憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト 作:社畜戦士
ちなみに此の時のタツミの心境
『俺(ナイトレイド)を捕まえた功労者(シュラ)を、多分手柄を奪う為に処刑した! 敵とはいえなんて酷いことしやがる! やはり帝国は悪……』
――さて、馬鹿の処刑は恙なく終了。
流石に此の状況だと大臣も庇う素振りすら見せず、普通に切り刻まれてお陀仏になったわ。
彼らはこの後コンポスト堆肥に転生して土地に滋養を与えるという崇高な使命が待っているので、すぐに処理させたわよ。
そうして諸々の処理を終えて、幾許か後。
再び開催の処刑ショー第二幕が始まったわ。
対象は何を隠そう、タツミ少年よ。
原作主人公でもお構いなし。まあこういう世界ですので。
……そういや原作でも一度捕まってたわね。囚われの御姫様属性かしら。
でも今回は最大級のピンチって奴で。
シュラが手柄目当てに奇跡的に捕縛に成功したタツミだけど、シュラの生死はさておき獲物は獲物よ。
……でも生憎とタツミの処遇に関してはアタシ達って一切関与してないのよねぇ。
じゃあ誰が処刑を推し進めたかって言えば、先だって大失態を犯していた何処かの大老害さんよ。
原作でどの時期に死んでたのか知らないけど、此の世界では割と死亡寸前の状況に居るわよ、コイツ。
何故って、先日の【宮中侵犯】の件で大将軍派閥以外の全会一致で此の老害にNOを突きつけたからでして。
原作がダークファンタジー路線だから仕方ないんだけど、此の世界の連中って政治的な勘働きが貧弱過ぎるのよね。
で、其処に付け込む現実世界出身の
そうなると『原作ではスルーされてた事が、此の世界では即死案件に早変わり』なんてことが頻発しちゃうのよ。
その結果、『大将軍ともあろう者がその場に居ながら、凶悪指名手配犯に宮中へ侵入され、あまつさえ流血沙汰を起こさせた』という厳然たる事実を以って糾弾した次第。
そうして経過を省略すると、結果として『下手人であるナイトレイドのタツミを含めて連中を全て始末しろ。出来なくても失敗しても死刑。生き延びたければ何をしてでもナイトレイドを誘き出して処刑しろ』という通達が下されたわ。
なんか知らないけど大将軍殿はギャーギャー言ってたけど、マジでコレに関しては奴さんの失態を理由にした正当な弾劾だから。
どう考えても「近衛が賊の宮中侵犯を許した責を受ける」なんて当然の話でしょうに。
老害も色々抗弁してたけど、残念ながら政治力に欠如した老人では其処から盛り返すのも不可能なのよね。
というか大臣並みの政治手腕があってもこんだけの大失態を挽回とか無理だから。
正当な理由での処罰なんだから、然して労せずに此の追及は通ったわ。
コレに関しては自称清流派も本物の清流派も完全に賛同したわよ。
――で、その結果爆速でタツミ少年に惨い拷問を大将軍自ら仕掛けて、ソレでも情報が搾り取れなかったモノだから彼を餌にして処刑を告知した次第。
……うん、まあそういう形式に決まったわ。
老害お爺ちゃんとしては情報を吐き出させてナイトレイドを一網打尽に攻め滅ぼしたかったんでしょうが、生憎と覚悟完了済みのタツミは凄惨な拷問にも一切口を割らないもので。
というか拷問に慣れてないお爺ちゃんのやり方だとただ痛めつけただけなのよね。
そんなんで情報を取るとか無理筋でしょ。
何のために拷問官なんて職業があると思ってるのかしら。
拷問にも適したやり方ってのがあるのに。
しかしこのままタツミしか始末出来ないと大将軍()は処刑されてしまう。
ソレは困るってんで、タツミの公開処刑を餌に他のナイトレイドの人員を誘き寄せよう、ってのがお爺ちゃんの立てた作戦よ。
道理や損得で考えたら普通は仲間一人の為に無謀な奪還作戦なんてやらかさないでしょうが、相手は原作主人公様たちよ。
メタ的に見たら十二分に成功の見込みがあるんだけど、ソレ抜きだとまあまあアホ丸出しの作戦よね。
一応お爺ちゃん的には「あれだけの拷問にすら口を割らない仲間意識だ。仲間を取り戻しに来る可能性は在る……ッ!!」って事らしいわ。
