憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト   作:社畜戦士

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はい、中編です。
纏まりきりませんでした。
次回で終わる筈です。


File46:ナイトレイド対イェーガーズ 中編

 ナジェンダは鼓舞するかのように勇ましく攻撃を宣言した。

 ……しかし、思惑通りにはいかなかった。

 

「――コイツ!?」

『Guuuu……』

 ナジェンダの元にGの一体が。

 

「ボスッ――チッ、こっちもか!!」

『Giiiiiii……』

 レオーネの元にもGの片割れが向かった。

 

 

 狙撃の為に遠くに居るマインの現況は窺い知れないが、援軍を呼ばれないように周辺を結界で警戒しているラバックと、変身能力で暗殺を行う為に身を隠しているチェルシー。

 現状、此の危険種との戦闘に参加出来ていない彼らを除けば、骸人形を入れると数は拮抗どころか逆転している。

 その状況で“あわよくば”と 一人(クロメ)を狙おうにも、元々イェーガーズは総員が並々ならぬ戦闘巧者であると知れ渡っているのだ。

 ブラフもあったのだろうが、全員で仲間の一人を狙うと宣告され、「ハイそうですか」と受け入れる輩は此の場にいなかった。

 

 また、確かに「クロメを殺せば骸人形は稼働停止する」というのは正しい。

 しかし、彼女を殺すためには召喚された危険種と、まだ予備があるかもしれない残りの4体はあろう予想戦力を突破しなくてはならない。

 そして、現状のナイトレイドの戦力でソレが為せるかどうかは難しい所だった。

 

「元将軍サンたちは【地星号】達と遊んでて。私は【火星号】と一緒にお姉ちゃんと()るから」

「クッ……!!」

「待――!?」

 

 危険種に搭乗したことで高所を得て、その巨躯に迎撃させることで近づくことも難しくなったクロメ。

 アカメに向けて二脚の恐竜、クロメが【火星号】と呼んだ危険種が俊敏に攻撃を行う。

 苛烈で凶悪な攻撃にさらされる仲間を援護しようにも、【地星号】と呼称された漆黒の怪人は四腕に備えた剛爪で容赦なく猛攻を仕掛けてくる。

 たったの一手でナジェンダ達の作戦は暗礁に乗り上げてしまっていた……。

 

 

 


 

 

 

 帝具持ちのレオーネはまだしも、ナジェンダは生身だ。

 生物型帝具のスサノオは通常だと使用者の身体機能に影響しないので隻腕の彼女でも扱えたが、自身で直接戦闘に出る場合は彼女の地力の差が如実に戦闘結果に影響してしまう。

 ただでさえ生身であるというのに、絡繰り機構によって武器として扱えるとはいえ、片腕が機械仕掛けの鋼鉄製義手なのだ。

 当然だが元の肉体の頃のようには動けないし、腕を喪失しているという事はその分の血肉や栄養、加えて肉体に蓄えられるべきエネルギーなどが物理的に永久に欠損しているという事で、五体満足の人間よりも絶対的に身体機能は低くなる。

 そんな彼女が骸人形相手とはいえ、超級危険種とタイマンでやり合うのは困難を極めた。

 

『Gyaaaaaaaa!!』

「ぐぅッ!!」

 

 四つの腕から繰り出される連撃は、無手で捌くのは難しい。(そもそも此奴なんで素手で戦闘に出てんの?)

 強靭で幅広の鋭爪を苦し紛れに機械腕で受けようとしたが、帝具にも使われていると言われる素材からなる超鋼によって錬鉄された自慢の右腕は――容易く切り刻まれた。

 

「なんだとッ!?」

『Gyuuuuuuuuu』

 

 幸い痛覚は備わっていないのでそれほど自失せずに済んだが、ソレでもナジェンダが感じた動揺は筆舌に尽くしがたい。

 鋼鉄に置き換えたとはいえ、自身の肉体として扱い、既に我が身の一部と思っていた右腕。

 生身が失われた場合とは違ったのだろうが、それでも僅かに逡巡してしまう。

 

