憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト 作:社畜戦士
ちなみに、今回一連の馬鹿息子騒動編で拘った部分として、『ドクターはシュラと一言も口を交わさない』というのを徹底しました。
立場と格の違いを明確にして、あくまでも『野良のヒャッハー=犯罪者』を処罰する官吏というスタンスを崩さない。シュラを処刑する事に対して、一切の個人的感情も思惑も載せないという部分を明確にしたかったからです。刑罰とは感情的応報論ありきではなく、あくまでも罪刑法定主義であるべきだ、という考えからです。
『――まだだ。まだ、逆転の目はある』
肉体的には五体満足だが、精神的な衝撃からフラつきながら彷徨する男、シュラ。
実は脳啜蛆が脳幹と同化・代替しているので内部は健常とはとても言い難いが、それでも身体に痛みも無く動きには表面上問題が無い。
そんな馬鹿息子の行動は、流石に誰も想像していなかったのだが……当たり前のように脱獄していた。
『――今ならまだワイルドハントの権限が使えるハズ』
此の馬鹿は自分を顧みるとか反省するだとかの高尚な考えが出来ない。
それ故、『試されている』だとか『逃げたらどうなるか』だとかが想像できない。
自覚自省自制というのは
――その結果、『帝都近郊を探索してイチかバチか、ナイトレイドを見つけて捕まえる。それならオヤジも文句ねぇだろ……(震え声)』とか覚悟キメちゃってた。
色々突っ込みどころ満載の考えだが、成果さえあれば一定の説得力があったかもしれない。
帝国は侵略国家であり、即ち軍事国家だ。
つまりは尚武の考えが根底に存在しており、ある程度の抜け駆けや騙し討ちなども『結果さえ出せれば問題ない』という考え方が
ソレは、事実ではある。
……生憎と何処かの
ソレにしても処刑寸前、いや脱獄によって処刑の確定したアホがどれだけの手柄を挙げたらその処刑エンドを回避できるというのか。
それこそ革命軍の幹部の首級を上から順に馬車一杯に積んで持ってこないと無理だろ……。
――ともあれそんな覚悟ガン決まりの馬鹿息子は、【“次元方陣”シャンバラ】という転移を可能とする帝具によってひとまず牢屋から脱出。
あらかじめ設定しておいた帝都近郊の隠れ家付近のマーカーまで飛ぶと、フラフラの身体で
空間転移という
ソレは「まさか此処で
……実際、良識と常識に則って考えるなら、あのまま檻の中で蟄居していた方がまだマシだった。
それ故真っ当な知性をしていた大多数の人間は馬鹿息子が致死レベルの馬鹿な真似をする事を予想できなかったし、真面じゃない連中でも損得勘定くらいは働く。
まるで見返りが期待できないギャンブルなどタダの手の込んだ自殺でしかないので、『馬鹿』と『無能』の化学変化によって発生した此の事態、誰も予想など出来なかった。
馬鹿息子は手柄首で失態を相殺する気概でいるが、繰り返すがソレだけの大戦果など革命軍の首脳部を皆殺しにしてくるくらいでなければ到底釣り合わない。
そして、物理的に帝国領の南端の更にその先に居る革命軍本部の連中を日帰りで獲れるワケも無し。
また、これから狙う心算のナイトレイドのメンバーでは到底“貫目”が足りないし、そもそも
確かに転移の帝具は移動手段としては破格だが、距離に応じて長めのインターバルを必要とするソレは国中何処までも縦横無尽に駆け巡れるというモノでもない。
また、あらかじめマーキングを施した場所にしか転移が出来ないので、一度行った場所にしか行けないし、そもそもマーキングをしなければ此の便利な能力も発揮できない。
――よって、馬鹿息子は基本的に自分の足で対象を探さねばならない。
所謂『捜査は足で』という奴だが……我慢の出来ないビッグベイビーにそんなことが出来るか……?
仮に出来たとして、満足に機能するだけの捜査能力などあるのか……?
そして、偶然指名手配されているナイトレイドの人員がポンと見つかって、更に運よく奇襲なりで迅速に対象を掻っ攫うなど出来るのか……?
――その疑問の答えは、何の因果か見事に捕縛されたタツミ少年が結果である。
――なんというウルトラCかしら……。
日が明けて一連の事件の六日目。
原作ではどうだったか知らないけど、確か片玉潰されたラバは確実に捕まったのよね?