ソレに対して周りは随分懐疑的というか、馬鹿にしてるというか、とうとう血迷ったかジジイって感じというか、ともあれ否定的よ。
でも下手に関わって処刑の連座に連ねられたら困るし、何より大老害が「我々近衛が全てを取り仕切る」と宣言なさったものだから。
だから皆さん此の処刑に関しては近衛軍に全てをお任せしている次第。
当然と言えば当然だけど、その一連の流れでアタシもエスデスも処刑進行からは外されたわ。
本件はあくまでも近衛軍、ひいては大将軍の禊の為に行う作戦行動なので、他所の勢力が介在したら大将軍を切り捨てる口実になっちゃうからね。
例えばアタシ達でなくても、仮にノウケンのところの鎮東軍の人間が協力したら、ソイツを祀り上げて新たな神輿に出来ちゃうのよ。
そうして古い神輿は打ち壊しにしちゃおう、って感じ。
コレも当然の話だけど、そんなことになって喜ぶ奴は、近衛軍側はおろか他の全ての派閥にも誰もいないから。
だから内外で此の処刑に関わったらおしまいだってのが周知の事実なもので、その結果此の処刑は全て近衛軍が取り仕切る形式になったわ。
……流石に此処まで落ち目の馬鹿共に全てを任せるのは危険すぎるので、アタシとエスデスが刑場の内部で待機してるけど。
でもソレ以外は会場警備から処刑の進行まで全てを近衛軍の人員で運営しているわよ。
アタシ達はあくまで予備戦力で、有事の際に馬鹿共が全滅するなりした場合の備えね。
――そんな考えられる中で最悪の事態は来ないで欲しいんだけど……身構えていても死神はやってきちゃうものなのよ。
――刑場の壁が突如砲撃で破壊される。
瓦礫を踏みしめて堂々と姿を現したのは、少女と言って差し支えない年齢の女性。
その小柄な身体に見合わない巨体の銃型帝具パンプキンを携え、颯爽と処刑場の中に入ってきた。
「――手配書の顔と一致している。お前一人か?」
期待通りと言うべきか、まんまとナイトレイドを誘き出すことに成功した大将軍は喜悦を隠せずに半ばニヤケ面でそう問いかける。
その問いかけに対し、少女――マインは胸を張って宣言した。
「そうよ! アタシはナイトレイドのマイン!! お馬鹿な恋人が捕まったって聞いてね。仕方ないから助けに来てあげたわ!!」
――此処で、刑場貴賓席にて事態の推移を静観していたドクターは少し驚いた。
安寧道での一連の作戦でタツミとマインに明確なフラグが立つ……ソレが原作での流れ。
そう心得ていたが、何の因果か教祖とバッタリ遭遇出来なかったタツミたちは、原作とは違ってお互いの恋心に気付くという“切っ掛け”が無かった。
故に、『此の世界では彼らも恋仲にならないのでは?』と思っていたが……しかし、現実として彼女は『恋人を助けに来た』と吠えている。
――ドクターの勘違いを補足すると、原作で彼らが恋仲になったのには、確かに教祖という存在が切っ掛けとして大きい。
しかし、教祖はタツミたちにお互いの好意を気付かせたに過ぎず、
……此の世界では少し好感度関連で微妙なモノがあったが。
ともあれ彼らが恋仲になる事に教祖の存在は絶対ではなく、故にいつの間にか彼らが恋人同士になっていても、然しておかしな話ではない。
――何はともあれ、マインは恋人を救出する為に危険を冒して一人で刑場に乗り込んだ。
此処までは大将軍の
そうして彼が「お前一人か?」とマインに問いかけたように、まさかたった一人で此の警備と大将軍を突破できると思ってはいないだろう。
故に、彼は油断せずに周囲に気を配り、更なるナイトレイドの奇襲を警戒する。
更に、永らく帝国の軍部に身を置く彼は、まだ暗殺部隊に居た頃のアカメと面識があった。
帝国の尖兵として当時の彼女の実力を高く評価しており、革命軍に寝返ってしまった今もその戦闘力を警戒している。
実際に軽く手解きもした過去から、彼女の極めて高い戦闘能力に、目的達成の為の狂気的なまでの執念、そして暗殺者としての稀有な適性を知悉していた。
その為、『この状況ならばアカメは必ず奇襲に来る』という確信があった。
「――反乱分子は……一人残らず処刑する」
ともあれ、彼のやるべきことに変わりはない。