 

 ――その隙、もはや救い難い。

 

「ガ――ハ――ッ!!」

『Giiiiiiii……』

 

 突如右腕を失った衝撃と、物理的に片腕の喪失で失調した感覚。

 そんな明確な手抜かり(チャンス)を見逃す程、此のバケモノは甘い存在ではない。

 即座に距離を詰め、外側の両腕で身体を抑え込み、内側の双腕でアンプルを撃ち込んだ――。

 

 

 


 

 

 

『Gaaaaaaaaa!!』

「~~ッこの!!」

 

 指揮官が絶体絶命に陥る少し前。

 ナジェンダと同時に襲い掛かられたレオーネは、攻めあぐねていた。

 

 レオーネの帝具ライオネルは、自身を獣化させてケモノのフィジカルとセンスを駆使しての肉弾戦を行うモノだ。

 野獣の如き身体能力と圧倒的に強化された五感によって「相手の攻撃は全て躱すか、無理やり受けてでも攻撃し、一方的に撲殺する」という戦闘方式を基本戦術とする。

 コレはケモノの感性によって大抵の生物の挙動を上回り、尚且つ不死の如きケモノの治癒力(生命力)を得ることによって被弾覚悟でも戦えるという特性を下敷きにした行動だ。

 

 ――つまり。

 搦め手や盤面をひっくり返す奇手が備わっていない、真実『真っ向勝負』に全振りした此の帝具……全てにおいて自身を上回る身体能力を持つ相手には、為す術も無くなるという弱点があった。

 奥の手と呼べる機能は存在したが、ソレは攻撃能力ではないこともあるだろうが。

 

『Guuuuuuu!!』

「グッ! ……クソっ!!」

 

 そもそも、あくまでもナイトレイドは暗殺者集団なのだ。

 革命軍の決戦要員としての側面があるとはいえ、こうまでも一対一での戦闘に特化した存在との戦闘は想定されていない。彼らは暗殺者であって、戦士ではないのだから。

 帝具の能力抜きでも大抵の帝具使いを切り殺せるアカメが例外中の例外なのであって、一流の武人と相対した時、少なくとも現状ではイェーガーズ達に軍配が上がる。

 その為、レオーネは全身を徐々に切り裂かれながら、まるで疲弊した様子を見せない骸人形との死闘を演ずる羽目になっていた。

 

「(コレだけの性能、帝具で操る以上は持続力なんかそれほどないハズ! 恐らくはソレを抑える為の使用する骸人形の制限(4体限定運用)! 持続力ならこっちの方が上、なら持久戦だ……ッ!!)」

 

 1分か、10分か、1時間か。

 体感時間では永い時間が経っているように錯覚するが、その実まだ5分も経過していない。

 全力で熾烈な肉弾戦を行うレオーネだったが、その動きにも徐々に陰りが見え始める。

 

 しかしながら……実のところ骸人形は、死体であるが故に八房使用者の体力が続く限りパフォーマンスが変化しない。

 コレは原作描写からも明らかで、投薬の効果が切れて立ち上がることすら出来なくなったクロメは、それでも骸人形を通常通り稼働させてナイトレイドの一人を討ち取っていた。

 つまり、【骸人形を起動させ続けることに使う体力】と、【骸人形が発揮する性能】に関しては相関関係に無い事が読み取れる。

 そして8体全てを起動していた時でも全力戦闘に加えて自身も戦闘に参加する余裕まであったのだ。

 

 原作の時点でそうなのだから、此の世界において某理不尽の権化(マッドサイエンティスト)によって魔改造をし尽くされたクロメには、実際の所は超級危険種とはいえ9体全てを全力稼働させても余裕が多分にある。

 ()()をしないのは、ひとえに彼女が口にしたように『姉と直接戦う為』だ。

 

「(まだか……まだなのか……あとどれほど戦える……?)」

 そうと知らないレオーネは、負けが決まった(結果の確定した)消耗戦をズルズルと続けている。

 ソレは絶望的な戦いだったが、思い込み(希望)が無くならない限りは自身を鼓舞して生き足掻くのだろう。

 

