憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト 作:社畜戦士
酒宴の翌日。
二日酔いも無く実に穏やかな目覚めとなったんだけど、悪酔いしないのは蜂蜜酒の利点よ。
安物の混合酒みたく補糖をこれでもかと行うタイプは兎も角、こういう系統のお酒ってあんまり後を引く酔い方をしないのよね。
勿論魔術云々以前に科学的にそういう風に仕上げたのも大きいけれども。
アルコールの純度がそこそこ高いから、度数の分だけ不純物が少ないのよ。
勿論味と効能を第一に精製したんだけどね。
そもそも普通の蜂蜜酒が簡単に醸造出来る割に度数が高いっていう異世界内政チートにお勧めな代物なんだけど、【聖銀】も【黄金】も原材料が魔術由来ってだけで基本は変わらないわ。
そして例によって此の世界の一般的なアルコールって度数がそんなに高くないのよ。
異世界転生小説でもよくある展開なんだけど、世界設定が中世東方風ヨーロッパを基準にしているからね。
蒸留酒が存在しないからなんだけど、ソレを踏まえても普通の蜂蜜酒ですら酔いの効きやすいご機嫌なアルコールになるわ。
だから流通させたら相応に需要が見込めるから、アタシ的には普通の蜂蜜酒もガンガン量産して売りに出していきたい所存よ。
とは言っても、喫緊の課題としてアタシの抱える組織の再編成が目下の最優先なものだから、まずは其方を終わらせてからじゃあないと。
一応今日中にやっときたい幾つかのタスクとして辞令交付を略式でやりたいのよねぇ。
さて、そんな清々しい目覚めだったけど、覚醒したエスデスとクロメ達を混ぜて早朝から健全なスポーツに勤しんだ。激しく前後。殆ど違法行為。
メイド衆とかセリューとかはイキ過ぎてグロッキーだからもう無理だろうけど、流石に生粋の武人である二人は2桁イってもまだ大丈夫らしい。
体力ってやっぱ大事ねぇ。
今の体勢はクロメが下で、アタシがバックからで、エスデスが右に。
二人の胸を愛撫しつつピストンし、エスデスはディープに口づけして体液交換に夢中。
うんうん、大きいのも小さいのも胸に貴賤はナイわね。
同時に二人を相手にしても然して疲弊しない程度にはアタシも体力と技術があるから、もっとどんどん乱れてくれても構わないのよ?
――ところで巨乳は感度悪いってよく言うけど、ソレは若干違うのよ。
巨乳も貧乳も感覚細胞の数は大体一緒だから、巨乳の方が貧乳よりも感覚が分散してしまうから感度が悪いように見えるのは事実ね。
水風船で例えると、風船が胸の基部で、水が脂肪で、感覚細胞は風船の表面に無数に描かれた黒点としましょう。
巨乳と貧乳を比べると、風船の大きさは同じでも内部に詰まった水の量の違いが大きいか小さいかの差で出るのよ。
でも感覚細胞は風船の表面にあるから、膨らんで引き延ばされる巨乳の中にどれだけ水が詰め込まれても黒点の数は変わらないでしょ。
此処で巨乳と貧乳を比べると、風船が大きい巨乳の方は感覚細胞が分散して感じにくいのが理解出来るわね。黒点も引き延ばされて鈍感になっちゃってるのが理解出来るかしら。
一方貧乳は手のひらサイズに感覚細胞が集中しているから感じやすいように見えるでしょう。
ただ、感覚そのものの感度はそう変わらないから、的確に刺激すれば胸の大小は関係無くなるの。
それに、テクニックさえあれば巨乳を胸だけでイかせるのも難しい話ではないわ。
ましてや貧乳相手なら猶更簡単よ。
――こんな風にね。
「ぁっ!!!」
「くぅっ!!!」
さてさて、新しい朝が来た、希望の朝よ。(ラジオ体操並感)
体中がドロドロのぬべぬべになった女性陣を浴室にブチ込んで全身隈なく洗う。海綿で洗うのもいいけど、アタシ的拘りで手洗いよ。
今回は7人も一度に入浴したけど、複数人が一度に入っても尚余裕のある造りなのよ、ウチの風呂は。
ヒノキ造りで和風なテイストを感じられる大きな浴槽。
人工炭酸泉や露天風呂も備えていて、サウナもあるわよ。
当然ながら天然温泉の源泉かけ流し。
まあ地下鉱泉なんて深く掘れれば何処にでもあるのが常識だった日本人的な考えが反映されちゃったのか、此の世界って地震がそんなに多くない癖にプレートに挟まれまくってるから何気に泉源豊富なのよ。
中世風ファンタジーと言っても作者が日本人だからかしら、随所で日本的な部分が見受けられるのよねぇ。
ちなみに客室にも簡易のバスルームが備え付けだから、ボルス一家には其方を使って貰うわね。
ちょっと盛り上がってもう一戦繰り広げてしまったけど、今日は休日だし構わないでしょ。
長めの入浴から上がると、メイド衆は早速朝の仕事に入る。
まあ他の御側付きじゃないメイドや女中、執事もいるので、三人娘が今から仕事するって言っても配膳くらいしか仕事が残ってないんだけど。
……思えば此の娘達と出会ってからもう一年も経つのね。
何気に意図せずに原作での悲劇の場面に遭遇したけど、もう少し意識して行動していれば、彼女達ももっと別な結末を迎える事が出来たのではないかと思わないでもないわ。
