憑依者はスタイリッシュなマッドサイエンティスト 作:社畜戦士
今回で一応の完結になります。
――いきなりの話だが……応報的死刑論には反対の立場なんだよな、俺。
死刑論って奴はセンシティブでデリケートな案件だから掘り下げる心算は無いが、【抑止力】としてこそを俺は死刑の第一義に置いておきたいという考えだ。
何が言いたいかと言うと……別に大臣を始末したりとかは、しないんだな、コレが。
少し話を整理しようか。
あの決戦で帝都を取り囲んでいた有象無象を亜空間に取り込んで完全に絶滅させた俺達は、返す刀で各地の残党を始末して周った。
実はあの決戦の前半では『俺の召喚兵』と『エスデスの氷騎兵』、後は『四軍を筆頭に各地の地方軍から募った帝国に忠実な兵士だけで構成された本土決戦用に緊急編成した部隊』しか戦闘に参加していない。
ウチの幹部であるセリューやサヨたちは少し働いていたが、それでも征南軍の上級将校である幹部は殆ど温存していた。
加えて……怪魔兵と征南軍の常備戦力って別なんだよな。
つまり、常備兵である第一から第五までの総軍戦力300万の大兵力は手つかずで残っていたわけだ。
そりゃ余力有りまくりだろ。
だからそのまま残党を討伐に向かわせた。
転移や空襲で即座に速攻を掛けられるウチの軍にとって、帝国全土に散逸している革命軍残党諸氏を捕捉して壊滅させるのは然して難しい話ではなかった。
加えて残党は既に形骸、敢えて言うなら残りカスでしかない雑魚の群れ。
其処に正規兵が雪崩れ込むんだから作業にしかならん。
一応正式な軍事行動を行っているという大々的な印象操作としてのイメージ戦略の為に行ったので、敢えて少しばかりの時間をかけてもらったが。
とはいえその日の内に残党共の目の前に飛んで行った征南軍各軍は、魔力隔壁で敵兵を一人残らず閉じ込めて完膚なきまでに磨り潰していった。
流石に数が多すぎたので1日2日では終わらなかったが、基本的にウチの兵力だけで完結した作戦を組んだ。
まあそうなれば最長でも1週間以内に残党は文字通りこの世から消滅したわな。
で、そうなると後回しにしてきた政治関連の後始末だ。
勿論大臣は依然としてクズのまま。
諸事情で派閥が壊滅しているが、本人の高い政治力は健在だ。
そして事情というか決戦時に革命軍が用いた斬首戦術を『濁流派が標的の場合俺達は防がない』という中々に後ろ暗い方法でスルーしたことで大臣派、というか濁流派全体が刈り尽くされている。
……当然のように邪魔者をついでに俺達が始末しまくったもんな。
そしたら派閥の首魁だった大臣だけがほぼ身一つで取り残されるんだが、流石にその状態だと暫く大人しくしているらしい。
というか本音ではいずれ権力の中枢に返り咲きたい気持ちが無い訳が無いんだろうが、流石に『皇帝の寵愛』だけで政治的優位性を取れる情勢じゃあないんでね。
その為、あのあとしばらくは幾らかの政治闘争が起きたが、最終的に大臣は中道派の門前に馬を繋ぐことに。
他のコバンザメ連中の生き残りは最後まで抵抗していたが、肝心のトップが変節したら後はトカゲの尻尾切りだよ。
此の節操のなさこそが生き汚さ、言い換えれば大臣の持つ強さだ。
大臣の最大の力は政治力でも戦闘力でも悪性でもない。
生存の為にはなんでもする、その執念深さだ。
まあ俺も他の連中はまだしも大臣は其処まで排斥する気が無いんで。
有能ならある程度の悪事は目を瞑るってのは最初からずっと通してきてる方針だし。
だから大臣には今度からは俺の部下として引き続き国政に当たってもらった。
ある程度の贅沢や趣味嗜好は許すが、流石にヨウカンが嬉々として執り行っていたような悪趣味なゲームとかはさせん。
なんだよ『妊婦の肚を裂いて中の赤子の性別を当てるゲーム』って。
どこまで中国史推しなんだよ。
『妊婦の肚を裂き~~』って暴君の
絶対後世で悪事を盛る為に後付けされたろ。
日本じゃ武田信虎とかもやったとされちまっているが、信虎も董卓もあくまで地方の蛮族でしかない(超偏見)のに勢力が肥大化して最終的に周りに疎まれて追われただけの人間だと俺は思ってる。信虎は兎も角(甲斐源氏の名門)、董卓は唯の涼州(ド田舎)の沢山いた将軍その一だったんだぞ。
そんな連中が「アイツは死んで当然の悪人だった」って悪事を後から装飾されただけなんじゃねえの?
