憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト   作:社畜戦士

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原作読んでて思ったのは、『坑道掘りとか気付かないワケないだろ…』『なんでランと戦ったのに上官のナジェンダは空から奇襲が通じると思ってんだ…』というものです。
よって、潰しにかかります。


File50:読まれている奇襲

 ナイトレイド突入前夜。

 原作においてはラブコメったり美味い物食べたり温泉に浸かったりで英気を養った彼ら。

 生憎と原作と違ってタツミとマインの好感度上昇イベントの悉くが潰れた影響でラブコメ展開は無かったが、他は凡そ原作通りの和気あいあいとした空気が流れていた。

 心身ともに休んで気力充分、体力万全。

 正にベストコンディションになった彼らは、計画通りに深夜に作戦を決行した。

 

 

 

 まず、地底坑道からの陽動組。

 ナジェンダ、スサノオ、レオーネ、タツミは地下から聖堂至近まで一気に入り込み、タツミのインクルシオに備わった透明化によって見張りを倒し、そのままバレないように大聖堂の中庭まで侵入して攻め込む作戦だ。

 幾らでも警戒の為に警備を配置できる外延部と違って内部にはある程度人員を置くにも屋内の狭さから物理的制限が掛かるが、雑兵に過ぎない警備兵や信者たちは帝具使いにとって大した障害ではない。

 その為、中庭まで入り込んだら派手に陽動を実行。

 閂がしてある門は内側からしか開けられない以上、軽々と門扉を飛び越えられるような身体能力の彼らにとって、此の状況は閉じ込められるというよりも『関係の無い雑兵を締め出せる』というプラスの状況だ。

 後は中庭で騒動を起こせば、雑兵では停められるハズも無い彼らを倒しにエスデス以下の護衛を引っ張り出せる……そういう目論見があった。

 

 

 ――しかし、その御大層な作戦は、第一段階の『坑道から出た』瞬間に頓挫する。

 当たり前のように事前に出現場所を特定されている以上、罠が張られている状況。

 タツミが透明化で警備兵を倒そうと坑道から出てきたその刹那――坑道が爆音と極光で満たされた。

 

「――なッ!?」

 

 振り返って爆風によって縦穴から弾き出された仲間たちを呆然と見ているしかないタツミだったが、状況は待ってはくれない。

 水路に流されていく紙のボートのようにヒュルヒュルと飛んでいく仲間たちを追おうか、それとも見張りの排除を優先すべきか逡巡した憐れな殲滅鎧(ルインコート)の少年。

 戦場の真っただ中で、それだけの隙を晒してしまった彼に、恐るべき怪物たち(ソレ)が襲い掛かる。

 

『――Hiya, Georgie!』

 

 いつの間にかその場に現れたのは、強靭な肥満体のボディにピエロの装いをした――屍人。ゾンビ兵だ。

 ソレも、同じ顔かたちのゾンビが、何十体も。

 

『『『Aren't you gonna say, hello?』』』

 

「チッ、仕方ない……押し通るッ!!」

 

 仲間の安否は心配だが、此処は皆を信じて此の場を持たせる。

 そして、仲間たちが戻って来るまで時間稼ぎをするという選択をしたタツミ。

 現状では雑兵をあしらって大聖堂内部のイェーガーズを釣りだす目的は変わらない以上、ある意味では堅実な選択だった。

 

 

 ――その雑兵(ゾンビ兵)の強さを見誤っていなければ。

 

 

 


 

 

 

 時間は飛んで、空からの奇襲組。

 陽動組が派手に注意を引いている隙に、エアマンタに乗った残りの人員が空から攻め込む、というのが此の作戦だった。

 コレは、狭い屋内での戦闘を避けたいイェーガーズ側と、護衛を引き離したいナイトレイド側の思惑が一致した場合、高い成功率を見込めた作戦だ。

 

 ボリックを守り切れなければ帝国側の敗北で、ナイトレイドはどれだけイェーガーズや四凶を削ってもボリックを殺害出来なければ敗北。

 此の前提がある以上、ナイトレイドに余力を残したくない帝国側はある程度敵の思惑を見通していても、折角纏まって敵が出張ってきている以上は誘いに乗らなければならない。

 其処を叩いて敵の主力を誘引している隙に空からの電撃的な奇襲でターゲットを殺害して即座に撤退。

 ソレがナイトレイド側の作戦だった。

 

 ――ただ、此の作戦には()()()()()()()()()()()がある。

 

 エスデスという最強戦力との正面戦闘を避けて、目標を速やかに始末することで作戦目標だけを達して撤退する。

 なるほど、戦力に劣る側の作戦としては有意なモノだろう。

 

 ……しかし、()()を為すには、『エスデス以下敵の主力を護衛対象から引き離し、足止めし、ボリックを孤立させ、ソレが無理でも奇襲組の電撃戦で速攻の内にターゲットを始末して、なるべく犠牲を少なくして撤退を成功させる』という……割と原作でもムリゲーな作戦目標を達成しないといけなかったりする。

 

 

 そして原作でもアカメが飛行型帝具の使い手(ラン)と事前に戦闘していたのに、空への警戒を一切せずにランの逆奇襲を許している。

 その結果敵の本陣への電撃戦が封じられた訳だが、しかし想定外に教団側が秘匿していた鎌の帝具使い(ザコ)と戦闘する機会を得て速攻で撃破し、後にその帝具を回収するという怪我の功名(僥倖)に見舞われている。

 

 その辺の原作主人公故の()()()()()展開はさておき、此の世界ではどうなったか?

