憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト 作:社畜戦士
一応伏線は張った心算だったんですが見返すと殆ど繋がってないですね。
まあソレが無くても勝敗は変わらないのでヨシ!
順調に戦闘不能にされていくナイトレイドたち。
残る戦力は文字通りの一撃必殺能力の村雨を持ち、一発逆転の目が残されているアカメ。
絶えず進化し続ける成長性と適応力により、理論上は無限に強くなれるインクルシオを身に纏ったタツミ。
此の二人と、離れた位置で横やりを防ぐ為に警戒を続けるラバックと、未だに姿を見せないチェルシー。
現在無事なのは此の4名だけだった。
他の人員は無力化され拘束されてしまっている。
「――そろそろ辛いよね? 嬲る趣味は無いから、もう楽にしてあげるよ」
「ざ――っけんなッ!!」
そしてタツミ対ボルスの戦闘も、既に終わりが見え始めていた。
タツミは鎧のあちこちが溶けて剥がれてしまっている。
当然内部からローストされ、酷い火傷が至る所に走り回っている。
一方ボルスは【金星号】の背から一歩も動かず、
全身を猛火で炙られたタツミと、無傷のボルス。
どちらが優位か、一目で分かる結果だ。
ボルスがせめてもの慈悲と、燃やし尽くして終わらせることを提案したが、持ち前の負けん気でソレを吐き捨てるタツミ。
――だが、気持ちだけではどうにもならない絶望が其処にある。
気持ちだけでは、想いだけでは、心だけではどうにもならない。
ならば、どうする?
――決まっている、ナニカを捨ててでも前に進むだけだ。
「おぉおおおおおおおおおッ!! インクルシオォオオオオオオオッ!!」
裂帛の気合を込め、インクルシオの性能をより強く引き出そうとするタツミ。
如何なる環境にも適応出来た超級危険種タイラントの特性を受け継ぐインクルシオは、適応進化によって凍土にも猛毒にも、そして灼熱の劫火にすらも適応して無効化出来る。
その力をより引き出すことが出来れば……そう考えて、タツミはより深く鎧と意識の同調を開始。
同化が進むと
適応能力により耐熱性能を極限まで高めたインクルシオは、より生物的な形状になり、各部に素体であるタイラントを思わせる怪物のような意匠を持った造形になった。
此の星のあらゆる環境に適応できる
「コレでそのマグマは怖くn――「錬成温度上昇。発射」ハ? ぐ、ぎゃあああああッ!?」
――しかし、無駄だ。
超克し活路を見出したはずの奥の手は、あっさりと燃やし尽くされた。
――此処で地球の生物進化について話をしよう。
半分くらいはオカルトだが、『昆虫地球外起源説』という学説がある。(『
色々理由があるのだが、「虫は地球外から飛来した生命体を祖にする」という考えだ。
生命の起源を外宇宙からの存在とする学説、『パンスペルミア説』の一種で、昆虫が他の生命体とは大きく異なった生態をしている事がそういった考えを生むのだろう。
その学説を唱える人々はその起源説の根拠の一つに、「多くの昆虫が地球上では必要としない能力を保有している」というものを挙げている。
地球上の何百倍もの放射線に耐えたり、あらゆる波長の電磁波や地球上では存在しない不可視光線すら視認したり、火山の火口付近や火山ガスの蔓延する場所などの苛酷な環境下で生育可能だったり、他の生命が存在しない極寒の凍土に生息したり、あまつさえ多くの生命にとって猛毒となる成分を耐えるどころか主食とする生命体すら地球上には存在する。
高温、極低温、高圧、低圧、真空中、宇宙空間。そんな場所にあっても死なない生き物が、昆虫の中には実際に存在する。
こういった埒外の生命力を指して『地球で生きる上で必要としない能力を持つ、つまり地球外からやってきた生命体なのだ』という考えだ。
その是非真偽については科学や哲学で考えると楽しそうだが、此処で話を戻す。
『通常の生命体は、その