閑話休題。
――まあ、そういう残虐趣味を裡に秘めることまでは否定しない。
内心の自由ってのは心の裡に留め置く限りは誰からも許される……そういう人権的発想の世界出身なんでね。
しかしただ「我慢しろ」ってのも無理が出るかもしれん。
ただでさえ食人嗜好とかを我慢させているんだ。
流石にソレは認められんが、他は別のモノで発散させてやらんと要らん事を企みかねん。
有能なんだから出来るだけ長持ちさせたいんだ。
――そういう懸案から急遽科学技術を急速に発展させて世に送り出されたのが、電子ゲームの類である。
現世でもそうだが、こういうのはフィクションで発散すると犯罪の抑止になるって科学的データがある。
『アニメや漫画やゲームの所為で犯罪が起きた~~』ってのは物知らずな馬鹿の妄言なんだよ。
報道しない自由ってのは実にスバラシイね全く。
ともあれ大臣はガチめのゲーマーに。
そっちで発散してくれるんなら否やは無いさ。
まだ一般には卸せないが、試作品のVRもSF世界レベルのモノを用意した。
其方の試供を依頼するくらいには大臣は筋金入りのプロeスポーツプレイヤーになってるんだよな……。
まあ、趣味嗜好はお互い様だ。
他所様に迷惑かけなけりゃそれでいいのさ。
あ、ナジェンダ以下革命軍幹部は生け捕りにした。
普通に市中引き回しの末に処刑したよ。
……実は極秘で時間流を弄った亜空間にご招待して散々嬲られまくった結果、革命軍の生き残りの女性幹部で出産経験の無い女っていなくなったんだが。
濁流派は文武問わず無能は全て始末したが、この時代基準なら(善性は関係無く)有能と言える連中は普通に残してるからな。
そしてハーグ条約のような国際規約の存在しない此の世界、捕虜を慰み者にする事に違法性とか無い。
だからブタみてぇに何度も孕まされて目の前でひりだしたばかりの赤子をミキサーにかけられて自分で飲まされるというステキ拷問を何度も執り行ったぜ。
時間操作や肉体操作の合わせ技さ。
生まれてきたことを後悔して「殺してくれ」と何度も懇願されたが、こういうとき行動を簡単に縛れる魔術って便利だよな。
ギアスってまさにそれ用の代物だし。
ともかくそういう非人道的にも程がある報復を行い、現実時間では一切時間経過無しに帰還した見た目はボロクソにされただけの幹部連中。
その後は慈悲を以って嬲らずにすぐ斬首してやった。
うーむ、優しさの化身だな俺。
そうして決戦で捕縛された連中の始末が終わると、すぐさまマーキングしておいた革命軍の南北にある拠点を地表から空間魔術で抉り取った。
そのまましばらく虚数空間で資源に変換してやったぞ。
取りこぼしが無いように、逃げ出したのや秘密裡に支援していたような主義者連中も呪殺したし。
遠隔からの呪詛とか魔術の基本だな。
――さて、一連の始末はこうなった。
主観的には満足してるが、客観的には万事解決のハッピーエンドってモンじゃねぇことくらいは知ってる。
だが、そもそも原作がピカレスク路線だ。
殺しに報いを、ってんなら暗殺者には応報があるのも道理ではある。
俺もコレが正当な手続きで捕縛された犯罪者相手なら現世的価値観を垣間見せる可能性があるんだが、正義を名乗るような勘違い殺人集団が対象だ。
そりゃ長生きできんし、させんぞ。
俺は法律的手続きで国家が応報を刑罰に盛り込むのは現世の価値観で否定するが、此の世界は大分中世の価値観だからな。
処刑がショービジネスなくらいだし。
となれば、ある程度は此の世界に合わせるさ。
……というか感情的応報論には反対だが、量刑に対する適切な処罰って意味なら死刑はこの時代的に効率的刑罰だとすら思ってるぞ。
中世的倫理観の緩さを舐めるなよ。
――さあ、その後の顛末を語ろう。
まずは外様の人間から。
大臣はその後も立派なゲーマー兼執政官としてほどほどに人生を楽しんだ。
