憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト   作:社畜戦士

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終わりまで連続投稿です。本日投稿2回目です。


File62:戦の愉悦

「ハハッ、どうした革命軍。このまま氷騎兵に蹂躙されるだけか?」

 

 向こうさんの帝具持ちも頑張ってはいるが、流石にそれぞれが単体で超級危険種並みの軍勢を相手にするのはキツイらしい。

 此方から奪った軍楽無双やその他のバフ系帝具で敵全体は強化されているにはいるようだ。

 だが、ソレで雑兵が氷騎兵に勝てるのか? と聞かれたらな……。

 

 同様に再奪取されたエクスタスを筆頭に直接的な攻撃力を持った近接帝具で武装した敵幹部も見受けられるが、一対一では到底敵わないようで。

 それでも複数で当たって何とか一体倒した、と思えば秒で復活するのが氷騎兵だ。

 しかもソレがほぼ無限に続く。

 

 現状では氷騎兵の数は400万騎くらいで、自動操縦にしてもエスデスが扱える限度がそのあたりだ。

 そして連合軍で今此の場に布陣している敵兵が大雑把に見積もって200万程度。

 流石に異民族やら宗教蜂起やらの所属の違いで足並みが揃ってないだけで、やろうと思えばまだまだ追加で各地から人員は駆けつけて来るんだろうが……少なくとも本決戦において今此の場に布陣しているのはその総数を大きく超えないだろうな。

 敵の最大戦力であろう帝具持ちでも、それこそ原作主人公のタツミ様でも一対一では勝ち目がない程の実力差。

 そんなのが敵の総軍よりも多いんだ。

 勿論だが帝国側の兵士も100万には届かない程度には布陣しているし、何より……俺の征南軍がまだ居る。此の場には布陣していないが。

 

 こんな状況だとエスデスの体力が続く限り向こうに勝ち筋はないんだが、当然ながらエスデスもちゃんと体力配分は出来てる。

 この程度の出力ならそれこそ飲まず食わずでも1か月は稼働出来るわな。

 そして当然だが糧食や食糧庫が焼かれた訳でもないんだから飯も水も与えないなんて事が無いので、安全な拠点に籠って飯食って駄弁りながら敵を蹂躙する事も可能だぞ。

 

 

 まあそんなのは面白くない。

 態々俺も出張って来たんだ。

 此処は一つ、劇的な演出という代物をお見せしようじゃあないか。

 俺をフリーにしたことを後悔するんだな。

 

 

 


 

 

 

 ――唄が、聞こえる。

 

Look to the sky, way up on high.

 

 狂気の唄が。

 

There in the night stars are now right.

 

 ナニカがナニカを呼んでいる。

 

Eons have passed: now then at last.

 

 怖気を震わせる童歌。

 

Prison walls break, Old Ones awake!

 

 身の毛もよだつような恐怖。

 

They will return: mankind will learn.

 

 恐れよ。畏れよ。怖れよ。懼れよ。惧れよ。

 

New kinds of fear when they are here

 

 全身から血の気が引いて、神経が掻き毟られるような不快感、胃が焼け爛れたように痛む。

 

They will reclaim all in their name;

 

 今此処に、再び降り立つ。

 

Hopes turn to black when they come back.

 

 嘗て在った偉大なるモノ。やがて来たる醜悪なるモノ。

 

Ignorant fools, mankind now rules.

 

 善悪と正負が入れ替わる。功罪と美醜が逆転する。勝敗と生死が等価となる。

 

Where they ruled then: it's theirs again.

 

 讃えよ。彼のモノの名を。

 

Stars brightly burning, boiling and churning.

 

 恐れよ。究極の存在を。

 

Bode a returning season of doom.

 

 受け入れよ。人知を超えた理を。

 

Scary scary scary scary solstice.

 

 祝福せよ。新たなる地獄の創世を。

 

Very very very scary solstice.

 

 汝が正気を証明せよ。

 

Up from the sea, from underground.

 

 我が狂気を受諾せよ。

 

Down from the sky, they're all around.