つまり、極論すれば『タイラントがマグマに適応して耐熱性能を得る』ことは不可能ではない。
「フィクションを科学的に考えるなんて……」とは思うが……ともあれ、『如何なる環境にも適応する完全生命体』と称された生き物だ。
ソレが地球上に存在する環境的要素であるのなら、マグマにだって適応できるのだろう。
……しかし、現実は残酷だ。
そもそもの話になるが……通常、地表付近のマグマは800度~1200度、地下奥深くにある生成されたばかりのマグマが1300~1400度程度の温度だとされている。
マントル奥深くまで見ればまだ上の温度があるのだろうが……少なくとも、生命体の活動領域ではないので割愛する。
タイラントがあらゆる環境に適応する、と謳ったところで、ソレは超常の力だとか、魔による術だとか、外法の神秘だとか、その手のオカルティズムではない。
れっきとした此の世界に生きる生命体が獲得した、『此の星で生きる為の力』なのだ。
その為……あくまでもタイラントは、
生物的限界であるが故、ソレは器物に加工された状態でも超える事の出来ない『絶対の
翻って、マグマカイザーはどうか。
本来の超級危険種としての素地はさておき、今の【金星号】は
太陽の表面温度が約6000度とされているのに対して、ソレを超えている。
当然だが此の星でそんな環境にはお目にかかれない。
地殻の内部に入っても無理だ。
纏うマグマは煮立ち沸き立ちドロドロに溶けている。
コレは一見マグマに見えるが、そう見せかけたナニカだ。
カタチを持った死の炎だ。
マトモに浴びれば、文字通り骨も残さず蒸発してしまう。
そんなモノ、如何に危険種由来の鎧とはいえ、耐えられるものではなかった。
「ぁ――ぅ……」
「まだ息があるんだ。でも――油断はしないよ」
恒星クラスの炎熱を浴びて全身が余すところなく焼け爛れたタツミだったが、しぶとく命を繋いでいた。
……しかし、既に虫の息。
此処から一転攻勢に出て
原作主人公様の底力、果たして――。
「――ねぇ、スゴイでしょ? コレが今の私のチカラ。お姉ちゃんが居なくなってからも、ずっとず~っと頑張ってきた……その結果なんだから!」
「クロメ……っ!!」
既に状況は最悪。
現状で戦闘可能なのはアカメだけ。
村雨が当たれば場はひっくり返せるかもしれないが……その逆転に至るまでの勝ち筋がまるで見えてこない。
アカメが如何に歴戦の戦闘巧者とはいえ、危険種も含めて8対1の様相に至っている。
そんな絶望的戦力差を覆せる程、相対する帝具使い達は生易しい存在ではない。
――此処でアカメの脳裏に過ったのは、『仲間を見捨ててでも生き延びる』か、『仲間に殉じて一人でも多くの敵を道連れにする』か。
自らが手にかけてきた暗殺対象達の死が無駄でなかった証の為に、彼女は革命を為すことで禊にしたいと考えてきた。
ヒトを殺すことでしかナニカをすることが出来なかった自分だったが、ソレでも何かを為せたと思えるようにするため。
その為に、彼女は此処まで戦い続けてきたのだ。
今まで奪ってきた命、その全てに価値が在ったと思えるようにするため。
半ば呪いのような決意が、彼女には沁みついていた。
ソレを抜きにしても、作戦が失敗なのは分かりきっている現状、少しでも戦力を保持して退却することが戦略上正しい判断だ。
革命軍という大を生かすため、此処で仲間たちという小を損切りする。
その為、此処で仲間を見捨ててでも生き延びるのが組織の一員として為すべきことだが……。
しかし、彼女はヒトを殺すことを是としてきた人でなしの自認はあったが、情の無い冷血な毒婦ではない。
相応に情に厚く、仲間が討たれた時にはその鉄面皮をくしゃくしゃにして号泣したこともある。
情に脆いというのは殺し屋としては不適当だろうが、ヒトとしては間違いなく好ましい部分だ。
……しかし、殺し合いに情を持ちだした時点で勝負は見えていた。
彼女がこの先
――常識の外に在る外法の探究者達と相対し、人間性を捨て去るのを忌避するのならば。
