憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト   作:社畜戦士

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終わりまで連続投稿です。本日投稿3回目です。


File63:慈悲たる死に様

「よっ、無事だったか」

「イエヤス! あなたも怪我は無い?」

 

 時間は少し経過し、場所はタツミの亡骸のある地点。

 即ち、機神の内の0号が配備されている場所。

 其処に最初の任務であった『侵入してきた賊の殲滅』を終えたイエヤスはサヨの元へ駆けつけた。

 

 戦況は依然として帝国有利、というか最初からずっと圧倒的優勢で微塵も状況が動いていないが、兎も角イエヤスはサヨの配置場所まで援軍に現れた。

 お互いの無事を喜び合い、状況を報告し合う。

 

「――でも、イエヤスが無事で本当に良かった」

 

 そう言って心底安心した顔をするサヨ。

 まだ決戦の決着はついていないが、少なくともこれ以降は彼らの持ち場で伏兵や奇襲などを含めた不測の事態が起きる可能性が無い。

 よって後は遠距離から攻撃を放ち続けるだけでいいので、油断こそしていないがある程度は気を抜いて緊張を解した。

 

「いやぁ、そんな心配する事でもないだろ? こっちは肉弾戦しか出来ないライオネルと、後は雑兵だけが相手だったんだし」

 

 あまり心配されるのもむず痒いためそう謙遜したイエヤスだったが、サヨはそれでも言葉を重ねる。

 

「……心配はするよ。彼女だもん」

「おっ、おう……」

 

 

 ――一応まだ決戦が終結していないにも関わらず桃色空間を演出していた二人。

 流石に何処かの色事師(ドクター)じゃないので(さか)ったりはしないが、それでもピンク寄りに思考が傾いた。

 ソレを軌道修正するようにイエヤスが話題を変える。

 

「――っと、そういやこっちにタツミが来てたんだよなっ」

「う、うんっ。報告した通り撃破済みだよ」

 

 処理班を呼んでから、彼らが来る前にイエヤスが来たので、まだタツミの死体は残っている。

 『超級危険種に浸食されていた帝具使いの死体』とか危険物でしかないので、一応征南軍で運用されている危険物の処理を取り仕切る部署に任せた次第だ。

 一応タツミの肉体はサヨの毒矢で念入りに汚毒を投入して壊してあるが、タイラントの生命力は想像を絶するモノだ。

 征南軍で運用されている危険種の傀儡兵でその生命力と危険性を知悉していた二人は、万が一の無いようにタツミの死体を完膚なきまでに処理しておくことに異論がない。

 

「――うーん、賊軍の骸は晒されるわな……。タイラントの特性も怖いし、此処は木端微塵にしてやろうぜ」

「そうだね、流石に忍びないもん」

 

 

 そう言って二人で死体の処理方針を決めていた、その時。

 

『――』

「……ん?」

「え……?」

 

 達磨にされていたタツミの死体が、微かに動いた。気がする。

 

「まさか――」

「嘘でしょ――」

 

 そして死体を凝視した二人の目の前で、突如として蠕動したソレは一瞬の内に新たに四肢が生えてくる。

 

「何!?」

「インクルシオ、いや……タイラントの特性か!!」

 

『――■■■■■■!!――』

 

 完全に(ころ)し尽くしたハズのソレは、完全に理性の感じられない白濁した瞳でギョロギョロと周囲を見回している。

 そうしているうちに有り得ない勢いで肉体が盛り上がり、完全に人間サイズの竜になっていく。

 

『――■■■■■■!!――』

 

 狂気に冒された雄叫びを吐き出すと、目の前にいた二人を敵と認識したのか、身構えて攻撃を始めた。

 

「――死んでも戦うとは、ね」

「……関係ないな。此処まで成って果てた。それなら――」

 

 タイラントの生態に違わずケモノの獰猛性で暴れまくる人型タイラント。

 だが、ハッキリ言って先ほどよりも弱体化している。

 

