憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト   作:社畜戦士

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雑にエスデスがヒロイン入りします。
ご注意ください。


File05:酒は飲んでも飲まれるな

「――という訳で新しく醸した【蜂蜜酒】をお披露目しちゃうわぁ。野郎共、酒杯の用意はいいかしら?」

「い、いや、それより……だ、大丈夫なのかな、アレ?」

「ノープロブレム! ボルスは気にしないでいいのよぉ。全部あの馬鹿女が悪いんだから」

「いえ、抵抗した事で徐々に肉の服が剥げていっているんですが……」

「あら、ランちゃんってば意外とムッツリなの? 今度から『エロイ事考えてるラン』、略して『エルラン』と呼ぼうかしら。……あらやだ、連邦軍でスパイでもしてそうな名前ね」

やめてください(迫真)。……というかどういう意味ですか」

 

 アッハッハ、「こまけぇこたぁいいんだよ!」、よ。

 ちなみに此の蜂蜜酒だけど、位階は【黄金】ではなくそれよりも一個くらい下の【聖銀】よ。

 よって、深淵からの邪智を得られる可能性こそあるけど、正気度はそんなに下がらないし転移とかの超常現象も起きないわ。

 その代わりにMPと耐久、基礎能力各種等々を軒並み跳ね上げるんだけど。所謂バフアイテムね。

 マジックコンフリクトの兼ね合いもあって黄金と同時に服用(ちゃんぽん)したら不味い事になるけど……まあアタシ以外に醸造出来る輩が居る訳もないし、別にいいわ。

 

 

「さぁて、アテは何にしようかしらねぇ……ああ、ゾンビ肉のジャーキーがあったわね……ルナちゃん、厨房からアレ持ってきてくれる?」

「かしこまりました」

 

 脇で控えてくれていたメイドの一人にツマミを持ってきてもらう。

 その間にも酒を呷るけど、コレって『蜂蜜酒』というだけあって、原料の大部分が蜂蜜なのよ。

 まあ現世産の蜂が作る蜜じゃあないんだけど……でも全体的に甘いってのは変わらないわ。

 ソレを発酵させたコレも、果実香とはまた違った突き抜けるような強く奥深い甘さを感じる芳香を放つの。

 蜂蜜特有の何処かスモーキーさを感じられるような草花の熟成された風味も特徴ね。

 基本的に女の子が好きそうな甘めのリキュールのような味わいで、重めの肉料理とかに合わせやすいのよ。

 あまりチーズとかには合わないけど……サラミとかジャーキーでお手軽にマリアージュを楽しめるのがポイントね。

 

 

「――ハイ、それじゃあ乾杯!」

「「……乾杯」」

 

 野郎二人とオカマとで酒を呷る。

 生憎と女性陣は馬鹿女を除いて皆お酒を嗜む趣味が無いか、下戸か、もっと単純に未成年だからね。むさくるしい野郎共の酒宴の開催よ。

 その代わりにアタシはクロメちゃんとセリューちゃんにお酌をして貰ったりしてるけど。

 ボルスは奥さんにお酌して貰ってるわね。

 ラン? イケメンは一人だけで充分ですよ(ブレードランナー並感)

 

 ……しかし、此の【聖銀】は中々に良く出来たわねぇ。

 効能もさることながら、味を両立させているのが我ながら素晴らしい出来だわ。

 正気度を幾らか下げてしまうのが難点と言えばそうだけど、酔っ払ったのと同じだと思えばそう目くじらを立てる話でもないし。

 そして酔いが回る程度で得られるバフの倍率を考えれば、有り得ないくらいに費用対効果が優れている。

 一般兵でも生身で一級危険種程度なら狩れるという実績が出た優れモノ。

 ……まあ、多少の正気度低下で繊細な行動が出来なくなっちゃうけども。

 

 此の正気度低下が曲者なのよねぇ。

 う~ん……特殊部隊とかの高度に精密さ・繊細さを要求される任務には使えないけど、異民族の征伐とかの遠征軍には使えるかしら。

 それこそ、蹂躙を目的に他国へ遠征を行うようだったら、寧ろ死を恐れぬ狂戦士と化した軍隊はうってつけでしょう。

 原作でも異民族を征伐する為に族滅や掠奪や凌辱を嬉々として行ってきたものね。

 