「――うん、決めた」
チンッと八房を鍔鳴らせると、間を置かずに残り5体の骸人形が出現する。
「なッ!?」
――アカメを取り囲む配置で。
そもそも、八房の『骸人形は地響きを鳴らして地の底から這い出てくる』、なんてワンクッションを置かないと召喚出来ない仕様は致命的な隙だ。
そんな分かりやすい穴を塞がない
出現方法としてはインクルシオやグランシャリオと同じように、空間から飛び出すように顕現する様式に改造してある。恐ろしく速い出現……俺でなきゃ見逃しちゃうね。
よって、突如空間を割って出現した危険種によって物理的に四方を塞がれるという状況も、容易く構築出来た。
数十メートルサイズの大怪獣が隙間なく取り囲んでいる。
村雨には必殺の呪毒はあっても物理的な攻撃力は刀剣の枠を超えるものではないため、完全に詰んでいた。
「フフフ……絶体絶命だね、お姉ちゃん?」
「クソ……ッ!!」
嗜虐的な笑みを浮かべるクロメと、苦み走った顔で睨みつけるアカメ。
勝者と敗者がハッキリと分かる構図だ。
しかし、どれだけ睨みつけようとも、既に勝負は決している。
此の状況でカラテパワーに目覚めて危険種をぶん殴って吹っ飛ばす、なんて奇跡が起きるハズもない。
状況は徹頭徹尾クロメに軍配が上がっていた。
――そして、勝者が敗者に行う事など、古来より決まっている。
蹂躙だ。
「それでは、此処に4面ダイスがあります。1はゼリー排泄。2はそのまま例のアレ。3はモルゲッソヨ。4は
「――ッ!? 何を、何を言って……」
「
言葉の意味は分からんが、とにかくスゴイ不穏な響きだ!!
姉の動揺の言葉など無視し、掛け声一喝、正四面体のダイスを放るクロメ。
状況が理解出来ていない姉を置いて、そのダイスが示した結果は――。
「(ヤバイヤバイヤバイ……どうする……どうすりゃいい!?)」
場所を離して戦場となった荒野からキロ単位で遠くの山野の中。
ボスから結界による警戒と索敵を命じられていたラバックは、焦燥と恐怖の只中に居た。
それもそうだろう。
頼れる味方達が、一人残らず戦闘不能になっているのだから。
彼自身は自ら公言しているように、サポートが専門で直接戦闘能力は低い。
勿論戦闘が出来ないわけではないし、“奥の手”を開陳すれば帝具使い同士の戦いにもそうそう負けることは無いという程度の自負はある。
……だが、現状は彼一人が戦えるからといって何かが解決するような段階にない。
6名いた戦闘要員が全滅。
一応無傷の自分ともう一人が居るが、どちらも戦闘職ではないときた。
このような状況、もう詰んでいる。
本来ならば彼が取るべき行動は、「少しでも多くの情報を持ち帰るため、生きて革命軍本部に合流する」ことだ。
イェーガーズ達の戦闘とその能力を少しでも見られたのは間違いなく有益な情報となるし、ソレを仲間の元へ届けるのは偵察兵としては優秀な行動と言える。
元々サポーターとして運用されている彼に、直接の戦闘行動は企図されていない。
上からも、「仲間を見捨てて~~」なんて言われることもないだろう。
ならば、自らは此の状況で為すべきことを為すのが正解だ。
……しかし、ソレを理解していて尚、彼はその行動に移れないでいた。
仲間への情? 勿論ある。
見捨てる後ろめたさ? 当然あろう。
無力感からの自己嫌悪? 無いわけではない。
だが、彼が仲間を切る事が出来ない理由として一番大きいのは、
彼は元々豪商の四男坊で何不自由しない生活を送っていたが、当時下士官だったナジェンダと会って一目惚れ。
そのまま軍に入隊して側近まで上り詰めたという経歴を持っていた。
ナジェンダが帝国から離反した際も同道し、此処まで陰日向に身を粉にして尽くしてきた。
全ては愛する女性の為。
いずれは想いを伝えて……そんなふうに考えていた。
そんな女性がこのままでは殺される。
革命軍の人間としては情報を生きて持ち帰るのが最善だ。