 タツミの意識が在った状態では竜の身体能力を人の技と冷静さと知性で扱えるのが強みだった。

 だが今の状態は、完全にタイラントの素体としての戦い方だ。

 しかし、その肉体は人型サイズにまでダウンサイジングされており、肉体の強度やパワーもタツミの死体を素にしているのでコレも劣化している。

 つまり人の身体で野性の戦い方をしているのだが、そんなのはどう考えても弱体化だろう。

 完全に能力と肉体がミスマッチしている。

 

「――尊厳死させてあげましょう。正しい意味で」

「そうだな……ヒトの身体を捨てたんだ。なら、コイツはもうケダモノだ」

 

 暫し人型の攻撃を見極めていたが、特に脅威を感じなかったことで此の場での処分を決めた。

 今度は二度と復活出来ないように全身を亜空間にバラ撒いてやろう。

 そう決意した二人は自らの持つ武威で此の化外との戦闘を開始した。

 

 

 ――複雑な思考を挟む余地無く、タツミでは二人に勝てない。

 タイラントの素体でも、復活したところでも、だ。

 

 ならば、愛と勇気とが爆発して、逆境を跳ね除けて原作主人公様が大逆転勝利をキメるのか?

 

 ――答えは否。

 

 コレ以上なく惨めに、無様に、憐れに、正面からタダの武技で蹂躙されて殺されきった。

 其処に奇跡も魔法も無く。

 当たり前の事が当たり前に起きた、ソレだけだった。

 

 

 

 ――ナイトレイド、残り1()()

 

 

 


 

 

 

 ――ちなみにコレも後で知った話だが……原作だと案の定クソガキでは碌に機神の性能を発揮できなかったようで。

 その為、此の世界でも大臣側の要求にあった仕様で粛清モードとやらが原作では実装されていて、ソレが猛威を振るったらしい。

 当然、味方を巻き込んで。

 

 ……何がどうしてそうなったのかマジで意味が分からんのだが、何故か積極的に無関係な街中の民間人とかを狙う描写すらある。

 国土や民間人を敢えて破壊しているとしか思えない、穿ってみればメタ的に『皇帝も処刑されるに足る悪行を行わせる』ってモンだと思われる。

 

 ともあれそういう原作仕草。

 此の世界では存在しないから。

 大前提としてそのナンタラモードは最初から取り入れていないし、何なら自動操縦だし、そもそも劣勢になっていない。

 そして目の前をウロチョロする五月蠅いハエ(タツミとか)が居ない。

 よって、問題なく賊軍は削られ放題になっている。

 

 

 かてて加えて此方の軍備の充実ぶり。

 1000万の物理的軍勢が居る上での追加の機神なので、向こうは一人十殺でもまるで足りない。

 そしてキルレシオ的には最弱の帝国兵(魔改造)で換算しても此方の1000に対し向こうが1とかだから。此方が1000人殺すのに対して向こうがようやく1人殺せるかどうか。

 更に死んでもゼロコンマ数秒で復活するし、そもそも傷すらも瞬時回復し続ける。

 

 まぁ、このままじゃあ連中に勝ち目なんて無いのがそろそろあちらさんにも分かってもらえたか。

 何故か連中はみっともなく生き足掻くのを止めないが、そういう極限の抵抗をこそ俺は観たかったんだ。

 実に良い見世物だよ。

 大変よろしい。

 見ていて気分が佳い。

 

 

 ――だが、いつまでもそうしてはいられない。

 劇にも物語にも閉幕の時は何時か来る。

 ダラダラと此処まで決戦を先延ばしにしてきたんだ。

 熾火のようにか細く息絶えるような最期は与えない。

 

 既に連中は烏合の衆、その軍勢は見せかけの張子の虎。

 形骸化した軍は最早腐った納屋の如し。

 劇的な終わりを与えよう。

 怯えながら、藁のように死なせてやろう。

 此処が貴様らの理想の果てだ。

 