原作に於いて、ルナは片目を始めとした肉体の各部位を失い、ファルは両足のみならず全身を砕かれ、エアは獣に凌辱され……エア以外は絶望と激痛で死亡した。
そんな原作での悲劇は回避出来たのだから上々だとは思いたいけど、コレも結局は第四の壁越しに見た結果論に過ぎないし。
エアの凌辱こそ回避したけど、ルナは片目を抉られて、ファルは両脚を此の世界の医術では治療不能な程に砕かれてしまっていた。
本当に偶然にその現場に遭遇したものだから、すんでの所でエアが犯される前には介入出来たけれど、それじゃあ遅いわよね。
その後にアタシの魔術で回復させたとはいえ、そんなモノは気休めにもならないわ。
彼女達が蹂躙されたのは事実だし、もう少し早く現場に介入出来ていればと思わないでもないし。
……いえ、結局はコレも自己満足ね。
偶々原作キャラだったから彼女達を気に掛けたけど、ああいう悲劇は此の世界ではありふれている。
ウチの使用人や部下達の多くはそういう境遇から掬い上げた子達ばかりだけど、結局のところアタシの手の届く範囲でしか此の偽善は為されていないんだから。
勿論アタシの尽きぬ程の財貨を活かしてそういうフィランソロピーは盛んに行っているけど、アタシの個人資産だけでは帝国を遍く救済して回す事なんて出来っこないわ。
そもそも、そういう偽善的スラックティビズムに傾倒しているのも『いい気分になりたいから』だと言われたら否定出来ないし。
――アタシは目の前で無関係の他人が理不尽に殺戮されていても平気の平左でいられる人間的欠陥と、赤の他人が無残に凌辱されるのを悼む感性とが同居している。
そういう自己矛盾を肯定否定をも超越して、自覚していながら気にもかけない輩の事をサイコパスと呼称するんだけど。
そういう意味ではアタシのサイコパシー傾向は確認するまでも無いレベルで極まっているわね。
そもそも人体改造とか拷問とかを趣味にしている人非人が善人だとは誰も思わないでしょうが。
一応弁明しておくと、無辜の民草が詐欺や略取を受ける事で被害者となるのを許せないのであって、借金地獄や政争に敗れる事で拷問処刑コースになったりするのはどうでもいいのよ。
合理と不条理の境界って色々あるだろうけど、アタシの中では『作為』が何処に在るのかを重視しているのよね。
上昇志向の役人が出世コースから落ちこぼれた結果無惨に死に絶えるのは別にどうでもいいし、ギャンブルで身持ちを崩したカスが売り飛ばされるのも問題には思わないわ。
でも、故郷から出稼ぎに来て奴隷商に売り飛ばされたり、平民だからというそれだけの理由で貴族様に凌辱されたりだとか、不慮の事故という陳腐な言葉では言い表せないような不条理な不幸のどん底に陥るような子達をそのままにはしたくないの。
言うなれば責任の所在の話よ。
無責任な誰かの悪意に虐げられるような状況ならば動くし、自己責任の範囲ならば例えどんな聖人君子がハメ殺しにされていようが救いの手なんて差し伸べない。
此の判断基準は、何方かというと価値基準に基づいた話になるわ。
まあ其処に至るまでの価値観としては、ノーブレスオブリージュに通ずる部分があるかしら。
アタシは何の因果か此の世界では貴族の一員なもので、力なき民草を守る使命を感じている。
自己の行動に何ら恥じる部分が無いのに、ソレを他者の『吐き気を催す邪悪』な意思で踏み躙られてしまうのならば、ソレを如何にかしてやりたいと思うのも必然だと思うの。
幸いにしてアタシには力がある。
ソレは権力だったり財力だったり武力だったり知力だったり、まあ色々よ。
そんな極大の威を振り翳せる立場にあって、無駄に腐らせてしまうのは勿体無いと思うの。
日本人なら誰しも懐く、MOTTAINAIの精神ね。
アタシもワンガリ=マータイは尊敬しているわよ? 同じ平和賞受賞者でもB・O元大統領とかはあんまり好きじゃないけども。
まあいいや(空耳)
過ぎた事を気に病んでもシカタナイね。
人間は考える葦であり、前を向いて歩く生き物なのよ。
よって過去の柵とか気にしない方向でいきましょう。
ついては今後の方針を示さないと。
和やかに皆で朝餉を摂りながらもアタシは今日の執務内容について考える。
世間的には休日だけど、アタシ個人としての執務に関しては個人事業主みたいに自由にやっていいものね。
流石に部下に休日出勤を強要出来ないけれども。
まあ本当はアタシも休日に仕事なんてしたかないんだけど、昨日に特大の厄介事が舞い込んだ事だし。
いや、自分で彼女を受け入れるという状況を選択した話ではあるんだけども。
じゃあ何が問題かって、そりゃあエスデスの帰属問題よ。
当人がどう思おうと、エスデスはオネスト閥の武断派筆頭である事実は変えられない。
ソレを横から掻っ攫うような真似をしたら、そりゃあ戦争待ったなしよ。
まあ? チートありきのアタシなら負ける気は一切しないけど? 勝敗が分かり切っている以上は無意味で無駄な事だし?