――だが、ソレを分かってはいるが……愛するヒトを見捨てるような非情の決断が出来る程達観していない。
しかし、打つ手が無い。
彼の持つ帝具クローステールは糸の帝具。
所謂フィクションに出てくる『糸遣い』という存在をおよそ現実のモノにできる代物だが、物理法則に喧嘩を売るほどの
目に見えない程の極細のワイヤーを扱える……というレベルではない。
あくまでも糸は普通のテグス糸程度の強度で、束ねると確かにそのような強度にはなる。
“奥の手”ならばそのレベルの細さと強さを両立しているが、物理的に量が限られている。
そうなると、最大で数十メートル規模の大怪獣を8体もやり過ごし、仲間を助けて回る……なんて、不可能だった。
状況は完全に終わっている。
後はどれだけ損切りが出来るか、という段階だ。
組織の一員として考えたら、彼は生き延びて情報を届けるべきだった。
だが……そう簡単に割り切れるなら、安定した立場を捨てて国に反旗を翻したりしてはいない。
此処で起死回生の一手を打つには、何かしらの自分以外の存在が必要になる……。
――そして、彼は一人ではなかった。
「ラバ!」
「――チェルシーちゃん!」
影に潜んで暗殺の機会を伺っていたチェルシーが飛び込んできた。
向こうの状況を見ていたからだろう。
「時間が無いから単刀直入に聞くよ? ……奥の手で、何とか出来たりする?」
暗殺組織ナイトレイド。
アカメを筆頭に『武人の誇り』だのという類の感傷は持ち合わせていない
一番大きい理由としては「拷問などで仲間の情報を抜かれる危険性」を考えたリスクヘッジだったが、メタな視点で言えば情報を展開によって小出しにするためだろう。
ともあれ追加人員であったチェルシーはラバックの奥の手を知らない。
よって、此処で
そして、ソレに対するラバックの答えは――。
「――無理だ。俺の奥の手は【界断糸】……極細で最強硬度を誇る糸だけど、量が限られてる。あれだけの危険種の壁をどうにか出来る代物じゃない……」
「――そう……」
目を伏せ、憂いを帯びた顔を見せるチェルシー。
クローステールは攻撃的な帝具ではないから分かっていたが、奥の手に劇的な火力というモノは無かった。
自身の帝具も奥の手と呼べる代物は無い。
故に、こうして二人だけが雁首揃えていても、状況は変えられない。
完全に終わった状況、ソレを受けてチェルシーは……。
「――よし」
「……チェルシーちゃん?」
いつの間にか離れていたチェルシー。
目の前で会話をしていたハズなのに、気が付けば血振りをした得物をナイフシースにしまっていた。
「(いつ抜いた……いや、なんで抜いた……? ナイフなんて、一体……)」
僅かに懐いた疑問は、反転した視界と徐々に冷たくなっていく思考に塗り潰されていく。
ゴロリと転がった首が、自分のモノだと気付いた時には、既に自分の死を悟っている。
自分が仲間に
「――作戦名は『
転がされた生首に、唾を吐き捨てて蹴り転がす
其処には仲間に対しての親しみや情など一切なく、唯々無価値なモノへと向ける目で肉塊へと貶められた遺体を眺めていた。
「(こんな……とこ、ろ、で…………)」
末期の言葉も辞世の句も残せず、あまりにも呆気なくラバックは死んだ。
――ナイトレイド、残り7人?
「おっつー&おひさー」
「あ、お疲れさまー。そしてお久しぶりー」
「
「ええ。晒すなり再利用なり、何かしらに使うでしょうから」
「ドクターたちが心配ですね(ハッチャケてないか的な意味で)。早く合流しましょっか」
選択肢『ダイスの導き』を選びました。
『お姉ちゃんとずっと一緒ルート』が解放されます。
※このルートは選択肢によって最終的な結果が大きく変動する可能性があります。
という訳でチェルシーはスパイでした。
伏線の張り方が下手糞なので唐突に設定が生えてきたみたいになってますが一応最初からその心算で書いてはいました。
今後も要所要所でナイトレイドの中で埋伏の毒をやってくれます。