N-Sentinel 作:ご冗談でしょう、オッペンハイマーさん
少なくとも、今までの惨状に至るまでの全ての起源は、ここにあるだろう。
「
そんな軽い言葉は、僕のよくあるかもしれない背景に由来する。
両親はもうとっくに捨てていて、叔父夫婦が僕を育ててくれた。
愛はあったけど、どうにも二人とも不器用で……というありふれたもの。
ありふれすぎて、スーパーにすら売られているんじゃないかと疑念すら抱く。
唯一、ありふれてないとすれば、僕が叔父夫婦のことを理解してたということぐらいか。
とにもかくにも、僕は現代というのに微妙に飽き飽きしていたのだ。
もちろん、こんな言葉、普通だったら実現なんてするわけない。
実現せずに、明日も明後日も過ぎて、大人になって、忘れていく……。
そのはずだったし、そうあって然るべきだったのだ。
しかし、今思えば、僕が彼の不幸の源泉であったかもしれなかった。
「へえ、それ、叶えてやろうか?」
「えっ、マジ!?嬉しいなあ」
これまたスーパーで売られていそうなくらいの、ベタな展開。
僕の無責任で無軽率な言葉に乗ったのは、親友の伊織弓鶴であった。
中学以来の付き合いである彼は、僕と同じ高校にすら通う始末。
本当は、もっともっと良い高校に、大学に、研究機関に行けただろうに。
実際、ただの県立高校に通うには、あまりにも天才的な発明家だった。
けれども、彼は何よりも僕との友情を優先してくれた。
「なーに、もうポッドは作ってるんだ。
ちょうど人で実験したかったしさ。都合が良かったよ」
「いやー、持つべきはいい友達だなあ」
こうやって書いてると、少し涙が出てきた。
いい友達、友情に胡坐をかいて、このざまなんだから。
こうして、放課後、僕は弓鶴の家に連れて行ってもらった。
彼の家に着いたとたんに、ちょっと面倒なことが脳裏によぎったが。
そう、数日後にあかりたちとケーキバイキングに行くと約束していたのだ。
それも、僕の奢りで。料理部のヨーグルトの盗み食いがバレた件で。
冷凍睡眠ですっぽかしたら怒られるなあと思いつつも……。
どうせ未来に行けば、全部チャラだろうとも思ってしまってもいた。
今となっては、ケーキバイキングなんて、遠い時代のものとなってしまったけど。
まだそこまで経ってもないはずなのに……。
「じゃあ、これに入ってくれ。服は着たままでいいよ」
「わーい」
なんて軽い返事だったろうと、今となっては思う。
この後に起きることは、何もかもがとまではいわないけど、苦痛だったのに。
だけど、無思慮で愚かな僕は、そのままポッドに入ってしまった。
その時の僕は未来社会について、読んだことのあるSFで妄想していたな。
オーウェルの1984か、ハクスリーの新世界か、それともアシモフの鋼鉄都市か。
しかし、三つとも違うというのは、読者ならおわかりのはずだ。
これを読んでいる読者が、はたしてどれだけ旧世界の知識を知ってるかによるが。
「もしも君が目覚めたときに、僕が死んでたら、レイに任せるよ」
「ん、サンキュー」
弓鶴、ありがとう。
君の遺した彼女のおかげで、僕は生きていられたのだから。
そして、これからも命尽きる時まで生きるのだろう。