そもそも無駄は嫌いなのよ。無駄無駄無駄無駄。
ともあれ彼女の扱いをどうするかについては、昨夜ベッドの中で少し考えたわ。
だから、ソレを具体化させるのが今日の課題ね。
尤も、アタシもそれなりの権力者だし、然して問題や障害がある訳でもないんだけど。
別に対外的にはエスデスをウチの幕下に加える訳じゃないし。
「――というワケで、エスデス?」
「なんだダーリン?」
いやダーリンて。
まあいいや()
「――軍閥政治に興味はあるかしら?」
「異動ですか?」
「そうよー。例の新行政機関管区創設の為に一度転属の形で再配備する必要があるのよ……よし、ハイどーぞ」
たった今書き綴った異動通知書を封筒に収めて封をして、そのままランに手渡しで与える。
辞令に関しては独自裁量権限を得ているから、予め用意しておいた皇帝陛下の勅印が押された白紙の通知書を適宜仕上げておけばいいわ。
同様の措置を手作業であと数百回は繰り返さないといけないんだから、中世の管理職って面倒よね。ペーパレス化が早急に望まれるわ。
現在時刻は午前9時頃。
客人を送迎し終わったことだし日頃の習慣から事務仕事を始めてしまったワーカホリック気味のアタシ。
まあ文官なんて足りてなさ過ぎるのが現状だし、アタシみたいな尖った能力の人間が人より多く回さないと立ち行かないんだからシカタナイね。
洗脳木人形だと細かい仕事が出来ないし、応用力が欠如しているからアクシデントに弱いもの。
一応経年成長で学習するようになるんだけど、其処迄性能が向上した個体はあんまり数が無いのよね。
だから管理職の人間がブラック労働するのも郁子なるかな。
「……副局長ですか……」
ランは通知書を検めてアタシが与えた役職を口に出した。
その表情はお世辞にも嬉しそうには見えないわね。
「あら、ご不満?」
「いえ、そのようなことは……ないんですが」
「……アナタ、偉くなって例の犯人を捜したいんでしょ? 此の管区はそこそこ権限が強いから、良かれと思ってやったんだけど……」
ランは原作でもそうであったように、思惑があって立身出世を目指しているらしいわ。
どうも故郷で起きた何かしらの事件の犯人を追って帝都までやって来たそうなのよ。
地方での犯罪なんて場合によっては醜聞を嫌った地方役人によって揉み消される場合すらあるから、そういった腐敗役人によってランの故郷での事件は隠蔽されてしまったようなの。
其の為、中央で権力を手にすれば隠された事件であってもターゲットを捜す事が出来るだろうと考えたようで、こうして帝都まで上京して木っ端役人をやっていたのよね。
其処を首尾よくアタシが回収してウチの派閥に組み込んだのが現状よ。
生憎と原作は途中までしか見てなかったからランの仇の詳細は分からないけど、大道芸人に異様な敵愾心を懐き、シリアルキラーだった原作敵キャラの……名前とかは忘れたけど、ピエロに執着心を見せていたことからある程度は推察出来るわね。
一応敵討ちに他者の横やりを入れられたら面白くないだろうと思って、此方からは踏み込んでないんだけどね。
まあ助力を求められたなら全面協力も吝かではないわよ。
ともあれ目的意識からランは権力と出世には相応以上に関心があるから、アタシの副官として新設した【征南将軍府直属非公開特殊任務遂行軍隷下中央管理機関統括内部業務局】、通称【内務局】の副局長を任せてみたんだけど。
しかしどうしてかランの顔色は優れないわ。
憂鬱さを感じるまであるし。
「……非才の身で此処迄ご厚情を頂いているのは感謝に堪えません。しかし、私は何方かと言えば文官寄りですので……」
「ああ、そういうこと?」
役職に不満が有るんじゃなくて、単に務めきる自信が無いだけね。
実際軍部の隷下部隊みたいな肩書だし、直接戦闘力を求められるのは事実よ?
「とはいっても、文武官双方の領域で権限行使が出来るように将軍府以下の下部組織にしただけで、ランの職務は今迄とそう変わりないわよ?」
「そう、なんですか?」
「そうなのよ」
だから安心して拝命しなさいな。
【シャイ・リスト侯爵】
リスト侯爵家の当主であるシャイ卿は、普段は本名のアナグラムである『スタイリッシュ』を名乗っている。所謂源氏名のようなものだろう。
其処にどんな思惑があるのか余人には窺い知る事が出来ないが、公文書もその名で通す事が許される程度には実績を上げており、その事について異議を唱える者は居ない。
クッソ長い名前の部署が組織されましたが、特にミリタリー展開にする気はないのでフレーバーとしてお受け止めください。