勢力を拡大させた俺は考えた通りにそこからは国内開発に力を注ぐこととした。
最初に取り掛かったのは荒れ地の開墾だ。これは水田に適した土地を選び、そこに溢れている農民に復興させることができれば土地を与えると餌を与えて集めさせた者によって実行した。ほかにも現代では当たり前の均等に苗を配置するなども行い、米が成長しやすいように気をつけさせた。
本来であればもっとアドバイスをするべきなのだが俺はそこまで農業に関して詳しくはない。いもち病にかかると全滅する可能性があるってことを知っている程度で米を作るには知識が足りなさ過ぎた。その足りない知識を使って千歯扱きの開発を行ってみたが未亡人や病気の人の貴重な労働の場を奪う結果となったがそこは代用としていろいろな役職を手配させることで強引に解決させている。さすがにそれ以上の対応をするには俺はデメリットを知らなさ過ぎた。
次に行ったのは主要道路の整備だ。これは近江の小谷城から観音寺城、瀬田、京、飯盛山と畿内とその周辺の主要都市をつなぐ大きな一本道を作り上げたのだ。この道路は兵士が移動することが前提の道となっており、幅は広く、一部には石畳を敷いて歩きやすくしている。すべてではないのは今も工事中だからだ。それにここが終われば次は大和や和泉、河内にも道をつなげる予定だ。
整備の次、ここからはまだ実行途中だが京の要塞化を行っている。京は上京と下京と呼ばれる南北に分かれている。それを一つにしようとしているわけだ。二つの京を包むように堀と壁を作り、京の防衛力を高めると同時に不届きものが京に入りづらくする。これは史実を見ればわかるが足利義昭が手を出しづらい位置から信長包囲網を形成するなど面倒な動きをしていた。そして、この世界ではやまと御所が敵対している可能性が高いのだ。よって、御所と外界との接触を最小限にする目的で作ったのだ。今後はやまと御所の修繕を名目に
「御館様。土佐の安芸国虎が御館様に挨拶をしたいと来ております」
「安芸国虎……。まさか本人が来ているのか?」
「その通りです。いかがなされますか?」
こうやって内政に集中していたとはいえ別に外に目を向けていなかったわけではない。目下の最大の懸念である織田家を中心に様々な勢力の動向を確認していた。信濃では長尾家と武田家による大激戦、川中島の戦いが始まり、それと同時に長尾家は上野を追われた上杉家を助け、長尾景虎が上杉家の養子になることで謙信を名乗るようになった。近いうちに上杉家による関東征伐が開始されるだろう。
意外にも上杉家の動きが速いように感じられるが何やら影の軍師を名乗る人物が暗躍しているらしいが詳細は判明していない。なので俺としては様子見だが積極的に情報収集をするように命じている。上杉家は足利家と何かと縁がある大名家だ。これまでは上杉家が本格的に上洛をしてくるのは義輝が命じた際と武田家没落後の事だから大丈夫だろうと楽観視していたが予想以上に歴史がごちゃごちゃで動きが読めない状態になっている。今すぐに上洛してきてもおかしくはないと感じられるようになった。
一方で織田家周辺はいまだ信長が当主になる前の状態だ。具体的には後の徳川家康である竹千代が今川家の人質になったところだ。そして、以外にも史実通りの名前の中にあった信長だけは信奈という名前となっていた。別人かとも思ったが織田家に該当する人物がほかにいなかったためにこれであっているのだろう。史実では親子そろって子どもを大量にこさえて居た織田家とは思えない家庭環境だ。
だが、おかげでここは好きに謀略調略が行いやすい状況でもある。このまま織田家が大勢力の間でつぶれてくれたり、勢力を維持することで精いっぱいとなれば史実のように織田家に立場を奪われることもないだろう。そうなると次に厄介なのが今川家だ。足利家亡き後、幕府の後継者になれる家は今川家しか残っていない。つまり、足利家残党勢力と言っても過言ではないのだ。残党と言いつつその力は足利家を超えている。力もあり、大義名分もそろっている。ここで三国同盟が成立するようなことになれば危険な状況に陥るだろう。
東国ではこの辺だが西国だと尼子と大内だ。両勢力はいつの間にか同盟を結び、勢力を拡大している。本当に敵対していたのか疑いたくなるような強力な同盟関係を結んでいる。そのせいで尼子は中国地方をほぼ制圧し、大内家は最盛期の大友家を相手に北九州で有利に戦況を進め、領地を奪い取っている。
現状、三好家以外で最も史実からそれている二つの勢力だが確実に何かがあったとしか思えない。もしや、俺と同じ存在がいるのか? それで同盟するように手を貸したのか? いや、それよりはもっと別の勢力がそうなるように仕込んだと考える方が合理的だ。その場合、真っ先に候補にあがるのが関白近衛前久だ。幕臣という可能性も捨てきれないが幕臣程度の権威で二つの勢力の中を取り持てるとは思えない。そうなると何かと権威だけは史実以上に高いやまと御所が手を貸したと考えるのが順当だろう。まったく、どこまでもこちらに抵抗するめんどくさい奴だ。いずれその関白の地位さえ奪ってやる。
さて、話を最初の方に戻すが土佐の安芸国虎。これは土佐の小さな豪族の一つでしかないが長宗我部元親が大頭してきた中で土佐内で最後に歯向かった豪族として知っていた。ちなみに、この後一条兼房と戦っているがこれは豪族ではなく公家であるために別として扱っている。
「……よし、会おう。本人がわざわざ来ているのだ。会わずに追い返すのも悪いからな」
それに、場合によっては土佐進出のチャンスかもしれない。最近は伊予東部を大西家が進出して領土としていた。いずれは四国全土を支配下に置きたいがその第一歩とするのもありかもしれないからな。
さて、確か安芸国虎は粗暴な面が目立つ人物だった気がするがこの世界ではそれも通じないことはこれまでの事から分かっている。せめて話が通じる相手であることを祈るとするか……。