 地球の偉人曰く『占領地への対処は二つに一つ。深窓の令嬢のように恭しく扱うか、全てを奪って滅ぼすか』。

 こういう内容の話を聞いた覚えがあるんだけど、正にその通りよね。

 占領軍は元・敵地に陣営を置かないといけないんだから、身中の虫を抱える危険性を考慮すれば対応策なんて限られているわ。

 徹底的に宥め賺してご機嫌取りに奔走するか、徹底的に殲滅して後顧の憂いを絶つか。

 中途半端が一番良くないもの。

 ゲリラ戦や非対称戦争なんて、こんな中世風世界でやったらどん底まで泥沼になるわよ。

 

 ま、帝国の国是はどうも地球に於ける植民地主義的なモノらしいわ。

 なら、多少の暴走は容認してでも、徹底的な火力と武力と兵力で周辺諸国を威圧していくべきよね。

 

 

 そういう意味では此の【聖銀】は正にドンピシャの代物よ。

 ちょ~っとばかりヒャッハー化しちゃうけど、前線で使い潰す一兵卒なんてそれくらいが丁度いいものね。

 恐怖を即席の狂気で塗り潰した仮初の狂戦士軍団。

 イイわ、実に好い。

 

 しかも中央からの応援物資としてお酒が送られてきて、喜ばない兵士ってそんなにいないでしょ。

 極端な下戸でもない限り、こんな生きるに難い浮世を刹那の間でも忘れられる酒精を嫌う兵卒って普通はいないし。

 そもそも東洋風ヨーロッパ型異世界である此処は、下戸はおろかアルコールに弱い人って10000人に1人いればいい方だしね。

 

 

 

 ……前世の『飲む福祉』のコピペを思い出すわねぇ……。

 『将来の不安』『低賃金』『年金問題』『介護』『結婚』『ストレス社会』『鬱』『政治不信』『就職』『閉塞感』『脂肪肝』『老後』etc――現代日本で生きていくうえで嫌な出来事は幾らでもある。

 ………………でも、飲めば全部忘れられる

 サ〇トリーが提供する飲む社会福祉事業

 ソレが【ストロングゼロ】。

 

 ドラッグに例えられるくらいに、ストゼロって『お手軽に楽になれるアイテム』扱いされてたのよ。

 平均的な日本人のアルコール分解能力からすれば、ストゼロ500ml缶一本で『ほろよい』なんて生温いへべれけの酩酊感に陥れるからね。

 500ml缶商品でテキーラショット3.75杯分のアルコールを含むんだから当然の事だけど。

 ソレが下手すると他社の350ml缶の酎ハイよりも安いし、コンビニでも気軽に買えるし、何よりフレーバーが豊富。

 加えてカロリーとか糖質とかに関しては名前の通りにゼロなものだから、日本人には高過ぎるアルコール度数を無視すれば良さげに見えてしまうの。

 断じて健康的飲料ではないけれども。

 

 そして……正味の話、現代社会って生き辛いでしょ。特に若者世代。

 若年層の低賃金労働者って滅茶苦茶多いし、社会不安は将来の見通しが立たないからこそ若者に重い影を落としているし、他にも様々な要因で今時の若年層ってかなりの苦境に立たされているわ。

 超少子高齢化に移行する中での社会福祉制度の見直しに失敗している現状、超高齢社会である以上必然的に高い割合を占める高齢有権者が優先される政策決定の状況、少子高齢化が進む事で既存の社会制度が成り立たなくなる可能性すら生じている地方の現状、解決する見通しの立たない社会不安の数々……。

 現代日本の若者が憂鬱になる原因って幾らでもあるし、ソレを手っ取り早く忘れたいって考えが広く浸透しているのも宜なるかな。

 

 そういう中で安く簡単に酩酊してしまえるストゼロは、皮肉を込めて『飲む福祉』と称されたのよ。

 特に若者世代でそういうネガティブなエスプリの効いた言い回しが流行っているわ。

 安いものだと1本あたり150円未満でへべれけになれるんだし、その間は嫌な事も忘れられるものね。

 ……途上国で貧困層が飢餓を忘れる為にシャブに手を染めた話を彷彿とさせるわね。

 

 ああ、ストゼロ文学ってのもあったわね。

 SNSで一時期バスってたんだけど、昔話とかにストゼロをブッ込む事で強制的に破滅的なハッピーエンドに持ち込む『酒造から出る神(デウスエクスソーマ)』。

 

 例えばうさぎとかめの場合。

 ――ストロングゼロを飲んで、ウサギは亀に負けました。

 「まあいっか」 ウサギはもう1缶開けました。

 めでたしめでたし――。

 

 いやめでたくねぇよ。

 そんなツッコミは野暮よ。

 登場人物全員がハッピーなんだからいいじゃないの。

 やはりストゼロは世界を救うのね。

 

 

 

 ……そうね、此の世界でもストゼロ的なのも作ってみようかしら?

