憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト   作:社畜戦士

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暫くは設定をこねくり回す話が続きます。ご容赦ください。


File07:内務局

 さてさて内務局について……というかアタシの肩書全般について説明しなきゃね。

 まず大前提として、【征南将軍府直属非公開特殊任務遂行軍隷下中央管理機関統括内部業務局】を一個ずつ解説しましょうか。

 

 

 【征南将軍府】。

 

 アタシって元々は技術将校として軍部に所属していたんだけど、アタシ自身で直接戦闘をやり過ぎた結果将軍相当官として実効権限を与えられているのよ。

 まあ例の異民族皆殺しの作戦とかにも正面戦力として参加していたしね。

 他にも四方八方に存在する異民族の征伐とかで実験の為に作戦参加を積極的に行って戦闘を続けていたら、気が付けば将軍に昇格していたのよ。

 なんせそれだけの戦果を挙げちゃってたし。

 

 まあそういう感じの背景もあって、アタシは並み居る将軍の中でも南下作戦を主任務に行う【征南将軍】としての地位に就いているワケ。

 軍政の中でも一番面倒な革命勢力への対処をメインに行う部署よ。

 勿論これくらいの厄介な任務への対処を率先して行うなら、その分だけ周囲との軋轢も少なかろうと思ってアタシから提案した話ではあるけれども。

 やっかみとか嫉妬はどうしてもある以上、自分から閑職とまでは言わないけど、面倒な仕事を自主的に熟すようにしているのよ。

 技術将校が将軍相当官に昇進しちゃうんだから、そりゃあガチガチの軍部とは相性が悪いからね、シカタナイね。

 文官と武官は仲が悪い。古事記にもそう書いてある。

 

 そんでまあ、他の将軍連中はやってないんだけど、アタシは軍政を円滑に行う為に将軍権限を背景にした行政組織を置いているのよ。

 ソレが【征南将軍府】ね。

 別に幕府を開くワケじゃあないわよ?

 名称は兎も角、将軍直属の軍政機関としての代物でしかないからね。

 その権限は軍部としては将軍直属の為、将軍命令と同等の実効力を持つわ。

 つまり、実質的に大臣に次ぐ権力になるの。

 帝国に於ける命令系統としては、上から数えた方が早い権限を与えられている事になるのよ。

 

 

 

 そんな将軍府の下部組織というか直轄戦力として存在する直属軍が【非公開特殊任務遂行軍】ね。全部で三軍用意したわ。

 

 要は特務機関よ。

 諜報・宣撫工作・対反乱作戦などを占領地域、或いは作戦地域で行うっていう、ありきたりな特務機関としての側面を持っただけの方面軍でしかないわ。

 まあアタシの前世知識的にはありきたりなモノでも、此の世界では革新的な先進機関なの。

 革命軍に対する南下政策の一環として、南方戦線に於ける革命軍の影響力を順調に削いでいる所よ。

 専らカウンターテロに努めているけど。

 

 まあ作戦内容が非公開ってだけで、正面戦力として方面軍が実存するっていうのは周知されているんだけどね。

 なんせ、こんな情操網が未熟な中世風の世界だと、隠れて諜報活動を行うよりも直接軍事行動を起こした方が手っ取り早いし影響力を発揮出来るんだもの。

 そもそも軍隊が地方に駐留しているってだけで十二分に影響力が見込めるんだから、軍隊の存在そのものは別に秘匿していないのよ。

 一応諜報関係の仕事を主任務に行う関係上、所属兵員は皆高度に選抜されたエリートだけで構成されているわ。

 まあ洗脳系の力で縛ってある以上、裏切りとか綱紀違反とかは一人も出ないんだけど。

 

 

 

 さて、特務軍の隷下にある【中央管理機関】について。

 

 コレは単純に特務軍に於ける軍政寄りの部署ってだけね。

 一応形式的に特務軍の内政業務を纏める部署として置いたんだけど、隷下部署とは言いつつも機関の代表権限は特務軍総司令に準じるから、あくまでも形式的な肩書に過ぎないわ。

 

 まあトップが特務からの出向扱いなんだけど、内政官とかの純粋な文官達は此処に置いているのよね。

 要は普通の戦闘力が無い文官を此処で管理しているワケ。

 

 で、将軍府には他にも幾つか下部組織があるんだけど、『【南部管理機関】』とか、『【西部管理機関】』とか、まあそういう具合よ。

 その中でも【中央管理機関】は帝都に本部を置く広域政務機関になるわね。

 征南将軍府に在りながら帝都での職務を専任に行う部署よ。

 

