「我が名は毛利元就! 日輪の申し子なり!」   作:ゆしゃ

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第7話

 

 

 

屋敷から歩いて数分の所が山の入り口だった。時間は夜。鬼が活発になっている時間。

俺と長曾我部は互いにチラリと姿を確認してから山へ足を踏み入れた。

 

 

山に入った途端に違和感を感じた。

存在し得ないものをこの目で見続けているかのような感覚。目の前に広がる光景は有り得ないと頭の中で警鐘がなる。

 

 

背後にいるはずの長曾我部に話を………?

長曾我部が、居ない。

 

 

…俺を陥れるとは。

 

 

「──坊や、坊や。良い子よ、坊や。美味しく食べてあげる。ワタシが食べてあげる」

 

 

ぐにゃりと景色が変わる。

 

木だと思っていたところに、岩が。何もない場所に、女が立っていた。その口は大きく、こめかみまで裂けていた。

 

 

「貴様が、山姥か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ…毛利と逸れるとはなァ。『鬼』ってのをちと甘く見てたか?」

 

毛利と逸れた長曾我部は、洞穴の前に来ていた。

山中の崖に出来た洞穴で、大きさはかなりのものだ。意図的に押し広げた後があることからここに知識を持った巨大な何かがいるのは間違いないと見ている。

洞穴の付近の木々に、爪の跡や擦りつけた毛はないため熊の縄張りではない。

 

洞穴の中からふしゅーふしゅーと汚い呼吸音まで聞こえてくるのだから、長曾我部はここに居るのが『鬼』であると確信した。

 

「オラ、出て来いデカブツ!」

 

地響きで辺りが包まれる。洞穴の奥で蠢くものを長曾我部は目に捉えた。10尺ものの巨体。

その太い腕や肩には引き千切った人間の頭がいくつも括り付けられていた。その表情は全て、苦悶に満ちている。

 

「おでの頭、おでのだど。ぜんぶおでの頭だぁ。おめさんの頭、かっこいいなぁ。おでも欲しいなぁ。

よこせ、おめさんの頭。そして食わせろ、おでは腹が減ってんだ」

 

ニタリ、と多頭の鬼が涎まみれの口を開けて笑う。いつもそうしてきたのだろう。多頭の鬼は長曾我部に手を伸ばす。

 

 

長曾我部は己の武器である碇槍を振り上げると、炎を纏った碇を多頭の鬼目掛けて飛ばした。

碇は多頭の鬼の腕に命中し、命中した腕には僅かに炎で焦げた後が残る。

 

「?!」

「テメェに食わせるモンは何もねぇよ」

 

 

鬼の闘志に火がついた。

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

「うぉおらぁあ!」

 

木々の枝に碇を引っ掛けぶら下がり、勢いを付け炎を纏わせた足で飛び蹴りを放つ。炎は木々へは燃え移らず、多頭の鬼のみを燃やし着実に痛めつけていた。

 

多頭の鬼は既に左腕と体に括り付けていた人間の頭の一部が遥か後方に吹き飛んでおり、再生までこの猛攻を耐えねばならなかった。

 

「な、なんなんだ!おめさん、人間じゃねぇ!」

 

焦るように多頭の鬼が残った腕を大きく振り下ろす。

しかし、その腕に碇槍の鎖が絡みつき、長曾我部は多頭の鬼の巨体をそのまま一回転させると吹き飛ばした。飛ばされた多頭の鬼は木々を巻き込み果には岩肌に激突した。

 

「人間じゃねぇさ。俺は鬼だからな」

 

多頭の鬼の顔に長曾我部に対する恐れが見える。鬼と聞き、共食いのことを思い出したのだろう。

人間の骨を砕いたその歯はガチガチと音を立て、頭と胴体を引き千切った腕は止められないほどに震えている。

 

「…暁丸の方がまだ鬼らしいぜ」

「すっ、すまなかっただ!おめさんにこの山やるから、この山は勝手に人間が死にに来んだ!おでだちに食われようと置いでかれんだ。

み、見逃してくれよぉ。ほ、ほ、他に欲しいんのがあんならおでがも、持ってくるから、許してけれ…!」

「ここに俺の求めるお宝はねぇ。つまり、あんたから貰うもんはねぇってことだ。

さあ、立てよ。まだまだやれんだろ?」

 

暗闇にもかかわらず、多頭の鬼を捉えた長曾我部の右目は爛々と光る。

 

 

「日が昇るまで殺ろうや」

 

 

手始めに、その肥えた腹に一突きを。

 

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

 

この山姥、めちゃくちゃ腕力が強い。輪刀で打ち合いするたびに腕がビリビリと痺れる。だよなー!さっき岩割ってたもんなー!