 

 最早猶予は無い。

 

Madness will reign, terror and pain.

 

 誰か、何処か、何か、何時か、何故か、如何してか。

 

Woes without end where they extend

 

 道理を不条理が飲み込む。

 

 

Throd.

 

 

 ■■■。

 

 

(Look to the sky, way up on high.)

 

 此の怯懦に従うのなら。

 

(There in the night stars now are right.)

 

 我は許そう。

 

 

Wgah'nagnww nogog.

 

 

 

 だが肉体に許しは与えぬ。

 

 

 

 ――今再び、絶望が具現する。

 

 

 


 

 

 

 戦場に響き渡る悍ましい唄。

 

 ソレに最初に気付いたのは、やはりナイトレイドの諸兄だった。

 そら前に一度ブチかましてるもんな。

 

 ()()が来たら、あの地獄が再演されると識っている彼らは、喊声を上げて唄の出所を潰そうと躍起になった。

 ――だが、無理なんだよ。

 

 そもそも俺が何処に居るのか知らねえのに、どうやって止める心算なんだ。

 そして此の唄はあくまで俺の演出でやってるだけで、実際には詠唱の類を必要としないんだよ。

 ソレを知らないからあんなに必死になってがむしゃらに突撃を敢行しているようだが……。

 関係ないな。

 

「我が狂気、如何なる手管であろうと何者にも止められぬと知れ」

 

 クトゥルフ神話技能に必要なのは、狂気(SAN値)魔力(MP)……ソレが十全に有れば大体事足りる。

 そして狂気を我が物としてある俺にとって、無限の魔力を有する俺にとって、全ての術式を識る俺にとって……魔術とは俺を万能たらしめるお手軽なツールに過ぎない。

 だから、何の躊躇も無く使えてしまう。

 

 

「邪怪降誕。……此度は見目にも気を使ったぜ?」

 

 空から垂れた薄墨のような闇から、ぞわぞわと悪魔の軍勢が湧いて出る。

 以前のような深き者ども染みた姿形ではなく、本決戦に合わせてちゃんと外見を整えた。最終決戦だからな、人目を気にしてるんだ。

 少なくとも人型を全て逸脱していない。

 大きさは最大で5mクラスとかまであるが。

 流石に原作ドクターの人型危険種みたいに明らかな異形の巨人は持ってこなかったぞ。

 怪魔ってか改魔だな。

 

「そうそう、原作的に一度は言っておきたかった……まるで将棋だな?」

 

 

 原作でドクターは囚人兵(チームスタイリッシュ)を将棋の駒になぞらえて運用していた。

 エクスタスを持たせた角行(カクサン)

 機械化で突進力のある飛車(トビー)

 圧倒的な突破力のある香車(セリュー)

 敵陣に飛び込む伏兵の桂馬(トローマ)

 こんな具合に特徴を将棋に例えて戦場の盤面を考察していたものだが、そういう戦術家ムーブは敗けフラグだろ。

 データ厨がテニヌで勝てないのと同じだよ。

 

 とはいえ、ネタでやるんなら面白い。

 流石に何の所縁もないその辺の死刑囚を部下として手厚く遇して重用する気にはならないが、あくまで一兵卒として使い潰す分には有用だろう。

 そういう考えで、王将以下将棋の駒に例えた改造兵を用意した。

 

 俺の傍で絶対防御の守護を敷く王将。

 加速装置を積んでマッハで移動する飛車。

 縮退砲で射線上を消し飛ばす角行。

 多腕の武装で着実に前進制圧を進める金将。

 金将と対で防御陣を敷く銀将。

 転移能力により敵陣に強襲する桂馬。

 圧倒的な防御力と突破力で前進し続ける香車。

 特殊な機構を排し性能を徹底的にボトムアップさせた歩兵。

 

 ――だけじゃあないんだな、コレが。

 鳩槃、鳩盤、天狗、鳳師、麟師、大将、鉤行、鵬師、中師、獅鷹、奔鷲、大師、大旗etc……駒の数、実に209種類

 【大局将棋】という『史上最も駒の多い将棋』とされている代物を参考に持ってきた。

 

