「我が名は毛利元就! 日輪の申し子なり!」   作:ゆしゃ

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第8話

 

 

逃げなければ、逃げなければ。

理解してしまった。勝てない、あんなやつに勝てない!餓鬼なのに!

 

「あ、ぐっ」

 

突如巨大な網に閉じ込められてしまった。何だこれは何だこれは。

 

「よお、待ってたぜ」

「ひ、」

 

何だ、お前は。縦に細い瞳孔がワタシを見ている。殺してやると、言いたげにワタシを見ている!

 

お前こそ、鬼ではないか!鬼を目の前にして恐怖、恐怖、恐怖。

怖い、怖い、殺される、怖い。

 

「ま、あんたを殺すのは。俺じゃねぇ。こいつは単なる足止めだ」

 

どさりと網から降ろされる。に、逃げなければ、坊や。坊や。

 

 

──かあさん

 

 

そうだよ、坊や。ワタシは逃げなければ。お前を産めないね、坊や。

 

 

「一閃!」

 

 

背後から高らかに声が聞こえた。

ワタシの、頸が、 落 ち て

 

 

 

──かあさん

 

──『天照の御子』に手を出したのが間違いだったんだ。

 

 

 

そ んな、 そん な。

 

馬 鹿

 

な、 あの 薄い 餓 鬼が

 

 

『天 照の 御子』だ と?

 

坊 や、 坊 や。

 

 

ど う

 

 

 

して

 

 

 

 

 

 

 

 

──かあさん

 

──かあさん

 

ああ、なんだ、坊や。ワタシを待っていてくれたのかい。やっぱりワタシには坊やだけだ。坊や、坊や。ワタシの坊や──

 

 

──さっさと地獄に堕ちろ。

 

 

え?

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

かあさんは僕の事が好きだった。

 

 

僕はかあさんの人形だった。

 

 

だから20歳になっても家を出ることを許されず、家の中でかあさんと過ごすだけ。ほとんどの時間を暗い自室で過ごす。

 

成長してはいけない。

大きくなってはいけない。

光を浴びれば成長してしまう。

 

暗闇にいれば小さいままだ、誰も分からない。

死んでしまえれば良かったのに。死ぬことすら許されない。

 

 

部屋に紐はない。首を吊らない為だ。

 

部屋に鋭利な物はない。腹を刺さぬ為だ。

 

窓には鉄格子。落とさない為だ。

 

それでも毎日少しだけ窓を開ける。死んでしまいたかったけど、外のことを知りたかった。幸いだったのが、地下室が自室じゃなかったことかな。鉄格子の隙間から少しだけ外の様子が見えるんだ。噂話も聞こえてくる。

 

 

いつからか町の噂は『天照の御子』で持ち切りだ。

天照って何なんだろう。かあさんにねだって、貰った書物には天照は太陽の主神なんだって。

あの太陽の神さまなんだ。きっと、その御子も綺麗なんだろうなあ。

 

 

少しだけ、少しだけと鉄格子の隙間から外を見る。茶色の髪で、緑の着物に身を包んだ6、7歳くらいの子が外に見えた。

初めての感情だった。美しいって、こっちを見てほしいって思った。綺麗だ、ああ、あの子が。あの子が、『天照の御子』だ、間違いない。

 

 

会いたいなぁ。

 

会ってお話がしたいなぁ。

 

何が好きなんだろう。

 

何を贈れば喜んでくれるかな。

 

あの子が欲しい。

 

あの子が欲しい。

 

あの子に冷たい目で見られたい。

 

あの子に打たれたい。

 

 

僕はまたも初めて、情欲を抱いた。

 

 

 

そこからの行動は早かった。かあさんの部屋に行き、「外に行きたい。会いたい子がいるんだ」とかあさんに言った。かあさんは顔を絵本の鬼のように赤らめ、僕の長い髪の毛を掴むと水を貯めていた木桶風呂の中に僕の頭を突っ込んだ。

 

 

「坊や、坊や、ワタシの坊や。

ごめんなさいと謝りなさい。

外に行きたいなんて言った坊やが悪いのよ。

お前にはワタシだけでしょう。

かあさんだけでしょう。

ああ、坊やをもう一度産み直したい。

そうすれば、そうすれば、坊やがこんなこと言わないのに。

ほら謝りなさい。坊や、坊や、坊や」

 

 

 

 

息が出来なくなった。苦しい、苦しい。

こんなんじゃ、謝れないよ、かあさん。

ねえ、かあさん。

僕は産まれ直すことは出来ないよ、かあさん。

 

 

 

僕はかあさんに殺された。

 

 

 

 

 

 

 

そして、たべられた。

 

 

 

 

 

 






多頭の鬼

元々、町向こうの山に居た鬼。町民が食われかけたと言っていたのはこっちの鬼。

体中に好んだ人間の頭を括り付けている。
頭は食べず、男女問わず体のみを食べる。
雑魚認定された。



山姥
美しい女の姿だが、口の端はこめかみまで大きく裂けている。出会う男を坊やと呼び、頭から裂けた大口で食らう。
気に入らない人間は血鬼術で幻覚を見せて、多頭の鬼に明け渡す。

断片的に坊やを産み直したいという記憶があるため、坊や坊やと口にする。


坊やが好きで好きで好きで好きで殺してしまい食べてしまった。



坊や

享年20歳。
母親に殺されその屍をまだ人間だった母親に食べられている。


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