まんまと餌に食いついた獲物を、全力で狩るだけ。
「アドラメレク」
気合一閃。
両手の籠手から雷撃が放たれる。
【“雷神憤怒”アドラメレク】。
アドラメレク、即ち『太陽神』、ないしは『神権を受け継ぐ王家』の名を冠する此の帝具は、名前とは関係なく雷撃を操る籠手だ。
籠手から雷の砲撃を放ったり、自身を中心に放電することで攻防一体の技としたり、雷雲を呼び込んで周囲を無差別に雷の雨で満たしたり。
汎用性が凄まじく高い超攻撃的な武具だが、その本質は『雷撃を操る』というよりも、『雷を操る』というべきもの。
言葉遊びのようだが、実際此の帝具は
雷雲を呼び寄せ、降り注がせた轟雷を操作することで籠手に電気を充電。
そうして初めてコレは最強クラスの帝具として成立する。
つまり、充電が切れたら雨の日の某錬金術師の大佐のように無能になってしまうのだが……しかし手出し無用と宣言したのは彼だ。
継戦能力に著しい不安があるが、近衛大将軍ともあろう者が進退を賭けて自身の手練による事態の解決を願ったのだ。
そうなれば、周囲も黙らざるを得ない。
――こうして、続々とナイトレイドの人員が集まり、終いにはタツミの拘束も解かれ、ナジェンダの合流を許し……結果的に5対1という不利が過ぎる状況になっても、誰も彼を助けに動かなかった。
いや、
政治的に此処で動けば連座に巻き込まれるという大前提が在ったのは勿論、作戦の成否に関わらず此のレベルの戦闘に介入出来る人間がほぼいなかったのも理由だ。
唯一鼻歌混じりで参戦出来る某
――故に、この結果は至極順当なモノだったワケだ。
「――あーあーあー、大将軍サマったら死んじゃったじゃあないのよ」
「ッ!?」
満身創痍のマイン嬢。
精神力をエネルギーに変えるというパンプキンを限界まで振り絞った結果、五体満足でありながら既に微動だに出来ないって感じね。
肝心のパンプキンもリミッターを超えて稼働させたことでバラバラに全壊した、と。
まあ単騎で大将軍殿とタイマンして、最終的に彼の奥の手をタダの限界突破で打ち破ったのは素晴らしい話よ?
……此処で無様に討ち取られなければね。
「こ、この――「恨み言を聞く気はないわ」ッ!?」
まだ剛撃同士の衝突により周囲に粉塵が舞っている為、虫の息の彼女のカバーに誰も入れていない。
射線を確保する為に孤立していたらしい
そりゃ殺すでしょ。
大将軍殿との約定では手出し無用って事だったけど、流石に奴さんが死んでそのまま敵軍に逃げられたら面子の問題どころじゃあないからね。
その段階は過ぎたとみて、こうしてアタシ自ら此の件の大戦犯を
多分彼女って生き延びても今回の限界を超えた挙動で植物人間になってただろうけど、ソレで逃がしていい話にはならないじゃない。
普通に大将軍を討った賊としてブッ殺しておかないと不味いわ。
面子という対外的な部分もそうだけど、今も要害であるシスイカンを守る近衛軍の連中の心象的にもね。
大将軍の仇、と言えるか分からないけど、此処で無為に敵を取り逃す愚は犯さない。
――よって、こうして四肢をハスって首も捥いだわ。
実はいつでもこうすることが出来たのよ。そう、脳啜蛆ならね。
流石に身動き出来ない不具の状態から逃げられるわけがないもの。
末期の悲鳴をギャーギャーほざいてたけど、お仲間が駆けつけるまでに生命活動は停止した次第ね。
「――テメェ!?」
「マイン!?」
そして、10秒もかからずにマイン嬢を解体し終わったら、漸くお仲間さんが駆けつけたようね。
特に恋仲だったらしいタツミ少年が激おこじゃあないの。
「遅かったわね? 残念、大将軍を討ち取った功労者は今こんな感じよ」
そう言って物言わぬ骸となった彼女の首を掲げて見せる。
頸から手を挿入してパペット人形のように口をパカパカ開いて見せたら、良い感じにヘイトを稼げているようね。
「この野郎……ッ!!」
しかし、大老害もそれなりに頑張ったようで、彼らが満身創痍の状態で、追加で此処から戦う程の自信もないみたい。
まあソレならソレで。
大人しく逃げ帰って頂戴な。
次に会うのは最終決戦の時かしらねぇ?