 何せ将軍相当官ともなれば都に出仕する機会が多いんですもの。

 更に特務軍を麾下に置いてある以上、内政寄りの職務が多いし、その職権は広く深い。

 まあ諜報関係なんて何処もそんなモンよね。

 

 

 

 そして最後に今回のメインである【統括内部業務局】について。

 

 此の統括内部業務局、略して【内務局】は各方面管理機関を統括する内務行政機関よ。

 各方面管理機関の統括を形式上、上の権限に纏める為の部署ね。

 管理機関を束ねてこそいるけど、実質的に内政管区として独自裁量権限を得ているに等しいわ。

 役職上は将軍府と特務の下にあるような肩書だけど、事実上は大臣に準ずる権限を獲得してあるのよ。

 

 勿論書類上そうなっているってだけで、実際には早々権限行使なんてしないだろうけど……一応法律上正しい手順を踏んで制定したから、“もしも”の時は問題なく権限行使が出来ちゃうわ。

 まあもしもの時の保険ね。

 

 例えば大臣命令で此方に何かしらの致命的な不都合が発生した場合、最後の手段として上位権限による命令取消処分が可能なの。

 法制上、内務局の最高権限は大臣と伍するか、場合によっては上回るように法手続きを行ったんだけど……大臣はソレを知らないのよね。

 伊達に将軍府や特務を隠れ蓑に大量の行政手続書類をぶっ込んだワケじゃあないのよ。

 複数の管区を通す事で、大臣にも気付かれずに職権を手にしたってコト。

 勿論、こんなのは一度しか使えない裏技みたいなモノだし、使わないに越したことはないんだけどね。

 

 

 

 そんな具合で新設した内務局なんだけど、究極的にはその職責として『将軍府が今迄担っていた内政業務を統括する事』を目的として創立したの。

 実際の所、設立当初の将軍府はあくまでも軍政を担う軍部の内務業務機関として置いただけの部署だったわ。

 でも、色々とやりたいコトをやりまくっていたら抱え込んだ組織がちょ~っとばかし大きくなりすぎてね。

 流石に財団や研究機関等々を軍部である将軍府が従える現況はあまり宜しくなかったのよ。

 故に、内政に比重を上げた部署を用意した、っていうのが今回の最大目的だったワケ。

 

 勿論、文民統制なんて考えは此の世界には存在しないし、寧ろ政治機構が未成熟な此の中世風社会でそんなモノは机上の空論、どころか害悪ですらあるのよね。

 だから武官が政治を差配するのは不自然な話ではないし、そもそも直接的な力として武力を背景にしないと政治を進められないのが現状よ。

 現に元大臣のチョウリ殿は軍部を抱き込んだオネストに政争で敗れたからこそ出奔したワケだし。

 

 軍部が軍事力を背景に直接的な妨害に出たが故にチョウリ殿は逐電したのよ。

 暗殺者や政治的な圧力云々は副次的なモノに過ぎず、実際は軍部が表立って対立したから都落ちに至ったんだから。

 コレがどういうコトかって言えば、最悪は『宮殿内部で抹殺されても実行者には実質御咎めナシ』になっちゃうのよね。

 オネストが法的にあらゆる兇状を握りつぶし、そのうえで直接的な武力を振り翳したからこそ出来る力技よ。

 

 そういう蛮族スタイルな政治手法が罷り通るのが此の現世の宿痾なの。

 原作の革命軍のように政治機構を即座に丸ごと刷新したいってんなら、確かに武力革命くらいでしか即物的効用は見込めないでしょうね。

 

 しかしながら、アタシは非革命主義者なの。

 政治には政治で、武力には武力で相対すべきという、絶対的相対主義者でもあるわ。

 政治改革に於いて武力蜂起を持ち出した時点で、革命軍の連中に政治的正当性は失われているのよ。

 正しさを得る為に外道に堕ちるだなんて、本末転倒じゃあないの。

 

 そもそも此の世界じゃあ軍事力がある程度無いと、政治能力が幾らあっても意味が無いのよ。

 ソレが本人の持つモノか、部下や同盟者の持つモノかの違いこそ在ってもね。

 

 そういう前提条件が有ればこそ、帝国に於いて武力を保持するコトの重要性が問われるんだけども……。

 だからと言って、軍部に政治機構を丸ごと預けるのはナンセンスよ。

 究極的には軍なんてのは非生産的な要素の極致なんだし。

 そんなモノに生産能力に関して取り扱わせるのは、聊か問題があるでしょ。

 別に倫理観とか道徳とかの話じゃあないわよ?

