小説版パスパレ(仮)   作:希望光

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一色目

 ——星に導かれた女の子が、無敵で最強の歌を奏でいくその最中。1人の少女がその言葉に、演奏に心奪われていた。

 

「最高が欲しいんでしょ?」

 

 偶然訪れていた商店街にて、聴こえてきた言の葉に思わず足を止める。……最高が欲しい? そんなの当たり前じゃない。けれども、そんな簡単に手に入る物でもない。現に自分は、手に入れられなかったのだから。

 自身に言い聞かせるように問答した少女、白鷺千聖は微かな嫌悪感を覚えつつも、祭りということで簡易的な出店が並ぶ商店街を歩いていく。

 そして、意識を違うことに向けるかのように出店にある物を1つ1つ吟味する。

 しかし千聖の足は、その意思とは反するように先ほどの声が聞こえてきた方へと進んでいき、気がついた時にはステージの前に彼女は立っていた。

 少しばかり後ろの方から、ステージを見た千聖の目に留まったのは、赤い星型の不思議なギターを携えキラキラと輝く少女の姿。千聖はその子から目が離せなくなり、やがて他の観客達と同じように音の虜になる。

 

「すごい……わね」

 

 眩いながら愛くるしさを振り巻き、観客達を楽しませる名も知らぬ少女()に思わず感嘆の意を溢す千聖。

 その手前、有名なアニメの主題歌や、かつて流行ったバンドの曲など様々に演奏していた彼女らは、トリに入ったらしくオリジナル曲と称したモノを奏で始める。

 

「——さあ飛び出そう 明日のドアノックして 解き放つ無敵で最強の歌」

 

 透き通るようでありながら、力強さを秘めた少女の声によって放たれた歌は、歌詞をそのまま表している。少なくとも千聖には、そう聴こえていた。

 

「In the name of BanG_Dream! Yes! BanG_Dream!」

 

 BanGという言葉の通りに、指を銃の形にして撃ち抜くポーズを取る少女達。それを見た途端、赤いギターの少女に別の少女の姿が重なる。数年前、スランプに陥った時に見た()()()()()()の少女の姿を。

 千聖は子役として幼い頃から芸能界に身を置いており、天才と呼ばれる部類のレベルであった。そんな彼女が中学に上がったかどうかの頃、突如として演技が上手く行かなくなってしまった。

 思い通りに行かないことへの苛立ちと、レッテルにより周囲から向けられていた期待が荷重となって彼女の状況を更に悪化させていき、遂には業界から退くことを考える程まで追い込まれてしまった。

 そんな千聖は、意味もなく彷徨うことを繰り返すようになる。何かが手に入る。何かが変わる。そんなことがあるはずがないと思いながらも、むやみやたらに街を彷徨っていた。

 落ちぶれみすぼらしい自信とは対照に、華やぎを纏った街へ嫌悪を覚えながらも歩いていくと、何故やらライブハウスの前にいた。

 薄暗い路地に近く且つ角の建物の地下という、いかにも怪しげな雰囲気を漂わせるその場所に圧倒され思わず足を止める千聖。

 同時に、そこへ入らなければならないという不思議な使命感が彼女の中に湧き上がる。

 数舜の後踏み出した千聖は重く感じる扉を押し開け中へと入っていく。次に気が付いた時、彼女の眼前には外からは考えられないほど眩い光景が広がっていた。

 狭い観客席を埋め尽くす無数の観衆と、無数に煌めくサイリウム。そして、その対象となる1人の少女。その会場がいわゆる『地下アイドル』のステージだと気がついた千聖は戸惑った。あまりにも予想外な光景を目にであったために。同時に、知らず知らずのうちに心を奪われた。自身とは違い、己自身を極限まで表現している姿に。

 そんな地下アイドルの少女を暫し漠然と眺めていた千聖は、気づいた時には他の観衆に溶け込みステージへと声援を送っていた。

 そうして彼女はいつしか、その少女に憧れを抱きつつ芸能活動へと身を投じていくことになった。名も聞いたことのなかった地下アイドルの少女の幻影を半ば追いかけるような形で今日までを生きていた千聖は、目の前の全く違う少女に地下アイドルの少女を重ねたことに大いに驚いた。

 何故、この少女に件の少女の姿を重ねたのか。その疑問を抱えたまま、千聖はステージを眺めていくのだった——

 

 

 

 

 

 未だ消えぬ疑問に対する答えを探しながら、帰路に着いた千聖。日が伸びてきたとはいえ、まだまだ冷たさを残す夜風なら吹かれながら見慣れた街並みを抜けていく最中、不意に彼女の後方から走ってこちらへと近づいてくる足音が聞こえる。

 反射的にそちらへと振り向いた千聖は思わず目を見開くことになる。そこにいた予想外の人物に対し。

 

「……え?」

 

 見間違えるはずがなかった。先程まで自身の思考の中心にあり、且つ自分ある意味で変えてしまった少女の姿を。

 その目の前の少女は、激しく息を切らせながらも千聖の前で止まる。突如として現れた少女に、千聖が戸惑っていると息を整えた少女が勢いよく顔を上げる。

 

「あの、白鷺、千聖さんですよね?」

「え、ええ。そう、だけれども」

 

 普段ならばここで頷くようなことはしない彼女であったが、何故だか頷いてしまっていた。それほどまでに彼女は動揺していたのだ。

 

「私、丸山彩って言うんですけど……お願いが、あるんです!」

「お願い……?」

 

 彩と名乗った少女は、一切の曇りない視線を千聖へとむけながら彼女の疑問への返答を口にする。

 

「私と、バンドを組んで欲しいんです!」

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