 単純に安くて簡単に酔える安価な蒸留酒に炭酸を混ぜた冷やし酒。

 ……うん、魔術的なのはナシでも普通に売れそうね。

 ネックは冷蔵施設がウチの系列店でしか配備出来ていないのがあるけど……寧ろ独占販売出来ちゃうわね。

 お持ち帰りには適さないけど、イートイン限定のチューハイ的なリキュール。

 何なら簡易のクーラーボックス程度の保冷器具なら戦略上売りに出しても問題なさそうだし……。

 某意識高い系カフェとかでもよく見受けられるタンブラーの類を売り出してもいいし、それこそレンタル小型サーバーを用意しても構わないわ。

 うん、うん、うん……売れるわね、コレ。

 

 よし、今度は其方方面でもやってみましょう。

 伊達に超巨大複合企業(メガコングロマリット)を経営してないわよ。

 

 

 原作でのドクターは『帝具に並ぶ発明』を目指していたわね。

 でも、此の世界のアタシは違うわ。当然よね、別人なんですもの。

 アタシの目標は『より良い社会の発展』なの。

 其の為に各種の発明品を世に送り出し、世界を科学と魔術で満たしている。

 ……まあ、過ごしやすい快適な生活を目指してるってだけなんだけど。

 

 ともあれそういう野望の下、アタシは転生してすぐに発明品を流通させやすいように複合企業体を創設したわ。

 流通は勿論生産、加工、販売、経営、開発や実験等々を全部一元化。

 人員には幾らかの洗脳・強化済みの元死刑囚とかを使用してあるので、上意下達が徹底されていて動きが兎に角スピーディ。

 原作での強化兵達、カクサンやトビーとかは全部此処にブッ込んだわ。

 

 ……アタシ的にはアレってあんまり好きな存在じゃあないのよね。

 何故って犯罪者に人権なぞ無いので。

 身内とソレ以外は区別するでしょ、普通。

 差別ではないのよ。……寧ろ分別かしら? 産廃を再利用してるだけだしね。

 

 まあその結果、帝都に限っては19世紀後半レベルの文明開化を見ているわよ。

 アタシの私有地内部に至っては近未来SF状態だけど。

 一応、宮殿内部には冷蔵庫やオーブンレンジやエアコンとかの電化製品を融通してあるわ。

 オネストが喜ぶような食事関連に便利な調理家電は優先して卸したわよ。

 他にも色々と大臣の無茶振りにも相応に応えてやったっていうのに……その結果が本日の羅刹四鬼の襲撃なのね。

 まあ大臣だから仕方ないわ。

 

 

 

「……ドクター」

「ん? なによ?」

「あの、後ろを見た方がいいと思うよ……」

「うしろ?」

 

 ――そこには修羅が居た。全裸だけど。

 

「フフフ……此処まで私を追い込むとは大したものだ……だが、此処からは私n――「【魔笛-旧支配者のキャロル-】」アババババババ」

 

 

 


 

 

 

 諸君らが愛してくれたエスデスは死んだ! 何故だ!!

未通娘(おぼこ)だからよ」

 いや、もう開通済みだけどね。

 というか死んでない。何故アタシの中の人はすぐに登場人物を殺そうとするのか……。

 ――発狂してるからね、仕方ないね。

 

 

 酒宴も終わって夜も更けた頃。

 ボルス一家を始めとした招待客は皆泊っていく事になったわ。

 ウチには客人用の着替えや歯ブラシセットとかの宿泊道具一式が常備されているし、宿泊客が来る事も珍しくないのでそう難しい話でもなかったの。

 そもそもかなりべろんべろんに酔っ払ったボルスを無防備に送り出すのは憚られたし。

 帝都の治安はクッソ悪いんだから。

 ゴロツキに襲われたら哀れな焼死体が量産されちゃうわ。但しゴロツキの。

 

 しかし……あの後酒浸りにして有耶無耶にしてやろうとエスデスをアルコール漬けにしたのは不味かったわね。

 放っておくと何時までもリベンジを挑み続けるものだから、血管に直接アルコールを注入して泥酔させたのよ。

 その際使用したのが聖銀の蜂蜜酒だったんだけど……やっちゃったわね。

 

 

 うん、ヤったわ。

 

 

 いや、ねぇ……ちょっと見た事ない感じに酔っ払ってたのよ、あのエスデス将軍が。

 酔うと女は三割増しって言うけど、その通りね。

 エスデスってば酔うとしおらしくなるのよ。

 完全に乙女の貌してたわ。

 

