三好義継の野望・改訂版   作:鈴木颯手

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第肆拾漆話「播磨征伐・肆」

「攻撃開始ぃ!」

 

 総大将、武田信顕の号令の下三木城攻めが始まった。四方八方より三好兵が三木城に近づいていくがその中で本気で攻めようとしている部隊は少数だった。というのもこれは三好家が本気で城攻めをしようとしていると見せかけるためのものであり、実際には重宗が城門を開け放つのを待っている状態だったからだ。重宗が開けるのは東門一つのみ。そこから征伐軍最大武力の吉川元春率いる兵が突入し、城内で大暴れをし、敵の目と力を引き付ける。そのすきに後続が城の制圧を目指して動くというものだった。

 

「むふー! たとえ失敗してもその時は東門を中心に城攻めをすればいいだけの話! 損害は出るだろうがここまで来たら攻めて城を落とした方がいいからな!」

 

 本陣にて官兵衛は戦況を見ながら自軍の勝利を疑っていなかった。実際、かねてからの指示通りに重宗は東門の開門に成功し、吉川元春を招き入れることに成功した。

 しかし、そのあとすぐに吉親側の兵により城門が奪取され、再び閉じられてしまった。これにより元春は城内で孤立することとなったが持ち前の武力を用いて重宗派の兵とともに大暴れをして吉親や長治を討ち取る事に成功した。大将の討ち死にを知り、三木城は降伏することとなったが元春も両名を討ち取れていなければ力尽きて逆に討ち死にしており、かなりギリギリの状態であった。

 元春の奮戦により、三好家は千以下の損害で三木城を落とすことに成功したが、初戦にも関わらず最初から策が躓くという暗雲立ち込める出だしとなるのだった。

 

 

 

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 三木城を落とした日の夜、征伐軍の主要メンバーは広間に集まっていたがその空気は重い。その原因として挙げられるのは腕などに包帯を巻いた元春であり、彼女は不機嫌を隠そうともしないで官兵衛を見ていた。一方の官兵衛もあまり浮かない顔であり、元春と目を合わせないようにするためか少し下を向いていた。

 

「……それじゃ戦況に関して説明するね。まず、三木城は無事に落とすことが出来たけどその過程で元春殿の兵が大きく損耗した。元春自身も深くはないとはいえ多少負傷してしまったわ。元春殿、傷は深くない?」

「おう。ただ、力を入れるとちょっと痛むけぇ安静にする必要がある」

「つまり元春殿はここで脱落。三木城にて後方支援を担当してもらうことになるわけだ」

 

 最大武力のいきなりの退場。目に見えてそれが分かるだけに将達の顔色は良くはない。特に勝てると楽観視し、危うく元春を殺しかけた官兵衛が一番今回のことを引きずっていた。

 

「ごめん。僕のせいだ……」

「仕方ないわ。僕だって総大将だったのにうまく指示を出せなかったし、何より周辺で迅速に動こうとしていたのは少なかったからどちらにしろ救援は難しかったと思うよ」

 

 総大将未経験の信顕、実績はなく、コミュニケーション能力の欠如、心理戦の不得意などの明らかな欠点を抱える官兵衛。それら二人を武力の面から補っていた元春の脱落に征伐軍の成否の行方がまた暗く、重い不安として募っていくのを感じながらも信顕は官兵衛たちをフォローする。

 その後も軍議は続き、次の相手を別所家に属していた豪族に定めると上月城が謎何者かに落とされた事や赤松家で下剋上が発生したことなどの話を共有しこの日は終わった。

 軍議が終わってすぐ、官兵衛は実家である姫路城に向けて手紙をしたためる。内容は軍を率いてこちらに合流するようにというものであり、元春と彼女が率いていた兵の補填を少しでも行おうと思っての行動だった。とはいえもともと征伐軍が中部まで進出してから合流予定であったために今後の予定は大きく崩れることになったが。

 

「(思った以上に兵の足並みがそろっていない。別に指示が通らないわけじゃないけど明らかに命令を聞いていない部隊がいくつかあった。城攻めのような準備がいくらでも出来る戦ならいいけど野戦、それも奇襲や想定しないときの戦闘には物凄く弱い……。

加えて播磨西部では尼子家らしき兵も確認されている。赤松家と戦ったという話もあるしすぐにでもこちらと戦闘になる事はないけどこの軍勢で戦えるわけがない。一体どうすれば……)」

 

 考えれば考えるほど征伐軍と言われた自軍の弱さが目に入ってくる。それを何とかしようにもどうすればいいのかわからない。そもそも打てる手さえあまりないという状況だった。これをどうにかするのなら徴兵の段階からやり直さないといけないだろう。

 

「(これは本当に厄介者ばかりを集めた軍勢なんだな。義継様は本当にシメオンを雇う気があるのか? まさか厄介払い……)」

 

 あまりにも悪い状況を前にだんだんと義継への不信感が募っていく。それはすぐに振り払い、そこから征伐中は二度と考えることはなかったがこの時の不信感は今後も心の奥底に眠り続け、官兵衛の三好家に対する忠誠心に待ったをかけていくことになるのだった。

 

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