 単純にゴリゴリの軍人には文官仕事が向いていないってダケの話。

 

 

 まあこういう長ったらしい建前は兎も角、文官は文官として一貫した縦割りの命令系統を置きたかったのよね。

 要所要所に洗脳した木人形(デク)を置くとしても、一々上にお伺いを立てるのが甚だ面倒だったし。

 そして今回命令系統を一元化するコトで、文官としての職務をスムーズに流せるようにしたわ。

 

 

 有体に言えば、内務局はアタシの麾下部隊全域を統括するコトで、あらゆる内務業務を円滑に行う為の機関よ。

 

 

 

「――というワケで、内務局は実質的に将軍府を輔弼する機関なの」

「成程……という事は、私のやるべき業務は……」

「そうね、変わらない……どころか、今迄よりもやりやすくなるんじゃない?」

 

 一々文官に反発する武官、命令系統の違いからたらい回しにされる稟議書、賄賂を要求する職権だけは上の外部役人、文官の言う事なぞ聞けんと無駄に騒ぐ武官、複数の管区を跨いで決裁する為に無為に時間がかかる書類、良識派を名乗りながら慣習から当たり前のように賄賂や中抜きを要求する帝都の内政官、内政を軽視する武官、突発的な自然災害への対処、文官を見下す武官、数字の合わない各種書類、etc……。

 

 少なくともそういうのは上位権限を一元化して得た以上は封殺出来ちゃうわ。

 従わなかったら抗命罪でブチ殺し確定だし。

 

 

「――だからランのするコトは今迄通り、アタシの副官のままよ?」

 そもそも文官志望のランを武官兼任で扱う今の状況が間違っているんだから。

 

 アタシの麾下部隊の主任務は民心宣撫や諜報活動なんだから、真っ向勝負の削り合いが起きる場面なんて寧ろ少数よ。

 そして特務の花形は暗闘でしょ。

 故に、政務全般こそが主戦場なの。

 だから文官こそがウチの主戦力になるような環境を目指しているのよね。

 

「という感じで、ランの抱えていた武官仕事を減らすのも目的なのよねぇ」

 ウチは将軍府として南部地域の占領政策も担っているけど、小規模な叛乱やら賊の討伐やら危険種駆除なんかに帝具持ちを駆り出す今の体制の方が間違っているのよ。

 

「それは……よろしいのでしょうか?」

「よろしいもなにも、治安維持程度でアナタを使うなんてのはそもそも牛刀を振り翳すようなマネなの。大勢の雑魚には大勢の使い潰しが効く改造兵隊を充てるべきなのよ」

 

 犠牲や消耗に目を瞑れば雑事には一般兵隊の集団を投入した方がいいし、そもそも改造兵隊は危険種程度ならば素地で斃せるんだから。

 故に、ランや他の文官にしか対応出来ない案件にこそ彼らを動員して、文武官の棲み分けをある程度行う事をしたいのよね。

 適材適所ってのは組織のスマート化スリム化には必須の要件だと思うもの。

 

 だから、ランには今迄以上に自身の適性に合った仕事に邁進して欲しいのよ。

 そうした方が手透きの時間も増えるだろうから、本来の目的であるシリアルキラーの捜索にも手を回す時間が増えるハズだし。

 

 

 そういうアタシからの配慮も含めた説明を説得ロールでダイスを振るう事数分。

 

 

「――なるほど、承知致しました。では此度の辞令、謹んで拝命致します」

「うん、よろしく頼むわね」

 

 無事に説得に成功。

 まあちゃんと説明したら断る余地もない話なんだけどね。

 一応【魅惑】や【催眠術】や【セクメンケネップの言葉】でダイスの出目を強化してはおいたけれども。

 

 

 


 

 

 

 さて、コレで文官の内示は粗方終わったわね。

 次は武官の辞令を書き上げないと……「話は全て聞かせてもらいました!!」――この声はまさか!?

 

「とぉっ!!」

 

 威勢のいい掛け声と共に、可愛らしい少女がアタシの執務室内に勢いよく飛び込んでくる。

 長い亜麻色の髪を勢いそのままにたなびかせ、部屋に飛び込んだ小柄な少女。

 セリュー・ユビキタスは何故かドヤ顔で着地してポーズを決めている。

 

「ドクター! 話は伺いました! 此のセリュー・ユビキタスに万事お任せを!!」

「はぁ……(クソデカ溜息)」

 

 イノシシ娘に何を任せろと言うのかしら。

 セリューェ……。

 




今回使用した魔術。

・【魅惑】や【催眠術】や【セクメンケネップの言葉】。全て効果範囲や効き目は異なるが精神干渉系の魔術。
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