残間からも正式に指令として、徳川の言っていた洋館へと向かっている。
徳川が言うには、ここ数週間ほど街外れの洋館に何十人もの人間が連れ込まれ消息を絶っている。
その洋館は徳川の家の持ち物らしく、本来は無人で、売りにも出していない。人間が連れ込まれていると連絡があり、ほとほと困り果てているそう。
「元就サマ!元就サマ!現在、例ノ洋館ニテ他ノ隊士ガ多数ノ獲物…鬼ト交戦中デアリマス!」
「…多数だと?奴らは群れないのではなかったか」
「稀血ニ釣ラレタ模様!鬼同士モ争ッテオリマス!直チニ合流致シ、交戦中ノ隊士ト共ニ討伐ヲ!」
「焦るでない、残間。疾くに場所を述べよ」
「ハイッ!西南東!西南東ヘ!」
人混みの多い街を駆ける。急いでいるのにはワケがある。
連れ込まれたという人間たちの中に、俺たちよりは弱いものの婆娑羅者がいるという。
懸念しているのは婆娑羅者を食らった鬼が何処まで強くなってしまうかだ。この時代において、婆娑羅者は歴史から消されたほど希少な存在。
とんでも戦国時代の婆娑羅者の前世の記憶、または生まれ変わりである俺や鶴姫、石田なんかは本来希少価値のある存在だ。
徳川によればそういった存在は秘密裏に政府によって保護され、日の目を見ることは少ないらしい。
だが、俺が生まれた10年前後は婆娑羅者ベビーブームで、数が多い。癖の多い婆娑羅者を秘密裏に保護するのも骨が折れる上に、力を使う機会も減り、一目ではその人間が婆娑羅者かは判断できない。
そういった弱い婆娑羅者たちは自ら自覚せずに紛れていることがある。
徳川には婆娑羅者かどうかを見極めることが出来る能力があり、性格も踏まえ危険視される婆娑羅者がいるかどうか政府に対して情報の提供をしていた。
危険視される婆娑羅者を見張っていたところ、その人間が洋館に連れ込まれた、というのが現状だった。
何故、連れ込んだのが鬼なのか分かったかとか言うと、本来無人である洋館に人が入り込んでいると近隣の住民から連絡があり、確認に行った時に、鬼がいる。我々が退治するまでは入ってはならない、と派遣された10人の鬼殺隊に洋館に入るのを止められた。
その鬼殺隊隊士らの行方も分からない。
「ここか」
豪勢な扉を開けて中に入る。扉を開けた瞬間に漂う血と脂の匂いは密室が故に強烈だ。血の跡こそ夥しいが玄関ホールには誰も居ない。
扉横の壁をトントンと叩いていく。あった、ダイヤルだ。徳川に教えられた通りにダイヤルを回す。カチリ、と小さな音の後に大きな音を立てて金属製の格子が壁に沿って降りてきた。
これはこの洋館全体に施されている。中にいる鬼を逃さないために作動させた。元々、この格子は洋館を建てた主人が防犯のためにからくりを元に作ったものだ。
婆娑羅者の力には耐えれるように作られている。鬼に耐えれるかは分からないから気休めだけど。凄い音を立てたから侵入したことは気づかれただろう。が…近寄ってくる気配はない。
間取り図は見せてもらったから一応何処が何の部屋かは分かっている。特に玄関ホールから2階にかけて血の跡が多い。
2階にある部屋は舞踏室だ。ダンスルームってやつ。…そこに居るのか。
吹き抜けの螺旋階段を登る。足を進めるごとに血の匂いが更に濃くなる。2階の床が見えた所で異変に気づいた。
鬼殺隊の隊服が見えた。その死体の数は
ふと、上を向く。
「…下劣な」
シャンデリアに臓物が引っ掛けられている。他にも千切られたであろう腕や足が燭台に刺されていた。血がまだ赤く滴っていることから、時間はそう経っていない。
舞踏室の扉が少し開いている。中から荒い息やガリガリと音が多数聞こえることからここに鬼が集まっているらしい。…何で?
覗いて理由が分かった。
舞踏室の中心に檻に入れられた人間がいた。腕に傷があり、血が流れている。周りに居る鬼たちは涎をダラダラと垂らし、檻にガリガリと爪を立てている。あの人間が稀血か。
てか、うわー、鬼多すぎじゃね???稀血ってそんなに集まって来るモンなの??えっ、コワ…。
……一気に空気が重くなる。女の色声が聞こえてきた。
「皆様、ワタクシの舞踏会へようこそ。ええ、気の向くママ、お好きなように──
その声と共に鬼たちの怒号が飛び交った。鬼たちは檻にいる稀血の人間を取り合って食い合っている。共食いだ。
奥に立つドレスを着た女はニマニマと機嫌よく笑んでいる。
…行くか。