憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト 作:社畜戦士
広げた風呂敷をドンドンしまっちゃおうね。
――まあ、隠し立て出来る事でも無いので、普通に大将軍殿が討ち死にしたことは素っ破抜かれちゃったわ。
そもそもアタシも隠す気が無いし、仮に隠したっていつか必ずバレるでしょ。
そうなるとあんなクソ雑魚なめくじの為に無駄な政治的瑕疵を抱えないといけなくなるものだから、そんなん許せねえってんで普通に周知したわ。
その報は帝国全土を瞬く間に駆け巡り、革命軍の連合勢力を賑々しく勢いづかせてしまったようね。
まあ対外的には帝国の武官のナンバーワンである大将軍が賊に討たれたんですもの。
そりゃ、実情を詳しく知らない愚民共としては帝国が不利だと思っちゃうでしょうよ。
実際は関係各位からは『無能お爺ちゃん』扱いだったとはいえ、帝国の武力の看板張ってたのは事実ですから。
そんな状態だし、何より最上位者であった大将軍が死んだことで士気が崩壊したシスイカンは、呆気なく革命軍の手に落ちたわ。
まあ近衛が外に出て戦うのが想定外の状況なんだし、そもそも劣勢になった時点でアタシが転移で呼び戻したから。
厄介な老害お爺ちゃんが消えたから、今の近衛は既にアタシの指揮下にあるわよ。
度重なる失態と凝り固まった保守的思考から来る無茶な采配により、求心力とか底値だったのよね、あの老害。
いつぞやに味方の増援をお爺ちゃんの保守的信条から断った結果、近衛の大部隊が犬死したこととかあったじゃない。
ああいうのをずっと長い事繰り返した所為で、トップが消えてからの指揮権の挿げ替えは驚くほどにスムーズに済んだわ。
――で、そうなるとアタシの大戦略的に敵軍は寝返りも含めて全部膿み出しもしたいのよ。
だからシスイカンやコロウカンも含めたすべての関も一度敵に明け渡して、首都近郊まで誘き出したいという構想があるワケで。
勿論一度明け渡した拠点には全て
しかし、そんなこと知らない周りは首都直下の軍事拠点であるシスイカンを占拠されたことで、『遂に帝国も終わりだ』と思ったんでしょうね。
今まで以上の勢いで続々と有力諸侯が反帝国を掲げて蜂起に参加してきたわ。
そうして幾許かの時間が経過すると、首都を取り囲むように敵軍が次々と集結を始めている状況。
後方で蜂起した連中も纏めて首都の目の前まで集まってくれるんだから、潰しやすくて有難い限りねぇ……。
簡単に状況をまとめると、まず前提として首都は守護城壁によって外周を完全に覆われているのよ。
そして、四方に大門が有り、其処以外からは大壁によって出入りが出来ない。
加えて危険種を馴致する帝具の存在により、空からの攻撃は飛行型危険種で完全に防げる。
――コレが原作でも同様らしい前提条件だけど、此の世界だとアタシがいるから。
まず、城壁は追加して魔術で防護。
城壁自体も衝撃エネルギーを減衰する特殊な素材に変更して、魔術によって反射の概念を付与。
要は何処かの学園都市第一位みたいなことをオートでやってくれるわ。
どちらかっていうと『窓の無いビル』くらいの絶対防御くらいが防壁としては理想だけど、今回は敵の攻撃にそこまでの威力が無いし、反撃能力に振り切らせてみた次第。
続けて、門も同様の処理に加えて攻撃兵器を多数用意。
門の上部からも進撃の壁上兵器みたいに上から一方的に撃てるのを多数取り揃えたわ。
勿論結界と防御機構によって完全に守られているので、拠点防衛としては満足のいく出来でしょう。
更に空の守りだけど、危険種は相手さんも使うので、ソレに頼るのは止め。
エネルギーバリアと緊急隔壁で対処したわ。隔壁は某死神漫画の瀞霊廷を覆う奴みたいなのよ。
勿論対空兵器の類は沢山用意したしね。