 

「どうして、逃げるのかしら?食べられに来たのでしょう。ねぇ、坊や」

「…よく回る舌だ。だが所詮は我が盤上の駒に過ぎぬ」

 

終の手「照」で終わらせればいいのだが、残間から日輪刀を用いた俺の実力を測るためトンチキチート能力(終の手「照」)を使わずに鬼を倒してみろと通達があったらしい。

残間、鳥目じゃないのかよ。

 

倒すのが日輪刀ならいいんだよな?その過程は何だっていいんだよな?だって俺の能力だもんな?

なら、「終の手『照』」以外の「手」で痛め付けるのは問題ないな!

 

 

「──禁じ手「縛」」

 

 

輪刀を腕を軸にくるりと回し、光の輪を形作る。輪刀に乗せて、山姥へ光の輪を輪投げの要領で放つ。光の輪は山姥を閉じ込めるように大きく広がり徐々に縮小していく。

 

「ぎ、ぁ?!」

 

禁じ手「縛」は圧殺の手。縮小していく毎にその圧は強まる。連続でダメージが入るため山姥の身体に傷が増えていく。

切断するような攻撃じゃないけど、スタミナと余裕を減らしていくには最適な技だ。

 

「その腕は最早使い物にはならぬな」

「ぼ、うや…いや、いや、イヤアアアアアアアアアア!!」

 

わっ、うるせ!!

 

山姥は大きく裂けた口を目一杯開け大音量で悲鳴を上げた。みしみしとその身体から音を立て、勢い良く光の輪から抜け出し木の枝に逃げた。

 

「しね、しんでしまえ、坊やじゃないなら、しんでしまえ!」

 

山姥は再生した腕で滅多打ちにする。

頭は吹き飛び、腕はあらぬ方へ折れ曲がり、足はもげ、腸が飛び出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何処を見ている」

 

 

──誘い手「幻」

 

 

光で俺の分身を作り出す技。相手はそれが本物だと疑わない。

そして、分身(それ)は時間経過で光と共に、爆破する。

 

「あ゛ぁ?!」

 

…終の手「照」と違ってダメージこそ入れど、消滅には至らないらしい。 決め手に欠けるか。

 

だが、かなりのダメージはあるようで、山姥のやつは息も絶え絶えといった感じだ。

 

 

 

ん?…様子がおかしい。この山姥じゃなくて、もっと遠くから、何かがこっちに近づいてきている。

重量のある、大きな何か。俺の背後の方に気配を感じる。

 

「あ゛っあ゛ぎ、おでは、おでは!があああああああ!!!」

 

人間の頭を括り付けた、体中がボロボロの巨体が木を薙ぎ倒しながら俺の背後に迫っていた。焦げた後がかなり見られることから、長曾我部と戦闘していたようだ。足を踏み出す度に付けられた傷から血が吹いている。

 

…感謝するがいい、お前の命を上手く使ってやろう。

 

 

 

輪刀を多頭の鬼に向け、薙ぐ。

 

──封じ手「懐」

 

「散!」

 

俺の意のままとなった多頭の鬼は、山姥目掛け真っ直ぐ走り出した。封じ手「懐」によって俺の意のままになった「駒」は、繰り手である俺が敵から大きめの攻撃を受けない限りは解除されない。

そして、俺が散れと言うと、「駒」は敵目掛けて──自爆する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…逃げたか、愚物め」

 

煙が晴れるとそこに山姥の姿はなかった。この状況で逃げるとは感心する。

 

俺は上半身だけ残った多頭の鬼の頸を断ち、山姥の後を追った。

 

 

 

 

 

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