 

 

「――エスデス!」

「うむ!」

 

 最前線ではしゃいでいたエスデスの傍に降り立つと、此方の意図を察した彼女が氷で足場を作ってくれる。

 さながら劇場の奈落のようなせり出す高台。

 エスデスと二人で並び立って連中を見下ろすが、どいつもこいつも死にそうな顔して生気が無い。

 ……まあ、コレだけ一方的に被害を受けていたらな。

 

 既に敵軍は半数ほどに漸減している。

 近代戦術や軍事学で考えると損耗率50%とか文字通りの全滅で、組織的な抵抗力の喪失以前に逃走兵や敗走や脱走が相次いで戦闘を継続する事すら出来ないだろ。

 ……だが無線通信技術の無い此の世界、前線で将軍が鼓舞していれば意外と玉砕まで士気を保つのは不可能ではないらしい。

 まあ一兵卒が全体の被害状況なんて気にしてられないからな。

 

 ともあれそういう事情からか、連中も未だに健気な抵抗の限りを尽くしている。

 しかしこのまま無造作に殲滅し続けるというのも芸が無い。

 よって――。

 

 

「――ナジェンダ。私にも慈悲の心はある……このまま至高の帝具で蒸発させられるのは不憫だと思ってな」

 

 格付けが完全に終わっている事から、嗜虐心に溢れたゲス顔でそう言い放つエスデス。

 まあ彼らには抗弁するだけの理屈も力も道理も無いからな。

 

「よって……直接殺してやりに来たぞ。帝国に残る最大戦力、その二枚看板だ。嬉しかろう?」

 

 形式的だが大将軍を継いだ俺と、俺の後釜で四将軍を統括する新設の中将の地位に就いたエスデス。

 名実ともに今の俺達は帝国の最大戦力なワケだ。

 ゆくゆくは分かりやすく元帥から始まり、大将・中将・少将・准将、以下は佐官、尉官、と階級制度を見直す心算でいる。

 ともあれそんな帝国側の筆頭戦力が態々手ずから始末しにきてやったんだ。

 泣いて喜んで頭を垂れて、潔く介錯を受けて欲しいな。

 

 

 ――しかし、追い詰められたネズミ共は、あんまり悲壮感が無い。

 あまつさえ、何やら啖呵を切ってくれやがった。

 

「――最大戦力? 二枚看板? ……タダの残存勢力だろう!

 

 ……どうも本気でそう思っているらしいな。

 こんなの魔術を使わないでも判別できる。

 まさか連中、此処から逆転勝ちする気でいるのか……。

 本気で……?

 

 

「ほォ、そう思っていたのか」

「まぁ、言っても分からん馬鹿共だ。故にこのような状況になっている」

 

 うーむ、マジか……。

 思考の方向性こそ弄ったが、戦略観や人格の類は一切手を触れて無いんだが。

 ……つまり、連中はシラフであんな妄言吐いてるのか?

 ヤベー連中だな。

 こわいなーとづまりしとこ。

 

 

「――ま、それでもいいさ」

「フン、これから私たちは帝具を使わん。肉体の武威だけで貴様らを殺し尽くす」

 

 コレは油断や慢心とかじゃあない。

 余裕という奴だ。

 ……というかコレくらいしないと一方的な虐殺になっちまうからな。

 

「――ッ!! 舐めてくれるッ!!」

「吠えるな。認められたければ実力を示せ」

 

 ……ああ、もしかして此処まで粘ってたのは、()()を待ってたりするのかね。

 『精兵10万以上、帝具使い10人以上、ソレにアカメたち歴戦の帝具使い』……だったっけ?