その代わりなのかしら、タツミ少年ってばシュラの一発逆転全力勝負によって捕縛されちゃってるわ。
なんでも、馬鹿息子が必死こいて帝都近郊に幾つか用意してあった隠れ家を転々としていたら、マジで悪魔的な運の良さでタツミを発見しちゃったそうよ。
此の世界のタツミは既に人相付きで指名手配中ですもの、そりゃ面が割れてたら捜査の手は伸びるでしょ。
流石に変装はしていたようだけど、その程度で捜査を搔い潜れると妄信している浅はかさ、いっそ可愛いらしいわね♡ お頭が足りねえんだよフィヨルドの恋人め。
奇襲でシャンバラにより上空に転移して、落下と同時にインターバルを満たして宮殿中庭に帰還。
そうすりゃ後は囲んで叩くって寸法で、タツミは取っ捕まった訳だけど……。
――生憎、その程度で雪げる罪の重さじゃあ無いのよ、馬鹿息子は。
あらかじめ秘密警察権限が使える内に
そいつらが待ち伏せているところへシャンバラの転移で強制的に拉致。
中庭はブドーを含めて将軍級が上から順に詰めてるので、有事の際は即座に臨戦。
という具合で、簡単に袋のネズミな状況を用意したわけね。
まあ『味方の本陣に転移で拉致る』なんて、転移が他に使用可能な存在がいない世界では必殺の策になるでしょうよ。
……でも許可無く
原作ではどうだったか知らんし、何なら此の世界だと(またしても何も知らない)ブドー大将軍はそのことについて『シュラを一発ブン殴って一言SEKKYOUして終わった』わよ。
……流石は原作でも馬鹿息子の暴虐を知っていながら『お前らを倒すのは革命軍を倒してからだ(キリッ』とか思考停止してた老害なだけはあるわね。
コレは何故か大将軍がゲンコツ一つで許したみたいな空気にしてたけど、当たり前なんだけど普通に『宮殿に敵を誘引、更に武装して血で穢す』とか関係者全員が漏れなく極刑モノだから。
何なら警備責任者のブドーが率先して詰め腹を切らないといけないまである。
何故か『陛下の宮殿が血で穢れた……お詫びに行かなければ』で済ませてたけど。
……取り敢えず馬鹿息子の末路を先に言いましょう。
度重なる失態と重犯罪行為。
減刑交渉の最中に脱獄して更なる騒ぎを起こした愚かさ。
極め付きが『宮殿内部に指名手配犯を引き込み刃傷沙汰を起こす』というほぼ国家反逆罪に等しい愚行。
処刑案件のフルコース、数え役満で裏ドラ乗りまくりね。
勿論処刑が決定したわ。
老害が詰め腹を切らないらしいので、じゃあ責任者として代わりに処刑しようね、ってなったのが馬鹿息子よ。
ナイトレイドの一員を捕縛した功績?
