高度育成高等学校をAクラスで卒業したオレは大学へ進み、生活費を節約するため、元クラスメートの櫛田桔梗とルームシェアリングを始めた。(社会貢献)
事前の触れ込み通り、希望する進路は叶えられたものの、当然諸費用はすべて自己負担。もはや、毎月1日に・・・(以下同文)
「おかえりなさい」
出迎えてくれたのは、薄いピンク色のエプロンを付けた櫛田だった。ナチュラルメイクに、抜群の破壊力を持つ胸部装甲。どこから見ても、初々しい新妻である。
「夕ご飯作っておいたよ綾小路君!一緒に食べようっ♪」
オレの手を取り、花が咲いたような微笑みを浮かべる櫛田。裏の顔を知らなければ、誰しも天使が降臨したと勘違いするだろう。今後、この笑顔に騙されることになるであろう男子諸兄を思うと、同情を禁じ得ない。
「そうか・・・ありがとう。櫛田は良い奥さんになりそうだな」
「・・・っ?!?あ、綾小路君にそう言ってもらえると嬉しいなっ♬・・・超優良物件ゲットだぜ。ざまあみろ、堀北に軽井沢。最初っから、てめぇらみたいなのはお呼びじゃねぇんだよ!」ボソッ
最後はセリフが長すぎて何を言ってるのか良く聞こえなかったが、経験上、敢えて触れない方がいいだろう。
ルームシェアということで、家事全般も交代制にしているのだが、やはり彼女は有能だった。ある1点を除いて、だが。全てをそつなく高いレベルでこなす姿は、さすが共にAクラスで卒業しただけのことはある。次の当番では、オレも少しは本気を出さないとな・・・
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ごちそうさまでした」
ふたりで夕食を終える。やはり櫛田の味は一級品だった。いや、深い意味はないからな。
「ふぅ・・・」
後片付けを済ませ、一息ついた櫛田がゆっくりとピンクのエプロンを外した。その下は当然、一糸まとわぬ姿・・・のはずはなかったが、裸エプロンというジャンルが有るのだと、山内や外村が熱弁を振るっていたのを思い出す。そして・・・
「あーウザい」
がっちりとオレに抱き付いた裏櫛田が、低い声で毒づいた。そう、彼女はストレスが溜まると、オレをサンドバッグにして大暴れするのである。高校在学中から時々愚痴を聞かされてはいたのだが、ルームシェアするようになってからは、その内容がどんどん過激化しているような気がする。
「大学でもバイト先でも、ウザいしキモいんだよ!どいつもこいつも、あたしをエロい目で見やがって!!」
一度このモードに入ったが最後、彼女が満足するまで延々と罵詈雑言に付き合わされるのだ。
「こっちがおとなしくしてるからって、調子に乗ってんじゃねぇぞ?!・・・って聞いてんのかよ清隆ぁ!」
あーウザい・・・(絶対声には出せないが)
「あ、あぁ、もちろんだ。それより櫛田、トイレに行きたいんだが・・・」
「ああん?トイレだぁ?ここからが本番なんだから、行かせる訳ねぇだろ!だいたいそんな暇があるんだったら、いい加減あたしを押し倒してみろよ、このヘタレ×××!!」(自主規制)
そして最後は、泣きながら眠ってしまうのだ。正直、オレの手には負えない。ホワイトルームでも、絡んでくる美少女のあやし方なんて、カリキュラムに無かったしな・・・
ようやく泣き疲れて静かになった櫛田を引き剥がし、ベッドに運んで寝かしつける。オレはコイツの母親なのか?
「う・・・ん・・・清隆君、逃がさない・・・既成事実・・・できちゃった婚・・・ぐへへ・・・むにゃむにゃ」
この時、精神的に疲労していたオレは、不覚にも危険極まりない不穏な単語の数々を聞き漏らしてしまった。(痛恨)
さっきも言った通り、櫛田自身は良い奥さんになるだろうが、アレを聞かされることになる
そう思う綾小路だったが、その結婚相手として自分が既にロックオンされていることには、やはり終ぞ気付かないのであった。
(おわり)
【次回第4話:椎名ひより】
私と推理小説、どちらが大切ですか?(真顔)