三好義継の野望・改訂版   作:鈴木颯手

6 / 49
第陸話「夢」

 俺が何故、後継者に選ばれたのか。それは簡単な話である。俺の母上は九条家という公家の出なのだ。そして九条家は征夷大将軍の正室を二代にわたりだしている近衛家と対立しているのだ。つまり、九条家に力を貸せば公家側の親足利家勢力を排除する事につながるのだ。

 それもあり、一人っ子の俺を養子にすることにしたのだろう。こういった血筋や慣習は意外と役に立つ。何しろ俺に公家の血が流れているだけで当主になる確率がほぼない状態から確実に当主になる事が決まったのだから。

 

「お初にお目にかかります。三好重存と申します」

「表を挙げよ」

 

 そんなわけで目の前の人物、足利義輝にとって俺は目障りな存在だろう。だが両家の力関係は完全に三好家優勢となっている。そもそも義輝が山城国を統治できているのは長慶が温情を掛けたからだ。そうでなければ今も亡命将軍となっていただろう。

 

「本日、公方様にお願いがあり参上しました」

「……修理大夫より話は伺っておる。自らの後継者にワシの義の文字をよこせとな」

「引きうけて、いただけますね?」

 

 これはお願いの形を取っているが力関係を考えれば強要に近い。断れるはずがないがさてはて義輝さまはどのような手をうつのやら……。

 

「……一つ、聞かせてくれ」

「なんでしょうか?」

「お主は何故それほどの才覚がありながら今まで地に伏せていたのだ?」

「……」

「見ればわかる。お主の才能はワシよりも遥かに高く、長慶よりもはるか先を見ておる。それにも関わらずこれまでお主が三好家で台頭してきたという話は聞かない。何故だ?」

 

 ……。

 

 ……。

 

 ……さすがは将軍と言ったところか。人を見抜く目は高いらしい。だが、恐らくお前にもわかるまい。俺が本当の事を言ったところでそれを理解できる者は俺と同じ人間だけだ。うわべだけを理解しても意味はない。同じ人間じゃないとわからないことがあるのだ。

 

「……こうなることは予測していたからですよ」

「ほう? それが本当なら大した観察力だ。だが、実際は違うな? 本音を言っているように見せて核心はぼかして居る。それほどワシには言えない秘密か?」

 

 ああ、厄介だな。将軍家を復興させられる可能性を持った人物だけの事はある。めんどくさいな。

 

()()()()()。それだけでは不十分ですか?」

「……いいだろう。今はそれで満足しよう。そして確かに三好家からの要請を受け入れよう。お主はこれより“義”の名前を用いる事を許可するものとする」

「ありがたき幸せ。その名に恥じぬ働きをしましょう」

「……期待しておるぞ」

 

 ともかく、これで任務は完了だな。そして近いうちに殺すことになるであろう将軍をこの目で見ることも出来た。なるほど、確かに天下を狙えるだけの将軍のようだ。だからこそ、俺の障害となり得る存在だ。

 

「無事に話が済んでよかったですね」

「まあ、へまをやらかさなければほぼ確実に断られる事はなかったからな。むしろ無事に終わったのが普通なんだ」

「なるほど……」

 

 従者の言葉に俺はそう返しながら将軍家の御所を後にする。恐らくというか確実にこの御所に次に来るときは将軍暗殺の時だ。その時の為に周囲を見ながら帰るがやはり防衛能力はそこまで高くはなさそうだな。兵の数も多くはなく、数で囲んでしまえば確実に打ち取れるだろう。

 

「(最初こそ将軍を殺す必要はないと思っていたがあれだけの人物なら力がないうちに叩いておくのが吉だろう。その為にも三好三人衆らと合流し、話をしないとな。いざというときにすぐに行動に移せるように)」

 

 それもこれも俺が日ノ本の統一を目指すためだ。

 ……転生当初、俺はそこまで日ノ本の統一に興味があったわけではない。何ならいずれ上洛してくるであろう織田信長に全てを任せ、俺は家臣となるなり隠居して余生を過ごすなりをしてもいいと思っていた。

 だが、果たして信長に任せる事がいい事なのだろうか? 織田信長は近年の研究で親に愛されなかった人物特有の精神疾患を持っていた可能性があると結果が出ている。別にそれが信長を否定する理由にはならないが、信長が日ノ本の統一を為せた時日本はどうなる? 俺には予想ができない。朝鮮に行くのか、東南アジアに行くのか、それとも鎖国をするのか。俺にはわからない。だが、日本の未来を考えるならある程度の国力は必要だ。後の列強諸国と対等になれる力を得る必要がある。そのためには何をすればいい? 簡単だ。国外に進出するんだ。

 琉球を支配し、台湾を領有する。そこからフィリピンに入りスペインを打倒する。インドネシアやマレー半島を勢力下に入れる事ができれば最高だ。列強諸国が西からやってこれなくなる。アメリカ大陸にも行きたいがそこまで行くには遠洋航海が可能な船が必要だ。そして今の日本の船ではそんなことは不可能だ。なのでイスパニア、スペインのような船が必要となる。だからまずは船だ。イスパニアの船を手に入れ、それを解析。量産を行う。そうすれば遠洋航海に出るための土台が完成する。そして太平洋を航海し、日本の領土に組み込んでいく。最低でもハワイは欲しいところだ。確かあそこにはすでにハワイ王国ができていたから婚姻などを結んでの同盟でもありかもしれない。

 そしてそれらを領有したら同化政策を行う。彼らを奴隷として扱うのではなく、日本人に組み込むんだ。日ノ本の統一後にあふれるであろう浪人や武士を国外に送り、現地の人と交流させる。当然うまくはいかないだろう。何しろ文化も民族も何もかもが違うのだ。だからそこは根気よくいかないとだめだ。10年単位で見ないと絶対にうまくいかない。だが、うまくいきさえすればこっちのものだ。100年後には日本人と他民族の混血児であふれかえる。そこから本土の純日本人を追加していけば徳川幕府が開国したころには周辺はほぼ日本人だけとなる。

 

「(だがそれも所詮今の段階では妄想、虚言の類でしかない。この夢をかなえるには力が権力が、権威が足りない。そして三好家の当主になる事は夢の第一歩だ。そして日ノ本の統一は夢を実現させるための土台なのだ)」

 

 全てはここからだ。ここから始まるのだ。見ていろよ。織田信長も豊臣秀吉も、徳川家康さえ見えていなかったであろう遥か未来の知識を生かして日本を世界最強の民族、国家へと生まれ変わらせて見せる!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。