 【大局将棋】ってのは実在した古将棋の一種で、【泰将棋】や【天竺大将棋】、【和将棋】なんかのより一般的な(知名度のある)『駒の多い特殊な将棋』から殆どの駒を輸入して出来ている為、駒の総数も209種類804枚も使うアホみたいな出来上がりのブツだ。だがそれがいい。

 往年の某無駄知識紹介TVで取り上げられたことで知名度が高まり、俺らの世代だと『将棋はよく知らないけど何百枚も駒を使う将棋があるってのは知ってる』ような奴が多いくらいだ。

 まあトリビア関連は大体そうだが。

 

 ともあれ此の大局将棋。

 駒が多いからそれぞれになぞらえて改造兵を用意するのが実に楽しかった。

 火鬼とか大龍とか羅刹とか絶対強いじゃん。

 勿論ちゃんと名前に沿った能力を持たせたさ。

 

 そういうのを7500セット、というか実際には敵味方で用意されている将棋の駒なので402枚2組だが、ともかくソレを603万騎程用意した。

 当然のように総員を皇具や神器で武装してあるぞ。

 エスデスの300万、帝国兵の100万弱、俺の600万強、合計1000万騎程が此の場にある帝国側の戦力だ。

 

 比べるに革命軍の連合は革命軍・異民族糾合軍・安寧道蜂起軍・自発蜂起軍・その他雑多な寄り合いを合わせて200万くらい。

 どう考えても総力を結集して、とかの一元化した命令系統が用意出来ないわな。

 そして数でも負けて練度でも質でも装備でも負けてる。

 やめたら? この仕事。

 

 

 ――ま、何はともあれ……。

 

「一千万の不死者の軍勢に磨り潰されろ」

 

 俺から言えるのはそれだけだ。

 

 

 


 

 

 

 いい感じに生殺しにして嬲っていたら、徐々に敵側の士気が崩れてきている。

 そら当然だわな。

 『200万の精兵vs100万の烏合の衆』だと思ってたら、実際には『200万の雑魚(混成軍)vs1000万の無双の兵隊(指揮権一本)』なんだもんよ。

 ――そして、この程度で追撃の手を緩める訳がない。

 ダメ押しの一手だ。

 

「――護国機神、起動」

 

 

 ――ソレは、唐突に現れる。

 俺のオーダーにより、帝都を覆う隔壁の上部に巨大なヒトガタが出現する。

 全高20m。5階建ての建物や奈良の大仏ほどの大きさのソレ。

 

 【護国鬼神】とか大層な銘を打たれた人型兵器。名をシコウテイザー。

 本来ならば皇帝の血筋しか扱えないんだが、前も言ったが俺は甘ったれのクソ傀儡ガキに何も期待してないので、最初から皇帝陛下をシコウテイザー起動の為の生体ユニットとして割り切った。

 その結果、操作は完全AI操縦になった。

 効率的に圧倒的に一切の呵責無しに殺戮が始まる。人間だけを殺す兵器、実に人道的だ。

 

 用意した装備は、縮退砲、反物質ミサイル、対城ガトリング砲、対人掃射バルカン砲、熱線火炎放射器、電磁パルス放射装置、電磁砲、プラズマキャノン、拡散ビーム砲、収束レーザーキャノン、超電磁榴散弾砲、32連装多目的ミサイルランチャー、テルミット焼夷弾グレネードランチャー、ワイヤークローアーム、近接破城メイス、相転移斬艦刀、ピンポイントバリアシステム、飛行ユニット、反重力ユニット、護衛ドローン生成ユニット。

 

 此の世界、此の時代、此の局面で使うには過剰に過ぎる大量殺戮兵器の数々。

 超魔改造によって凡そガンダム作品に行ってもやっていけそうなレベルの殺戮機動兵器と化したシコウテイザーだが、こんなの一機だけで自害案件じゃん?