 

 ――そんな幻想、いつまでも持たせはしないが。

 

『Gaaaaaaaa!!』

「しまっ――」

 

 来るべき時が来た。

 現実にはソレだけの話だったが、無尽蔵の体力を有する骸人形と、生身の人間が全力戦闘を行った結果、極めて順当にレオーネは打破される。

 体力が限界に近づき、判断を誤っ(受けをミスっ)た結果、致命の隙を晒してしまう。

 相手の猛攻を捌き切る事が出来なかった彼女に、鋭い爪が生えた剛腕で器用に手に持ったアンプルを刺突したG。

 

 ――勝負は決した。

 

 

 


 

 

 

 元のヒトガタから魔改造を施されたとはいえ、Gの見た目は以前帝都近郊に出現した新型危険種に近い。

 件の新型とGのコンセプトは大きく違うが、共通しているのはヒトガタであること、つまり姿形が類似するのは当然だった。

 故にその性能を『精々が以前の新型と大差ない』と思い込んでしまうのも、無理からぬ話ではある。

 

 ……しかし、現実は非情だ。

 大本がタイラントを素体にしてあるうえ、ありとあらゆる改造をし尽くしたGは、真実その危険性は“超級”と呼んでいいだろう。素材がそもそも超級でもあることだし。

 間違っても生身の人間が接近戦で対処していいモノではない。

 

 スサノオには長い戦闘経験こそあっても、本来の運用方法は『要人警護』に使う代物だ。

 それ故に炊事洗濯縫物等々と家事機能が万能で備わっているように、設計思想としては軍隊に所属させたり特殊部隊で運用したりすることには向いていない。

 と、いうかそんな状況は想定されていなかった。

 帝具人間であるが故に永い人生経験から来る戦闘勘やセンスが磨かれているが、基本的に彼は未知の戦術や戦闘状況に対応できるだけの素養が無い、防衛兵器の類でしかない。

 要は、()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 その結果、最初の接敵でスピアに突撃を仕掛けてしまい、こうして護るべき自らの主から距離を離されてしまっている。

 全ては()()()()()()()()()()()からだ。

 

 一見すればスピアが無手にしか見えなかったのもその判断を後押ししてしまった。

 帝具が生誕した時代に生き、自らも帝具である彼は大体の帝具の存在を知悉している。

 其処に、『基本的に千年間で散逸した存在が、そう都合よく世に出る事は有り得ない』という前提。

 帝国では軍幹部や高級官僚、革命軍でも首脳部や部隊指揮官などでも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 帝具について記した古い文献は民間人でも割と簡単に手に入るが、ソレでも「いつか帝具を手にした時のため、または敵が偶然新しく手に入れていた時のため」などと考える人間は普通居ない。

 

 例えるならば某海賊漫画の『悪魔の実の図鑑』だ。

 いつ手に入るか分からない、世界中の何処かから生じる正体不明な存在。

 食せば絶大な能力を得られると分かっていても、その時の為に図鑑の内容を暗記するような奴は居ない。

 そして既に能力者である人間も、自分は2つ目の悪魔の実を食べることが出来ないために態々図鑑の内容に熟知しておく必要性が存在しない。

 

 此の例えと同じように、帝具も2つ同時の使用は不可能なうえ、数が限られていて何処にあるかも不明。

 帝具は使用者の体力と精神力を著しく消費し、2つ同時に扱えば高確率で死亡し、しかも波長が合わないと使用すら出来ないでそのまま死ぬ。

 まさに『いつかの万が一の時の為に使えるかも分からない知識を覚えておく必要性』というモノが存在しないという状況だ。

 

 話を戻すと、それ故に他の人間も『スピアは無手にしか見えなかった』ことから危険な帝具を持っていないと判断した。

 そして此の場で誰よりも帝具を知り尽くしたスサノオをして、『暗器のように隠せるか、もしくは服や装備の中に隠せる程度の大きさの帝具に、自分を倒せるような性能のモノは存在しない』と断定した。