派閥が完全に消滅した影響で、二度と権力者にはなれなかったが。
その代わり、顔と名前を変えて中級官吏として存分に活用された。
憎まれっ子世に憚る、とはよく言ったもので、ソレを体現するかのように相応に贅沢と趣味を楽しんで本当に長生きした。
ただ、「子育ては懲り懲り」と宣言したように、女を抱くことはあったが種をバラ撒くような不用意な真似はしなかった。
孤児を引き取って後継者に仕上げ、リスト大侯爵派閥に所属させた。
その後は順当に引退し老後の世話を任せ、穏やかに布団の上で死んだ。
悪因悪果なぞ理想論。
悪漢は最後まで幸せの只中に在りながら大往生を迎えた。
サヨとイエヤスは故郷に錦を飾った。
辺境のインフラ整備の責任者として、文武双方に深い見識がある高級官僚として定年まで精力的に働いた。
自分達のような辺境で逼塞するような人間を減らす為、そのために選んだのが交通やライフラインの整備を進める事だった。
高い目的意識で仕事に取り組んだ彼らは、『辺境の救世主』と後年呼ばれるほどに地方へ尽力した。
二人は戦後故郷に帰ってすぐに結婚し、子宝にも恵まれる。
二人が戦いの果てに勝ち取ったのは、ごくごく普通のありきたりな幸福だった。
決戦での戦功やそれ以降の数々の働きぶりからもっと多くの地位やモノを望めた筈だったが、彼らは最後まで「何処にでもいる誰か」としてあり続ける。
時折愉快な上司が無茶振りしてくるのが悩みの種であったが、それでも穏やかに幸せに生きていった。
ランは故郷に本拠を置いたが、終生シャイ大侯爵の右腕として勤め上げた。
高い政務能力と武力と統率力、そして何より極めて高い忠誠心。
恩人であり尊敬できる先達である上司の為に、たゆまぬ努力を続けて右腕に恥じぬ自分で有り続けた。
私生活では一般人の女性と恋仲になり、実子の他に孤児院を経営する中で多くの家族に囲まれて生活する。
子供好きとして知られる彼は多くの子供たちに慕われ、孤児院の出身者は全て家族として接し何かあれば帰って来られる場所としてあり続ける。
人格者である彼は多くの人たちから尊敬される立派な人間だった。
だが彼が一番自分の芯として貫いていたのは、他のどんな立場よりも上司の第一の部下である自分だ。
死の数日前まで生涯現役を通し、上司からは最高の部下だったと激賞された彼の死に顔は、安らかで満ち足りたモノだった。
ボルスは軍の暗部からは降り、練兵官として定年まで軍務を完遂。
愛する家族といつまでも仲睦まじく暮らし、穏やかに過ごした。
――だが成長した愛娘が恋人を連れてきた時に獄炎の悪鬼が再来。
大人げなく燃やしにかかったが、事前に某科学者から鍛えられていた彼は満身創痍ながら生き延びる。
流石に頭も冷えたボルスは、男泣きをしながら交際を認める。尚娘は一発ビンタした模様。
――ちなみに孫娘の恋人紹介の時にも同様の事故が起きる。
ともあれ最期の時は幸せに、笑いながら、家族に看取られて息を引き取った。
ウェイブは海軍に凱旋し、再編された組織で将校として着任。
海禁政策を撤廃した帝国で、精力的に職務に邁進した。
最も勇敢で精強な海軍軍人として内外で賞賛され、最終的に海軍元帥の号を戴く。
尚、昔のとある噂によって男色かと思われており、しばらくの間独り身のままだった。
最終的には恋人も出来て子供も生まれたが、壮年で出来た子供に猫可愛がりをし、立派な親馬鹿に。
私生活は大分馬鹿になったが仕事に悪影響は無かった。
なにせ絶対的なルールを敷く上位存在が居たから。
――さておき、最期には帝国海軍飛躍の立役者として、彼は史に名を刻んだ。
――そして、ドクターと女性陣は。
此の国は一夫多妻制。
甲斐性と双方の合意さえ有れば、複数人の伴侶を娶っても何ら問題が無い。