 ()()()()()()()()()()()()()()って思ってさ。

 ()()()1()0()()()()()()()。やったぜ。

 

 【“帝都守護”シコウテイザーmarkⅡ】。

 名前は2号機(markⅡ)だが、性能は完全に同等で外見を少し変えただけ。

 ソレを9機製造し、元の原型機と合わせて10機編成で運用可能。

 勿論起動するのに皇帝の血筋(笑)とかは必要ないが、一応あの傀儡にも役目を与える為に原型機の0号に取り込んである。

 MarkⅡの1号~9号は勿論そういうの要らないオートパイロットですが何か?

 

 

 大臣は奥の手として『粛清モード(笑)』とかを載せてくれと言っていたが、コレについてはNOを突きつけさせてもらった。

 此の粛清ナントカ。要は甘ったれのクソガキ皇帝くんだと碌な操縦が出来ないだろうという見込みで、機体側に操縦者の皇帝を一時的に狂化に準じた機能で操る仕組みを設け、無慈悲に敵軍を()()()()蹂躙させるための機構だ。

 だが宇宙世紀ガンダムで育った俺としては『機体側が暴走させてくる仕組みとか敗けフラグ』の認識だし、何よりそんなピーキーな産廃を用意する意味が分からなかった。

 よって、最初からガキは某ナデシコのトラウマ映画のような生体演算ユニットとして位置づけ、操縦者の人権や安全性を度外視して設計した。

 

 大臣は奥の手がどうこう言っていたが、クライアントが無理解からアホな無理難題を吹っ掛けてくるのはエンジニアリングの業界では常識だからな。……ファッ!? ……前世の社畜時代が思い出され……ウーン(心停止)。

 ……というかそもそも粛清ナンタラを用意したとして、ソレを操るのが軍事や戦闘について何も知らないクソガキだって前提がある限り無意味なんだよ。それこそ大臣の言う通り無意味に味方を積極的に巻き込んで広範囲を無差別攻撃しやがるだろう。

 洗脳なり狂化なりでクソガキの元の人格を変えてまで運用したいんなら、そんな面倒をするよりも先に真っ当な操縦者を据えるか自動操縦に切り替えるかの努力をした方が早い。

 

 そういう意見から粛清モードとやらは却下。

 普通に全自動AIで動かすが、一応建前として皇帝陛下には0号のコクピットという事になってるスペースへスライムに取り込まれる感覚で飲まれてもらった。

 クソガキの存在は0号の操作に一切寄与しないが、一応外向けには『皇帝陛下が操縦なさっている』という事になっている。

 当たり前だが味方殺しなんかしないし、そもそも魔術式敵味方識別機能くらい実装してあるから此方の火砲類は一切味方に害を及ぼさないぞ。

 クソガキも脊髄に撃ち込まれた交感端子針から流し込まれた電脳パルス信号によって、自らの操縦で無双ムーブをした夢を見ているからな。

 対外的には何も間違っていない。

 真実を知る俺達が黙っている限り、世はなべて事も無し、だ。アーメンハレルヤピーナッツバターってな。

 

 

 ――まあそういう感じで。

 合計10機もの超兵器。

 1機で凡百な兵士100万の軍勢に相当するとして(当然大甘に安く見積もった場合。そもそも単騎だろうが世界を滅ぼせる)、ソレが10機なのでコレで1000万の追加軍勢と換算できよう。

 ソレに此方の決戦戦力1000万を加えると……。

 

 

「1000万パワー+1000万パワーで2000万パワー!!」

 

「いつもの2倍の科学強化改造がくわわって2000万×2の4000万パワーっ!!」

 

「そして、いつもの3倍の魔術エンチャントをくわえれば4000万×3の……」

 

「革命軍、おまえをうわまわる1億2000万パワーだーーっ!!」

 

 

 ――いや、流石にウォーズマン理論は無理だけどな。

 ああ、補足しておくと魔術でエンチャントした機神の攻撃は敵の命を賢者の石に変換する機構が備わっているから、敵を砲撃や銃撃で潰せば潰す程に量子変換で資源に変えていく。