 俺達を打破し得る戦力として勘案していた最低ラインとやら。

 

 情報は筒抜けだから勿論知っているが……確かに精兵とやらは温存してるな。

 加えて帝具使いの損耗もほぼ無く、精々が直近の暗殺部隊による襲撃で減ったくらいか。

 其処に『アカメたちが大臣たちターゲットの暗殺を終えて帰還すれば勝ち目が見えてくる』……とか妄想しちゃってんのかね。

 

「ふーむ……。ああ、忘れてた。お仲間さんだよ」

『ッ!?』

 

 その辺を確認する為に、宮殿に侵入してきた連中の遺体(レオーネは公開処刑するから取り外した四肢だけ)、アカメの遺骸、浸食が戻ってヒトの貌に見えるようになったタツミの頭部を影経由で取り出す。

 

「――彼女たちは立派な戦死を遂げた。晒し首にするのは忍びない……」

 

 そんな事は1ミリも思っちゃいないが、敢えてこう言えば煽れるだろうよ。

 案の定「どの口が」と激高している皆さん方。

 

「よって――こうする」

『――ッ!?』

 

 指パッチン一つで影から中空に浮かせていた遺体たちは一瞬のうちに爆散。

 某キラークイーンによる爆殺の如くチリ一つ残さず滅死した。

 

「キサマッ!!」

「ハハハッ! ――かかってこいや

 

 

 ウンウン、コレで程よく敵意を煽れたね。

 無抵抗の人間を屠殺していくのは愉しくないからな。

 精々、命の限り抵抗を尽くしておくれ。

 

「――此処に居るのは、キサマらを殺す100万を超える精鋭たちだ!! 100万の精兵たちに圧殺されて死ねッ!!」

「ほーぅ、それっぽっちでどうにかなると思う傲慢、実に度し難い」

 

 理解(わか)らせてあげるよ。

 やっぱ喧嘩はスデゴロが一番楽しいよな?

 

方位。定礎。結――転

 

 例によって例の如く呪文は適当だが、展開した術式は某田辺イエロウ氏のデビュー作風味の結界術。

 俺も年代的にアレは大好きだったぜ。……ヒロインがあんまり活躍しなかったのが不満だったが。

 

 イメージは【縦×横×高さ】で立方体の結界を形成する感じ。

 ちなみに『定礎』はあの作中のオリジナルの読み方で『定礎(テイソ)』じゃなくて『定礎(ジョウソ)』なんで間違えないように。

 

 

 そんな結界術によって隔離された戦場は、白亜の異空間に切り替わっている。

 精神と時の部屋とか、ドラえもんの地平線テープだっけ? あの空間みたいな具合。

 見渡す限り無限の地平線が広がる、何も存在しない無の空間。

 真っ白な大地と暗いのに何故か視認性は確保されている闇色の世界。

 空は星空一つ、月すら存在しない暗黒の蒼穹が広がる。

 

「――此処は我々の他に何も存在しない隔離された異空間」

 

 某聖杯大戦の最速の騎兵が使う宝具と違ってちゃんとお互いの能力や武器などの全てが持ち込めるが、宣言通り俺達は一切能力の類を使わんぞ。

 

「奥の手でも死に技でもなんでも繰り出せ。周囲に被害は出ねえんだ」

 

 ちゃんとあちらさんの残存戦力全てと大砲火器や銃砲、弓矢に剣に槍にと、全ての武装も持ってきた。

 流石にあの戦場に布陣出来ていなかった遠方の予備戦力とかまでお呼びするのはサービスが過ぎるんで、手つかずだが。

 それでも帝具を始めとした一切の武装の制限が無く、現実世界では国土や人に余計な被害が出るような禁じ手の類は制限がなくなったとみて良い。

 

 

「そして……我々二人が死なないとお前らは此処から出られねえ。つまり、文字通り死ぬまで続くデスマッチってワケさ」

「ハハハッ! 楽しい愉しい一大決戦の始まりという奴だ!」

 

 

 

「「死ぬ気で戦え、革命軍(リベレーター)!!」」




ということでスデゴロ縛りで最終決戦です。
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