引っぱたかれた頬を押さえ、俺は思った。
「(あ、悪くないわコレ)」
むしろ興奮した。自身が特殊性癖を持っているとは夢にも思わなかった。だが、おそらくその対象になるのは、目の前に居られる緑色の矢羽根柄の羽織を着た冷たい目をしているお方。
「さっさと去ね。我の道行きに要らぬ捨て駒共が、我が歩を進めるのを妨げるか」
あっ、ダメ。キュンとするわ。キュンどころかギュンギュンする。顔が燃えるように熱い。まずいまずいまずい。開いてはいけない扉が勢い良く轟音を立てて開いた瞬間である。扉の先は楽園でした。
………「捨て駒会」でも作ってみるかなぁ。
「捨て駒会」発足から半年が経った。
会員は元就様と少なからず関わりを持った者たちが30人そこそこといった感じだ。主におれたち隠で構成されているが、一部には隊士や鎹鴉までいる。
「捨て駒会」の規律は、3つである。
1、どんな時も元就様の捨て駒であること。
2、元就様の邪魔立てをしないこと。
3、今日も元気に捨て駒人生。
罰則は無いが、元就様の邪魔立てをするともれなくひっぱたかれるか、ボッコボコにされる。…誰にとは言わないが。
おれは元就様が鬼を退治した後の処理に買って出た。皆は元就様の言動や態度に恐れ戦いていたが、おれは笑顔で後処理に対処していた。なんたって元就様に甚振られるのが本望ですもの。
流石に20を超える辺りで顔を覚えられたし、引き気味に気持ち悪がられた。興奮します。
「すげぇっすね、師匠。この半年でこんなに集まったなんて…。こんなに…元就様に踏みつけられたい人間がいるだなんて…俺、感激です」
「オレハ人間ハ下等ナ生物ダト思ッテイルガ、オ前ホド気持チ悪イ人間ハ見タコトナイゾ」
「おれ…夢があるんだ」
「話ヲ聞ケ阿呆メ!」
「元就様の捨て駒として元就様に斬られて死にたい」
「ソレハ分カル」
おれよりも先に元就様の捨て駒となっていた元就様の鎹鴉の師匠。
初めて目があった時、お互いすぐに理解した。「(あ、同類だ)」と。
おれが「捨て駒会」を発足し、師匠が元就様の捨て駒とは何かを説く。素晴らしい連携であると自負している。
「元就サマノオ役ニ立ツノガ我ラ捨テ駒ノ役目!」
「今日も元気に捨て駒人生!」
元就様に出会い、引っぱたかれ世界が変わった。
ただ鬼が恐ろしいと怯え、隠をしていた。その仕事にも誇りが持てるようになった。
元就様のためならば、この命すら軽い。きっと前世でも元就様の捨て駒であったんだろう。
──ああ、人生とはなんて素晴らしい!
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捨て駒会の会長
開いてはいけない扉をフルオープンにし、目覚めちゃった隠。毛利(成)の鎹鴉である残間を師匠と慕う。
ストーカー?いいえ、捨て駒です。
残間(ザンマ)
毛利(成)の鎹鴉。
傲慢チキで人間を下に見ていた。が、毛利の躾()によって、毛利に対してのみ敬意を払う。長曾我部はどっか行け。
名前は実在の苗字から拝借。