 生命でも非生命でも関係なく、戦えば戦う程に資源を増やす、つまり国を豊かにしていく。

 まさに国家の最終兵器に相応しい機能だ。

 

 とにかく機神という超兵器と改造兵や氷騎兵も含めた10倍の戦力で正面から蹂躙をさせている。

 一体でも災厄クラスのバケモノなのに、ソレが10機も追加された革命軍の諸氏の心境は如何ほどか。

 実に趣深い。実に愉しい。実に気分が良い。

 

 通常兵力の1000万だけでも勝ち目がないのに、後方の援軍すらも丸ごと消し飛ばせるような機神達の出現により、半ば崩壊しかけている革命軍の士気。

 それでも総崩れにならないのは彼らの練度が高いのか、それとも俺が全員発狂させてあるからか。

 ……普通に後者だが。

 

 

「――さて、そろそろ限界かね?」

 

 まだまだ愉しみ足りないんだ。

 もう少し足掻いてくれよ。

 

 

 


 

 

 

 ――帝国の闇を知って……。

 

 ――皆と出会って……。

 

 ――サヨとイエヤスと道を別った。

 

 ――あれからどれぐらい経ったか……。

 

 国が変わる事を信じてずっと戦ってきた。

 仲間を失い、この手を血に染めながら……。

 あと一歩ってところで――。

 

(あんなの――人の死に方じゃ無ぇだろ……!!)

 

 人が、死んでいく。

 見た事も無い巨大なナニカが放たれると、その跡にはチリ一つ残っていなかった。

 人が、死んでいく。

 光り輝くナニカが無尽蔵に飛来して爆発すると、地面を大きく削って何も残さない。

 人が、死んでいく。

 砲撃、と呼ぶには常識からはかけ離れたバカでかいソレは、掃射されると一切合切を消し飛ばしていく。

 人が、死んでいく。

 どんどんと味方が殺されていく。

 あの恐ろしいバケモノによって。

 

 死体さえ残さないソレは、とても人の死に方とは思えない。

 こんな暴虐が許されていいのか。

 こんな理不尽に抗う為にナイトレイドに入ったんじゃなかったのか。

 こんな時に戦う為に力を付けてきたんじゃなかったのか。

 

「テメェは、テメェだけは……刺し違えてでも止めてやる――ッ!!」

 

 

 

 ――とまあ、こんな具合にタツミくんはブチ上がっているが、当然だが仮に奇跡的に1機と刺し違えても残り9機と1000万の軍勢が残ってる。

 それでもインクルシオと同化が進んで譫妄に囚われ始めた彼は、既にマトモな意識状態ではなかった。

 所謂認知が歪んだ状態で、目の前の事しか考えられない有様になっている。

 その為、他の一切を無視して0号に向かって吶喊した。

 

 ……コレは、まさに奇跡的な逆転の一手ではあった。

 ドクターたち以外の誰も知らないし知る由もないが、0号は皇帝を内部に格納している。

 仮に0号が完全に破壊された場合、内部に取り込まれた皇帝は生命維持が難しくなるし、よしんば死んでしまえば少なくない被害と失点を帝国に与える事になる。

 ……ガンダムみてぇなコイツを生身に近いインクルシオで破壊出来るプランがあるのならな。

 プチ・モビルスーツ(メッドやズック)以下の生体型パワードスーツ(インクルシオ)モビルスーツ(ガンダム)を倒せとか、フロム脳でもそんなこと言わんよ。

 というか少なくともドクターと大臣は皇帝が此の戦いで崩御しても「必要な犠牲」としか見ないんだが。

 

 

 そうして殺戮されている他の革命軍の仲間を無視して一直線に0号まで突撃するタツミだったが、勿論タダで通す訳もない。

 

「――ダメよ、油断しちゃ」

「ガッ!?」

 

 他の一切を思考の外に置いて直進していたタツミを、無数の鏃が射貫く。

 インクルシオとの同化が進みほぼ竜の肉体になっている身体を貫いたのは、何時か見た記憶のある翠の矢だった。

 

「――サヨか!!」

「ご名答。まだ覚えてられたのね?」

 