「――あ、そうだ(唐突)。首から下は返しましょうか? 好きに使いなさい」
うーん、此の善意溢れるスーパー人格者のセリフ。
アタシってばお優しいわぁ。
「――何を、何を言ってる……?」
……あら? 説得ロールでファンブルかしら。
しょうがない、もう一度ダイスを振りましょう。
「だから、アナタってコレとコイビトだったんでしょ? 使いたいなら防腐処理とかしてあげるけど?」
「ふざけんな!」
ふざけんな? シないの?
折角の善意からの申し出だったのに……。
私は悲しい……(ポロロン
賊の死体とか晒すし嬲るし犯すのに。
ソレを拒否られちゃったら……シカタナイわよね?
……でも釈迦の生まれ変わりかもしれないと専ら(アタシの中で)噂のスーパーいい人であるアタシは、ちゃんと慈悲の心を忘れないわ。
このままだと健闘した見目麗しい賊の遺体がアレされちゃうもの。
敵とはいえソレは憐れに過ぎる……。
「――よって、こうするわ」
『なッ!?』
ナムサン! 賊の遺体はしめやかに爆発四散! サヨナラ!!
「ウンウン、こうしてお互いが納得のいく結果に終わったわね。実に重畳」
「――けんな……」
「じゃ、アタシは闇系のアレがあるので此処で失礼するわね」
「ふざけんな手前ェ!!!!」
おっと、何故かタツミ少年ってば激おこぷんぷん丸じゃない。
何故だろう? お互いが納得できるフェアなやり取りが滞り無く完遂されたハズなのに。
「――まあいいや()。オタッシャデー」
しかし本当に事後処理が押してるものだから、彼らとの楽しい()やり取りはそこそこにお仕事に戻る。
アイサツをしたらすぐに転移でさよならしたわ。
「ハァ!? 逃げんな!! ふざけんな!! チクショウ、クソッタレがぁあああああああああああっ!!」
――後には何やら慟哭するアワレな少年が残されたけど。
まあアタシには関係ない話ね。
――ナイトレイド、残り5人?
タツミ『ドクタースタイリッシュ……キサマは俺が必ず討つ……!!』
次回から最終決戦に向けて動いていきます。
ちなみに大将軍=サンの心情が描写不足とのご意見をいただきましたので簡単に書いておきます。
・責任云々について
→ドクターや大臣が讒言をして陥れたと本気で信じてる。自分には悪いところなど一切無いと確信している。シュラの小僧が悪いんだからアイツを消したらそれでいいじゃん。
・タツミを拷問したことについて
→陛下が大臣たちに騙されてしまっているので、ひとまずこの冤罪()を濯ぐ為に反逆者は情報を搾り取ってから一網打尽にするつもりだった。相手は逆賊で平民なのでどんな惨い扱いをしようとも心は全く痛まない。寧ろ匪賊の分際で大人しく口を割らないのは度し難いと思ってる。
・死の直前
→大臣たちによって誑かされた皇帝陛下の事を本気で案じていた。悪逆なる賊徒共がこうしてのさばっている為、力及ばず果てることを申し訳なく思った。気分は悲劇の忠臣。
・引継ぎなどはどうしていたか
→「戦う前から敗ける時のことを考える馬鹿はいない…!」ということで何もしていない。そういうとこやぞ。ただ政治力と統率力と武力に優れた漢女がいるので帝都周りは誰も心配していない。周辺の各領地はドクターの能力を正確に把握していない連中程に以降の動きを活発化させていく。