騎士王のヒーローアカデミア 作:エクスカリバー
国立雄英高等学校入学試験、実技演習。
仮想敵ロボを行動不能にし、ポイントを稼ぐ試験だ。内容自体はそこまで難しいものではない。
だがしかし、受験生達は目の前の光景に言葉を失っていた。
大地を見下ろす巨大な影が、高層ビル群の間に君臨していたのだ。
0P敵。巨大すぎるその機械は、ビルよりも高く聳え立ち、天に向かって腕を伸ばしている。まるでこの世の終わりのような威圧感を放っていた。
誰もが唖然としている中、一人の少年が0P敵に近づいていく。刀身の無い剣の柄を握り締めるその少年は、他の受験生とはどこか違う雰囲気をまとっていた。
「お、おい! アイツは倒しても点にならねぇんだぞ! やめとけって!」
周りは慌てて静止の声をかけるも、少年は歩みを止めない。それどころか、ニヤリと笑みを浮かべている。
「そこで指をくわえて見ているんだな。この俺──騎士王、アーサー・ボイルの勇姿を!」
彼が自信満々にそう言い放つと、剣の柄から青白く輝く刃が顕現した。それはまさしく、聖剣と呼ぶに相応しい美しさだった。
彼は腰を落とし、構えを取る。そして、
「──紫電一閃!」
高速移動からすれ違いざまに切りつける。彼の振るう一撃によって、0P敵の巨体は真っ二つに引き裂かれた。断面からはバチバチと火花が散り、やがて動きを止める。一瞬にして、辺りには静寂が訪れた。
あまりの出来事に誰も反応できずにいると、突如としてアナウンスが流れ出す。
《終了~!!》
こうして、国立雄英高等学校入学試験は終了したのであった。
◇
「ここが俺の第二の城となる場所か……」
などと呟きながら、アーサーは目の前の校舎を見上げる。
この雄英高校は、日本最高峰の教育機関として知られている。倍率300倍を誇る超難関試験を突破しなければ入ることはできない。偏差値は79もあり、まさにエリート中のエリートしか通れない学校と言えるだろう。
そのせいもあってか、敷地内は広大だ。広大な敷地の中には様々な施設が建てられている。体育館や食堂はもちろんのこと、トレーニングルームなど戦闘訓練を行う場所まであるらしい。
これからの生活が楽しみでしょうがないアーサーであったが、いつまでもここに突っ立っている訳にもいかない。彼は意気揚々と校内へと足を踏み入れた。
迷いながらもなんとか1-Aの教室に辿り着くと、既に多くの生徒が席に座っている。黒板に張り出された席順を確認し、窓際の席に座った。
すると近くで賑やかそうに話していた二人の少年達がアーサーに近づく。
「よぉ! 俺、切島鋭児郎ってんだ。よろしくな!」
「俺は上鳴電気。お前は?」
アーサーは目を輝かせて口を開いた。
「よくぞ聞いてくれた。我が名はアーサー・ボイル。騎士王だ」
その言葉を聞いた二人は、揃って首を傾げた。
「ん? どういう意味だ?」
「さぁ……てか、名前的に日本人じゃねーよな? 留学生か?」
アーサーはフッと笑みを浮かべると、自慢げに胸を張る。
「俺の生まれは王都キャメロット。そして、そこにそびえるキャメロット城の主でもあるのだ!」
「……お、おう。なんかスゲーな」
「……なんか、変なやつだなー」
二人がそんな感想を抱いていると、突然教室に声が響いた。
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」
気づけば教壇の裏で寝袋に包まれた男が横になっていた。ノソノソと寝袋から出てきた男はボサボサの髪に無精髭を生やし、眠そうな目つきをしている。その風貌は教師というよりも浮浪者のようだ。
生徒たちはその男を呆然と見つめていると、またもや唐突に喋り出した。
「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠けるね」
((先生!?))
クラス全員が心の中でツッコむ。
「担任の相澤消太だ、よろしくね」
担任と名乗るその男は、早速本題に入った。
「とりあえず、体操服着てグラウンドに出ろ」
入学初日からいきなり授業が始まるのか、と生徒達は困惑する。だがしかし、逆らう理由も無いため、素直に従うことにした。ジャージに着替え、ゾロゾロと外に出ていく。アーサーもこの状況に何の疑問も抱かず、剣を背負って後に続いた。
「個性把握テストォ!?」
校庭に出た瞬間、相澤の口から発せられたその言葉に一同は驚きの声を上げる。
「入学式は!? ガイダンスは!?」
と叫んだ女子は麗日お茶子という少女だ。彼女の言う通り、普通ならばここで新入生を歓迎して、今後の説明を受けるのが当然の流れだろう。
だが、目の前の教師にそんな常識はない。何故なら、それは"合理的じゃないから"である。
「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事出る時間ないよ」
そう言って、相澤が取り出したのはソフトボール大の球体だった。どうやらこれが個性把握テストに使う道具らしい。
「雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り。お前達も中学の頃からやっているだろう? 個性禁止の体力テスト」
相澤の説明が続く中、アーサーの意識は別のことに向いていた。頭の弱いアーサーは人の話を聞くことが苦手だ。故に彼は話を聞き流しながら、ボーッと空を見上げていた。
「爆豪、中学の時ソフトボール投げは何メートルだった?」
「67m」
「じゃあ、このボールを投げてみろ。円から出なきゃ何をしたっていい。早よ、思っきりな」
爆豪と呼ばれた少年はボールを貰うと、思い切り振りかぶる。
「んじゃまぁ……死ねぇ!!!」
彼は全力で腕を振り抜いた。爆風が巻き起こり、砂埃が上がる。
アーサーの視界に、遥か彼方へと飛んでいくソフトボールが映る。
「あれは……流星か?」
「いやいや、ただのボールだっての」
呆れたようにそう呟く上鳴。
「まず自分の『最大限』を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
そう言いながら、相澤は手元の機械を操作する。すると、画面に数字が映し出された。
705.2メートル
「なんだこれ!! すげー面白そう!」
「個性使っていいんだ! さすが雄英!」
その数値を見て興奮する者、楽しそうな表情を浮かべる者、反応はそれぞれだ。しかし、その反応を見て不満そうな顔をしている者もいた。相澤だ。
「……おもしろそう、か。ヒーローになるための三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい? よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
「はぁっ!?」
「生徒の如何は先生の自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」
生徒達の表情に緊張が走る。
「最下位除籍って……! 入学初日ですよ!? いや、初日じゃなくても……」
「自然災害、大事故、身勝手な敵たち。いつどこから来るかわからない厄災。日本は理不尽にまみれてる。そういうピンチを覆していくのがヒーロー、だろ?」
そう言った相澤の目は本気だ。本気で言っている。
「放課後マックで談笑したいならお生憎。これから三年間、お前達には絶え間なく試練が与えられ続ける。『Plus Ultra』さ。全力で乗り越えて来い」
その言葉を聞いて、アーサーは目を輝かせた。
(試練……騎士っぽい!)
騎士は試練を乗り越えることで成長していく。アーサーの頭の中には、既に最強の騎士となった自分が浮かんでいた。
(負けられぬ……!)
こうして、個性把握テストが始まった。