 それで、まあ……美味しく頂いたわ。

 

 お酒の勢いは実際コワイ。古事記にもそう書いてる(ガチ)

 神話の存在は大抵お酒でやらかしてるものね。

 

 

 

「ふぅ~……やっちゃったわねぇ……」

 腕の中であどけない寝顔を見せているエスデスの髪を梳きながら独り言ちる。

 サラサラの髪の毛に女の子らしさを感じる。かわいい。

 

 ……ちょっと想定外の展開よ。

 正直言ってエスデスと此処迄に昵懇の仲になる予定は無かったもの。

 

 

 なんせ、エスデスはオネスト閥の武断派筆頭。

 ソレに政治的介入を行っていると見做されても仕方がない程に深い付き合いをする心算は無かったわ。

 

 そもそも武断派ってのはそう簡単に所属を変更する事は無い存在よ。

 政治力がどうこうじゃあなくて、単純に流浪の(さが)を持った武将なんて危なっかしくて使えないじゃない。

 

 中国史で言うと呂布奉先みたいに突き抜けた武力があっても、それでも疎まれて最期は処刑されたワケだし。

 話を盛る事に定評のある中華だから当てにならないけど、それでも一人でビグザム級の戦果を常に挙げていた戦略兵器みたいな輩が、死ぬときは味方から裏切られて殺されたんだからねぇ。

 一応当時の中華情勢からすれば、絞首刑で楽に死なせて貰えるなら温情ではあるけども。

 まあ死後に首は晒されたようだけどね。

 

 単純に反骨の相を露わにするようなピーキーな武人なんて、その他大勢の代替可能な兵士で替えが利くのよ。

 武人は政治に関わるべきではない、という某大将軍の意見も一理あるのよね。(近衛将軍なんだから政治能力が欠如していたら逆に大問題なんだけど)

 

 そういう現実的な観点から、武将ってのは旗色を明確にし続けないと危ないの。

 将官ってのは、政治は出来るに越した事はないけど、だからって文官の領分を犯すのは宜しくないわ。

 武断派は、特に将の将たる存在はその暴力を何の為に使うのか、ソレを明らかにしないとダメなのよ。

 

 そんな事情もあるから、他所の派閥の武官、それも最上位の将軍職の人間と急接近するのは頂けないわ。

 本人にその気が無くても、周りがどう見るのかなんて分かったものじゃないし……。

 

 

 …………ま、なるようになるでしょ。

 最悪の場合は帝都が巨大な湖に変わっちゃうかもだけど、そうならない事を祈るばかりね。

 アタシも水爆級の爆破魔術なんて使いたくないもの。

 アタシの魔力容量は兎も角、出力に関しては出せば出す程疲れるし。

 

 という事で『最悪は帝都の物理的消滅』を念頭に置いて、今回の事は流れに身を任せるとしましょう。“激流に身を任せて如何かしている”領域が目標だし。

 具体的には……エスデスもアタシの身内認定よ。

 ちょっとばかり跳ねっ返りが強いかもだけど、その程度のクセはどうって事ないわ。

 そもそもアタシが癖者の極みみたいなモンなんだし。

 

 完全に蕩けた貌で種付けを懇願していたあの雌顔を見て、堕ちていないと判断は出来ないでしょ。

 アタシ的には「くっころ」的な展開も見たかったけど、あのシャブ漬け的な快楽堕ちエンドも捨てた物じゃないと思うわ。

 

 ……一応言っておくけど此の【聖銀】に発情とか催淫とかその手の効能は一切無いわ。

 アレは唯々単純にエスデスが酔うと発情する性質だっただけよ。

 言うなれば『絡み上戸』ね。

 絡みは絡みでも絡み(物理)だけど。

 

 

 まあアレよアレ。

 据え膳は美味しく頂きました、と。

 なら、ヤるからには徹底的にヤるわよ、アタシは。

 




今回使用した魔術。

・【黄金の蜂蜜酒の製造】。服用すると一定距離を正気度の犠牲で転移出来る黄金の蜂蜜酒を醸造出来る呪文。今回は位階[聖銀]としてバフ盛りアイテムを作成。

・【狂気の笛】。聞く者を発狂させる笛の音。≪呪いのホイッスル≫で発動させる。

・【水・風の属性魔術】位階は長子の中級魔術。二重属性にする事で氷結系能力として使用。

・【属性強化】属性魔術を強化する。今回は二段階強化の【祭位】まで強化した。
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