三好義継の野望・改訂版   作:鈴木颯手

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第拾話「永禄の変」

 ついにこの日を迎えた。俺は万を超える兵とともに飯盛山城を出発した。その数は2万。三好三人衆を含む三好勢1万に四国衆5千、摂津衆3千、河内・和泉衆2千の内訳だ。このうち俺の真意に気づいている兵は半数にも満たないだろう。特に豪族である摂津・河内・和泉衆は今回の出兵の意図を知らない。精々が「当主が追い出されるなどして弱体化している六角に引導を渡す」とでも思っているだろう。実際、俺もそういう噂を流布している。本命に気づかれないように。

 

「これより京の都に入る! 今日はここに滞在し、明日出発する!」

 

 俺は三好家に与えられた屋敷に数百の兵とともにはいる。ここは三好長慶が足利家と講和した後に京に宿泊する為に建築した屋敷だ。そのために屋敷と言いつつも城や砦と言っていい様相をしている。何なら足利義輝の住む御所よりも堅牢だろう。

 

「諸君、これより我らは戦乱によって乱れる日ノ本に更なる渾沌を呼び起こす可能性のある行動をする」

 

 屋敷に入った俺は主だった家臣を集め、会議を開いた。表向きは明日にでも始ま六角攻めの最終調整だ。しかし、実際は違う。

 

「我らは二条御所の足利義輝を亡き者とし、妹である足利義昭を捕縛する」

 

 予め伝えていたおかげでこれから行われる将軍暗殺、いわゆる永禄の変に対する混乱や困惑はない。誰もが覚悟を決めた表情で俺の次の言葉を待っている。

 

「基本的に攻めるのは我ら三好勢のみだ。豪族たちには京の警護という名目で京の周りを囲み、誰一人として外に出さないようにさせる。つまりおおよそ1万が襲撃に使う兵となる。対する二条御所には数百程度の兵しかいないことを確認している。どれだけ多く見積もっても千は超えていないはずだ。この兵力差だ。確実に成功させるぞ

長逸、お前は四国衆と合流して豪族たちの指揮を取れ。足利兄妹を逃がさないのなら何をしてもかまわない。確実に京を封鎖せよ。

政康。お前は主力として8千を率いて義輝を殺せ。義輝を始め御所にいるのは全員が腕に自信がある者ばかりだ。決して油断せずに対応するんだ。

友通、お前は残り2千を率いて義昭の捕縛を行え。義昭の方に兵が集中しているようであれば政康のところから兵を割き対応せよ。

……改めて伝えておくが今回の最優先目標は義昭の捕縛だ。義輝の殺害はその次だ。両方達成が出来ない場合は義昭の捕縛を優先するのだ」

「「「「「はっ!!!」」」」」

 

 頼もしい返事をしてくれる家臣たち。俺が当主になりそれなりの月日がたった。最近では俺も当主としての貫禄がついてきたように感じる。あとは年齢を重ねれば完璧だな。

 

「それでは諸君、目標の完全達成を祈っているぞ」

 

 俺はそう言って会議を終え、実行の最終段階に移行した。

 基本的に永禄の変における俺の役割はない。この屋敷で全体の戦況を確認しながら大まかに指示を出すことになっているが実際に始まれば指示を出す必要はないだろう。足利兄妹に動きはない。2万の兵が山城国に入る事も、京に宿泊することも事前に許可をもらっているここで事前に察知して迎撃なり逃亡なりを図る可能性は低いだろう。

 そもそも義昭は今年3歳だ。自力で逃げることはほぼ不可能だ。確実に捕らえられる。

 

「さて、始まったか……」

 

 会議を終えて一刻(2時間)ほど。ついに永禄の変が始まったらしく雄たけびや歓声が聞こえてくる。屋敷は京の西端にある為に御所からは少し離れている。ゆえに自分の目で見ることは出来ないが少なくとも負けることはないはずだ。

 

「報告します! 京の封鎖は完了しました! 更に二条御所に三好政康様率いる8千の兵が突入! 内部で乱戦となっております!」

「足利兄妹はどうなっている?」

「足利義輝は兵とともに抗戦中で、義昭は襲撃直前に侍女とともに北部に脱出したのを確認しており、岩成友通様が追跡中です!」

 

 最初に入った報告ですでに永禄の変が佳境に入っている事を知らせてきた。もともとの兵力差が違うからな。戦いはすぐに終わるだろう。

 

「報告します! 足利義昭の確保に成功しました! 護衛の兵士は全て排除しましたが義昭本人に目だった外傷はないとのことです!」

「よし! ならば後は義輝を殺すだけだ! 一気にとどめを刺せ!」

 

 無事に確保できたか。史実だと捕らえたはいいものの三好三人衆と松永久秀の対立に乗じて逃げられている。この世界でも同じことが起きないように気を付けないとな。いや、今後も義昭に逃げられるのは不味いな。史実を見ると義昭は誰かの下につくような人物ではない。まぁ、まだ3歳だから別に教育していけばいいだけの話だがそれでも連れ去られる可能性もあるか。そうなると連れ去られてもいいように義昭を無力化するべきか。別に義昭に思い入れはない。本人が生きてさえいてくれればそれだけでいいからな。

 

「報告します! 足利義輝、討ち取りました!」

「よろしい。では、勝鬨を上げさせろ! そして全ての民に知らしめるのだ! 次の天下が誰のものであるかを! そしてお前らの次の支配者は誰であるのかを!」

「はっ!」

 

 無事に達成できたか……。これで俺の夢の実現に一歩近づいたわけだ。あとはこのまま勢力を拡大し、日ノ本を統一するだけだな。

 俺は京中から聞こえてくる三好勢による勝鬨の声を聴きながら夢に近づいていると実感するのだった。

 

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