 ――答えは、四凶も含めた半数の戦力が()()()()()()()()()、此の状況にある。

 

 

「――ようこそおいでくださいました、薄汚い溝鼠(ナイトレイド)の皆さん」

 恭しく優雅に腰を折って一礼したのは征南副将軍のラン。

 彼に関しては、大分前から『飛行能力の帝具』を持っている事は周知の事実であったため、驚きは少ない。

 ――だが……。

 

「ひー、ふー、みー、と……少ないッスね?」

 リラックスした様子で肩に槍を担ぐタツミの同郷(イエヤス)

 

「残りは流石に本陣で大立ち回りだろうね」

 火炎放射器の武具使いである革命軍の怨敵の一人(ボルス)

 

「……どんだけ数を連れてきても隊長とやり合えるとは思えないんスけど……」

 タツミのインクルシオと同型の帝具であるグランシャリオ使い(ウェイブ)

 

「しょーがないでしょ。聖堂内部にアレ以上の数を詰めとくわけにもいかないんだから、こっちも残りの人員で他の連中を持て成す(潰す)しかないじゃあないの」

 「どうせ暇してるんだしいいでしょ?」と嘯く革命軍にとってのアンタッチャブル(ドクター・スタイリッシュ)

 

「へっへっへ、此処での仕事納めになるだろぉし、出来れば譲ってもらいてぇもんですが」

 割と旺盛な戦意を隠さずにいるのは、厄神四凶の最強候補(イバラ)

 

「ふぅむ……流石にコレだけの数で囲んだ以上、ワシの出番は無さそうだが」

 『現世こそが地獄であり、殺して魂が解放されることが良いこと』と信じている危険思想の持主にしては控えめな意見を口に出したのは、厄神四凶の双璧(シュテン)

 

 

 ――以上、実に半数(7名)もの戦力が空中で待ち構えていた。

 ソレも、ナイトレイド側のように飛行生物に乗ってではなく、まるで空を踏みしめるように中空に立って。

 

 そもそもランの待ち伏せすら想定していなかったナイトレイドにとって、完全に制空権を握られた此の状況、想定外どころではない事態だ。

 

 

 そこで問題だ! この囲まれた状況でどうやってこの包囲網をかわすか?

 3択――ひとつだけ選びなさい。

 答え①ダークヒーローの原作主人公達は突如反撃のアイデアがひらめく。

 答え②仲間がきて助けてくれる。

 答え③かわせない。現実は非情である。

 

 

 彼らの脳裏にどれだけの打開策が浮かんでは消えていったのかは不明だが、『絶望! 突きつけられた答えは③ッ! 現実は非情なりッ!!』とばかりにデッドエンド……には、ならなかった。

 

 まず、ランが飛び道具で騎獣(エアマンタ)を潰したが、実はスパイの人(チェルシー)が煙幕を張って目晦ましを。

 そして実際はドクターの改造(帝具の奥の手)でエアマンタに化けた彼女はマインが残されたマンタの死体と、アカメを乗せた生きているマンタ(変化したチェルシー)とに分かれる。

 当然まだ生きているマンタが飛行するのを追う(やらせで接戦を演じる)待ち伏せ組だが、巧みに曲芸飛行を敢行して躱しきる(躱させてもらう)チェルシー達。

 そして待ち伏せ組の意識が逸れた頃に、地面へと墜落するだけだったマンタの死骸の背から落下傘を着用したマインが飛び降りた……。

 

 

 ――こうしてチェルシーとアカメの陽動を援護に、マインは無事に地面へと降り立ったのだった……。

 

 

 ……まあ、全部イェーガーズ側の台本通り(やらせ)なのだが。

 演者(マイン)が気付いていない以上、お芝居だろうがホンモノって事で。

 

 

 


 

 

 

 場面を戻して陽動部隊の状況。

 原作では此の時点では敵に正真正銘の雑兵しか存在せず、地下経路もバレていなかったことから中庭で大暴れして無事に作戦の第一段階は完遂出来たナイトレイド側。

 しかし雑兵が打ち止めになっても肝心のエスデスが現れなかったことで作戦変更を余儀なくされたナイトレイドだったが……残念ながら此の世界ではその段階にすら到達できていない。

 