 

 ソレが帝具の話だったならば、これ以上ないくらいに的確な状況判断というものだった。

 しかし、惜しむらくは何処かの自称紳士(ドクター)が現代にあって()()()()()()()()を内職仕事の感覚でポンポン量産している事実を知らないことは、致命的な齟齬(ミス)と言えた。

 

 

 そして、そういった理由を抜きにしても、スサノオではスピアに勝てない。

 

 

「――バカ……な……」

「ふ~ん? やっぱり再生するって言っても、無限にってワケじゃないんだね」

 

 槍型の神器で肚を串刺しにされて大地に縫い付けられたスサノオ。

 既に再生機能の限界を迎え、達磨にされた肉体は一向に復元される様子が見えない。

 

 ナイトレイド側の予想(期待)を裏切り、スサノオは戦闘開始から数分で戦闘不能にされていた。

 

「まるで話にならないよ。この程度で手柄首なんて言ってたら笑われちゃうって」

 

 溜息すら吐いてみせて、落胆した様子を隠しもしないスピア。

 もっとも彼女が自慢できるレベルの手柄(強敵)が欲しければ、身内以外だとギリギリで何処かの大老害がソレに引っかかるかどうかといった所である。

 アレは「腐っても鯛」というか「腐った鯛」というか、兎も角一般には【帝国最強】と賛美されていた戦力ではあり、比較対象として持ってくるには大きすぎる。

 よって、帝具人間とはいえロートルにそれほどの過剰な期待をしては酷というものだ。

 役よりも役者の方が不足している。寧ろ彼女を一対一で戦闘させることが役不足だろう。

 

 戦闘の経緯は簡単だ。

 能力の一切を敢えて封印し、不壊の槍として扱ったスピアが、『()()()』によって蹂躙しただけ。

 単純な実力の格差によって齎された結果であって、其処に反則(ズル)違法行為(チート)の類は存在しなかった。

 

 『()()()()()()()()()()()()()()()』の存在を指して『反則だ』『ズルい』と言う輩がいるかもしれないが、コレも自動で動く便利な存在ではなく、霊体接続で文字通り追加の腕を生やして動かしているだけだ。

 つまり、正真正銘に腕が増えているだけで、その多肢を十全に動かせるようにするための鍛錬が前提にある以上、楽な裏技(ドーピング)外法の奇手(チョンボ)とは決して言えない。

 

 前述したように常識外の手に弱いスサノオにとって、多腕による物理的な手数の増加という単純かつ使()()()()()()()強い戦闘方式は、精神的にも肉体的にも苦手な存在だった。……常識で考えて腕が増える奴に対応できる奴は普通居ないのでシカタナイ。

 

「さてさて……見ればわかるけど、此の胸の球状のパーツがコアだよね」

 

 帝具人間であるスサノオはコアを破壊されない限り、基本的に機能停止しない。

 しかし、設計ミスか舐めプか、明らかに不自然な物体が彼の胸部でデカデカと自己主張(露出)している。

 達磨にして頭部を吹っ飛ばしても再生した以上、消去法で胴体にあるその怪しい部品がコアだと推察するのは難しくない。

 そもそも人体に存在しない追加部位で、明らかに用途不明なのだ。

 

 とはいえ、此処でコレを破壊する気はない。

 部隊全員の共通認識にあるように、ナイトレイド=サンにはまだまだ踊って貰わなければならないからだ。

 此処で幕を引いたら折角仕込んだ舞台がオジャンになる。

 終幕を決めるのは演者ではなく、演出家の権利だ。

 

「――効かなかったら壊せばいっか」

「ぅぐッ!?」

 

 少しの不安を懐きつつ、コアと思しき部分にアンプルを撃ち込む。

 生物型とはいえ帝具に効果が有るのかおっかなびっくりだったが、果たして――。




不穏な感じを残して、次回で街道戦決着です。

――なお、死者が出ます。
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