こうなると、相手さんは愚直に四方の門を開放しないと内部に攻め込めないのよ。
流石に見て分かる話ではないから、まだ向こうも知らないでしょうけど。
とはいえ、守りが完璧なので、お次は攻めの話をしましょう。
流石に穴熊を決め込んだら相手も不審に思うでしょうから、適度にハラスメント攻撃を行う予定よ。
突出した部隊がいれば叩いて、各地の陣地で適当なのを潰し、主力には手を触れずに徐々に末端を削っていく。
既に蜂起が最終段階に来ている状況だし、後は華々しく敵の首魁を正面から討ち取るのがベストね。
宗教蜂起に関してもそうであるように、この手の民衆蜂起では分かりやすく終わらせる方法というか手段というか、とにかくそういうのは無いのよ。
現実での例を挙げると、三国志の時代に起きた黄巾の乱は、主導者であった張角たちが討ち取られても即座に終わったりするものじゃなかったわ。
黄巾の乱には純粋に太平道という新興宗教に感化された信者の蜂起以外にも、反漢帝国の蜂起や、タダの賊が黄巾を名乗っていたようなのもいて、外から見れば全員黄巾賊だったけど、内実は色々混ざりあっていたのよ。
そういう理由で、首謀者であった張角とは関係ない黄巾党も普通に居たから、そいつらは本部の張角達が討たれてもそのまま賊として蠢いたようね。
そして、此の世界の革命軍が主導した連合も、そういう部分があるのよ。
純粋に反帝国主義で蜂起した革命軍と、西や北の異民族に、宗教蜂起と、土一揆のような民衆による蜂起。
勿論賊がシレッと革命軍に参加した体で暴れ回ってるし、善政を敷いていた領主だろうが関係なく蜂起されて虐殺が起きた領地もある。
加えて、『帝国が落ち目だから革命軍に寝返ろう』という程度の酷吏に、『帝国から残った利益を掠め取る為に蜂起に参加しよう』という完全に略奪目的の賊と同一の連中。
こんな連中の連合勢力が今の革命軍なの。
そうなると、仮にナジェンダ以下革命軍の首脳部を討ち取っても、戦力が残る限り連合は暴れ続けるのよね。
止め時が分からないってのもあるけど、今更逃げ帰っても生き延びられないから。
特に帝国内部で蜂起した連中はその傾向があって、祖国に帰れば当座は凌げる異民族と違って、拠点が判明してる連中は此の攻勢で全力を尽くすしかないのよ。
そういう理由があるから、チマチマと削っていっても終わらないように見えるわ。
でも、連中が最終決戦と銘打った戦いをひっくり返せば、ソレは分かりやすい勝敗がつく結果でしょ。
ナジェンダを含めた連合の幹部共を皆殺しに出来たら尚良しって感じ。
ともあれ、そういう想定があるから、今は連中の末端を適度に潰すしかすることが無い状況。
大臣からの要請で行った帝国の最終兵器とやらのメンテも完了したし、マジで暇なのよね。
アタシとしては色々と詰まらない不出来なデカブツだったけど、仕事には全力を尽くしたわ。
ソイツのお披露目は後々に期待するとして……今はお仕事の話をしましょう。
実は馬鹿息子が死んだ辺りで、
正確には大将軍が殉職したじゃない? その辺。
その際に残った近衛軍を誰が統括するかって話になって、職権的にも実力的にもアタシしか出来ないってなったのよ。
そうなると特殊警察なんかでお飾りの副官なんてしてられないでしょ。
元々は大臣のフリーハンドとして良いように扱いたかったが為の狩人隊は、もはやそんな状況じゃなくなってるから。
今は挙国一致して賊軍と向き合うべき時期だし、ソレくらいは流石に大臣も分かってるのよ。
ワンチャン『こっちの足を引っ張って大臣の権勢を強化する為』の試みでしかなかった狩人隊なんで、
よって、狩人隊は一度解散。
流石にある程度育てたウェイブを革命軍との戦争では何の役にも立たない海軍にリリースするのはアホの所業なので、彼は一時出向扱いとしてウチで預かるけど。
