師も、カルトの教祖としてのスタンスは好きになれないわ。
……いや、そもそもカルト以前に宗教が嫌いなんだから、公平性のある意見は言える自信ないけどもね。
まあそういう背景が安寧道にはあるって話。
ぶっちゃけ教祖を危険種だと弾劾して解剖しても、既に信仰で脳みそを腐らせた狂信者には効果が無い。
よって、連中にはもう蜂起して死ぬか、悪意に磨り潰されて死ぬかの二択しかないのよ。
……革命軍の連中がどんな口車に乗せたのか知らないけど、宗教蜂起を画策したのはアカ共ですものね。
原作では「圧政に耐えかねて~~」って流れに乗せたらしいけど、此の世界は違うわ。
内務局の存在もあるけど、帝国の大貴族であるアタシを旗頭にした中道派の動きで、「何が何でも今すぐ武装蜂起」なんて考えるガンギマリな民衆なんてほぼ存在しないもの。
そしてコレは原作でも同じことだけど、少なくとも帝国が宗教を弾圧なんてしていない以上、連中はどんなお題目を掲げようとも『武装蜂起で国体を脅かすことを目的とした宗教テロ組織』でしかないわ。ISISみたいなモンね。
態々信者を動員して宗教の名のもとに殺しや国家転覆を命じるのよ?
どう考えても、どこからどう見ても、どう足掻いてもタダの宗教テロじゃない。まんまオウムよね。
コレはアタシのスタンスや右派左派の立ち位置なんて関係なく、只管に客観的な事実に即した意見よ。
どうしてもテロりたいんなら、せめて宗教を前面に出すのはやめた方が良かったわね。
此処で『宗教が国体を脅かすための武装蜂起を起こした』って確かな歴史的事実が発生すると、後は一直線よ。
法学政治学ってのは前例主義の極みで、前例が無いのならどんなに素晴らしく合理的な判断でも否定されるけど、一個でも前例がアレばその逆。
どんなに愚かしく不条理な判断でも肯定されるのよ。
そうなれば、宗教を否定し抑制する法律が是とされても、少なくとも安寧道の連中は文句を言えないわ。
後世の宗教家全員を敵に回したようなものね。
――ま、そういう個人的感情も客観的判断もあってのこと。
宗教に忖度なんてせず、普通に利用し尽くす所存よ。
中の人(筆者)の好き嫌いがもろに出ていますが、ご容赦ください。