 機神達の警護の為に配置されていた弓兵、サヨ。

 最期の別れと定め、彼女は敢えてタツミの前に現れた。

 弓兵が身を晒してタツミの前に出ているが、タツミは全身を射抜かれた痛みでそれどころではない。

 そして痛みと傷により更にインクルシオの浸食が進んでいく。

 直に記憶も無くなってタダのタイラントと化すだろう。

 そうなってしまっては……流石に憐れだ。

 

「同郷の誼よ。苦しまずに殺してあげる」

「ふ……ざけンな!!」

 

 喚声を上げながら副武装のノインテーターで斬りかかるタツミだが、空を飛べるサヨは軽々と躱しながら大砲の剛撃のような速射を次々と放つ。

 真後ろにすら曲射で弓を届かせるその絶技、尋常一様の業ではない証明だ。

 まだタツミが生きていられるのは彼女が手加減をしているのもあるが、傷を負うとどんどんインクルシオとの融合が進んで竜の身体へと変異していくのもある。

 

「グゥ……! サヨ!! こんなノおかしいだろ!? あンな死に方はヒトの死に方じゃない!! あんなのは止めなきゃダメだロ!?」

 

 バケモノになりつつありながら、それでもおキレイな理想をがなるタツミ。

 実に主人公らしい振る舞いだ。

 反吐が出る。

 

「何を言うかと思えば……馬鹿じゃないの?」

「なンだとッ!?」

 

 あまりに愚かな言い分に一時攻撃の手を緩めるサヨに、タツミは食って掛かる。

 ――しかし、彼女にも道理はあった。

 

「砲火で殺せば下等かしら? なら素手で殺せば上等なの? 範囲兵器で殺すのは下品? じゃあ素手で殴り殺すのが上品なのね?」

「あァん!?」

 

 サヨから言わせれば、タツミだって濁流派の役人を何人も暗殺してきたナイトレイドの一員なのだ。

 そんな人殺しの悪人が、人の死に方について美学を騙るのが有り得ない程に滑稽に感じた。

 どうやって殺そうが殺人は殺人。

 其処に美意識などを持ち出す輩は殺人を賛美する本物のイカレだ。

 ソレに気付いていないタツミが無様で憐れでみっともない。

 

 

「――決めた。アンタはこの上なく無様に殺してあげるわ」

「やってm――」

 

 サヨの宣言に対し吠えようとしたタツミを、激甚な痛みがその発言を強制的に遮った。

 

「――ギャアァアアアアアアッ!?」

「『やってみろ』って? 私は漫画本の悪役とは違うわ。妨害される可能性を考えずに私がする事を説明すると思う? 35秒前に終わってるわよ」

 

 全身の神経に焼けた糸鋸を出し入れされるような耐え難い激痛。

 既に撃ち込まれていた毒矢が、サヨの命令を受けて毒性を呈した結果だ。

 この世の何処にも無い物質で構成された毒素は、タイラントの強靭な生命力ですら上回る。

 激烈な毒反応は竜化しつつあったタツミの耐性を容易く凌駕し、四肢を腐らせ徐々に腐り落とさせていく。

 

「トドメは刺してやらない。……武器で一方的に殺すのは下劣なんでしょ?」

「ァ……ギ……グゥ……」

「アナタは其処で乾いていきなさい」

 

 最期まで無様に悶え苦しむタツミに何も言葉を遺すこともせず、彼女はただ彼が徐々に干乾びて死んでいくのを傍観した。

 

「――ああ、苦しませずに殺すってのは嘘になっちゃったわね。ごめんなさい」

 

 そして――タツミが完全に死滅したのを見届けると、そんな言葉が口を突いた。

 其処には同郷の幼馴染に対する配慮や気配りというモノは一切無い。

 只管に無価値なモノへ向ける侮蔑だけが在った。




また例の唄が出ました。
ワンパターンと言われるかもしれませんが。

今回の言いたかったポイント。
『暗殺者の癖に殺しに美学を求めるな。何で殺そうが殺しは殺しだ』
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