その上でアタシが強権を発揮して、近衛軍残党を含めて指揮権を整理して、首都に戦力を結集している次第ね。
……実は此処までアタシに強権が移ったのには、理由があるのよ。
ソレは何処かの馬鹿息子による失点を突いたのもあるけど……実は大臣って結構ヤバめな大失態を犯していたりするのよね。
ソレが何かって……
いやいや、コレはヤバイでしょ。
まあ経緯を説明すると……アタシ達がナイトレイドから奪ったエクスタスとか、いつぞやの夜の怪魔による襲撃で奪取した複数の帝具。他にも討ち死にしたけど帝具は残っていた水神隊の帝具とか。
――ソレらに適合出来た文字通りの秘蔵の特殊部隊が大臣にはいたんだけど……ナイトレイドとやり合って全滅。
そのまま帝具は連中の手に渡ったそうね。
アタシが大臣からの要請で至高の帝具なるブツを弄っていたら、その隙に政治的優位を取ろうとでもしたのか大臣が勇み足。
革命軍の幹部目掛けて突っ込ませた秘蔵部隊は、普通に正面から全滅させられたらしいわ。
……まあ、こういう事情で。
其処まで事態が推移してしまえば、もう大臣とか張子の虎でしょ。
流石に政治力では他の諸派では比較にならないし、派閥の長としては普通に振舞えるけど、他派閥であるアタシに強く出られる状況じゃあないのよね。
故に、ほぼ全軍の統帥権をアタシが握る状況に。
形式的にはアタシが大将軍を継いだ形だけど、まああくまで形の上でよ。
――で、軍権を握ったしデカブツの改良の仕事も済んだアタシが何をするかって言えば……。
「たーまやー」
汚い花火を上げていたわ。
正確には病魔の呪毒砲を遠隔から射出。
帝都の宮殿から、遠く離れた敵陣地へと、文字通りの必殺攻撃を撃ちまくっていたわ。
本気を出せば今すぐに全軍を始末出来るけど、ソレをやるには時期が悪いでしょ。
まだ敵の全軍が集結していないもの。
何度も言うけど、敵はまとめてから叩かないと意味ないのよ。
そもそも今の時代、将軍が前線に出てバチバチにやり合うなんて前時代的でしょ。
これからの時代は、安全で静かで、物憂い事務室にいて、書記官達に取り囲まれて座る。
ソレが将軍のあるべき姿なのよ。
よって、安全な首都からバンバン呪詛砲を撃ちまくって敵勢を削っているわ。
流石にコレで尻尾巻いて逃げ帰ったりはしないでしょうが、まあ精々が嫌がらせね。
下っ端の兵隊とか適当に削ってもどうでもいいでしょ。お互いにね。
――まあ色々語ったけど、ちゃんと決戦では矢面に立って武者働きするわよ。
なにせそっちのが効率が良いので。
ファンタジーを極めると、戦略兵器でドーンといくよりもスデゴロ脳筋戦法のが手っ取り早いし楽だし効果が高いのよね。
拳の一振りで砦を破壊できるようになったら、そらそうよ。
しかし決戦まではまだ時間もあるので、今しばらくはこうやって安全な場所から一方的に賊軍を削る方針を続けましょう。
なんか敵軍の一部に動きがみられるから、もしかしたら連中もそろそろ痺れを切らしたのかもしれないし。
そうなってしまえばあとはなし崩しに戦端を開いて、順次下から削っていきましょう。
連合を組んだ以上、既に連中は自分の意思で動きを止められないのだから。
一度動いた巨躯は、個人の思惑で動きを変える事なんて出来ない。
其処に至っては、もう終わりまで一直線よ。
――その終わりが、ハッピーエンドかどうかはさておきね。
シレッと原作には無いのに出てきたコロウカン。
関でシスイカン(汜水関)ってのが出てきてるんだからまあコロウカン(虎牢関)もあるだろうと。
滅茶苦茶に中国推しですわ原作。
・その頃のタツミ
限界を超える帝具の解放により意図的に竜化を進めていた。流石にまだ全身が竜の身体にはなっていないが、キョロクで受けた傷を治そうとして帝具との融合が自動的に進行。このままでは難き仇を討てないのでタツミ本人も受け入れた模様。