憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト 作:社畜戦士
おとなはウソつきではないのです。まちがいをするだけなのです……。
さて、研究者としては『生物型帝具』なる存在には色々と興味が尽きなかったのよね。
担い手として認められると起動する、ってあやふやな記述が原作にはあるけど、その辺は曖昧なのよ。
例えば帝国側に保管されてた【“魔獣変化”ヘカトンケイル】だけど、セリューが起動に成功するまで、適合に失敗したモブが軒並み死んでいる描写が原作にあるわ。
と言っても小さい一コマに『血だまりの中にズタ袋が並び、その横で(またしても)何も知らないセリューがコロに認められた瞬間』しか描かれていないのだけど。
それでも察することは出来るでしょ。
コロに関しては魔獣を名乗るくらいだし、実際に人間の死体を食ってるように悪食で、狂化という文字通りの現象を起こす奥の手もある。
そんな怪物なものだから、『適合に失敗すれば食い殺される』という流れは残当ではあるわ。
ソレに対して【“電光石火”スサノオ】だけど、此方も起動の瞬間は描写されてはいないわ。
でも、ナジェンダと
自発的に適合者に反応して起動するという安全仕様なスサノオだけど、コレは設計思想の段階で決まっている起動方式でしょうね。
文字通り【魔獣】のヘカトンケイルと、【要人警護】の目的で開発されたスサノオ。
おそらくは休眠状態のスサノオに非適合者が起動を試みても、食い殺したり殴り殺したりなんてしないでしょうよ。
コレは単純に凶器と護身具の違いかしら。
その辺の細かい仕様については正直千年前の文献でも見つからないと確たることは言えないでしょうが、アタシが問題にしたいのは、此の『起動の方法』について。
原作だとコロはセリューと一緒に討ち死に。スサノオは味方を逃がす為に殿になって討ち死に。
どちらも『ソレが破壊されると再生不可能になる』“コア”を破壊されて
その辺の演出には口出しせずに、アタシが注目している部分。
ソレは……『既に稼働状態の生物型帝具は、支配権を移動させられるのか?』という命題ね。
普通に考えれば使用者であるセリューやナジェンダが死亡しない限り、コアが破壊されるまで延々とゾンビのように動き続けるだろう、ってのが自然に想定できるわ。
――ただ、帝具って別に此の世界に限れば、
以前も言ったけど、此の世界特有の生物や鉱物薬物、技術や製法法則で製造された、タダの
なら、
技術、理論、設計、仕組み。その手の存在には
――長々と語ったけど、要は『スサノオのコントロールを奪取したい』のよね、アタシ。
――ソレは、突然起きた。
ナジェンダが「このままでは目的達成は不可能だ」と判断し、奥の手である
その、瞬間。
『――理論解明。全技術体系解読。全行程実行可能』
何処かから、そんな声が聞こえる。
文字通り命を削って極限状態にあったナジェンダだったが、何故かその機械的な囁きはイヤに耳に残った。
『――
フラフラの頭でその声の出所を探れば、自身の傍で使用者の命を吸って超強化されたスサノオの、真後ろに忍び寄っていた誰かが声の主だった。
何をしているのかは分からないが、
だから、必死に何とかしようと足掻いた。
どうすれば良かったのかは分からない。
どうするべきなのかも分からない。
だが、自分に出来ることで状況を打開しようと考え、殆ど反射的に行ってしまったことがある。
――ソレが、連続での禍魂顕現の二重展開。
倍化に倍化を重ねる――なんて便利な手管ではなく。
あくまでも強化の倍率を少しばかり上乗せする程度。
削った命の量にまるで見合わない細やかな効果だが……だが、実行した。
確信が在ったわけではない。
効果を見越していたわけでもない。
結果を予想出来たわけでもない。
だが、迫りくる不穏な影に対し、ナジェンダは無謀なまでの生命力の過剰供給に踏み込んだ。
そうすることが、最適解だと信じて――。
『グァアアアアアアアアアアアアッ!!』
しかし残念…………現実です…………! これが現実…………!