ソレとコレとはマジで別の話なのよね。
功績さえ有れば如何なる罪状をも帳消しに出来る、なんてことは無いのよ。
当たり前だけど脱獄をかました段階で処刑が確定したうえで、更に宮殿での乱痴気騒ぎで処刑方法のグレードアップが入った段階。
其処をマルッと覆す戦果とか、革命軍以下全ての反乱勢力を今この瞬間に地上から消滅でもさせないと無理でしょ。消しゴムマジックで消してやるのさ、とでも言う心算かしら。
当然なんだけど『暗殺者組織の構成員その一』を捕まえたくらいで助命は出来ないわ。
――結果、馬鹿息子はその場で捕縛。
……後で知った事だけど、原作での大臣の処刑方法と同じだったそうね。
親と同じ方法で代わりに死ねるなんて果報者じゃあないの。ヨカッタネ。
「――で? 流石にコレはアタシも同情するわよ?」
「ヌッフッフ……お恥ずかしい話で……いやマジで……」
闘技場で身も凍るような絶叫をBGMにしながら、アタシと大臣は表面上穏やかに会話をしているわ。
まあ悲鳴を上げてるのは馬鹿息子なんで、誰も同情せずに歓声すら上がってるんだけど。
円形の闘技場、現世で言うところのコロッセオ型の施設の中央では、馬鹿息子が集まった有志の方々によって一太刀ずつ身体を削られている状況。
古き良き処刑方法である凌遅刑ね。
細部が所々中華っぽいこの世界の帝国ならではって感じかしら。
早期に馬鹿息子の暴虐は止められたとはいえ、それ以前に国中どころか国外の至る所でも暴れ回ったゴミカスがコイツよ。
当然犠牲者被害者遺族の
彼ら彼女らにコンタクトを取ったアタシは、今回の処刑に一枚噛ませたって次第。
馬鹿息子たちに恨みのある方々は、一人一太刀ナイフで連中を削る権利を得たわ。
勿論科学や魔術で極限まで生命力を強化したので、馬鹿息子たちは限界まで此の処刑を彩ってくれるわよ。
『いずれは
いやはや、実に飯が美味――もとい、大臣のご心労たるや。
おいたわしや
まあ色々頑張って助命嘆願に駆けずり回ってた大臣の親心を熨しつけて返したようなモノだしね。
親の心子知らず、とは言うけど、流石にコレはナイでしょ。
……生憎と、だからって馬鹿息子への裁定を覆すに足るだけのベネフィットを誰も用意出来なかったし、する気も無かったから仕方ない話なんだけど。
とはいえ、一連の折衝の中でアタシ達が
所謂TCGみたく、発動が阻止されても既にコストは払った、みたいな状況ですもの。
ソレに一概に大臣にも悪い話ではないのよ?
大臣側がアタシ達に譲歩した、っていう前例は、後々に有意に働く可能性もあるんだし。
要は『前回言うこと聞いてもらいましたし、今回は此方が……』って話に持っていく為の取っ掛かりに成り得る、って話。
まあソレはアタシの匙加減次第だけど、そういう可能性が残された、って政治的結果は無視してはいけないわ。
――という具合に、最悪の中で少しでもポジティブに考えさせないと流石の大臣も可哀そうでしょ。
畢竟アタシとしてはどうでもいいけど、あくまで相互利益を享受可能な協力派閥の人間として、色々とお話させていただいた次第。
そう、色々と、ね……。
――アタシ達の戦いはこれからも続く……!!
……勿論まだ終わらないわよ?
・気が付いたら死んでたドロテア以下愉快な仲間たち。
上手いこと纏められなかったし長くなったので省略したが、助命を条件にドロテアが裏切って証言をしていたが、シュラの脱獄以降の更なるやらかしによってその助命も取り消されて仲良く一緒に処刑されている。イゾウ達も勿論添え物扱いで凌遅された。
作戦名【
・実はシレッと裏で起きていた『第一次正妻戦争』について。
名実ともに結婚許可を得たので、前々から棚上げにしていた『正妻が誰になるのか』、という骨肉の争いが水面下で勃発。亜空間内部で「死んでも死なない」不死身故の凄惨な戦争が巻き起こり、亜空間が崩壊するほどの極致破壊が発生。
なお最終結果は『いや、流石に此の情勢で祝言挙げる程空気読めないワケじゃないわよ…』というドクターの発言により無期限の延期に。彼女たちが『革命軍絶対殺すウーマン』へと変貌した瞬間であった。
・凌遅刑。
中国(清国時代)や朝鮮(李氏朝鮮時代)で近世まで存在した処刑方法。
生きている人間の肉体を少しずつ切り落とし、長時間にわたり激しい苦痛を与えながら死に至らしめる処刑方法で、中国史上最も残酷な刑罰とも評されている。
死体を陵辱する刑罰は、有史以前から中国で存在した。古くは史記において孔子の弟子である子路が死体を切り刻まれて塩漬けにして孔子に届けられるとかいう『人の心とかないんか?』案件がある。なお孔子の好物は『肉を刻んで塩漬けにした【ししびしお】、即ち塩辛』なのだが、その好物の肉が何の肉だったのか非常に興味があるものである。
死体を辱める意図も勿論だが、生きながら徐々に切り刻まれるという残虐さと苦痛を与えるのが最大の目的。当然死体を貶めるために死んでもなお刻まれる。
原作だと最後に倒されたオネスト大臣がコレで処されている。
正直『感情的応報刑』にしか見えないので正義面してヤるのはどうかと思った。