 まず、作戦の初動である『見張りの排除』の時点で先兵のタツミ以外が爆発に巻き込まれて空高く打ち上げられるという手痛い一撃を食らっている。

 

 ――有史以来数千年の歴史がある坑道戦術(城攻めの一例)なんて代物を、異世界とはいえ全く警戒しないなんてあり得ない以上、残念ながら当然の結末ではあるのだが。

 まあ能力バトルダークファンタジーの世界にリアル路線戦術ガチ勢が入り込んだのが悪い。しかもそのガチ勢は躊躇なく魔術とか(ファンタジー)を使ってくるという鬼畜。

 

 ともあれ初手で痛烈な反撃を受けたナイトレイド側だが、既に賽は投げられた状況だ。

 別動隊の仲間が同時進行で攻め込む作戦上、勝手にイモ引いて撤退なんて選択肢は有り得ない。

 よって、見るからに異常な存在(ゾンビ兵)がワラワラと湧いてきても、残されたタツミと、爆風でズタボロだったナジェンダ以下他の陽動組も作戦を継続するしか道が無かった。

 

 

 ――コレには大量の同型の存在(ゾンビ兵)を一見して強さを低く見積もった、という想定があったのだが……残念ながらその判断は間違っていた。

 此のゾンビ兵、いつぞやに彼らが戦った量産型深きもの共(レッサー・ディープワン)と本質は同じだが、その個々の個体の強さは彼らが記憶を封印(蹂躙)された頃の段階に達している。

 つまり、肉体的強度以外では既に達人クラスの身体能力だ。

 そして、動死体(リビングデッド)である以上、痛みを感じず肉体が完全に破壊されるまで動き続け、身体能力も極限まで強化されている。

 更にコレが極めつけなのだが……量産型帝具、【皇具】という代物を装備している。

 

 量産型(マスプロダクションモデル)なんて字面では廉価版のように感じるが、実際はその逆。

 『原型と完全に同じ性能を有し、それでいて安価に量産可能』という段階にある存在。

 ソレが【皇具】だ。

 今回は試験稼働ということと、ゾンビ兵の元の死体(素体)との適合率の関係で【ダイリーガー】しか装備させていないが、いずれはあらゆる皇具と適合する人型危険種の兵団を用意する心算でいる。

 

 ……まあ長々と語ったが、要はドクターが小出しにした技術の一つを此処で切ったわけだ。

 元が微妙な性能と評判だった(ネットで貶された)ダイリーガーを量産したが、コレに関しては『帝具を量産する』という埒外の方針が絶妙に嚙み合った。

 【“快投乱麻”ダイリーガー】とは投擲型の帝具で、それぞれが異なる属性を持った6つのボール型の代物だ。

 能力はシンプルに各種属性を纏った球でしかないが、自力で投げないといけないという身体能力に依存した射程距離の問題が付きまとうが、投擲後に使用者の元へ飛んで戻って来る程度の融通は利く。

 ……となれば、数を揃えての面制圧という状況において、これ以上ない程に有用な武具だ。

 

 要は此の世界で停滞している、面制圧が可能な飛び道具、つまりは爆撃砲撃能力に類する性能を期待できる存在。

 本来ならば帝具はオンリーワンの存在で類似するモノも容易に揃えられない代物だったが、皇具としては大量生産によって数と質を確定させて揃えられる。

 信長公の故事に倣うまでもなく、射撃武器とは数を揃えて有利な地形から制圧射撃を行うことが戦術の基本だ。

 

 鉄砲がライフル銃程度まで発展しているにも関わらず、砲撃能力は徹甲弾しか存在せずに榴弾砲に関しては影も形も無い此の世界。

 メタ的には帝具の価値がストップ安になってしまうからだろうが、それなら帝具という此の世界特有のオブジェクトを、あくまでも価値ある存在として砲戦能力の向上を図る。

 そういった何処かの異世界知識持ち(ドクター)の思惑により、此のダイリーガー部隊は結成された。

 

 

 ――話を戻すが、帝具の量産化に等しい質と量の暴力により、ゴリゴリに削られていく陽動組。

 現状ではイェーガーズ達や厄神四凶どころか、明らかに外法の存在とはいえ数を揃えたゾンビ兵(大量の雑兵)に押されている。

 

 そんな状況にあって、今更出し惜しみは出来ないと痛感したナジェンダ。

 スサノオの奥の手である【禍魂顕現】。温存していた(回数制限のある)ソレを切った。

 

 原作とは違ってロマリー街道での戦闘で使わなかった(瞬殺された)為、『3度使えば使用者の命を吸い尽くす』と伝わるソレの、1回目の使用。

 その初お披露目が、此の瞬間だった。

 

 ――命を懸けろ。或いは最強戦力(其の身)に届くやもしれぬのだから。




ルインコートってなんだよ(哲学)

お気づきでしょうがゾンビ兵の素体は某クズの死体です。
死しても許されぬ、永遠の責め苦を味わっているところですね。
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