三好義継の野望・改訂版   作:鈴木颯手

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第参拾壱話「謁見・弐」

「淡路島に来るのはいつ以来だろうか……」

 

 俺は久しぶりに淡路島に上陸した。最後にこの島に来たのはいつだったかな……。確か長慶に呼ばれて飯盛山城を初めて訪れる際に立ち寄ったくらいだな。つまり、2年くらいか?

 

「お久しぶりです。御館様」

「久しぶり。そんな仰々しくなくていいのに。前みたいに兄上で良いんだぞ?」

「いえ、私も11を超え、これから三好家一門衆に名を連ねるのです。いつまでも兄上と呼ぶわけにはいきません」

 

 信康はキリッとした美少女だ。そんな彼女は内面も同じようにキリッとした性格をしていた。勝正が図書委員だとすれば信康はクラス委員長といったところだ。

 

「それで? 西国からの訪問者はどうしている?」

「はっ! 吉川元春殿は書物を読んだり庭で素振りをして過ごしています。しかし、小早川隆景殿は一日中部屋に引きこもったままとなっています。おそらくですが、父親などの親族や家、家臣たちを一遍に失ったためと思われます。時々すすり泣く声が聞こえてくると侍女が申しております」

「そうか……」

 

 毛利両川が姫武将だとは聞いていたが隆景の方は繊細なようだな。対する元春も辛いだろうが姉として隆景の代わりに頑張っているといったところか? さすがに元春もダメージがないとは言い切れないからな。

 

「そして、目的は仕官だったか?」

「正確には違います。毛利家復興のために兵を出してほしいとのことでした。ですが、そのためなら……」

「なんでもするというわけか……」

 

 これは……。大きなチャンスといえる。うまく立ち回れば毛利両川を一気に手に入れることができるかもしれない。隆景の方はしばらくの間療養させる必要があるだろうが元春は即戦力となれるはずだ。そうなれば俺は優秀な戦力を手にすることができるわけだ。

 だが、一歩間違えれば毛利両川は三好家を去ることになるだろう。仕官させることに成功してもいずれは毛利家を復興させることになる。それまでに三好家に好印象を持ち、あわよくば一族の誰かと婚姻関係を結んでくれれば……。

 

「分かった。では俺が到着したからすぐに話を聞くと伝えてくれ。彼女たちも長旅で疲れているだろうが一刻も早く話を通したいだろうからな」

「かしこまりました。すぐに準備をします」

 

 そう返事をして家臣たちに命令を下していく信康を見ていると本当に成長しているなと感じる。あと3年もすれば立派な姫武将になる。十河家を継いでくれた存保と合わせて優秀な一門衆が増えることになる。そうなれば三好家はさらに発展することができる。

 

「……御館様」

「何だ?」

「御館様は当主になられてから急速に領土を拡大させています。ですが、その分反発する勢力が増えているように感じます」

「……」

「六角家を滅ぼしたとはいえその従属下にいた浅井家を始め若狭の武田家などこちらに負の感情を抱く者が多く存在しています。加えて、今回の一件で丹波と播磨の領土を失いました。ただでさえ有力な幕臣すべてが雲隠れをしている状況で少し軽率な気がします」

 

 ……。信康の言いたいことは理解している。足利義輝に付き従った細川藤孝を始めとする幕臣たち。永禄の変で取り逃がしてからというもの見つけることができないでいる。畿内周辺はほぼすべてを調べたというのに見つからない以上東国や西国に逃れたとみるべきだろう。もしくは()()()()()()()()()()()()……。そこは伊賀と甲賀を手に入れたことで現在優秀な忍びを選別している最中だ。完了すればやまと御所を調べさせる手はずだ。それで何か見つかればいいのだが……。

 

「信康の懸念はもっともだ。俺としても少し性急すぎた。当分は領土の拡大よりも領内の安定、家臣たちの統制を優先するつもりだ。三好家は次代に移っても健在。それを日ノ本に知らしめることも出来ただろうしな」

「……わかりました。出過ぎた真似をしたこと、お許しください」

「かまわないよ。俺と信康は血のつながった一門じゃないか。公の場はともかくこう言った場で不必要に畏まる必要はないさ」

 

 血縁者に限らず、気心知れた仲というのは尊い者だ。特に権力者にとってはな。いざという時のストッパーにもアクセルにもなりうるからな。俺の場合、それが血縁者に多く感じるわけだがな。家臣よりも一門衆を優先してしまう傾向にあるがこれは利点にも欠点にもなりうるから直していかないといけないかもしれないな。

 っと、そんな話をしているうちに気づけば由良城にたどり着いた。信康が居城としているこの城は淡路国の中心地であり、城下町は栄えている。畿内と四国を結ぶ重要な島の中心地ゆえに必然とも言えるがな。それだけのこの城は防衛能力を高めてある。いずれは大砲なんかを設置して船に対しても攻撃できるようにしたいものだ。

 

「御館様。到着しました。……どうやら毛利両川の準備も整っているようですでに大広間にて待機しているとのことです」

「分かった。では、毛利両川のご尊顔を拝見させてもらうとしますか」

 

 俺は長州藩となって幕末まで、いや幕末後も存続し続けた毛利家の優秀な人物二人との出会いに興奮を覚えつつ由良城の城門をくぐるのだった。

 

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