「我が名は毛利元就! 日輪の申し子なり!」   作:ゆしゃ

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第1話

 

 

 

 

喰ってやりたかった。

 

喰って、共に墜ちれば、救われると本気で思った。

 

鳥居の上で殺し合い、二人共に海へと落ちた。

 

俺は武器の鎖が体に絡まったにも関わらず、生き残ってしまった。

 

あいつは、底へ沈んでいったのに。

 

俺だけが、俺だけが、あいつを残して。

 

 

 

あいつとの死闘で右腕を失くした。

前線に立つことが出来なくなったため、国主の座を弟に譲り、俺はあいつが治めていた安芸へ赴いた。

あれから、安芸はあいつの養子である息子が国主となり、俺の国の配下となった。

 

 

「父は、この国を愛していました。民を愛していました。だから戦えた。自らも駒として」

 

「父は貴方との戦を楽しみにしていたんです。他の戦と違って、殆ど貴方との一騎打ちですしね」

 

「感謝こそあれど、恨むなど以ての外。父はやっと解放されたのです。毛利元就という呪縛から」

 

「気を楽にしてください、長曾我部殿」

 

 

気を楽にィ?んなこと出来るか。

 

 

 

俺は、耐え切れなかった。

 

あいつがいない。

 

どこにもいない。

 

どこに、どこにいけば会えるんだ?

 

なあ、毛利。

 

あんたは今、どこにいる?

 

あんたは、一人で海の底にいるのか?

 

 

 

 

あいつを殺したあの場所で、俺は自決した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やあ、はじめましてだね!前世で毛利元就(戦国BASARA)をやってた人だよ!前前世ではゲーマー(ストーリー厨)サラリーマンでした。

今世でも俺は毛利元就らしい。だが、時代が全く異なる。大正ですってよ奥さん。戦国BASARAあるあるの、とんでも戦国時代の未来のようです。

 

前世と同じように、喋る言葉が毛利元就仕様に変わるので、ちょっと何言ってるか分かんないという状況が多々起きている。そうだよね!!そうなるよね!!幼い子どもが『我』とか言って態度がデカイとかいい顔はしないよね!うん!!知ってる!!

なので。

 

 

 

捨ーてらーれたぁ。

 

 

 

いやね?分かるよ?気味が悪いのはね?自負してるよ?でも何喋っても毛利様()になるんだもの仕方無くない?!慣れてよ!母上!もう駆け落ち相手のところに行ってここには居ないけれども!

 

 

そんな俺もすくすくと、それはそれはすくすくと育ちました。山の恵みは凄いね。

 

こんにちは、全く野生児っぽくない野生児です。小さいけれどまだ住めそうな小屋を見つけ、そこで暮らしていた。まあ、慣れっこだ。

前世の松寿丸時代なんかじゃ、義母に暗殺とかされかけてたし、城から追い出されもしたし、山で暮らすなんて慣れっこ慣れっこ。

 

 

服や調味料は流石に町に降りて買ってるけどね。喋ると毛利語自動翻訳機が作動するので、喋らなきゃいいじゃん!!と閃きを働かせて口が聞けないけど筆談は出来るよ!の体で捕れたてピチピチの川魚とか畑で育てた野菜とかを売って小金にしている。喋らなきゃいいとか俺ってあったまいいー!

 

長年の成果か非力だけどイノシシ相手にマウント取れるようになった。いぇーい、今日の夕飯はぼたん鍋だぜ!

あ、そうだ。噂も噂だけれども、どうやら今世では『鬼』とかいう人食いが出るらしい。怖いねー。俺は会ったことないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の昼間。とんでもないことが起きてしまった。

 

 

 

「よォ、毛利。やっと見つけたぜ」

 

 

 

夏の燦々と照り付ける日の下に、左目に紫色の眼帯をした銀髪の鬼がうっそりと笑って立っていた。

 

「…長曾我部」

 

ああああああああああ?!

長曾我部だああああ?!

なんでぇ?!

何でお前がこんなとこにいる?!