そういう事情から、彼はお付き合いしていた女性たちとはちゃんと全員と添い遂げた。
それぞれ子供も生まれ、育て、いずれ孫が生まれ……そして老いていく。
原作がどうこうというのは既に関係無かったが、それでも彼はあの時代、あの娘たちとしか婚姻を結ばなかった。
貴族としては正妻という位置づけの相手が必要だったが、気持ちの上では皆を平等に愛していた。
……尚、革命軍との最終決戦なんぞメじゃないような熾烈な正妻争奪戦が勃発したが、全て割愛する。
皆、全力で愛し合い、求め立った、心の通い合った伴侶たちだ。
其処に優劣は無いが……まあ、貴族として形式上のモノは必要だ。
ソレでも譲れないモノがあったのは客観的にもよく理解できるのだが。
……まあ、そんな愛すべき女たち、部下、同僚、臣下に市民たち。
そんな彼らの死を看取り続けて既に幾億年だ。
当初から分かっていた事だった。
俺に、死は訪れない。
起こり得ない。
既に俺は神として、完全に完成してしまっている。
人類が死に絶え、新しい生命体が地上を支配するようになって、そして滅んだ。
そんなことを繰り返して、いずれは此の星の寿命も来るのだろうが……其処まで待ってやる心算は無いぞ。
俺の人生は、もう終わった。
前世からの因業でヒトの身から神に成り果てたが故か、精神性と性情はコレだけの悠久の時の流れでも変わりがないように思う。
しかし……終わりの無い宇宙の果てを、此処で座して待つのはつまらない。
俺は最初の頃から何も変わってないんだ。
やりたいことを好きなように、激烈にやるっていうスタイル。
ソレを、初志貫徹してきた。
敢えてその生き様を形容するなら……そうだな、スタイリッシュに生きてきたんだ。
その
なればこそ、変化を。
最早俺が生きた時代の名残すら残っていないんだ。
現状の『イカから進化した新人類が闊歩する世界』とか未練なんぞ無いし。
……スプラみたいな世界にならんかと少し期待してたのにな。
冗句はさておき、人生……いや、神生に変化と彩りを。
此の世界にはもう未練が無い。
よって――異世界にでも行こう。
さて、どんな世界に行ってやろうか。
ラブコメ? サスペンス? バトル? 日常? ギャグ?
嗚呼……明日に何をするのかと悩めることの、なんと素晴らしいことか!
次の世界を楽しもう。
派手に、愉快に、スタイリッシュに、な。
という訳で完結です。
此処までお付き合いくださりありがとうございました。
SSの執筆は初めてですが、色々と大変でしたが楽しんでやれました。
キャラが勝手に動くってのを実感しましたね。気付けば最初のプロットからかけ離れていて愕然とすることを何度も経験してしまいました。
クトゥルフ要素は魔術や発狂描写などで絡めたかったのですが、気が付いたらいろんな作品からチャンポンして闇鍋になった挙句、クロスオーバーを掲げているのにクトゥルフがほぼフレーバーになってしまうという。要反省ですね。
また、結構帝国側の戦力を事前に超強化したのに、結局最終決戦で戦ったのはドクターとエスデスがメインで他はちょい役だけ…。完全に配分をミスりましたね。まあ原作でも人気ナンバーワンヒロイン(ただし死ぬ)なので贔屓してしまったのかもしれません。というか能力と強さとキャラが動かしやす過ぎた…。
しかし一応完結まで走っていけたので、総合的には満足しています。
あまり感想や評価をいただけなかったのが心残りですが…。まあアカメは連載終了してから結構時間が経っていますので当然だったのかもしれません。
次回作は今はあまり考えていませんが、もう少しメジャーな作品で再チャレンジしたい気持ちはあります。
最後に、こんなクセつよアンチ小説に最後まで付き合ってくださりありがとうございます。
全ての読者さん方に感謝を。
また機会がありましたらお会いしましょう。