三好義継の野望・改訂版   作:鈴木颯手

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16巻が売ってない。近くのブックオフ6店舗回って手に入ったのが21巻だけ……。


第参拾漆話「黒武の仕官事情・参」

 官兵衛は信顕とともに紹介状を持って飯盛山城を訪れていた。信顕の行動力はすごく、その日のうちに宿を引き払うとそのまま飯盛山城へとたどり着いた。彼女の背にしがみついていた官兵衛も驚きの速さである。

 

「ここまで速くつくなんて……」

「その分馬をいくつも交換したけどね。余計な出費だけどその分速くついたでしょ?」

「それはそうだが……」

 

 取り替えるのが馬一頭で、食事を馬の上でしていたからこその速さだったと官兵衛は感じた。これが大軍となればここまでうまくはいかないし、出来るとしても大量の物資が必要となると。

 

「あ、もしかして行軍だったらって考えた? さすがは軍師! こんな時でも軍を動かすことを考えるんだね」

「だけど君のはとてもじゃないけど参考にはならないよ。そもそもここまで素早い行軍が必要になることなんてないと思うしね」

「……わからないよ。だって今は戦乱の世。何が起こってもおかしくはないんだから」

 

 どこか真剣な表情で言う信顕は父を追い出した姉のことを考えているのだろう。瞳の奥に隠し切れない怒りの感情があふれていたのだから。

 

「……とにかく、到着したのなら馬を降りよう。ずっと馬に乗り続けていたからお尻が痛い」

「えー? このくらいなんともないと思うけどなー。日ノ本は山が多い地形をしているんだから馬の移動は重要だよ。一刻くらいは問題なく乗れるようにしといた方がいいよ」

「……そうかもな」

 

 信顕の言葉を軽く流しつつ飯盛山城へと向かっていく。途中の門番には信顕が紹介状を見せ、きちんとした出自の人物であると証明する。とはいえそれで簡単に通せるわけがなく、紹介状が本物かどうかを判断してから謁見に移る流れとなる。それまでは門の裏手に敷設された建物で待機することとなった。もちろん、これは平時の時だからこその対応であり、そうでなければ日を改めてもらうことになっただろう。

 

「んー、さすがは三好家の本拠地。軍政両方から見ても見事と言える作りをしているね」

「政治に関してはわからないが軍事面から言えばまだまだ改良の余地はある。鉄壁にする必要は必ずしもあるわけではないがその気になれば天下の山城に匹敵する城になれるかもな」

 

 待っている間、暇をつぶす目的で飯盛山城やその城下町の批評を行う二人。二人とも優秀な人物であるために批評はかなり真実を得たものとなっており、最終的には紙に書いて改善点などを箇条書きにしていくまでになった。

 

「んー、これだけ書けたし仕官を決める材料の一つとして出してみる?」

「それはありかもしれないな。シメオン達の優秀な頭脳を見せつける良い判断材料になるだろう」

 

 批評を通してそれまで以上に打ち解けた二人は箇条書きにした改善点を三好兵に渡す。それが渡ったからだろうか? それから直ぐに二人は目通りが可能となり、飯盛山城の本丸にある大広間に通されることとなった。

 

「三好左京大夫義継だ。武田信顕殿に黒田官兵衛殿で相違ないな?」

「はっ! 武田信顕です!」

「シメオンは黒田官兵衛だ。洗礼名としてドン・シメオンがある」

 

 よほど箇条書きにした改善点がよかったのか、通された先にいたのは三好義継だった。そのことに驚きつつも二人は顔に一切出さずに礼を通す。義継としても片方は武田信玄の父親である武田信虎からの紹介状を持った武田家一門衆の一人であり、もう片方も後の豊臣秀吉に仕え、竹中半兵衛とともに両兵衛として知られることになる黒田官兵衛であるために自ら対応するのは当然と考えていたのだ。

 

「さて、本来ならこの紹介状を受け取った時点で採用する事は決定していた。俺としても貴殿の能力以前に武田家との繋がりができるのは悪い事ではないからな」

「それは理解しております。私の実力の今後見せていきたいと思っています」

「それならば良し。期待しているぞ。……それで? そちらの君も仕官したいと思っているのか?」

「……正直に言うとまだ迷っていると言ったところだな」

 

 官兵衛は本音を言うべきか、それとも耳心地の良い言葉を言うべきか悩み、本音で話すことにした。義継の雰囲気を見てそちらの方がいいと判断しての事だった。

 

「本当はその辺の豪族を中心に仕官先を見つけたかったんだけど信顕に誘われて成り行きで仕官に来たって感じさ」

「それを良く話せたもんだな。まぁ、俺としては偽りの言葉を言われるよりはずっとマシだがな」

 

 印象は良くもなく、かと言って悪くもない。まだ見定めている感じがすると官兵衛は思い、次の言葉を話す。

 

「とはいえここまで来た以上シメオンは仕官したいとは思っている。だけど、忠誠を期待してほしくはない」

「将来は裏切る予定だと?」

「違う。シメオンは自分の知略、軍師としての力を天下に示したいのさ。そのためならどこの家だろうと問題ない。シメオンの実力を正確に判断し、それに見合った地位をくれるのならね」

「なるほど。忠誠は地位で変動するってわけか。生意気だが面白い。いいだろう。ならばお前にふさわしい地位を上げよう。だが、それもこれから行うことに対してきちんとした功績を上げられたらだ」

「なるほど。シメオンを試すってわけか。何をすればいいんだい?」

 

 主君になるかもしれない相手を試したら相手も同じように試してくる。官兵衛は天下人になっているだけあって即答も拒否もしないなと評価をする。

 

「我らは近いうちに丹波に侵攻する。その際にお前らには別動隊とともに播磨を平定してもらう」

「播磨を……」

 

 このことは官兵衛にも予想はできていた。三好家が安定すれば真っ先に狙うのは播磨であろうと。何故なら播磨は豪族が割拠する場所であり、強い勢力も存在しない。精々が守護である赤松家の影響力が他より高い程度だった。加えて、播磨東部は元々三好家家臣の有馬某が領有していた地域だが包囲網時に播磨連合軍に奪い取られていた。それを取り戻すという意味でもいずれやってくることは目に見えていたのだ。

 

「播磨はお前の故郷であろう? 縁を用いて従属させるもよし、力づくで攻め取るもよし。お前に任せよう」

「任せる? それはつまり……」

「別動隊1万5千。お前に指揮させる。それでもってお前の能力を判断させてもらおう」

「っ!?」

 

 まさかの言葉に官兵衛は取り繕うことも出来ずに驚きで目を見開く。まさかいきなり指揮権を与えられるとは思っていなかったのだ。だが、同時に理解できてしまった。ここで播磨を平定出来なければ自分は仕官できないと。今後率いることになるだろう大軍を指揮する能力はないと判断されると。

 

「(これが三好義継か……)分かった。それを受け入れよう」

「それは良かった。ああ、ちなみに言っておくがこの1万5千は若狭と近江から徴兵する予定だ。さらに武将も譜代の家臣は付けず、最近召し抱えた者のみとする。癖が強く扱いづらいだろうが頑張り給え」

「……は、はは。頑張ってみるさ」

 

 官兵衛は最後に言われたその言葉に失敗してもいいように見捨てられる者で構成されているのかと思うと同時に外様だからこそ仮採用状態の官兵衛の指揮を聞きやすいだろうと判断しなんとも言えない気持ちになるのだった。

 

 兎にも角にも、武田信顕、黒田官兵衛の仕官とほぼ同時期に三好家は丹波・播磨平定のために兵を集め始めるのだった。

 

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