高度育成高等学校をAクラスで卒業したオレは大学へ進み、生活費を節約するため、元同級生の坂柳有栖とルームシェアリングを始めた。(天才 × 天才)
「おかえりなさい」
出迎えてくれたのは、薄いピンク色のエプロンを付けた坂柳だった。輝く銀髪に小柄な身体。どこから見ても、初々しい幼な妻である。(通報案件)
「夕ご飯を作っておきましたよ、綾小路君。ふふふ・・・」
オレの手を取り、上品な微笑みを浮かべる坂柳。その好戦的な一面を知らなければ、誰しも儚げな超絶美少女だと勘違いすることだろう。今後、この笑顔の裏で
「そうか・・・ありがとう。坂柳は良い奥さんになりそうだな」
「・・・っ?!?あ、綾小路君にそう言って頂けると嬉しいです・・・」
俯いて恥じらう姿を見て、去年の出来事を思い出す。そう、卒業を間近に控えた高3の秋、坂柳有栖は先天性疾患に打ち勝ったのである。しかも、彼女の治療に成功したメディカルチームのメンバーは全員、高度育成高等学校の出身者だったらしい。その事実を聞いたとき、オレは初めてあの学校の実力至上主義に感謝した・・・
さて、ルームシェアということで家事全般も交代制にしているのだが、やはり彼女は有能だった。ある1点を除いて、だが。全てをそつなく高いレベルでこなす姿は、さすが生まれながらの天才と自負するだけのことはある。次の当番では、オレも少しは本気を出さないとな・・・
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ごちそうさまでした」
ふたりで夕食を終える。やはり坂柳の味は一級品だった。いや、深い意味合いはないから、そこでスマホを取り出すのは止めてくれ。
そして・・・
「ふぅ・・・」
後片付けを済ませ、一息ついた坂柳がゆっくりとピンクのエプロンを外した。その下は当然・・・
「たうわっ?!」
思わず目を奪われ・・・いや、疑った。有栖さん?ここはお風呂場ではないんだが。
「やっとこの時が来ました」
胸の前で両手を合わせ、感無量といった表情で呟く坂柳。
「惹かれ合う男女がひとつ屋根の下。この状況で成すべきことなど、もはやひとつしかあり得ません。幸い、成人年齢も引き下げられたことですし」
微妙にツッコミどころ満載だが、その言わんとするところは明白だ。確かこういう時、女性に恥をかかせてはいけないと、某まとめサイトにも書いてあったな。だが、湧き上がるこの背徳感は何だ・・・?やはり、お酒と健全な交際は、諸々もっと
「いま何か、とてつもなく失礼なことを考えていませんでしたか?綾小路君」
鼻先を掠めたハイキックに、思わず変な声が漏れてしまった。まぁ、元気なことは良いことだ。と、居住まいを正した坂柳が、大きな瞳で真っ直ぐにこちらを見詰めながら言った。
「いまのわたくしなら、あなたに『敗北』を与えることが出来ます」
「なっ・・・?!」
敗北。それは、高校3年間で遂に知ることが叶わなかったもの。堀北に龍園、一之瀬、南雲、そしてホワイトルームの刺客たち。誰ひとりとして、オレを上回るヤツは居なかった。だからこそ・・・
「わかった。オレに敗北というものを教えてくれ、坂柳」
オレは敢えて、彼女の申し出を受ける。ちなみに、疚しい気持ちは全く無い・・・と思う。たぶん。メイビー。
「承知しました。これで心置きなく、綾小路君と(物理的に)ぶつかり合うことが出来ますね」
「ああ、楽しみにしている」
「ふふふ・・・作られた天才が、生まれながらの天才に勝つことは出来ませんよ?」
ホワイトルームでの一方的な出逢いから、はや10数年。ここにオレたちは、遂に雌雄を決する時を迎えたのである。(隠喩)
(CM放送中)
「ふぅ・・・♡」
「た、たうわ・・・」
満足げなため息をつく少女に、思わずオレは呻いた。もう限界だ。
「そ、そろそろお開きにしないか?坂柳・・・明日は1限目から授業なんだが・・・」
「ふふふ・・・ご冗談を。いまのはまだ、単なる準備運動ですよ?」
「たうわっ??!」
そう、解き放たれし彼女は、最強の肉食系だったのである。
(おわり)
【次回第6話:雪ノ下雪乃】
HACHIMANって知ってるかしら?綾小路君。
それってまさか、オレより強いとかいう設定になってる、例のアイツのことか?(大炎上確定)