俺が居るもんね?!

そりゃ居るか!(大混乱)

 

「貴様…よくその姿を我に見せられたな。貴様が我にしたことは知っておろう」

 

はーい、前世の死因はコイツです。

鳥居の上で戦っていたら二人共海へボチャン。そのまま沈んで死にました。

 

戦うの楽しかったのになぁ〜!(戦闘狂)

それしか楽しみなかったのになぁ〜!(戦闘狂)

 

我、とても残念である。

 

「ただ、あんたに会いたかった。殺されたって構わねぇ」

「…何故?」

「何故ってそりゃ…あんたを殺したのはこの俺だ。憎んで当然だろうが」

「????」

 

憎むとかそういう感情は全然湧かない。

あの時代は誰に殺されるか分からない状況だった。まして、俺はかなり危ないやり方で生き抜いてきた。

というか、なんやかんやの黒幕は全部俺です。俺の方が憎まれても、俺が憎むとかはないない。

 

「貴様は、我に憎まれたいのか。フン、甚だしい」

「…許してくれんのか」

「我は貴様を殺し、貴様は我を殺した。それだけだ」

「っそれ、は」

「何だ、納得がいかないか。構わぬ、勝手に言っておれ。我は許すも何もない。我の自業自得で死んだ。それでいいだろう」

「はぁ…分かった。しっかしよぉ…あんた、幾ら捜しても捜しても見つからなかったんだからな!捜しまくって百年だぜ、百年!」

「お、おお…そうか…」

 

背中をバシバシと叩かれる。やめよ、我はまだ12歳だぞ、12歳。手加減はされているようだがメッチャ痛い。

というか、ん?んんん?

 

「百年、とは、いったい何ぞ」

「あ?俺は百年前に産まれたんだ」

「………爺ではないようだが?」

「『鬼』だからな!」

「…それは貴様の異名だろう」

「いや、まじで『鬼』だって」

「…人食いの?」

「世間ではそうらしいぜ。俺は食ってねぇけど」

 

にかりと笑った口から見えた犬歯は前世以上に鋭く尖っている。よく見れば爪なんかもありえないほど尖っている。

え、マジ?!マジもんの鬼だぁあああ!この西海の鬼!

 

「俺は魚が好みだからな。この百年は魚か付け合せの野菜しか食ったことねぇよ」

 

んなこと聞いてねぇよ!鬼が付け合せの野菜とか何言ってんの?メインディッシュはフィッシュorフィッシュなの??!!

 

「それによぉ…俺はあんただけを喰いたい」

「我を喰おうとするか、魚好き鬼め。我は畳の上で死ぬつもりだ、こんどこそな」

 

急に何を言い出すんだ魚好き鬼。さっき人は食わねぇとか言ってたろ。言ってたよね??

目指せ今度こそ老衰!を目標に野生児もどきをしていた。このまま何事もなく進めば安泰だったのだ。後5年もしたら起業でもして、そこそこいい感じの家を建てて、早々に会社を部下に譲って隠居して、老衰時には畳の上で…という予定なんですがね?!

 

「…その後でいい。その後で、死んだあんたを喰って、俺も死んでやる。あんたを一人で死なせやしねぇよ」

「そうか。その時は…骨も残さず喰らえ、長曾我部。我は、我の生きた証を残して死にたくはない。…残してはならぬのだ」

 

……まあいいか。

偽物の俺を未来へ残してはならない。

起業したとしても、名前は残さない。子孫を残さないために、結婚もしないつもりだ。

名の残る書面は死ぬ前に燃やし、ああ、いっそ、建てた家も燃やしてから死んでしまおうか。

 

俺は偽物。まかり通ってはならない。

 

「兎も角入れ、魚ならば食うのだろう?」

「!へえ、あんたが飯炊きを、なぁ」

「…なんだ、慣れたものだぞ」

 

そうして、ずるずると俺と西海の鬼()の共同生活が始まったのである。自動魚捕り機とでも思っといてやるよ!

 

 

 

 

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