思わずアゴが尖りそうな
ナイトレイド達が思わずスサノオの方に視線を寄越せば、白目を剥いてのたうち回りながら頭を掻き毟る姿が。
少しの間戦闘が停止したが、幾許かの後、何ともなかったかのようにすくっと立ち上がったスサノオ。
その顔は先ほどまでの苦悶に喘ぐ姿からは想像できないほどに穏やかな表情が浮かんでいる。
――故に、ナジェンダは問いかけた。
「ス、スサノオ……どうした……?」
明確な目的語も無い曖昧な問いかけ。
だが、自身の
故に、此の問いかけであったが――。
『――最初の命令よ。そいつらを蹴散らしなさい』
「――了解した、マスター」
だが、いきなり仲間たちへと牙を剝くスサノオ。
「なッ!?」
「スーさん!?」
「なんで!?」
驚愕に慄くナイトレイド側だったが、
――そうして満身創痍の状態で転がされた彼らの前に、種明かしをするかのようにある男が降り立つ。
「ヤハハハッ。どうも中々に使えるみたいね、この子」
ヘラヘラと軽薄な冷笑を浮かべながら現れたのは、Dr.スタイリッシュ。
革命軍にとってある種の不可侵領域にある危険人物だったが、
「――奪った、とでも言うのか……帝具を……ッ!?」
過程も理論もすっ飛ばした考えだったが、現物が目の前にある以上、ソレは憶測による推論ではなく客観性のある現実だ。
そして真実その通り、ドクターは生物型帝具である
しかも、
コレがどういうことかと言うと、ノーリスクで禍魂顕現にタダ乗り出来ている。
――他人の命で撃つ決死兵器は便利な代物です。(陳宮並感)
……その浪費される命が敵兵のモノであれば尚良し(暴利)。
――さて、さて、さて。
当たり前の話なんだけど、ナイトレイドの皆さんはあの状況から大逆転☆勝利! ――なんて、できなかったわよ。
友情努力勝利が炸裂して悪の手先である
その結果何があったかと言えば、尻尾巻いて逃げ帰ったワケね。
ドブネズミの末路としては至極順当な結果だけれども、まあ、念入りに嬲ってあげたうえでの選択よ。
ナジェンダは連続での無茶な禍魂顕現の発動によって寿命を大きく削った状態で、下手すると数年以内に死ぬわね。まあ原作から考えても此の世界でアタシが見聞きした情報からの推察でも決戦の時まで1年以内だろうし、最終決戦までは持つでしょうよ。
タツミはシグルイ的な意味で『伊達にして帰し』てあげたわ。狙ったワケじゃないけど、マイン嬢とお揃いの男前な貌ね。
レオーネは本来なら糸使いのラバックありきでの超再生だったんだけど、此の世界だと彼ってもうリタイアしているから。まあ片目潰して鼻を削いで両耳を切除etc……ある程度伊達女にしてあげたくらいね。子宮も除去したけど戦闘に支障はないからいいでしょ。
マインとアカメとチェルシーは、残念ながら陽動組が相撲部的な意味で
明らかに
連中としてもやり過ぎなくらいの施設破壊で目晦ましになったと思ったようで、特に不審にも思わずに逃げ出してくれたわ。
敵は『度が過ぎる阿呆』だと困るけど、『それなりの阿呆』ならラジコンしやすくて助かるわね。
――という具合で、パーフェクトな仕事の仕上がり。
まさかこんだけ真正面から捻り潰されておきながら、2週間以内に無策で再戦を挑むようなアホな真似はしないでしょう。
一応我々としてはボリックの教主簒奪を見届けてから帰還するけど、当面の脅威であるナイトレイドは撃退済み。
しかも構成員の過半数を重傷に追い込み、そのうちの
一応マイン以下の空挺奇襲組は軽傷だけど、まさか四凶も含めて14名、ゾンビ兵も含めると数百名の実力者が揃ってる死地へ無防備にカチ込みなんてしないでしょうよ。
肝心の
そんな状況でたったの3人で博打ですらない賭けに出られるかしら?
陽動組はソレ以上の戦力で正面から蹂躙されたし、今度は戦力を分散出来ないからには
――その答えは、
当初の目論見通り、教祖サマは
実際は暗殺というか割と正面からブッ殺したけど、まあそういうことね。
――コレにて我々もお役御免、大手を振って帰還できるという次第よ。
――ナイトレイド、残り6人?
羅刹四鬼マジで動かす機会が無いですね…。
折角指揮下に入れたのに。
いや、スズカは兎も角他の連中は動かしづらいってのもありますけど。
シュテンとか気が付いたら勝手にポアしに動いてそう。